‘17年のバースデー・イベントでは2日間で1億円の売り上げを記録、全国から女性ファンが連日のように来店するなど、日本一のキャバクラ嬢の名を欲しいままにしている小川えりさん。

今やTVや雑誌の取材が殺到し、初めての著書「指名され続ける力」は発売1ヵ月で3万部を突破、その勢いは止まらない。

エンリケという愛称で親しまれる彼女だが、キャバクラで仕事を始めた当初はまったく指名が取れず、仕事は先輩のヘルプばかりだったという。

「長かった」と振り返る不遇な時代。カラコンもネイルもピアスもせず、メイクもいたって普通。色恋営業は一切しないという「キャバクラ嬢らしくないキャバクラ嬢」はどのようにしてダントツの営業成績を収めるに至ったのか? そのパワーの源に迫ってみた。

エンリケ(小川えり)
小川えり(おがわ・えり)。エンリケの愛称で人気の現役キャバクラ嬢。女性の支持率が高く、その人気は全国から女性ファンが連日のように来店するほど。2017年のバースデーイベントでは、2日間で1億円を超える売り上げを記録した。

日本一売り上げるキャバ嬢、エンリケにも売れない時代があった

東海地方で指名数、来店数ともに7年連続ナンバーワン、インスタグラムのフォロワー数は20万人を超え、男性のみならず全国から女性ファンが続々と「エンリケさんに会いたかった」と来店する驚異のキャバクラ嬢、エンリケさん。

年間1000本以上と、日本一ドンペリを飲んでフランスの「モエ・エ・シャンドン」本社から表彰され、FENDIからは上顧客としてイタリア・ミラノでのファッションショーに招待されるなど、その活躍は国内にとどまらない。

しかし、そんな彼女にもドン底時代はあった。18歳でこの世界に入って4〜5年は思うような成績を上げることはできなかったという。

「キャバクラに勤めている中学校時代の先輩から『休みたいから代わりに行って』と頼まれ、しかたなく行ったのがキッカケです。あまり気乗りはしていなかったんですけど、その時ついたお客さまに、『もう少しここにいて』と場内指名をもらったことがうれしくて、この業界入りを決めました」

最初に入店したのは名古屋一の繁華街・栄にあるお店。たくさんのキャバ嬢が在籍する大きな店で、行列ができるといわれるほど繁盛していた。しかし、仕事といえば先輩のヘルプばかりで、なかなか自分のなじみ客を開拓できなかったという。

「たまにフリーのお客さんにつかせてもらっても、『顔が気にくわないから代わって』とチェンジされたこともありました。40人くらいいるお店のなかで真ん中くらいの順位が続いたんです。お店の先輩から私に指名を変えたお客さまがいたんですけれども、カゲで指名を阻止しようと工作されたこともありましたね。仲のいい同僚の子に人気が出て差をつけられたときは切なかったな」

「この仕事はムリかもしれない」と思ったあの日のこと

エンリケ(小川えり)

それでも地道な努力を続け、指名客が少しずつ増えてきたある日、エンリケさんは新しいお店へ行くように言われる。そこは少し上の年齢層をターゲットにした高級店。やっと常連になりかけたお客さんも、料金の高さに気軽に来られなくなってしまった。

「来客数の少ないお店で、ヒマになると店側はキャストの女の子に余分な時給を払いたくないため早帰りさせるんです。午後9時にお客さまと同伴で入店して10時にお帰りになると、私も『もう上がって』と言われる。慣れる間もなく4日連続早帰りが続き、あの時だけは“仕事を変えようかな”と真剣に悩みました」

退店を決意したエンリケさんは、契約期間が満了するまでの2ヵ月間をしっかり勤め上げ、現在の「アールズカフェ」に。22歳の時だった。

「最初のうちは周囲に気を使い、おとなしくしていました。でもお客さまに『同伴の時はおもしろいのに、店に来るとつまらなくなる』と言われ、素の自分をそのまま出すスタイルで接客してみたんです。『待っとったがや~。元気ぃ?』みたいに名古屋弁全開でお迎えすると大受け。人気が出るキッカケをつかみました」

