(取材日 2008/11/25)
私たちの身のまわりにある繊維は、すべて縦糸を1本ずつ互い違いに上下に開き、そこに横糸を通していくという仕組みで織り込まれます。その際に縦糸を上下に開いておくのが「開口装置」です。
1892年にスイスに生まれた「ストーブリ」は、時計をはじめとする精密機械で知られる同国の高度な技術を活かし、独自の「開口装置」を開発しました。
材料に鉄より固い特殊鋼を用いることで、機械をバラしてメンテナンスを行い、組立て直す際にも「一切の調整が不要」という卓越した精度を実現。正確無比かつスピーディな縦糸の開閉で、製織産業に多大な発展をもたらしました。
以来、116年にわたりトップメーカーとして君臨。欧州各国の一流ブランドのファッションの歴史、精緻な模様の絨毯の歴史も、同社の開口装置ぬきには語ることができないほどです。
スイスのチューリッヒ郊外の小さな工場からスタートしたストーブリは、約100年前に本社をフランスに移し(本部は現在もスイス)、欧州全土へと事業を拡大。
現在では世界14カ国に生産拠点、24カ国に販売・アフターサービス拠点、そして50カ国に代理店を持つインターナショナルグループへと成長しています。
開口装置のシェアは、より複雑な模様を可能とする「ジャガード織」の分野で約70%。その他の「ドビー織」などの分野では実に95%を占め、まさに世界市場を独占。
そんな同グループの日本法人として1983年に設立されたのが「ストーブリ株式会社」です。
今から52年前、ストーブリがその精密加工技術を活かす「第二の事業」としてスタートさせたのが、クイックコネクターシステムです。「コネクター」とは文字通り、モノとモノをつなぐ部分のこと。
例えば都市ガスの元栓を思い起こしてください。一昔前までは元栓の赤い線までしっかりとゴムホースを差し込み、クリップで絞めるという方式が一般的でした。しかし現在ではホースの先のコネクター(プラグ状の器具)を、壁などに設置されたガスコンセントに差し込むだけというスタイルが主流。ガスをまったく漏らすことなく、瞬間着脱が可能となっています。
同社のコネクターはこれより遥かに高い性能・品質・耐久性を誇り、絶対的な安全性を求められる場面に用いられています。
自動車・鉄鋼・化学などの工場、フランスのTGVをはじめとする鉄道、先端技術の粋を集めたF1マシン、スペースシャトル、光ファイバー、データ通信、航空機、原子力発電所…。
あらゆるタイプの流動体・電気系のコネクションニーズに応え、この分野でも世界屈指の技術力とシェアを誇っています。
ロボット事業のスタートは25年前。一般的にこの世界では各企業がそれぞれ専門分野を持ち、用途や機能を絞った製品開発を行っています。しかし同社は様々な用途・機能のロボットすべてを手がけ、専用アプリケーションまでも自社で開発。そのため製品ラインナップが豊富で、半導体やバイオテクノロジーといったミクロの世界から、最大荷重250kgの重量物用まで、あらゆる産業分野のニーズに応えることができます。一般産業の組立て、プラスチック産業の様々な分野、食品産業の加工・切り分け…。活躍の場は広がるばかりです。
中でも半導体業界では圧倒的な優位性を誇っています。116年にわたって培ってきた技術力が実現する、精密さと生産効率。電気配線をすべてアーム内に組み込むことで生まれる高い密閉度はクリーンルーム内での作業に最適。さらに360度の回転が可能で、設置スペースを最小限に抑えることができます。こうした特性が高く評価され、インテル、ソニー、パナソニックなどの大手企業に次々と採用されているのです。また最近ではより高い精度が求められる自動車産業のレーザー溶接・レーザー切断にも、同社のロボットが採用され話題となっています。
現在、織機関係・コネクター関係・ロボット関係の売上比はおよそ50:35:15。これを1:1:1にしようというのが、同グループの目標です。
もちろん比率の高い事業を減らすという意味ではありません。安定している織機関係の売上はそのままに、コネクター・ロボットを伸ばすことで企業として大きく飛躍しようという狙いです。
特に日本ではまだまだコネクター・ロボットの比率が低く、今後の投資や人材採用もこの分野に力が注がれていきそうです。
同社は会社と社員を主従関係ではなく、50:50の対等な関係だと考えています。社歴や年齢にとらわれない実績主義の評価ですから、中途入社のハンデはゼロ。上司への必要以上の気遣いも不要で、社員からは「純粋に仕事に打ち込める環境」「やりたいことをやれる会社」という声が上がっています。
また採用においては経歴よりも人物そのものを重視。特に積極性や能動性にポイントを置いています。コネクター・ロボットという先端分野で今後の世界的な飛躍が期待されるストーブリ。フランス本社の技術部門とのコミュニケーションなどを通して、グローバルに成長・活躍するチャンスも豊富です。