千葉工業大学 未来ロボット技術研究センターの先川原です。今回からロボットの「よもやまばなし」を連載することになりました。肩の力を抜いて気軽にお楽しみください。
AIBOに口がない?
先川原 正浩
プロフィール
1963年、東京都生まれ。1989年より理工書専門出版社にて、主に電気電子系の書籍企画・編集に従事。2000年1月〜2003年5月 ロボット専門誌の編集長。2003年6月より千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター室長。
二足歩行ロボットによる格闘競技大会「ROBO-ONE」の委員会副代表をはじめ、多くのロボットコンテストにて委員・審査員を務める。また、新聞・雑誌・ TV番組・イベント等のロボット関連企画を多数手掛ける。現在放送中のTBS番組「ネプ理科」にゲストとして定期的に出演中。
(記事提供)
日刊工業新聞社・ロボナブル
残念ながらAIBOの販売は終了
なんと、昨年の3月末をもってソニーはAIBOの販売を終了してしまいました。
AIBOの公式ホームページを読んでもらうとわかりますが、ソニーはさまざまな層の消費者に向けたAIBOを販売しつつ、デバイスの機能を高度・拡張化し続けてきたのです。AIBOの進化をもう見ることが出来ないと思うと本当に残念です。
ソニーに確認したところ、他の製品と同様に7年間はAIBO部品をサポートする体制はとるとのことです。しかし、AIBOの公式ホームページはいつ閉鎖されてもおかしくありません。開発スタッフによるAIBOのエピソードなど、面白いコンテンツが豊富にあるのでぜひ一読することをお勧めします。
変形ロボットのプロトタイプ
ロボット専門誌の編集部にいた頃、AIBOのプロトタイプを2度ほど取材したことがありました。一度目は98年12月号掲載に向けてのものでした。同年6月に発表したプロトタイプについて担当者に話を聞いたのです。当時のプロトタイプは脚や尾が胴体部分から分離することができ、車輪モジュールに付け替えて走行できる変形タイプのロボットでした。ソニーが開発したロボット用アーキテクチャー「OPEN-R」の技術をわかりやすく解説するためには、多種多様なモジュールが揃っているほうが良かったのでしょう。この変形ロボットも販売して欲しかったですね。
プロトタイプに口はなかった
二度目のプロトタイプAIBOの取材は99年2月頃だったと思います。記事を掲載したのは4月中旬、その直後の5月にソニーがAIBOの発売を発表したのです。取材では発売時期について「いちおう目標は今世紀中」と聞かされており少々騙された気分にもなりました。もっとも、私だけに本当のことを言えるわけもありませんが。
このときの記事では仕様一覧に「可動部:口部1自由度」と記したのですが、実はプロトタイプに口はありませんでした。もちろん、原稿はソニーの担当者に確認してもらっています。おそらくAIBOの販売を間近に控えて担当者は忙殺、プロトタイプと初代AIBOの仕様を勘違いしたのでしょう。編集部でも仕様一覧と写真とを照らし合わせて確認することを怠ったことが、初代AIBOの仕様を予言するようなことになってしまいました。後に他社の記者から「本当は事前に内緒で製品版を見せてもらったのでしょう?」と言われたことがありますが、断じてそんなことはありません。