ペヤングはいつから変わってしまったのか? 悪いオトナに騙されているんじゃなかろうか?

1988年、東京生まれの筆者からすると『ペヤングソースやきそば』はカップ麺の中でも王道の商品という印象であった。

シンプルな文字だけのパッケージは他と比べると少し古風ではあったが、コンビニやスーパーに必ず置いてあった。

そして、ペヤングはあの白いパッケージのやきそば以外の商品を見たことがない。

それが筆者のペヤングのイメージである。いや、ペヤングのイメージ”だった”。

しかし、現在のペヤングはどうだ? 超デカいサイズであったり、めちゃくちゃ辛いやつだったり、アップルパイ味だったりと、Youtuberが喜びそうな、若作りをしているかの印象さえ受ける。

野菜の……世界!?

どうしたペヤング!? 芸風変えた? 事務所変わった??? 悪いオトナに騙されてない????

ということを考えていたら、Dybe!編集部より「ペヤングを販売しているまるか食品様に取材してみませんか?」とお声がけいただいた。

まるか食品本社は群馬県伊勢崎市にあります。

これはまたとないチャンス! ということで、今回、まるか食品の商品開発部の方にお話を伺いました。

話を聞いた人

小島裕太さん。まるか食品製品開発課所属。群馬県生まれの群馬県育ち、2011年に入社。

取材はZOOMで行いました

──本日はよろしくお願いいたします。改めてまるか食品様のWEBサイトを拝見したんですけど、ラインナップはほぼやきそばですね。インスタントやきそば一本で運営しているという認識でよろしいでしょうか?

小島裕太さん(以下、小島)“ほぼ”インスタント焼きそばの会社です(笑)。袋麺も製造していないんですよ。他には『ペヤングヌードル』というカップラーメンも販売しているんですけど、主に東北地方で人気となっているカップ麺です。

──ペヤングヌードル……。スイマセン、見たことありませんでした。

東北地方ではフツーに買えるそうです

──公式サイトに従業員数が135名と記載されていて驚きました。ペヤングって全国に知られていると思うんですけど、失礼ですが知名度と会社規模が合っていないような印象を受けてしまいました。ペヤングはどのようにして今の知名度となったのですか?

小島:弊社はカップやきそばというジャンルにおいて、他社と比べてかなり早く発売できたのが要因のひとつだと思います。1975年に発売し、すぐに大ヒットとなり46年たった今でもロングセラー商品として、たくさんの方に愛していただいています。

1975年の発売当時から味は変わっていないそう。昔の容器は2層になっていて分解できたの覚えています?

小島特に関東地方においては、弊社は本社も工場もずっと群馬ですので、カップやきそば=ペヤングの印象をお持ちいただけているのかなと思います。

──「東のペヤング、西のUFO」みたいなフレーズを聞いたことがあります。

小島:前述の通り営業活動も関東近郊が主だったので、それ以外の地域は弱かったんですよ。特に関西は強いメーカーさんがおりますし、弊社の関西営業所ができたのも2010年頃ですからね。西側への積極的参入はかなり遅いんです。

東京出身の筆者からすると、ペヤングを知らない人がいるというのは少し不思議な感覚だ。しかし、そのペヤングは予期せぬ理由で全国的に知られることになる

「社長の思いつきにビックリさせられますよ」

──それでは本題に移りますが、ペヤングといえば「保守的で孤高」というイメージだったんですけど……。最近、奇抜で目立った商品を大量に出してますよね? なぜ、こんなことになってしまったんですか? いつからなんですか!?

小島:それは……、2012年2月発売の『激辛やきそば』がキッカケですね。

現行品の激辛やきそば

──覚えています! 確かにこれは衝撃的でした! 辛すぎて、必ず牛乳と一緒に食べていた記憶があります。

小島:はい、これでやりすぎてしまったんですよ。というか、やりすぎを“させられた”というか……。

──させられた?

小島「社長の思いつきだった」っていうのが、正直なところなんです(笑)。企画会議で社長が「激辛のやつを作ってみたい!」というので、ある程度の辛さで試作品を作り試食会をしたところ「ダメ! 食えないくらいの辛さじゃないと激辛じゃない! やり直し!」となりまして。それで、このやりすぎな辛さになったんです。その提案にはビックリしましたね(笑)。

美味いけど辛ぇ〜〜〜!!(箸を全て洗い中だったのでフォークで失礼!)

──ギリギリ完食できるかできないかくらいの辛さですよね。コンビニで手軽に買えていい辛さは余裕で超えていたと思います。

小島:ただ、やりすぎたお陰で「辛すぎる商品」ということで話題になったんですよ。口コミで広がり、メディア等の取材も多数受け、日テレの『月曜から夜ふかし」にも紹介されました。カップ麺の新商品が生き残る確率は3%っていわれているんですけど、これは今でも売れていて弊社の定番商品になりましたね。

──なぜ、社長さんは急にそんな冒険をしたんですかね?

