「ブルーレット」「消臭元」「のどぬーるスプレー」「アイボン」「熱さまシート」「トイレその後に」「ポット洗浄中」…。小林製薬の製品はいまや日本の家庭にすっかり浸透し、私たちの暮らしに欠かせないものばかり。使用方法・使用場面が一目でわかるユニークなネーミングやテレビCMでもおなじみです。
「創造と革新により人と社会に『快』を提供する」という企業理念のもと、「あったらいいな」という生活者目線の発想で「いままでになかった製品」を次々に発表。その数は年間30~35品目、リニューアル商品を含めると約80品目にも及びます。
こうした製品開発の中核となっているのが、大阪府茨木市にある「中央研究所」。5階建の同施設には全社員(1300名)の1割以上を占める約150名の開発スタッフが勤務しています。 250台のトイレタンクが並ぶ「水洗トイレ用芳香洗浄剤の耐水試験室」、室内で感じる香りを忠実に再現する「香りの官能BOX」といった実験設備も充実。 「芳香・消臭剤」「洗浄剤」「衛生用品」「薬品」「食品」「オーラルケア」という6つのグループが、日々新たな研究に取り組んでいます。
中央研究所ではどんな体制・方法で商品開発が行われているのか。他社の開発環境とどう違うのか。どんな仕事の面白さがあるのか。実際に現場で活躍されている社員の方に、直接お伺いする機会をいただきました。
研究開発カンパニー 日用品開発部 芳香・消臭剤開発グループ長
長谷川靖之氏
1998年入社・東京水産大学資源育成学科卒
入社以来、主に芳香・消臭剤に携わり、これまでに7~8品目の新製品開発を手がける。
現在は同グループの課長として、13名のメンバーのマネジメントを担当。
小林製薬の製品開発の特長についてお聞かせください。
----最大の特長は「一気通貫」の開発体制
弊社は研究開発1人・マーケティング1人・生産技術1人の3人で1チーム。ニーズの分析からコンセプト設計、研究開発、試験・評価、容器・パッケージ、そして製造ラインに乗せるまでをすべて担当します。もちろん外部の香料会社、デザイン会社などの協力を仰ぐこともありますが、基本的には3人で力を合わせ、議論や検証を重ねながらの開発です。この「一気通貫」の開発体制が、弊社の最大の特長です。
大手では分業制が多いかもしれませんが、私は「一気通貫」のほうが面白いと思います。自分の手で製品を開発しているということを実感できますから。
----製品への思い入れも人一倍
また、開発中の製品のことを「この子」なんて呼んだりする社員も多いです。試作段階で役員にプレゼンを行う場があるんですが、そこでもつい「この子」と言ってしまったり。それぐらい愛着が湧き、思い入れも人一倍強くなりますね。中には発売日にスーパーや量販店まで様子を見にいく社員もいるほど。こんな感情を持てるのも「一気通貫」の開発体制だからこそですね。
他に開発の方法や流れに特長はありますか?
----もうひとつの特長は「スピード」
1製品の開発期間は約1年。「一気通貫」と並ぶもうひとつの特長は「スピード」です。業界でも圧倒的な速さだと思います。
いま現在の「生活者が困っていること」を的確にとらえ、それを解決する製品をスピーディに具現化するというのが弊社の方針で、消臭・芳香剤だけでもリニューアルを含め年間20品目近くを開発。
次々に新製品に挑戦できるというのも魅力的な環境だと思います。
----プロセスも評価される環境
もちろん、失敗してしまうケースも残念ながらあります。例えば動物型容器の「アニマル消臭元」や、紙容器の「エコロン」といった製品は、あまり売れずに消えていきました。でも、失敗は決して無駄ではありません。売れないときは「売れない理由」や「お客様の心理」をしっかりと分析します。「アニマル消臭元」では容器が可愛くて捨てられないという声が多く、また「エコロン」は生活者が求めるエコロジーに対するニーズを的確に捉えることができずに失敗しました。もちろんこの結果は以降の製品開発の中に活かされています。
また会社も失敗のプロセスをきちんと評価してくれますし、いいアイデアが出れば「とりあえずやってみよう!」という社風ですから、まったく新しい商品にも思い切って挑戦できますね。
芳香剤で「まったく新しい商品」というのは難しいと思うのですが、いかがでしょうか。
----ライフスタイルの変化の中で、ニーズは常に生まれるもの
