株式会社リニカルが誕生したのは2005年6月。国内大手製薬会社(A社)で長年にわたり新薬開発に直接携わってきた4名と、彼らに賛同した5名のメンバー、合計9名でのスタートでした。A社出身者がつくった会社なら、A社からの仕事が大半だと思われるかもしれませんが、同社の場合はそのまったく逆です。「A社からの仕事は一切受けない」という方針をアピールすることで、A社以外の製薬大手にアプローチ。自社の情報がA社に流れるのではという疑念を払拭するとともに、開発現場での豊富なノウハウを提供することで、次々に取引先を開拓していったのです。現在は主に国内大手6社の開発業務をサポート。1社1社との取引も拡大の一途をたどっています。
日本のCRO業界は十数年という歴史しかなく、まだ「下請け」「外注」というイメージを拭いきれていません。しかし先進国である欧米では、製薬会社とCROは同等の関係。新薬開発に欠かすことのできないパートナーとして認知されているのです。リニカルが目指すのはまさにその立ち位置。実際に同社では、CRAが新薬開発パイプラインの「フェーズII」というコアな部分から関わり、臨床試験の方法などについて提案することも少なくありません。
もちろんそんな提案ができるのも、その提案を製薬大手が受け入れるのも、開発現場での豊富な経験を持つ社員がいるからこそ。現在のCRO業界を見わたしても、これほどのキャリアを持つ人材がそろう会社、これほど付加価値の高いサービスを提供する会社はほとんどありません。
リニカルで取引先との交渉に当たるのは主に大手製薬出身の創業メンバー4名です。彼らは大手製薬時代に開発や申請の豊富な実務経験を持ち、またCROを使う立場でもありました。どうすれば製薬会社に喜ばれるか、どうすれば臨床開発をスムーズに進められるかを知り尽くしています。だから新しいパイプラインの概要を聞いた段階で申請までの流れを見通し、どの社員でプロジェクトを構成するかまでをその場で提案することができるのです。これは同社にとっても、取引先にとっても非常に効率的。「社に持ち帰って検討」「検討したができない」ということも起こらず、時間的・人的なロスがまったくありません。さらに取引先の要望をきちんと汲んでスピーディーにプロジェクトを動かせるということで信頼も高く、どの製薬大手でも依頼されるパイプラインの数は増す一方。
こうした効率のよい経営体質と高付加価値のサービスで、35〜40%という驚異的な経常利益率をたたき出しているのです。
企業を構成するものは「ヒト・モノ・カネ」だとよくいわれますが、同社ではそこに「分配」という理念を加え、徹底した社員への利益還元を実行しています。役員やリーダーが個々の活躍を正当に評価し、年3回の賞与にしっかりと反映。さらに高い経常利益率が、社員全体の収入レベルを押し上げているのです。
リニカルには同業他社出身者、メーカー出身者、あるいは派遣でCRAをしていたという社員が多数います。こうした経験者たちが転職先として同社を選ぶのは、やはりその仕事環境に魅力があるからこそ。新薬開発の最前線で長年の経験を持つエキスパートのもとで働ける。彼らをリーダーとするプロジェクトの中で、その豊富なノウハウに直接触れられる。新薬開発・申請のパートナーとして製薬会社に助言・提案する姿を目の当たりにできる。
しかも携わる仕事はすべて製薬大手の最先端の新薬開発…。こうした環境下で、社員からは「どんな疑問・質問にも常に適切な答が返ってくる」「体験をもとにしたアドバイスに感銘を受けることさえある」「自分が収集したデータがどう反映されるかなど、全体像が見えるようになった」「担当した治験からどんな新薬が生まれるかを実感できる」「他では得られない知識やスキルを習得できる」といった声が上がっています。
また同社では現場での育成のほか、海外研修にも力を入れており、毎年数名の社員を国際学会(2007年はパリ)などに参加させています。もちろん高い利益率を背景とした「分配」という方針も、経験者にとっては大きな魅力。実際に同業他社からの転職者全員が「年収100〜150万円アップ」を勝ち取っており、それが個々のモチベーションを高め、プロとしての意識を育む要因にもなっています。わずか9名でのスタートでしたが、現在では社員数も70名を突破しました。驚くべきはこの間、希望退職者が一人もいないということ。経験者にとってリニカルが、どれほど誇りとやりがいを持って働ける会社なのかが伺い知れます。
多くの経験者を採用し、その中から次世代のリーダーも育っているという状況の中で、同社は徐々に未経験者の育成にも力を注ぐようになりました。毎年、春と秋に新卒者を含めた未経験者の採用を実施。
2006年に2名、2007年には14名を迎え入れ、2008年4月にはさらに約20名の社員を迎えました。もちろん今後も若手の採用を強化。1〜2年後の150名体制、株式の上場を目指しています。
未経験者は社内での充実した研修を経て、OJTにより実務を学びます。経験豊富な社員が多い同社では、新人を中心にしたプロジェクトはありません。まずはベテランCRMやリーダーのいるプロジェクトに配属され、そこで丁寧な指導を受けられるのが特長。速く確実に力をつけていくことができるのです。もちろん新人も「分配」の対象。リーダーがプロジェクト内での個々の成長をしっかりと見極め、年3回の賞与できちんと評価します。
同業他社から転職してきてまず驚いたのは、取引先がすべて大手で、しかもその大手から意見やアドバイスを求められる存在だということですね。まさに「パートナー」という言葉がぴったりだと思いました。僕はいま、その大手の一社で消化器系の新薬開発に携わっています。リーダー1人とメンバー5名のプロジェクトで、治験スタートから承認申請までをトータルに担当しています。市販後調査だけを行う仕事やルーチンワークに近いCRAもあると思いますが、ここでは全体を見通しながら仕事に取り組むことができるんです。自分も新薬開発に貢献しているということを実感できますし、1つのプロジェクトが終われば別のメーカーの仕事を経験することも可能。メーカーにいるよりも開発に専念できて、より多くの知識やスキルが身につくかもしれません。
社長の人柄も魅力のひとつです。もちろん仕事には厳しいですが、本当に公正で気前のいい人だと思います。やったことを正当に評価してくれますから、希望を持って働けますね。
それに経営がとても透明です。このプロジェクトはいくらの仕事なのか、いくらの利益が出るのかが明確にされるので、その中で自分はどんな役割を果たさなければいけないのかを自覚できます。そして経験を積めば積むだけ重要な役割を任されるようになり、評価も高くなるわけですから、やりがいがありますね。上司や先輩からもっともっといろんなことを吸収して、5年くらいでプロジェクトを動かすリーダーへと成長できればと思っています。
数あるCROの中でも、特に勢いのあるリニカル社。150名体制に向け、更なる拡大を図っています。同社の魅力は経験者が豊富にいる環境にあります。医薬品開発のゴールである承認申請を経験したスタッフ(臨床経験5年以上)が中心となったプロジェクトの中で、経験を積むことができます。
また、同社は日本CRO協会ではなく、大阪医薬品協会に所属しています。製薬会社のパートナーとして、今後の日本のCROのあり方を変えていく企業となるかもしれません。
2007年10月には東京オフィスを移転。また、日本の製薬会社の海外治験増加の流れを受け、来春には米カリフォルニア州に拠点を開設予定とのこと。欧州での事業展開も検討されており、今後の更なる展開が期待される企業です。