受験前にチェック! 一級建築士の受験資格【最新版】

一級建築士の試験は年1回、毎年7月に学科試験、10月に設計製図試験が実施されます。

試験を受けるためには、国土交通大臣が指定する建築に関する科目(以下、指定科目)を修めて卒業する必要があり、さらに、資格を取得するには卒業後一定期間の実務経験を積む必要があります。

実務経験年数は指定科目の取得単位数によって変わります。あるいは、二級建築士など別の資格を取ってから実務経験を積んで受験資格とすることもできます。

ここで、受験資格に必要な指定科目の履修数と必要な実務経験年数を簡単にチェックしましょう。

一級建築士の受験資格取得ルート

一級建築士試験を受験できる主なルートは、建築に関する学校で指定科目を履修してから受験する場合と、一級建築士の下位資格となる資格を取得してから挑戦する場合の2種類があります。

学歴

  1. 大学、短期大学、高等専門学校、専修学校等において指定科目を修めて卒業
  2. 外国大学を卒業(築士法において学歴と認められる学校の卒業者と同等以上であるかどうかの審査を受けたうえで、国土交通大臣から認定を受ける必要あり)

別の資格

  1. 二級建築士資格を取得
  2. 建築設備士の資格を取得

学校ルートについては一級建築士試験受験に必要な指定科目、資格ルートについては二級建築士・建築設備士から一級建築士に挑戦する方法で、詳しく説明していきます。

一級建築士試験受験に必要な指定科目

現在、学歴を一級建築士の受験資格として使う場合は、教育機関への入学年の違いによって大きく2パターンに分かれています

ひとつは「建築士法」による受験資格が適用される、平成20年度以前の所定学校への入学者。

もうひとつは、平成20年11月28日から施行された「改正建築士法」による受験資格が適用される、平成21年度以降の入学者です。

古い法律による受験資格が認められている理由は、卒業から年数が経っていても一級建築士を目指す受験希望者がいるからです。

平成20年度以前の入学者は学校と学部・学科名をチェック

平成20年11月27日までの卒業者、または平成20年11月27日に所定の学校に在学中で、11月28日以降に当該学校を卒業した場合は、卒業した学校と学部・学科名で受験資格の有無を判断します。

【学歴別】受験資格と免許の登録要件早見表。一級建築士の受験資格としては、4年制大学・3年制短期大学(夜間部を除く)・2年制短期大学・高等専門学校等で建築または土木の課程を履修する必要がある。登録要件としては、4年制大学なら卒業後2年以上、3年制短期大学(夜間部を除く)なら卒業後3年以上、2年制短期大学・高等専門学校等なら卒業後4年以上が必要。

受験資格として認められている学校は、公益財団法人建築技術教育普及センターが認定した学校に限られています。学部に「建築」「土木」の名称が入っていても、必ずしも認定校とは限りません。

受験資格を取得できる過程を設けている学校の多くでは、入学パンフレットなどに書いてあることが多いですが、不明な場合は必ず建築技術教育普及センターのHPを見るか、学校に問い合わせましょう。

平成21年度以降の入学者は学校と学科名+履修課目をチェック

平成21年度以降の入学者の場合は、大学と学部・学科名に加え、指定科目をきちんと履修した上で卒業しているかの判定が必要です。

法改正前と大きく違う点は、職業能力開発総合大学校や職業能力開発大学校でも指定科目の履修が可能となり、一級建築士受験の門戸が広くなったことです。

学校等別の、資格試験受験に必要な指定科目の単位数と、免許登録に必要な建築実務の経験年数は以下のようになります。

一級建築士の受験・免許登録時の必要単位数(学校種類別)早見表

※参考→一級建築士の受験・免許登録時の必要単位数(学校種類別)|公益財団法人建築技術教育普及センター

指定科目の履修単位に応じて、必要な建築実務の経験年数も細かく決められました。

つまり、履修単位が少ない場合でも、資格取得にあたっては建築実務でカバーできるようになったということです。

指定科目は学校か建築技術教育普及センターのHPで確認する

一級建築士の受験資格として認められている指定科目は、学校からの申請により、公益財団法人建築技術教育普及センターが認定した科目に限られています。

学校名や学部・コース名や科目名が一文字でも違うと、指定科目として判定されない場合があります。

指定科目かどうかわからない場合や卒業後に学校や課程が廃校や廃止になった場合などは、応募書類を提出する前に必ず、学校または公益財団法人建築技術教育普及センターに問い合わせましょう。