カラを破って素の自分を出したエンリケさんは、SNSでもブレイクする。

「お店で着ぐるみを着たり、変顔したり、踊ったりしている姿をアップして、本来のひょうきんでアホな私をさらけ出したんです。中でも、’15年12月23日にアップしたシャンパンの瓶を丸ごと一気飲みする動画は拡散して話題になり、エンリケ=シャンパンというイメージができました。鼻から炭酸を出しながら飲むんですが、危険なのでマネしないでくださいね(笑)」

こうして、SNSを見た人が新たにお客さんとして来店するというサイクルができた。SNSでエンリケさんのファンになった女性が全国から来店するのも、いつも飾らない姿を見せているからこそだろう。

歌いながらタメ口で接客できるのも、徹底して基本を身につけたから

SNSのフォロワーが急上昇するにつれTVなどからもオファーが掛かるようになり、エンリケの名前は全国区となる。しかし、彼女自身、売れていない時からやっていることは変わっていないという。

「下積み時代と変わらず地道にコツコツと目の前のお客さま一人ひとりに応対します。どんなお客さまであっても態度は変えません。今でははっちゃけて『エ、エ、エンリケ。エンリケ空間』なんて歌いながらタメ口で接客していますが、やはり基本は敬語。礼儀やマナーも身につけているつもりです」

キャバクラというとカジュアルなイメージがあるかもしれないが、一流店となるとその接客ルールは厳しく繊細なもの。基本を徹底して身につけているからこそ、エンリケ流の崩した接客をしてもお客さんに失礼に当たることがないのだ。

「どんな仕事も同じだと思いますが、下積み時代には勉強すべきことがたくさんあります。それに、私もそうだったように、努力したからといってすぐに結果が出るわけでもありません。だからといって、あせる必要なんてないですよ。早く上に行けば崩れるのも早い。じっくりと時間をかけて築いていくもののほうが崩れにくいんです」

お客さまの「ありがとう」のために徹底した気配りを

エンリケ(小川えり)

ネットやTVのイメージから、エンリケさんはいつもバカ騒ぎしているイメージを持たれがち。しかし、そのスタイルの根底には常に「お客さまに楽しんでもらいたい」という想いと気配りがある。

私がこの仕事をしていて一番うれしいのは『楽しかった。ありがとう』と言われること。お客さまはお金を使ってくださるので、私のほうから『ありがとう』を伝えなくてはならないのに、逆にそう言ってくれるお客さまがいるんです。そんな方に満足して帰ってもらうため、できることからやっていこうと思っています」

そのためには仕事仲間とのコミュニケーションにも細心の注意を払う。

私一人では何もできませんから、仕事には周りの力が必要です。でも、同じ場所で働くスタッフを叱らなければいけない局面ってありますよね。そういった時は電話やメールじゃなく、必ず相手の目を見て、『いつもありがとう』という感謝の言葉を添えた上で話を始めるように心がけています」

また、あらゆる仕事と同様に、キャバクラの仕事でもお客さんとのトラブルはつきものだ。

「トラブルは未然に防ぐことが大切です。帰りを急いでいるお客さんがいて、会計が混んでいるときなど自らキャッシャーへ走っていきますし、タクシーの手配も自分で行います。ヘルプの女の子がお客さんを怒らせても、その子を席につかせた私に責任があります。ですから、一緒に働く子のその日の体調にも気を配っています」

仕事にプライドなんて必要ない

それでも、仕事をしていると、どうしてもお客さまを怒らせてしまうことが出てくる。そんな時はどう対応するのだろうか。

「たとえば伝票のミスでお客さまに間違えてお会計をさせてしまうことがありました。お店側のミスなんですけれども、お客さまにお見せする前に目を通さなかったという点で私の責任。ミスやトラブルは人のせいにせず、私がすぐに謝ります

はっきりした原因がなくお客さんに怒られた場合や、お客さんの勘違いだった場合でも、必ずコミュニケーションを取って必要だと思えば謝るという。

私の小さなプライドなんて、仕事には必要ないんです。私は悪くないと思っても、お客さまの考えは違うはず。お客さまの気持ちを汲み取れなかったのは、私の至らなさから。接客業をしている以上、それはミスなんです。たとえ、お客さまの勘違いがあったとしても、それを指摘すればお客さまの顔を潰してしまう場合もあります。謝るのは最も難しい仕事の一つですが、うまく謝ることができればお客さまの信頼を得ることにもつながりますよ

