働くって正直大変。あわよくば、毎日お布団でゴロゴロしながら時給1万円欲しい。密かに、そんな妄想をしたことがある方もいるのでは?

今回お話を聞いたのは、ひとりが大好きで、ソロキャンプで大ブレイク中の芸人・ヒロシさん。

ヒロシ。2004年ごろ「ヒロシです」でブレイク。ソロキャンプYouTubeチャンネル「ヒロシちゃんねる」は、2020年9月14日登録者数100万人を突破。

今でこそ仕事に成功しているヒロシさんですが、「明らかに向いてないしやりたくない仕事」も、たくさんしてきたそうで……? 仕事を乗り切るコツ、教えてヒロシさん!

ブラックどころじゃない……。命の危険を感じた深夜バイト

──ヒロシさん、「人と関わりたくない超ひとり好き」なのにホストをしていた時期があったそうですね。他には、どんな仕事をしてきたんですか?

ヒロシさん(以下、ヒロシ):ホストもそうなんですけど、色々地獄みたいなバイトをしてきましたよ。とくに印象深いのが、漫画喫茶だな。命の危険を感じるくらいブラックな職場でした。

想像の遥か上を超えるブラックの予感がします

──命の危険……!? どれくらいブラックだったんですか?

ヒロシ:まず、全然辞めさせてもらえないんですよ。辞めますって言ったら「お前、辞めるならバイト募集の広告費を払え!」と怒鳴られたので、やむを得ずしばらく続けたんですけど……。それに、先輩がやたら僕に対して厳しかったんです。

──パワハラ的な感じでしょうか?

ヒロシ:最初は「面倒くさいな〜」くらいに思っていたんですけど、ある日店長室からドカッドカッって音がして。先輩が、店長に殴られてるんですよ。どうやら、僕のことをちゃんと教育できていないという理由でね。

ブラックどころの話じゃなかった……

──それ、犯罪じゃないですか! ヤバい職場ですね。

ヒロシ:もうこれはヤバいと思って、最後は逃げました

──たしかに、それは逃げるしかないかも……

会社を辞めるのに覚悟なんていらない

ヒロシ:ブラックな職場って「お前が抜けたら職場が回らない」とか、洗脳してくるんですよ。でも、そんなの絶対おかしいから。

ヒロシ:真面目な人ほど「辞めたら迷惑がかかる」って考えちゃうけど、辞められない職場なんてない。いざとなったらバックれてもいいんですよ。僕の経験は極端な例ですけど、自分を優先していい。

──「引き止められても、辞めたい気持ちを通していい」と。

ヒロシ:そうそう。罪悪感なんて持たなくていい。会社を辞めるのに、覚悟もクソもないんですよ。

普通の会社員は雇用保険に入ってるんだから、失業手当も出るし。権利なんだから、堂々としてていい。

「(雇用保険を)月々払ってるんだから、失業手当に罪悪感抱く必要なんてないよね」

──正論……。でも実際に辞めるとなると、結構大変ですよね。

ヒロシ:やる気あるのかって話になっちゃうけどさ、本当にしんどくなる前に「どうすれば辞められるか」を探っておくのも手ですよね。ヤバい職場って、外から見るとわからなかったりするじゃない? 入ってから気づく、みたいな。

──会社ガチャあるあるです。しんどくなったとき、辞め方がわかってるとだいぶ違いますね。

ヒロシ:まあ、辞めるにしても続けるにしても、「いつでも辞められる」って心で働いたほうが、仕事ものびのびやれると思うよ。

嫌な仕事は「乗り切る」ではなく「辞める」

──これまでさまざまな困難を乗り越えてきたヒロシさんですが、嫌な仕事はどうやって乗り切ってきたんですか?

ヒロシ仕事なんてなんとでもなるって思うことかな。そりゃ、高収入の仕事を選ぶなら頑張らなきゃいけないんだろうけどさ。しんどい思いをしてまで稼いだお金、一体何に使うの? 

ヒロシ:僕もこれまで仕事も気持ちも浮き沈みがあったからわかるけど、変に乗り切ろうと思うより、嫌なことはどんどん手放していったほうがいいと思うんだよね。

──あ、すごく今っぽい考えですね。

ヒロシ:月20~30万もらうために神経すり減らすくらいだったら、月10万くらいで生活できるところに逃げればいいんですよ。無理に仕事続けてても、ストレスで体壊すでしょ? 

──逃げていいんですか!?

