退職証明書が必要なケースと手に入れる方法

転職先の企業やハローワーク、市役所から「退職証明書」の提示を求められ、とまどっていませんか?

「退職証明書って何?」「なんで退職証明書が必要なの?」

退職証明書が何のための書類なのか、どんなときに必要なのか。退職証明書の使い道から、スムーズに発行してもらう方法までをすべてご紹介します。

退職証明書とは

退職の事実を証明する書類=退職証明書

退職証明書とは、その名の通り、あなたが会社を退職したことを証明する書類です。
勤めていた企業に依頼することで発行されます。

明記する項目は「使用期間」「業務の種類」「その事業における地位」「賃金」「退職の事由」の5つ。この5項目のうち、何の項目を記載するかはあなたが選ぶことができます。

ちなみに、こちらがすべての項目を記載した退職証明書の例です。企業から送られてきた退職証明書を確認する時の参考にしてください。

退職証明書

退職証明書は、労働者が申請した場合の発行が企業に義務付けられており、その発行義務は労働基準法第22条1項で以下のように定義されています。

労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

退職証明書が必要になった方は、すぐに前の職場に「退職証明書の発行をお願いします」と連絡しましょう。

退職証明書が必要になるタイミング

退職証明書が必要になるタイミングは、以下の2つです。

  • 転職先の企業から提出を求められた場合
  • 国民健康保険や国民年金の手続きをする場合

転職先の企業から求められた場合

企業が退職証明書を求める理由

転職先の企業は、なぜ退職証明書の提出をあなたに求めるのでしょうか。理由は企業によってさまざまですが、次のような意図で提出を求めることが多いようです。

  • 履歴書、職務経歴書の記載内容が正確か(実務経験の有無や、転職希望者の提示している給料が正しいか等)
  • 退職理由の確認

こうした確認は、もちろんすべての企業が行なうわけではありませんが、創立が古い企業や、以前採用関連でトラブルがあった企業などは、「退職証明書の確認」というフローを踏む傾向にあるようです。

退職証明書の提出を求められたからといって「経歴を疑われているのでは?」と不安になる必要はありません。あくまで、手続き上必要な書類ととらえましょう。

申請できるのは退職してからの2年間

気をつけたいのは、企業側に課せられている退職証明書の発行義務は「2年間」という時効が発生するという点です。

退職してから2年が経過するまでは、労働者は何回でも退職証明書を申請でき、その申請に必ず企業は応じなくてはいけません。

ただし退職後2年が経過すると発行義務が失効するため、申請しても発行してもらえない…というケースもありえます。退職してから、次に転職するまで2年以上のブランクがある人は注意しましょう

もしも退職証明書が手に入らない場合は…まずは転職先の企業に相談を

たとえば、退職後に2年以上のブランクを経てから転職活動を行った場合、あらためて転職先の企業から「退職証明書」の提出を求められるかもしれません。

既に発行義務の時効を過ぎており、前の職場から退職証明書を発行してもらえなかった場合は、まずその旨を転職先の企業に相談しましょう。「発行義務は2年間」という決まりはすべての企業に共通しているので、企業側も納得してくれるハズです。

この場合、提出の必要がなくなるケースや、代わりに離職票を提出すれば良いとされるケースが多いようです。 

退職予定の人は、退職証明書を申請しておいた方がベター

退職証明書が必要な場面は限られているものの、退職予定の人は念のため取得しておいた方がベターです。

今は再就職の予定がなくとも、もしかしたら将来再び就職活動をすることがあるかもしれません。その時、企業側から過去の退職証明書を求められる可能性も。

また、万が一離職票が届かない・なくしてしまったという場合には代わりになり得ます。退職証明書は持っていて損をするものではないので、退職を控えている人は今のうちに企業へ申請し、前もって発行してもらうことをオススメします。 

