山本 ケイイチ
プロフィール
(株)エネックス代表取締役。山本ケイイチトレーニング事務所代表。NESTA公認パーソナルフィットネストレーナー。ハードなトレーニング経験と最新の運動生理学・脳科学に基づく独自のトレーニング理論が高い評価を受けて、経営者やエグゼクティブクラスのビジネスマンなどの個人指導を行ないつつ、プロトレーナーの育成、フィットネスフードの開発など幅広く活躍している。著書に「仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか」がある。
「仕事ができる人
はなぜ筋トレをす
るのか」
幻冬舍新書 定
価/本体740円(
税別)
日々トレーニングに励む人たちからパーソナルフィットネストレーナーのパイオニアとして絶大な支持と評価を得ている山本ケイイチ氏がトレーニングに興味をもったのは中学生のころだった。独学でトレーニングを始め、高校卒業後には心身を鍛える目的で陸上自衛隊に入隊する。
生来の努力家で、しかも同世代の若者と比べて目的意識の際立つ山本氏は頭角を現していく。初級偵察課程をトップで終了し、隊長賞を受賞した。
その後、トレーニングを極めるために除隊し、有名なフィットネスクラブでトレーナーとして活動を始めるが、フィットネスクラブの経営方針やトレーナーの実力などに疑問を感じる。
「一般の人たちが考えるトレーニングの目的は2つあります。ボディビルのようにただ筋肉をつけたいというものと、ダイエットです。己を鍛えるためにという人もいますが、宗教ならば最後は死んでしまうこともあります。これらは体を鍛えるという本質とは違うように思うのです」
そこで、自身の考えに共感してくれる人を対象に個人指導するフリーのパーソナルフィットネストレーナーになった。当初は、フィットネスクラブに通う主婦たちが中心だったが、徐々に評判が広がり、今では、会社経営者やエグゼクティブクラスのビジネスマン、著名人など、多岐にわたっている。
この度、これまでにないトレーニング本を上梓した。現在、ベストセラーになっている。
「これまでトレーニングについて書かれた本は、フォームがどうとか、肘の角度がどうであるとか、エクササイズ方法が中心でした。やはり生活や仕事に役立つトレーニングでなければなりません。
いまや筋トレはビジネススキルの一種なのです。特にメンタルに大きな変化をもたらしてくれます。そのメカニズムを解説し、続けるための方法も紹介しました
」
今回は、カリスマトレーナーが読者のためにその画期的なトレーニング理論を公開してくれる。しばし山本氏のパーソナルトレーニングを受けてみていただきたい。
今回出版された著書のタイトルは「仕事ができる人はなぜ筋トレをするのか」。その逆に、筋トレをすることで精神的にもたくましくなり、よりいっそう仕事ができるようになるという相乗効果もある。
「仕事のできる人に共通しているのは、話すことに一貫性があること、自分で決めたことが最後までできること、そしてトレーニングが続けられることです。
ある人材派遣会社の社長さんですが、とてもストイックな方でした。自身にも厳しく、社員に対してもスパルタで接します。
朝方の3時ごろまで飲んでいても、朝の6時半からトレーニングを始めるわけです。トレーニングはコンディションを整えてから行なわないとダメなのですが、経営者の多くはせっかちで、こちらの意見を聞かない人も少なくありません。
そこで、そのことを気づかせるようにしました。すると、無理なトレーニングをしても効果は薄く、続かないということがだんだんわかってきたようで、それ以降はしっかりと準備をしてからトレーニングをするようになったのです。これは仕事にも影響し、人のペースに合わせるとか、待つこととかが、結果として人の能力を引き出すことに気づいたようです。
経営者は孤独で、精神的にもかなり疲労している人がいます。肉体を鍛えることで、精神的にも余裕が生まれるのはいくらでもあることです」
心が安定してくると、精神的な能力に好影響を与える。筋トレはビジネススキルのひとつと考える山本氏だが、筋トレをすることで直観力や集中力など、ビジネススキルとしてもっておきたい能力を高めることもできるのだ。
「現代は情報社会です。ITが進歩してその傾向は強まるばかりで、世の中には情報が溢れかえっています。便利である反面、余計な情報に惑わされることもあるのではないでしょうか。
そして、情報を入れすぎると、直感が鈍ってきます。
心が安定してくれば、必要のない情報に惑わされなくなり、ひとつの物事に集中できるようになるのです。集中力が高まるといってもいいでしょう。それと同時に直感力も培われるのです。
仕事をしていると、いくつかの選択肢の中からひとつのものを選ばなければならないことがありますが、最後は直感が左右することもあります。
また、この人を信用していいのか、この会社と取引をしても大丈夫なのかなどと迷うこともあるでしょう。これは一種の危機や危険回避の問題です。まさしくそのときにも直感力が必要となります。
トレーニングをしていると、自分の肉体をリアルに感じることができますから、特に生命の危機に関する直感力をとり戻すことができるのです。
企業もビジネスマンも他社や他人と同じことをやっていては生き残れません。そこで求められるのが企画力です。トレーニングをすれば、クリエイティビティを高めることもできます。
私の場合、新しい指導法や次なる展開などに関するアイデアはトレーニングをしているときに浮かぶことがよくあるのです。これは、私が指導しているクライアントの方々も同じことを言われます。
長時間にわたって企画会議をしても、なかなかいいアイデアが生まれないことはよくあることです。
なぜか。
それはじっとしていると、セロトニン神経が活性化しないからです。脳を爽快、明晰に保つためには、セロトニン神経を活性化させなければなりません。
セロトニン神経は、太陽の光とリズム運動や深呼吸で活性化されることがわかっています。ウォーキングやジョギング、それに筋トレもリズム運動といっていいでしょう。つまり、アイデアに煮詰まったときこそ、トレーニングをすればいいのです。
たばこの煙が充満した会議室では深呼吸もできません。そのような中で長時間会議を続けても、いいアイデアが生まれてこないのは当然のことなのです」