小島:社長は「ウチはペヤングソースやきそばっていう超ド定番を持っていて、失敗できる環境が整っているんだから、冒険しないともったいない!」っていうスタンスなんです。だからやりすぎたんだと思います。

──ええ!! めちゃめちゃいい考え方じゃないですか!! 大手だからこそ出来るベンチャースピリットというか。それ以降はマーケティングや広報にも力を入れて、あえて変わった商品を出しているという感じなんですかね?

小島:いや、マーケティング的なことは外注も含めて一切してません。なんなら商品開発部はデザイナーも含めて4人で、広報も兼任してるくらいですよ。

──え〜! これだけ有名なメーカーなのに、戦略を考える部隊はいないんですか?

小島:そうですね。なんなら新商品発売のプレスリリースも基本的に打ってません。自社のWEBサイトとツイッターに載せてるだけなんですよ。

──ちょっと待って下さい? 新商品って、市場の動向を読んで、商品開発もトライ&エラーを重ねて仕上げて、宣伝を仕込んで、メディア露出計画を立ててって……、じっくり時間を掛けて成功を確実にしていくものじゃないんですか?

小島:ウチは違いますね(笑)。なんなら2ヶ月後に発売って商品もありましたから。企画会議で「それ作ろう!」ってなった2ヶ月後にコンビニ等に並んでいるって意味での2ヶ月です。

──ウソつかないでください!(笑) それデータ入稿可能な印刷物とかの納期じゃないですか!!!

小島:企画会議に社長が参加しているので稟議も必要なし。味が確定したら、自社工場で即生産パッケージも社内デザイナーだから話が早い。確かに他のメーカーさんじゃできない早さですよね(笑)。

──いやいやいや……、それにしても早すぎませんか?

小島麺は基本のソースやきそばと同じものを使用するからっていうのも理由の一つですね。商品によっては、さほど作業工程にも変化がないのも早く動ける理由の一つだと思います! まあ、でもウチしか出来ないかな〜?

──そうか……。いや、それにしても2ヶ月は異常ですよ!

激辛は分かる。でも、それ以降は……ふざけてません?

──ペヤングの挑戦的なスタンスと、それを可能にしてる社長さんのことは分かりました。最初の激辛はジャンルとしても確立されているので、発売した理由は理解できるんですよ。ただ、最近のペヤングって、『アップルパイテイスト』とか『チョコレートやきそば』とか『もち麦MAX』とか……。なんというか「本当に『売れる!』と思って企画しているの?」と問い詰めたくなる商品も、申し訳ないんですけど……あります。

小島:あはは、そうですよね(笑)。まあ、基本は社長のアイディアが発端です。

──俄然、社長さんが気になってきました……。今のところ、僕の社長さんのイメージは

  • めちゃめちゃプロデュースが上手で、メディアが取り上げたくなるツボを抑えている策略家

もしくは

  • 「こんなんあったらおもろいやん! やっちゃえやっちゃえ! ガハハ」って感じの、気のいい昭和の社長タイプ

のどちらかだと思っていますが……、果たして?

ペヤングの社長、このどちらかだと思う!

小島:うーん……、どっちも正解ですね。

──どっちもなんですか(笑)。

小島:ただ「失敗してもいい」っていうスタンスが社内で共有できているというのは間違いないです。最終的に「ノーマルのペヤングソースやきそばに還元されればOK!」って感覚なんですよ。実際、ありがたいことに売上は毎年上がっていますし。そのスタンスのおかげか、Youtuberさんも積極的に紹介していただけるようになり、ペヤングの知名度は全国的に広まったかと思います。

──……もしかして、あえて変わったことをしてメディアに取り上げられることで、ペヤングの名前を売るっていうガハハのフリして実は策略家タイプなんですか!? だとしたら、世の中の人々は完全に社長さんの手の内ですよ!

小島:いや〜、でもここまでの注目は想定していなかったと思います(笑)。

──天然なんですか!? そんな”野生児パワーヒッター”みたいなコトあります?? YouTuberウケも狙ってやっているもんだと思っていました!

小島:そもそも激辛やきそば発売の2012年頃って、Youtuber発のブームが今のようにメジャーな現象ではなかったと思います。だから、元来の素質によるものじゃないですかね? ネットがない世界だとしても、こういう商品の開発はやっていたと思いますよ。

──ええ!? 考えてるのか考えてないのか分からなくなりました……。噂で「2014年に発覚した異物混入事件のGoogle検索サジェスト浄化のため、変わった商品を出し続けている」っていうのも聞いたことありますが、2012年からってことは都市伝説に過ぎないんですね。

小島:それは明確に否定しておきたいですね。

──公式のコメントがいただけてよかったです。

小島:ただ、激辛やきそばの成功で、そのへんのリミッターが壊れてしまったってのはあるかもしれません(笑)。

取材にあたり発売済み商品リストをまるか食品様より頂いたのですが、1988年の時点で『学校のソバのラーメン屋さん』というカップ麺を発売していた。これって今流行りの町中華なのでは? 昔から意図せずにウケるアイディアを思いつくメーカーなのかもしれない……。

ギガマックスが売れるとは思っていませんでした

──小島さん的に「こんなん売れるわけねえよ!」って思いながら、開発していた商品もあるんですか?