ヒロシ:いいんじゃないですか。我慢して働いて良いことなんて金しかないけど、「若さ」だって財産ですよ。だからこそ、辞めるなら少しでも早いほうがいいと思いますね。

──潔い……。

向いてないことから逃げるために「種まき」を

ヒロシ:あとは、今元気に楽しく働いてたとしても、自分の気持ちがダウナーになった時のために、普段からいろんなところに種まいて、逃げ道を作っとくのは大事だと思う。

──逃げ道、というと? 

ヒロシ:会社を辞めるにしても、生きるためには、稼ぎは必要でしょ? 本当に最低限でいいから、収入を得るためにいろいろ手を出しておくのがいいんだよ。

──なるほど。会社以外から収入が得られるのは心強いですもんね。

ヒロシ:僕のYouTubeもそうだけど、できる範囲でちょっとずついろんなことをやっていけば、どれかがバチン! とハマるときがあるんじゃないかな。いきなり会社辞めて「これ一本で食っていきます!」なんて無理だから、なんでも手広くやるのがいいと思う。僕もいろいろやってたうちのソロキャンプが当たっただけですからね。

──実際に、ヒロシさんはどんな種まきをしていたんですか?

ヒロシ:カフェ経営もしたし、バンドもやったし。「これからは配信の時代だ!」と生配信もやったんですけど、一応全国区で顔が知られてる芸人なのに、2人しか視聴者がいなくてすぐやめました。

──切ない……。心折れちゃいませんでしたか?

ヒロシ:それも、やってみないとわからないことじゃないですか。なんでも手を出しておくと、向いてないことがわかるんですよ。「ヒロシです……」のネタでブレイクした約15年前、テレビの仕事がいっぱい入ったんですけど、ひな壇って戦場なんですよ。僕だけポツンとなっちゃうし、とにかくしんどかった。作家さんが作ったネタをやらされてスベることもあったりして、「もうテレビ出なくていいや」って思うようになったんです。

ヒロシ:事務所から独立して自分の会社を作ったのも、他人と働くのが苦手だからだし。それが結果的に、すごく良かった。

──向き不向きを知るって、シンプルだけど大切ですね。

ヒロシ:そうですね。ソロキャンプ以外にも、上手くいったこともありますよ。

さくらももこさんのエッセイに憧れて、頼まれてもいないのに文章を書いていたんですけど。それがきっかけで、本を出版できたんです。

──たしかに、それは「種まき」があったからこそ…!

ヒロシ:声がかかるまで待っていたら、実現しなかったと思う。なんでもやっておくもんですね。

今年の12月にそのエッセイが文庫版になるそうです。

「勇気」と「根拠のない自信」があれば食っていける

ヒロシ:あとさ、いろいろ仕事しているからこそ思うんだけど、世の中には本当に仕事できない人も、結構いるじゃない?

──本当に仕事できない人…?

ヒロシ:こういうインタビューの時も、こっちが原稿全部書き直すライターさんもいるんですよ。そういう人を見るとね、「世の中、苦手な仕事でも意外と食えるもんなんだな」って、むしろ元気が出るんだよね。

──私からはなんとも言えないんですが……すごい持論ですね。

ヒロシ:文章書けないけどライターとして生きてるその人だってさ、「ライターになりたい!」って、どっかで勇気出したはずなのよ。勇気出して飛び込んじゃえば、仕事くらいなんとでもなるんだなって思いますね。やっぱり、勇気と根拠のない自信って大事ですよ。

──あ、ちょっといい話になりました今。

ヒロシ:人間、いろんなことをやるために「根拠のない自信」っていう機能が備わっているんじゃないかな? とも思うくらい。「好きを仕事に」もなかなか厳しい時代だけど、遠慮せず、なんでも気楽にやっちゃえばなんとかなるんじゃないですかね。

ヒロシ

1972年熊本県出身。1995年、会社員を経て芸人となる。29~31歳まで歌舞伎町でホストの職に就く。2004年ごろ「ヒロシです」でブレイク。自ら撮影・編集したソロキャンプ動画をアップするYouTube「ヒロシちゃんねる」が登録者数100万人突破。最近では、オリジナルキャンプブランド『NO.164』を立ち上げた。著書『働き方1.9〜君も好きなことだけして生きていける〜』『ヒロシのソロキャンプ』発売中。12月11日には『沈黙の轍~ずんだれ少年と恋心〜』(だいわ文庫)より発売!

Twitter:@hiroshidesu0214

取材・文/小沢あや(@hibicoto
写真/鈴木勝