問い合わせ先一覧は以下の通りです。

二級建築士または建築設備士から一級建築士に挑戦する方法

指定科目を履修した学歴がない場合でも、一級建築士の受験が可能です。その場合の受験資格を取得する方法を紹介します。

二級建築士の資格を取得

二級建築士の試験に合格して資格を取得すれば、一級建築士の受験資格を得ることができます。

建築に関する学歴がない場合でも、7年以上の建築実務経験があれば二級建築士の資格試験を受けることが可能です。

ただし、一級建築士の資格取得までには、さらに二級建築士免許証に記載のある登録年月日から4年以上の実務経験を積む必要があります。

二級建築士の受験資格

実務経験なしで受験可能なパターン

  1. 建築設備士の資格を持っている
  2. 短期大学を含む大学、または高等学校、高等専門学校、専修学校、職業訓練校などで指定科目を修めて卒業した

※2.は、学校の入学年が「平成21年度以降」か「平成20年度以前」かで要件が異なります

実務経験が必要なパターン

  1. 外国大学を卒業した人など、都道府県知事が特に認める場合で、所定の年数以上の実務経験がある
  2. 短期大学を含む大学、または高等学校、高等専門学校、専修学校、職業訓練校などを卒業したが、所定の単位に満たない場合
  3. 建築に関する学歴がない場合

二級建築士の受験資格の詳細は、公益財団法人建築技術教育普及センターのHPを参照してください。

建築設備士の資格を取得

建築設備士の試験に合格して資格を取得した場合も、一級建築士の受験資格を得ることができます。

建築設備士とは、建築士に助言を求められた場合に、建築設備の設計・工事管理に関するアドバイスを行うことができる資格者です。

法律上は、建築設備士の助言がなくても、建築士だけで設計・工事監理をすることができるため、資格としてあまり重要視されていませんでした。

しかし近年、建築物の安全性への関心度が高くなったことと、高度化した建築設備に対する技術の必要性が高まっていることもあり、平成20年度の法改正で、建築設備士の受験資格の門戸が大きく開かれました。

特に、機械系や電気系の有資格者に求められる実務経験年数が大幅に削減されており、有資格者であれば早期に一級建築士の資格を得る道筋ができています。

また、建築に関する学歴がない場合でも、9年以上の建築設備に関する実務経験があれば建築整備士の受験資格を得ることが可能です。

ただし、一級建築士の資格取得までには、さらに建築設備士の免許証に記載のある登録年月日から4年以上の実務経験を積む必要があります。

建築設備士の受験資格

  1. 建築・機械・電気等の課程がある学校を卒業し、建築設備に関する実務経験が2~6年以上ある
  2. 職業能力開発、職業訓練学校を卒業後、建築設備に関する実務経験が2~6年以上ある
  3. 一級電気工事施工管理技士、一級管工事施工管理技士、空気調和・衛生工学会設備士、第一種・第二種・第三種電気主任技術士の資格があり、建築設備に関する実務経験が2年以上ある
  4. 建築設備に関する実務経験が9年以上ある
  5. 1~4と同等以上の知識及び技能を持っていると認められた

建築設備士の受験資格の詳細は、公益財団法人建築技術教育普及センターのHPを参照してください。

一級建築士に必要な実務経験を算出するには

学校や取得している資格から必要な実務経験年数がわかったら、実際に自分の実務経験年数を算出し、資格取得に必要な要件を満たしているかどうか確認しましょう。

公益財団法人建築技術教育普及センターのHPに掲載されている、実務経験要件(平成20年11月28日から令和2年2月29日までの建築実務に適用)