小島:うーん、GIGAMAXですかね?

──YouTuberがこぞって挑戦していた大きいサイズのやつですね!

小島:2倍の超大盛りはまだ「食べられるサイズ」だと思うんですけど、さすがに4倍はふざけ過ぎだと思っていました(笑)。社長的には、コンビニで超大盛りとおにぎりを買っている人を見て「まだ食べれんじゃん!」となったらしいんですけど……。

ただ、こちらは発売当初から取材依頼をたくさん頂きまして、日本食糧新聞の優秀ヒット賞にも選ばれたんです。今は更にその上のペタマックスまで出しています。今は営業からは「奇抜な商品ほど売りやすい」とも言われるんですよ。ドン・キホーテやヴィレッジヴァンガードなどスーパー・コンビニ以外の販路も拡大しました。

実際のペタMAX。高いプラモデルの箱くらいデカいやんけ!!

小島:むしろフツーの美味しいものは売れないんです(笑)。『ペヤングポテトやきそば』はバイヤーさんに「美味しいの出しちゃってどうしたの? ペヤングらしくない!」と残念がられましたから!

美味しいのに売れなかったそうです

──美味しいと残念がられるって、価値観がねじれてしまってますね(笑)。

小島:そうなんですよ! 他にも弊社の商品ってパッケージに商品写真をほぼ使っていないんですけど……。

──そこも気になってました! すごくシンプルですよね……。ものによっては「もっとやりようあっただろ!」って感じるものも正直あります(笑)。

小島:食欲をソソる写真をパッケージに載せるっていうのが業界の常識なんですけど、これも取引先から「パッケージにこだわるのはペヤングらしくない!」って怒られるんです(笑)。なので、基本は文字だけ、もしくはイメージ画像を載せるだけといったシンプルなパッケージですね。

──全国展開してるメーカーが邪道を求められることってあるんですね……。そんなペヤングであれば、ボツとなる商品はない気がします?

小島:それがね、あるんです(笑)! 『ソーダ味』はお蔵入りになりました。

ソーダ!?!?!?

小島:青色のソースも開発したんですけど、ソーダ味に近付けば近付くほど美味しくなくなっていくんです。温かいソーダ味はどう工夫しても美味しくなりませんでしたね……。

さすがのペヤングも「美味しくならない商品は世に出さない」というボーダーラインがあることが判明しました。でも、そこまで言われると気になっちゃうな、ソーダ味……。

天然か? 策略家か? 答えは?

──他社ではできないことを「ペヤングはそういうブランド」って認知を得て、やりたい放題しているのは企業としてすごく面白いですね。なんというか、社長さんの事がどんどん気になってしまう取材でした。社長さんはこういったメディアに露出することはあるのでしょうか?

小島:基本、前に出ないんですよ。「俺はいいから若い人が出て!」っていうタイプなんです。

──いつかよきタイミングで社長さんのインタビューも聞いてみたいです。最後に、もしよろしければ現在開発している新商品がありましたら、教えていただいてもよろしいですか?

小島:そうですね、今、開発中なのは「蕎麦粉の入っていない蕎麦風やきそば」ですね。

──……すいません、全ッ然、頭に入ってこないのですが……。

何を言ってるんだ?

小島:立ち食い蕎麦とかの蕎麦あるじゃないですか? あの味を蕎麦粉を使わずに再現したやきそばです。

──……ついにインスタント食品も縛りプレイに可能性を見出したんですか?

小島:いや、これも社長のアイディアなんですけど「蕎麦アレルギーの人って蕎麦の味を楽しめないよね? じゃあ、蕎麦粉を使わずに蕎麦が再現できたらいいよな。作ってみようか?」ってことで現在開発中なんです。

こちらが現在開発中の『ペヤングやきそばなんちゃって蕎麦風』の画像

──アレルギーの代用食的なアイディアってことですよね? アイディアの発端はものすごくいい話だと思うんですけど、蕎麦でなくやきそばなんですよね……?

小島:そうですね、ペヤングなので……。

──ごめんなさい……。この取材を通してペヤングの事をより好きになったのは確かなんですけど、それと同時に策略家なのか、天然なのか余計分からなくなってしまいました……。いや、褒め言葉なんですけどね! ありがとうございました。

取材をした上でこういう結果となりました……。

これはホント。

皆様も今後のペヤングの「天然なのか、策略なのかよく分からない経営」に注目していただきたいと思います。こういう社風の会社が誰も気付かなかった金脈を見つけるような気がしてなりません。

新商品の『ペヤングやきそばなんちゃって蕎麦風』、ぜひ買おうと思いましたね! 楽しみです!!

最後までお読みいただきありがとうございました!

取材・文/おおきち(@ookichiinmyhead