「もし、運を自在に操ることができたら…」。そんな妄想を抱いたことはないだろうか。それができれば、人生も思いのままにちがいない。

それに近いことをしてきたスゴイ人がいる。15年間ギャンブルで勝ち続け、世界を旅してきたプロギャンブラー、のぶきさんだ。

15年にわたり運と正面から向き合い、運を味方にしてきた彼に、「運の上げ方」をズバリ聞いてみた。

運をマネジメントして「勝率9割」の境地に

Dybe!編集部男性記者

編集部

のぶきさんは15年にもわたって世界のカジノを渡り歩き、そこで勝ったお金だけで世界中を旅して周ったそうですね。

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

はい。

ざっくり言うと最初の5年間はブラックジャック、その後の10年間をポーカーのプレイヤーとして勝負しました。訪れた国は、82カ国。入国した数でいえば、延べ250カ国になります。

ドイツ・バーデンバーデンのカジの写真
※世界250カ国を旅して周り、様々な国のカジノで勝負してきたのぶきさん。写真はドイツ・バーデンバーデンのカジノ。カジノによって趣が異なるそう。
Dybe!編集部男性記者

編集部

に、250カ国!? 世界中のカジノを道場破りしていく、みたいな感じだったんですか?

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

まあそれに近いかもしれません。カジノで稼ぎすぎたら、旅をメインの軸としながらワールドワイドな視野や語学を学び、お金が尽きたらまたカジノで稼ぐ、という感じでしたね。

スペインのトマト祭りにて、若者と一緒に盛り上がるのぶき氏
※スペイン・バレンシア州のブニョールという街で、8月の最終週に行われるトマト祭りに参加。トマトまみれ!
Dybe!編集部男性記者

編集部

一時的ならまだしも、カジノでそんなふうに勝ち続けることなんて可能なんですか?

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

ギャンブルは数学です。努力しまくれば、それも可能になります。

僕の場合、最盛期の1年間は勝率が9割に達しました。10日やったら1日だけマイナスで、残りの9日はすべてプラスになるという。

Dybe!編集部男性記者

編集部

そんな「週刊少年ジャンプ」のような世界が本当にあるんですね…。

15年間もギャンブルで生活されてきたので、今回のテーマである「運」には誰よりも精通していると思います。ぜひ運を制して高める方法を教えてください。

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

わかりました。では結論から言ってしまいましょう。

運を最大に高める秘訣はズバリ、「運という概念を捨て去ること」です。

Dybe!編集部男性記者

編集部

え~と、いったいどういうことでしょうか。

「流れがいい」や「流れが悪い」は全て錯覚!

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

未来の運に対し、運がいいかもとか、運が悪いかもという概念を捨て去ることです。では、逆に訊きましょう。そもそも運は本当にあると思いますか?

Dybe!編集部男性記者

編集部

たとえば、毎日通る道の信号は、運が良ければ青信号で渡れるし、運が悪ければ赤信号で待たなくてはいけない。仕事も、運が良ければいい上司にあたるし、運が悪ければウザい上司にあたる…。

やっぱり、運はあるのでは?

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

ですよね。おっしゃる通り、運そのものは確かに存在します。

では、そんな運を「読む」ことはできると思いますか?

Dybe!編集部男性記者

編集部

今は流れがいいから成功しそうとか、逆に流れが悪いから失敗しそうとか、なんとなく読むことはできますよね。

のぶき(本名:新井乃武喜)
のぶき。1971年生まれ。25歳の時にプロギャンブラーを志し、2年間の修業でギャンブルの必勝法を体得する。以来、世界中を巡って15年間ギャンブルで勝ち続ける。現在は執筆や講演、メディア出演などを中心に活動。
のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

ここではっきり伝えておきましょう。

“運の流れ”というのは全て、錯覚です。運とはランダムに生じます。いかなる場合でも、コインの表と裏が出る確率は1/2ずつです。

たとえば良いことと悪いことが、それぞれ1/2ずつの確率で起こるとします。もし悪いことが3回続いたとしても、それは決して「運の流れが悪かったから」というわけではなく、1/2×1/2×1/2=1/8の確率で起こることがたまたま起こったにすぎません。週に1日くらいの頻度で、よく起こることです。

つまり運の良い/悪いが出る確率は常にリセットされ続け、それまでの結果が考慮されることはない。常にランダムだから、運を読むことも不可能なんです。

世界に1人でも運を読める人がいたら、宝くじという運任せのギャンブルは存在できないのです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

なるほど。でもやっぱり、ツイてない時は、ツイてないことが続く気もします。あれはネガティブなモードになっていて、悪いことばかり目に付きやすくなっているだけなんですかね。

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

それもあるでしょうね。

あとは“負のスパイラル”に陥っている場合も往々にしてあります。

Dybe!編集部男性記者

編集部

負のスパイラルですか?

人がスランプに陥るときのメカニズム

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

そもそも勝負というものには、運と実力の両方が関わってきますよね。そこで運と実力の度合いを、0から9までの数字でそれぞれ表してみます。そして勝負に勝つには、運と実力の合計値が10以上になる必要があるとします。

Dybe!編集部男性記者

編集部

運が6で実力が4なら合計10で勝ち、運が3で実力が6なら合計9で負け、ということですね。

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

そうです。実力は努力すれば少しずつアップし、運はランダムで生じます。

もしここにプロ野球のピッチャーがいるとします。彼は実力が7なのに、その日はたまたま運が2しかなく、負け投手になってしまう。彼は負けたことに落ち込み、フォームを少し変えてみようと試みる。

でも「7」という実力は出せているわけだから、本来はフォームをいじる必要はなかった。いじることで実力が5に落ちてしまい、運が前回より倍の4でも、次の試合ではまた負けてしまう。そして落ち込み、考え込み、またフォームをいじってしまう。すると実力がさらに落ち、より負けが込んでいく…。

まさにこれが負のスパイラルです。そう、スランプとも呼びます。

Dybe!編集部男性記者

編集部

ああ、それはアスリートだけでなく、一般人でもすごくありそうなことです。

それだけ運はデリケートでコントロールが利かないものなのに、とりわけ運の要素が大きなギャンブルの世界で、のぶきさんはなぜ“勝率9割”を達成できたのでしょう?

