転職×天職 > 注目企業採用情報 > フェニックス電機株式会社
画像や映像をスクリーンに投影する「プロジェクター」。会議で資料を映したり、営業担当者が顧客先でプレゼンテーションに用いている光景をご覧になったことがあると思います。教育現場でもかつての「オーバーヘッドプロジェクター」に代わって、小型化したプロジェクターを一教室に一台設置している学校も増えてきました。最近は大きなスクリーンでDVDなどを楽しむ家庭用も普及しはじめました。そんなプロジェクター用のランプで世界2位のシェアを誇るのが、兵庫県姫路市の「フェニックス電機株式会社」です。
「ランプ」はその発光の仕組みにより、大きく2つに分けられます。一つは「フィラメント」に電気を通し、フィラメントそのものを発光させる「電球」。もう一つは電極間に電子を飛ばして発光させる「放電灯」で、その代表が「蛍光灯」です。プロジェクターランプは後者の「放電灯」の一種ですが、電極と電極の間はわずか数ミリ。その隙間に強烈なスパークを起こして発光させた光を凹面の反射鏡で集め、一点に焦点を合わせるという特殊な構造です。大型になると300W近くにもなり、点灯時の内部圧力も200気圧に達します。
非常に高度な技術が必要とされるこのランプを製造しているのは、同社のほかに世界で5社あります。シェーバーのCMでおなじみのオランダの「フィリップス」、ドイツの「オスラム」、そして日本の「パナソニック」「ウシオ」「岩崎電気」など、いずれもプロジェクターランプ専業ではありませんが、世界的規模の大企業ばかりであり、この中で同社はフィリップス社に次ぐシェアを誇っているのです。
東証一部に上場している同社ですが、企業規模はシェアを争う5社よりも小さくなりますが、そんな中で世界の列強と対等以上に渡り合っているのは、独自の技術を備えているからです。ランプ関連で多くの特許を持ち、中でも1997年に開発した「二重シール構造」に関する特許は同社のランプの優位性を不動のものにしました。
これはまず電極を含む部品(マウント)をあらかじめ肉厚の薄い細管に封止し、マウントの外側がガラスに封着されたものを製造。さらにそれを再度肉厚の分厚いランプ本体に封止するというものです。この二重シール構造により同社は「耐圧強度が強いランプ」「放電電極間の距離が非常に短いために性能のばらつきが少ないランプ」を実現しました。
もう一つの強みは、小回りの効くオーダーメードの開発体制です。同社は社内開発した既製品を売込むのではなく、プロジェクターメーカーの新製品の企画段階から開発に参加します。「今度、こういう使用目的のプロジェクターをつくりたい」「そのために、この空間にランプを納めたい」「価格はこのくらいで」…といった要望に応えながら、そのメーカー・その機種専用のオリジナルランプを開発。しかも「最低80個から・2週間以内」というどこにも真似のできない小ロット・即納体制を実現しています。
この技術力と開発・生産体制が評価され、同社の製品はまずプロジェクターの世界最大手・米国「インフォーカス社」に採用されました。そして日本の東芝、シャープ、三菱電機、三洋電機などにも製品を提供するようになり、売上・シェアを拡大。「大量生産・薄利多売」とは対局にある、技術力を柱とした「高品質・高付加価値の製品の提供」という独自のビジネススタイルを確立し、2004年には「ポーター賞」にも輝きました。
【ポーター賞】
競争原理・戦略の権威であるハーバード大教授「マイケル・ポーター氏」の名を冠し、日本では一橋大が運営。独自性の高いビジネスモデルに対して贈られる賞で、これまでに「キヤノン(手ぶれ防止の独自技術開発)」「アスクル(事務用品の宅配ビジネス確立)」「大同生命(企業向け保険に特化した経営)」などが受賞。
教育現場や家庭への普及でプロジェクター市場は確実に広がっています。さらに最近はパソコンとの接続により、ビジネスシーンでの利用も拡大。例えば小型プロジェクターをノートPCと一緒に携帯し、パワーポイントなどで作成した企画書を取引先の壁に映し出す、という具合に使われています。一方、大型プロジェクターをホールの天井に固定設置するというケースも増えており、ランプの「小型・軽量化」「大型・高輝度化」の両面で今後もフェニックス電機の技術が不可欠だといえそうです。
また同社はプロジェクターランプだけでなく、自動車のヘッドライト用(ハロゲンランプ)や、商品をより鮮やかに見せる店舗用(メタルハライドランプ)といった分野でも独自の製品を手がけています。さらに新規事業として、プリント基板に回路を焼付ける「露光装置用ランプ」にも進出。「大きなランプで照射する」という従来の方式に対し、「小さなランプの集合体でまんべんなく照射する」という方式を開発し、すでに大手メーカーでの採用が決定しています。
二重シール構造による「超高圧水銀灯」開発の中心となった技術部長(現・常務取締役)は、以前大手家電メーカーで電子レンジの設計をしていました。同社への転職のきっかけは、知人から「思う存分、研究・開発できる会社がある」と聞き、そしてその言葉どおり研究・開発に没頭。画期的なランプを生み出しました。
技術開発力こそが生命線の同社では、多くの開発担当者が当時の部長と同じ思いを抱いています。特にプロジェクターメーカーと一緒に新しいランプを開発するという仕事は「ものづくり」そのもの。時には東京や大阪のメーカーの技術担当者が姫路にまで足を運び、数日かけて打合せや品質確認・改良を行うこともあるといいます。
こうして生み出したランプを搭載したプロジェクターが、新製品として世に出る…。多くの社員が「これが技術者としての何よりの喜び」だと語ります。
またランプ開発には様々な技術が必要です。光学や電気・電子はもちろん、材料・機械、さらにランプ内の物質(ハロゲンや水銀など)を扱う化学…。様々な知識を寄せ合い、融合させることで新たな製品を生み出します。つまり同社にはあらゆる分野の技術者にそれぞれ活躍の場があるのです。そして自分の専門を活かしながら他分野の知識・ノウハウを吸収し、技術者としての幅を広げていける。特許取得に関わるような最先端技術に触れることができる…。「技術開発に専念したい」「技術者として成長したい」「本当のものづくりに携わりたい」という人にとって、まさに理想的な環境ではないでしょうか。
1976年に創業し、ハロゲンランプの量産を行ってきたフェニックス電機。実は旧来の少品種大量生産の方法では安価な海外製品に対抗できなくなり、1995年に会社更生法の適用を受けています。
しかし、そこからの同社の再生・成長には目を見張るものがあります。1995年からはプロジェクターランプをメインに、高付加価値製品を開発する「ものづくり」の会社に方向転換。小回りの効くオーダーメード開発体制や特許を持つ低コスト製造方法など独自のビジネスモデルを構築し、わずか3年で更生手続を終結させ、2003年にジャスダック上場、2005年に東証2部上場、2006年には東証1部上場とV字成長を遂げています。
大量生産品による価格競争には参画せず、顧客特別仕様の高付加価値製品に特化する同社では、大手完成品メーカーのパートナーとして最新の技術を生かした製品開発を行うことも多く、技術者にとっては常に研鑽を積める魅力的な環境の企業です。