※出典→実務経験要件(平成20年11月28日から令和2年2月29日までの建築実務に適用)|公益財団法人建築技術教育普及センタ

平成20年度以前の入学者で大学院卒業者は大学院の学歴=実務経験として認められる

法改正前は、建築(工)学関係大学院での建築関係に関する研究が、実務経験として認められていました。

そのため、公益財団法人建築技術教育普及センターに認定された大学院・学部であれば、認定科目の取得単位数に応じて、一級建築士の取得に必要な実務経験を得ることができます。

平成21年度以降の入学者で大学院卒業者はインターンシップが必須

法改正後は、大学院で行う実務研修(インターンシップ)と、研修に必要な科目を所定の単位数以上取得した場合にのみ、相当する実務経験として認められることになりました。

業務内容が実務経験として認められるかは証明者の判断を仰ぐ

一級建築士試験の受験資格として認められる実務経歴は、原則として、所属する建築士事務所等の管理建築士又は実務経歴を証明できる建築士の証明が必要です。

もし自分が行ってきた業務内容が、建築に関する実務経験として認められるかどうか判断がつかない場合には、必ず証明者の判断を仰ぐようにしましょう。

一級建築士からステップアップできる資格

平成18年度以前までは、一級建築士は建築士資格の最上位資格でした。

しかし法改正後、新たに一級建築士の上位資格として、「構造設計一級建築士」と「設備設計一級建築士」の2つがつくられました。この2つは、近年増加している大型の複合施設などを建築する際に必ず必要になる資格です。

また、一級建築士の資格を持っていることが受験資格となっているほかの資格もあります。順番に見ていきましょう。

大規模建造物の構造設計・法適合確認を行う「構造設計一級建築士」

構造設計一級建築士とは、地上4階以上の鉄骨造の建築物および高さ20m以上の鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の建造物などの構造設計および、法適合確認をすることができます。

構造設計一級建築士の資格を取得するには、一級建築士として5年以上の実務経験が必要です。また、2日間の講義を受けた上で、4肢択一式及び記述式の修了考査に合格する必要があります。

大規模建造物の設備設計・設備関係規定の確認を行う「設備設計一級建築士」

設備設計一級建築士とは、延べ面積が二千平方メートルを超える建築物の建築設備を自ら設計したり、設備設計一級建築士以外の建築士が設計した延べ面積が二千平方メートルを超える建築物の建築設備が、設備関係規定を満たしているかの確認を行ったりすることができます。

構造設計一級建築士と同様に、設備設計一級建築士も、どちらも一級建築士として5年以上の実務経験、及び3日間の講義受講を経て、記述式・製図の修了考査に合格する必要があります。

構造設計一級建築士、設備設計一級建築士に関する詳しい内容は公益財団法人建築技術教育普及センターHPをご覧ください。

一級建築士の資格があると取得できるその他の資格

一級建築士の資格を活かし、さらに専門性を高めた業務に関わることが可能になる資格を紹介します。

一級建築士の資格取得はゴールではありません。資格取得後も努力を続けることで、設計だけでなく、工事管理や設備点検など、業務の幅を広げることもできるのです。一級建築士の資格を生かせるその他の資格例。監理技術者(建築・大工・屋根工事・タイルレンガブロック工事・鋼構造物・内装仕上工事)…取得メリットは、特定建築業・一般建築業の事業開設が認められること。また、公共事業発注の際に受ける「経営事項審査」の技術力評価で、5点の配点があること。取得条件は「講習+修了考査合格」。消防設備点検資格者…取得メリットは、消防設備の点検が可能になること。取得条件は「講習+修了考査合格」。住宅性能表示評価員…取得メリットは、中古住宅の評価など、不動産業との連携が可能になること。取得条件は「講習+修了考査合格」。応急危険度判定士…取得メリットは、大規模災害時のボランティア活動に役立つこと。取得条件は「講習の受講」。

まとめ

令和2年3月1日から、法改正により、一級建築士の受験資格・免許登録要件に変更がありました。実務経験の対象となる実務も拡大されています。

一級建築士の資格を取得したいという意欲のある人は、もう一度受験資格をチェックしてみましょう。

一級建築士の資格取得フロー

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