国民健康保険や国民年金の手続きをする場合

退職証明書が役立つケース

疑問に思うビジネスマン市役所で国民健康保険・国民年金の加入手続きをする場合、退職日を証明する書類として「退職証明書」を使うことができる可能性があります

▼退職を証明する書類

  • 国民健康保険…健康保険資格喪失証明書、退職証明書または離職票
  • 国民年金…健康保険資格喪失証明書、退職証明書または離職票

※「退職証明書」と「離職票」は市区町村によって使用できるところとできないところがあります。必ず事前にお住いの市区町村役場にご確認ください。

離職票と退職証明書のちがい

退職を証明する書類というと、離職票を想像する人も多いでしょう。同じものだと思っている人もいるかもしれませんが、離職票と退職証明書は別物。大きな違いは「公文書か、そうでないか」という点です。

離職票は、退職者が失業給付を受け取る場合に必ず国が作成・発行する公文書。この場合に企業は、社員の退職の翌日から10日以内に離職票を発行しなければならないと定められています。

一方、退職証明書は公文書ではなく、員の申請に対し企業が作成・発行する文書です。書式や様式に規定はなく、企業側には社員からの申請がないかぎり、発行の義務はありません。

ちなみに、離職票と退職証明書では以下のように見た目も大きく違います。混同しないようにしましょう。

離職票_退職証明書比較

退職証明書を手に入れるまで

退職証明書を手に入れるには、以下の2ステップを踏む必要があります。

  • 退職証明書の記載項目を決める
  • 前職場に退職証明書の発行を申請する

退職証明書の記載項目を決める

退職証明書の発行を依頼する際には、以下の項目から証明してもらいたい項目を選ぶことができます。

(1)使用期間
(2)業務の種類
(3)その事業における地位
(4)賃金
(5)退職の事由(退職の事由が解雇の場合は、その理由を含む)

発行を依頼された企業側は「労働者に証明を要求された項目以外、証明してはいけない」と定められています。そのため、証明書に載せたくない項目がある場合は前もって伝えましょう。転職先の企業から項目が指定されている場合は、その指定項目を伝えれば問題ありません。

ただし、あまり削りすぎてしまうのはオススメしません。たとえば「(5)退職の事由」を削った退職証明書を提出すると、企業によっては「隠したい理由で退職しているのか?」「面接のときに話していた退職理由と違うのかもしれない」と疑われるケースも。

何らかの事情がないかぎり、退職証明書にはすべての項目を載せた方がベターです。 

ハローワークで、離職票の代わりとする場合は…任意の項目のみでもOK

この場合、退職証明書に求められるのは「退職を証明すること」のみなので、上記の項目から任意のものを選べばOK。記載必須の項目があるわけではありません。

前職場に退職証明書の発行を申請する

退職証明書に掲載する項目を選んだら、後は前職の職場に発行を申請すれば手続きは完了します。

まずは電話で、退職証明書が欲しいという旨を伝えましょう。電話口でどの項目を掲載すれば良いか聞かれるケースもあれば、メールや郵送などの手段を指定されたうえで、その後の手続きの流れを説明されることも。

退職証明書は公的な文書ではないため、決まった形式も手続きの流れも存在しません。各企業によってフローはさまざまなので、「まずは電話で退職証明書が欲しい旨を伝え、今後の流れを相談する」という1点を守りましょう。

まとめ

退職証明書が必要になったとき、おさえるべきは以下の2つです。

  • 退職証明書は、前の職場に申請すれば必ず何枚でも発行できる
  • 退職証明書の発行には2年間の時効が発生するため、2年以上のブランクがある人は転職先の企業に相談する

退職して2年間経過してさえいなければ、退職証明書はすぐに手に入れることができます。前の職場に連絡し、スムーズに申請・発行してもらいましょう。

(文:転職Hacks編集部)

この記事の監修者

社会保険労務士

山本 征太郎

山本社会保険労務士事務所東京オフィス

静岡県出身、早稲田大学社会科学部卒業。東京都の大手社会保険労務士事務所に約6年間勤務。退所後に板橋区で約3年開業し、2021年渋谷区代々木に移転。若手社労士ならではのレスポンスの早さと、相手の立場に立った分かりやすい説明が好評。様々な業種・規模の会社と顧問契約を結び、主に人事労務相談、給与計算、雇用保険助成金などの業務を行う。

山本社会保険労務士事務所東京オフィス 公式サイト

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