仕事のストレスは仕事でしか消せない

多くの人を相手に気を使い続ける生活にストレスはつきものだ。しかし、エンリケさんはストレスを翌日には持ち越さないという。 

「ストレスは人間関係の緊張で生まれます。仕事での人とのあつれきはカラオケへ行って騒いだところで、なくなるわけではありません。仕事のストレスは仕事でしか消せないんです」

「お客さまとの行き違いなど、ストレスの原因になることはその日のうちに解決します。さっきの話にも通じますが、謝る時はスピードが大事。もちろん、トラブルになりそうなことがあれば、先回りして火種を消します。気づく心とスピード、そして誠心誠意の対応が、お客さまの満足だけでなく、私のストレスを減らすことにもつながると思っています」

少しは人の役に立てているという実感が原動力になる

エンリケ(小川えり)

週7日出勤を宣言して、毎日お店で元気いっぱいの素顔を見せ続けるエンリケさん。「疲れた」は禁句だと言う彼女が、そこまで仕事に打ち込めるエネルギーの源は何なのだろう?

「この仕事を始めた理由はお金が欲しかったから」というエンリケさんだが、SNSでいろいろな人とコンタクトできるようになるにつれ、価値観が変わってきたという。

「見ず知らずの方から『仕事でつらいことがあったけど、エンリケさんの動画を見て元気をもらいました』、『自殺しようかと思い悩んでいたけど、はっちゃけた投稿を見ていてなんだか吹っ切れた』というようなコメントをもらうようになりました。キャバクラ嬢は世間の風当たりの強い仕事。でも、“ああ、こういう仕事をやっていて、世の中のために役立つことができるんだな”と感じるようになりました

人の役に立つ仕事を一生続けられるという理由から看護師を目指した時期もあるというエンリケさんは、「心のどこかに“人のために働きたい”という気持ちを持っていたのだと思う」と語ってくれた。

「十分な収入を得られるようになったから言えるのかもしれませんが、今の私は高級ブランドも高級車も欲しいとは思いません。それよりも、少しは人のお役に立てているという実感が、私の今の原動力かな。私は今の仕事に誇りを持っています。夜の仕事に対する偏見をなくすためにも、頑張っていきたいですね」

SNSのコメントが「明日も頑張ろう」という力の源

SNSには毎日、何百というコメントがつくが、必ずすべてに返信するようにしているという。その所要時間は2〜3時間。それを大変と感じたことはないというから驚きだ。

「やっぱり人が好きなんだと思います。SNSにいただいたコメントを読むと、『よし、明日も精一杯頑張ろう』という気持ちになるんです。誰かが喜んでくくれれば私も元気になる。SNSは私のエネルギーの源になっています

一見、派手に見えるキャバクラ嬢の仕事。しかし、話を聞いていると、礼儀やマナーを守るのは当然、お客さんに対して徹底して気を配り、地道にコツコツと信頼を積み重ねていることが伝わってくる。ストレスの多い接客業で、仕事に対する一貫した姿勢が、現在のブレイクにつながったに違いない。

人に頼まれ、たまたま出勤した店で「もう少しここにいて」ともらった初指名。意識せずとも、「人の役に立ちたい」と思い続けてきたエンリケさんにとって、その瞬間からこの仕事が天職になったのかもしれない。

小川 えり(おがわ・えり)

1987年11月2日生まれ、岐阜県出身。名古屋・錦の老舗高級キャバクラ「アールズカフェ」に週7日、年間360日出勤中の現役キャバクラ嬢。通称:エンリケ。SNSを使った抜群の発信力で男性のみならず、全国から女性客が訪れる。TV、雑誌などメディア出演多数。トークショーでも圧倒的な集客力を誇り、その9割が女性である。

Instagram:eri.ogawa1102

Twitter:@rie0985

ブログ:エンリケブログ

<取材・文/赤澤竜也 撮影/花井知之>