例えば犬や猫を室内で飼うようになって「ペット用」が生まれました。さらに気密性の高いマンションが増えて「タバコ用」が、回収日までゴミを室内やベランダで保管するようになって「ゴミ用」が登場しました。
このように人々のライフスタイルが変われば新たなニーズも生まれます。そしてそのちょっとしたニーズに応えていくことこそが弊社の仕事なんです。だからまだまだ画期的な新製品をつくりだす余地はありますね。
この仕事で「大切なこと」「得られるもの」などを教えてください。
----大切なのは「生活者目線」と「好奇心」
弊社の開発は「こんなことで困っている人がいる」という課題から出発し、「どうすれば解決できるか」を考え、その答えを具現化していくという作業。まずは「生活者目線」と「好奇心」が大切な要素ですね。出発点を間違えると大変ですから、常に暮らしの一場面や家の隅々に興味を持ち、生活者の立場でとらえることが重要です。
----得られるものは「幅広い知識・視野」
狭い分野の研究を黙々と行うのではなく製品開発全般に携われますし、マーケティングや生産技術の人間と一緒に働くことで、自分になかった発想法も身につき、「幅広い知識・視野」が得られる職場です。さらに自己申告制度があり、消臭剤から食品へといったグループ間の異動も可能ですから、知識や技術もどんどん広がります。これも小林製薬ならではの魅力ですね。
最後に、グループ長として「こういう人材がほしい」というご希望はありますか。
-----「本当にものづくりが好き」という方へ
もちろん化学の基礎知識は必要ですが、出身学部は薬学でも農学でも、僕のような水産系でも大丈夫。また前職も同業でなくてかまいません。実際に日用品メーカーや食品メーカー出身者が中途で入社して活躍中です。 幅広い製品を幅広く開発する仕事ですから、どんなキャリアを持つ方でも必ずその経験・知識を活かせる場があるんです。 それよりも大切なのは資質の部分。「生活者目線」、「柔軟な発想力」を持ち、「本当にものづくりが好き」という方と一緒に働ければと思っています。
人々のライフスタイルが日々多様化する現代、市場のニーズもまた多様化・高度化の一途を辿っています。そんな「多様性」の時代に対応していくために、同社も様々な分野の経験者を広く求めるようになりました。これまでは新卒採用を中心としていましたが、ここ数年は中途採用にも積極的に取り組んでいます。
元来、自由で風通しのよい社風のため、中途採用のハンデも一切ありません。新卒でも入社2年目からひとつの製品の開発を任せられる環境ですから、実務経験者であれば即戦力としてすぐに第一線で活躍することができます。
また社歴や年齢に関係なく、仕事の結果やコミュニケーション能力などを正当に評価するのも同社の特長。現在、日用品開発部には15名のグループ長がいますが、うち2名はここ2~3年以内に中途入社した社員です。
同社では今後、従来の6つのカテゴリーに加え、ヘルスケアや化粧品などの新分野にも事業を拡大していく計画です。人事部の岡田浩人氏は「時代の流れに応じて、弊社もより幅広い製品を、よりスピーディに開発していく必要があります。また薬事・特許・知的財産管理といった部門も強化していかなければなりません。いろんな分野の経験者・即戦力の確保、つまり中途採用が今後ますます重要になりますね」と語ります。今小林製薬では、ユニークな製品開発に携わる機会が、より多くの方に開かれているのです。
CMでもおなじみの小林製薬株式会社。取材で訪問させていただいたのですが、外部がガラス張りで綺麗な外観、大阪の中心地からも通える距離にあるという比較的便利な立地から、大手企業の研究所は古くて田舎というイメージが払拭されました。
また、研究施設は大阪に集約しているため、職種異動がない限り転勤の可能性が少ないという点も魅力かと思います。(総合職採用のため、職種異動・転勤がないとは確約できません)。
社員の多様性を重視しているという会社の方針通り、今回インタビューさせていただいた消臭剤開発グループの長谷川様が、非常にイキイキとお話をされていらっしゃったのが印象的でした。入社後も社員の多様性を大切にしており、離職率も年間2~3%と、高い定着率を誇っています。
人事部の岡田様からも、何らかの開発経験をお持ちの方であれば、学部を問わず様々な方にご応募いただきたいとお聞きしておりますし、実際に農学部、理工学部、薬学部、水産学部と幅広いバックグラウンドの方が活躍されております。以下のような経験をお持ちで転職をお考えの方には、ぜひ視野に入れていただきたい企業です。