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日本全国・世界各国を飛び回りながら、発電所の巨大エンジンを操る仕事がここにあります

高菱エンジニアリング株式会社

三菱重工の技術ブレインとして、発電所の設計を担う「高菱エンジニアリング」

発電所建設で世界トップレベルのシェアを誇る三菱重工

東京電力(株) 川崎火力発電所

造船、航空、宇宙開発など幅広い事業を手がける三菱重工は、発電プラントの建設でも知られる存在です。国内での発電プラント建設実績はもちろんトップレベル。世界でも欧米トップメーカーに肩を並べる事業規模を誇ります。

最近では「東京電力(株)川崎火力発電所」において、資源をどれだけ無駄なくエネルギーに替えられるかという「発電効率」で世界最高水準の熱効率59%(低位発熱量基準)を達成。天然ガスを巨大なガスタービンで燃焼させるのと同時に、熱エネルギーで発生する水蒸気を再利用する「コンバインドサイクル方式」で、CO2排出量の極めて少ない発電所を実現しています。

1基で50万人規模の市の電力をすべてまかなえる50万kWという出力を誇り、すでに2基が稼動中。3基目が順次運転開始される予定で、合計150万kWという世界最大規模の火力発電所となります。

もちろんこれはほんの一例。火力のほか、原子力、水力、風力、太陽光などあらゆる発電プラントを手がけ、世界に多くのプラント建設実績を持っています。

その設計業務を担うのが高菱エンジニアリング

中央操作室

そんな三菱重工の技術ブレインとして、発電所の設計業務を一手に担うのが「高菱エンジニアリング」。タービン設計部、プラント設計部、配管・機器設計部、ポンプ・水車設計部といった各部署が力を合わせ、最先端の設計業務に取り組んでいます。

例えば天然ガスによる火力発電所の心臓部である「ガスタービン」は全長10メートル・直径5メートルにも及ぶ巨大なマシン。構造はジェット機のエンジンと同じですが、大きさはジャンボ機用の3~4倍にも及びます。これが1秒間に60回転という音速並みのスピードでまわり、しかも24時間・365日、1500度という高温の中で稼動し続けるのです。

こうした過酷な条件下で、より高い発電効率を得るためにはどうすればよいか。タービン内の翼の空気抵抗をもっと減らせないか。熱をエネルギーに転換する新たな仕組みはないか・・・。そんな課題に日々挑戦しているのです。

ここにしかない「ガスタービンの燃焼調整」という仕事

世界最大級のマシン・最新鋭の火力発電所を、誰よりも安全に動かす

安全性の最終確認をする試運転員

同社では設計だけでなく、完成後の試運転や稼動後の定期メンテナンスも行っています。ちょっとした不備や故障が大事故につながりかねない火力発電所では、機械を安全に動かすことが何よりも大切。そこで設計を行った同社自身が、「ガスタービンサービスグループ」という専門部署を設置し、責任を持ってこれらの業務を担当しているのです。

「ガスタービンサービスグループ」の仕事はまず、顧客への引き渡し前の「試運転」から始まります。タービンをはじめとする発電設備は、もちろん安全に作動し、振動を最小限に抑えるよう設計・製造されています。しかし現地の環境や気候などが動作に微妙な影響を与えるため、「燃焼調整」という最後の仕上げが必要なのです。具体的には燃料と空気の混合比率を微調整しながら、最も効率的に振動せず燃焼する値を検出。それに合わせて制御系システムの数値なども変更します。さらに機械の信頼性、運転の安定性などを検証。完全に安全性が確認できた上で引き渡しとなるのです。

完成したばかりの巨大なマシンを誰よりも安全に動かす。そして引き渡しという最後の場面に立ち合い、顧客と握手を交わす。これは「ガスタービンサービスグループ」に与えられた特権なのです。

世界各国を飛び回り、お客様とともに完成を喜び合う

新たに建設予定の発電所は国内に限らず、世界各国で多く計画されており、またすでに稼動している発電所についても定期検査が必要であり、これも「ガスタービンサービスグループ」の仕事になります。そのためグループのメンバーは年間を通じて日本全国・世界各国を飛び回っています。中国を始めとするアジア各国、地球の裏側のチリやアルゼンチン、観光では入国できないサウジアラビア・・・。少ない時は4~5名、多い時は10~20名の仲間とともに現地を訪れ、数日~1カ月をそこで過ごし、各国の人々とふれあいながら仕事を進めていきます。

例えばそれまで安定的な電気の供給がなかった地域には、新しい発電所の稼動を心から喜んでくれる人たちがいます。また、これまで振動の多かったガスタービンが、同社の燃焼調整によってどんどん振動が少なくなっていく様子に、感動・感激されるケースもあります。いずれの場合も引き渡しの際に返ってくるのは「ありがとう」という感謝の言葉。自分が世のため・人のために本当に役立っていると、実感できる仕事でもあるのです。

「経験の浅い若手を5年かけて育てる」という方針

「巨大な機械に触れてみたい」「海外に興味がある」という方なら機械系学科卒レベルの基礎知識でOK

同社ではいま「ガスタービンサービスグループ」の人材補強を社内の最優先課題に挙げています。発電プラントと聞けばかなりの経験・知識が必要だと思われるかもしれませんが、決してそうではありません。必須とされるのは高専・大学の機械系学科卒レベルの基礎知識。あとは「巨大なマシン・最先端の技術に触れてみたいという思い」と「海外の国や文化への興味」があり、「人とふれあうこと」が好きならベストとのこと。英会話力についても「英語に苦手意識がない」という人なら問題ないそうです。

例えば「いま自動車のエンジンを手がけているが、もっと大きな機械に携わってみたい」「機械の製図をしているが、1日中パソコンと向き合っているのは正直つらい」「最先端の技術を身につけ、世界を舞台に活躍したい」といった方には最適な仕事かもしれません。

発電所という特殊な世界だけに、自分にできるのかという不安もあるでしょう。しかし同社は「新たに採用した若手の育成には5年ぐらい必要」というスタンス。充実した机上研修と並行してOJTを行い、「現場で先輩社員の指導を直接受けながら、一つずつ確実に仕事を覚えてもらいたい」という方針です。

担当コンサルタントより

景気に左右されない事業の中で、「一生モノの技術」を身につける

担当コンサルタント 海野  雄紀 担当コンサルタント
海野 雄紀

電気は人々の暮らしや産業に欠かすことのできない重要なライフラインです。業績が好不況に影響されることはありません。逆に世界にはまだまだ電気の供給が十分でない地域もありますし、経済成長著しい中国などでは消費電力が急伸。また日本でも既存の発電所を、より発電効率のよいものに建て替える「リプレイス」が進められています。

経済産業省も2008年3月の「Cool Earth~エネルギー革新技術計画」の中で、「ガスタービンのさらなる高温化による火力発電所の高効率化が、近い将来、最も有効なCO2削減手段である」との見解を発表。新規設計やリプレイス、それに伴う試運転や燃焼調整、さらに定期メンテナンスと、同社の仕事も増える一方です。
しかも発電所の設計を専門に手がける会社は日本に数えるほどしかありません。発電の仕組みを理解し、巨大な機械を操る術を身につければ、それはまさに希少価値の高い「一生モノの技術」だといえるでしょう。