【 第1回 】 感情をコントロールする 〜勉強を始められない人へ〜
勉強しようと強く決意をしたとしても、実際に思ったとおりに勉強することはかなり困難です。それもそのはず、脳と心を味方につけるのは、思っている以上に難しいから。このコーナーでは、そんな勉強を“快感”にするテクニックを、4回に分けてお伝えします。
佐々木 正悟（ささき しょうご）
心理学ジャーナリスト
専門は認知心理学。
1973年北海道旭川市生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスで派遣社員として働く。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。
著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』（日本実業出版社）のほかに『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック社)『やる気ハックス』(あさ出版)、『マインドハックス勉強法』(日本実業出版社)など。
「シゴタノ！−仕事を楽しくする研究日誌」にて「心理ハック」を連載中。
あの本の著者！
「脳と心を味方につける マインドハックス勉強法」（日本実業出版社）
ライフハックが、仕事や生活の問題を解決するための創意工夫の精神だとすれば、マインドハックス勉強法は、勉強にまつわる様々な問題を解決しようとする、心の創意工夫です。
時間と気力はあるのに始められない
世にある勉強本を読んだ直後には勉強しようと強く決意する。英語の本を読んだ直後は、英書がすらすら読めるようになろうと熱くなる。 にもかかわらず、実際に勉強する計画を立て、さあ実行という段になると、テレビを見たり、メールをチェックしたりしたくなります。実際に勉強を始めるのは、かなり困難です。
どうしてこんなことになるのでしょうか？
情熱ややる気にも「期限切れ」がある
仕事でも勉強でも、こうしたことはよくありますが、こんな事になってしまうのは、情熱ややる気になったときの感情というものは、無限にわき上がってくるものではないからです。それは、ちょっとした苦痛の壁にぶち当たっただけでも、簡単にしぼんでしまうものなのです。
勉強をすれば年収が大幅にアップするといった本や、英語を猛勉強する方法について書かれている本を読んでいるときには、現実には受け止めなければいけない苦痛を感じません。たしかに、勉強をするのは簡単ではないということは書いてあります。その大変さも書いてあります。読書中はその大変さに対するイメージもあります。朝早く起きる苦痛をイメージし、それを乗り越えるために、「強い決心」を必要とすることも分かっています。
しかし分かっていないことがあります。その苦痛の実際の「感じ」です。本を読んでいるだけの時は、その苦痛の「感じ」が欠けているため、やる気が高まった情熱を冷ますものがなく、すっかり気持ちよく熱くなることができるため、ほんのわずかな気力を高めているだけなのに、無限のハードルを乗り越えることができるという、万能感に浸ってしまうのです。
ですが実際にそうしたわずかな気力は、わずかな障害すら乗り越えられないものなのです。ですから、情熱や感情だけで、そのような難所を乗り越えようとするべきではないのです。そうした思いつきのような決心で、まっしぐらに勉強に向かうのは、無謀というものです。むしろそうしたわずかの気力を使って、やるべき事は他にあります。