運を味方につけるために、今すぐできる3つのこと

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

僕が勝率9割の境地に達した理由。それはギャンブルのことにあらゆる時間を注ぎ込んで努力しまくった結果、 実力が「9」へたどりついたからです。

僕は数学理論をベースにしたギャンブル必勝術を2年間かけて体得しました。専門の洋書は800冊以上も読みました。要は確率論なんですが、ブラックジャックでいうと、場に出たカードを覚えておき、残っているカードから勝率をはじき出す。勝率が低いときは少額しか賭けず、勝率が高いときは一気に高額を賭ける。2年間努力し続けてそれを瞬時に計算できるようになったことで、僕の実力が「9」に達したというわけです。

実力が9だと、運が1以上あれば勝ちとなります。唯一負けるのは、運が0~9のうち「0」のときだけです。10日に1日くらいは運が「0」の日があったために、勝率9割だったのです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

なるほど、そういうことか! 

でも、結局こうなりますよね。勝負に勝ち続けるには、気まぐれな運には頼らず、確実性の高い“実力”を身に着けるのが何よりだと。正論でしょうが…なんか、身も蓋もありません。

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

確かに実力は今すぐ急に高められるものではありません。

でも、 運を制するために「今すぐ実践できること」はあります。それを紹介しましょう。まず1つ目は、 「運に一喜一憂しない」こと。

Dybe!編集部男性記者

編集部

一喜一憂しない。それはなぜでしょう?

“今すべきベストなこと”に全勢力を傾ける

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

たとえば、「すごくいい結果が出た!」と言ってしばらく遊んでいては、その間に逆転されます。プロスポーツ選手が勝利した後、ちやほやされることで陥りやすいトラップです。僕流の格言があります。 「遊んでいる人は、いま努力している敵と出会った日が命日になる」

逆に「ひどい結果だ…」と落ち込んでやる気をなくすのもNGです。それでは勝者との差は広がるばかりです。

要は一喜一憂することが往々にして、“次の勝負の敗因”になってしまう。一喜一憂している間に、もう次の勝負は始まっているのです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

確かに…。

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

そして一喜一憂する代わりに、勝負を終えたら勝っても負けても 「自己反省会」をします。これが2つ目です。ポーカーのトッププロは、必ずミスが2~3個あったと仮定し、改善点を探します。いわゆる「コンティニュアル・インプルーブメント=継続的改善」です。

常に改善し続けることで、実力が少しずつ積み上がり、次第に運の数値が低くても結果が出やすくなります。

Dybe!編集部男性記者

編集部

常に“改善”の視点を持ち続けて実行するということですね。

でも…その改善がうっかり改悪となり、さきほどの“負のスパイラル”に陥ってしまう可能性もあるのでは? それを避けるには、どうすればいいでしょうか。

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

きちんと分析をすることですね。改善点を思いつくだけ書き出し、視覚化します。

そしてその中から本当に必要と考えられるものを実行するのです。それと、改善の中には改悪も混ざりかねないというのを認識しておくことも大切です。そうすれば、改悪になってしまった場合でもそれに気づき、元に戻せるでしょう。

Dybe!編集部男性記者

編集部

なるほど!

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

そして、すぐに実践できることがもうひとつあります。

それは、 目の前のことに全力で取り組むことです。自分の貴重なリソースを余計なものに費やさず、今やるべきことに全勢力を傾けるのです。

結果に一喜一憂するのをやめ、その分のリソースを「反省し改善すること」と「今やるべきこと」に全て注ぎ込む。こうすることで実力が積み上がっていき、結果も出やすくなる。そして 結果が出ることで楽しくなり、よりがんばれるようになる…。

Dybe!編集部男性記者

編集部

それは言ってみれば、負のスパイラルとは真逆で 「正のスパイラル」ですね! 

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

そうですね。ひとたびこの状態に入ってしまえば、あとは続けるだけで自然と勝率が上がっていきます。

Dybe!編集部男性記者

編集部

どれも決して楽なことではなさそうですが、原理はとてもシンプルなので、ぜひひとつずつトライしてみたいです。

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

要は、一喜一憂するかわりに、勝つためにできることを本気で淡々とやり続けましょう、ということですね。

そうすれば、仕事でも勝率9割の境地に達すると考えています。

のぶき(本名:新井乃武喜(あらい・のぶき))

1971年生まれ、東京都出身。大学を卒業後、25歳の時にプロギャンブラーを志し、2年間の修業でギャンブルの必勝法を体得する。以降は世界のカジノで勝負し、勝ちすぎて各所で出入り禁止に遭い、ブラックリストに挙げられながらも、勝ったお金で世界を旅して周るという生活を15年間続ける。訪れた国は計82カ国。東日本大震災のボランティアで一時帰国したのを機にさまざまな依頼が殺到し、現在は執筆や講演、メディア出演などを中心に活動する。著書に『勝率9割の選択』『ギャンブルだけで世界6周』。

Facebook: プロギャンブラ のぶき

取材・文/田嶋章博(@tajimacho
撮影/小森 慧