今の仕事はパッとしないけど、他にやりたいことも特にない…。そんなモヤモヤした状態で働く人は決して少なくないだろう。そこで今回は、プロギャンブラーののぶきさんに、仕事選びについてインタビュー。

のぶきさんは大学卒業後にプロギャンブラーとなることを決意し、2年間の修業を経てブラックジャックの必勝法を会得。以降は世界のカジノで15年間にわたって勝ち続け、勝ったお金で全82カ国を旅して回った猛者だ。

まさしくプロギャンブラーという「天職」を見つけたのぶきさん。そんな彼から、天職を見つけるためのとっておきの方法を聞いた!

やりたくない仕事が天職の場合もある

Dybe! ライター

編集部

今の仕事が特に好きでも楽しくもなく、なんとなく続けているという人はけっこう多いと思います。

対してのぶきさんは、プロギャンブラーという世にも稀な仕事を選び、得がたい経験をされました。のぶきさんにとってプロギャンブラーとは、まさに天職だったのではないでしょうか。

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

たしかにブラックジャックはまさに天職だったと思います。でも実は僕、“転職”も何度か経験しているんですよ。

Dybe! ライター

編集部

転職…ですか?

のぶき(本名:新井乃武喜)
のぶき。1971年生まれ。25歳の時にプロギャンブラーを志し、2年間の修業でギャンブルの必勝法を体得する。以来、世界中を巡って15年間ギャンブルで勝ち続ける。現在は執筆や講演、メディア出演などを中心に活動。
のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

はい。まずは27、8歳の頃です。

世界的な日本画家である千住博さんに、ひょんなご縁から、「ブレインとして秘書になってくれないか」とお誘いいただいたのです。当時僕はブラックジャックのトッププロとして絶好調でしたから、かなり迷いましたね。

でも、その時自分に唯一足りないと考えていた人間としての器を広げる絶好の機会ととらえ、半年から1年の期間限定という条件で秘書をさせてもらいました。

Dybe! ライター

編集部

へえ、そんな時期があったんですね。

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

そして秘書の仕事を終え、再びブラックジャックのトッププロに戻ってしばらくした後に、今度はポーカーのプレイヤーに転向しました。

プロギャンブラーにとってゲームを変えるというのは重大かつ困難なことなので、まさしく転職なのです。しかも、ポーカーに関する専門知識はほぼゼロでした。

Dybe! ライター

編集部

わざわざゲームを変えたのはなぜでしょう?

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

正直、ポーカーはブラックジャックよりもラッキー性が強く、アホらしい負け方もよく起こるので、毎日する仕事としては好きではありません。

しかしブラックジャックはいわばカジノを相手に戦うため、勝ち続けるとカジノから追い出される、要はプレーできるカジノがどんどん減っていきます。それに対しポーカーは他のプレーヤーが相手であるため、プロであれば世界中のカジノで稼ぎ続けることができます。つまりは世界中を旅できるから、僕が欲するワールドワイドな視野が得られる。

その仕事が好きかどうか以外にも、仕事を選ぶ基準は多岐にわたります。現状のことだけでなく、自分のなりたい将来像を見定め、それを実現させる要素がその仕事で得られるかというのも重視します。そうした熟慮を経た末のトータルバランスで、今やるべきは好きじゃないポーカーだと判断したのです。

Dybe! ライター

編集部

要は画家さんの秘書もポーカーも、やりたいことよりやるべきことを優先させたと?

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

熟考したら今最もやるべきことがわかり、それが結果的に“やりたいこと”となりました。どちらもベストな仕事であり、天職でしたね。

Dybe! ライター

編集部

なるほど。そんなふうに“天職”や“ベストな仕事”に就きたいと思っている人は多いです。ぜひ選ぶ基準を教えてください。

お金会社名だけで仕事を選ぶのはキケン

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

多くの人は、仕事を選ぶ際に“お金”や“会社名”を重視しますよね。でも仕事というのは、もっと多角的な視点で選ぶべきです。その際の指標となるのが「6W4H」です。

6W4Hの内訳は、僕なりの解釈も含まれますが、

When = いつ勤務するのか

Where = 仕事する場所

Who = 誰が働くか(これに関しては「自分」という答えが出ている)

Whom = 誰と働くか

What = 何をする仕事か

Why = なぜその仕事か

How = どのように働くか

How long = 仕事の期間

How much = いくらもらえるか

How many = 仕事量はどれくらいか

です。

Dybe! ライター

編集部

なるほど、6W4Hですか。

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

軽視されがちだけど意外と大きかったりするのが、Whom=誰と働くかです。どんなにキツい仕事でも、一緒にやる仲間が最高であれば、すばらしい仕事になりえます。逆に望んでいた仕事内容でも、関わる人たちが最悪だったら最低の仕事になりかねません。

要は、たしかにお金や社名は大事かもしれませんが、それ以上に大切なものが自分の中にあるかもしれないということです。仕事選びは、それをふまえてのバランスで選ぶことが重要です。全ての要素が完璧に揃う仕事など、ありえないので。

Dybe! ライター

編集部

たしかに、お金や社名など一面的な見方で選ぶと往々にして失敗しそうです。では、多角的な視点でバランスを見て仕事を選ぶには、具体的にどうすればいいのでしょう?

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

おすすめの方法があります。それは「人生選択表」を作ることです。

Dybe! ライター

編集部

「人生選択表」ですか? 初めて聞きました。

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

そりゃ、そうです。だって僕が造った言葉ですから。

これは仕事選びにはもちろん、決断が必要な人生の様々な局面で使えます。僕は1カ月以上にわたって影響を及ぼす物事を決める時には、常にこの人生選択表を作ってきました。もちろんプロギャンブラーになる時も、画家の秘書になる時も、ポーカーに転向する時も、人生選択表を作った末にその道に進みました。

Dybe! ライター

編集部

ぜひとも詳しく教えてください!

「ベストの選択」をするためのツール

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

まず紙を用意し、左右の真ん中に線を引き、左右それぞれの最上部に対象となる選択肢を入れます。たとえば「会社を辞める」と「会社に残る」、「この仕事にする」と「あの仕事にする」、あるいは「我慢して◯◯部長に服従する」と「我慢せず◯◯部長にたてつく」等々です。もちろん手書きではなくパソコンなどで作成しても構いません。

そしてその選択肢の、もう一方の選択肢と比べた「メリット」を書き出します。客観的視点と自分視点の両方から、思いつくだけ書き出してください。さきほどの6W4Hの視点も入れましょう。さらには各選択肢のデメリットを、もう一方の選択肢のメリット欄に書き込みます。似たことを言っている項目も出てくるので、統合できるものは一つに統合しましょう。

下の表を見てください。

人生選択表(2社から内定が出た…どちらを選ぶか?)。以下、A社のメリット:点数。会社が大きくて安泰:5点。給料が良い:5点。福利厚生が整っている:3点。親が喜ぶ:0点。結婚に有利かも:2点。社員教育がしっかりしている:1点。社員割引で自社製品を買える:0点。家から比較的近い:3点。合計:19点。以下、B社のメリット:点数。仕事内容が面白そう:5点。自由な社風:3点。リモートワークOK:2点。社員が若く歳の近い人が多い:2点。会社の雰囲気がいい:3点。長期休暇が取れる:5点。転勤がない:4点。仕事をしながら音楽を聞ける:0点。残業がA社より少ない:1点。合計:25点。A社よりもB社のほうがメリットの合計点数が高いので、B社を選ぶことにする!

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

たとえば「A社」と「B社」で迷った場合、まずは「大手で安泰」「給料がいい」といったA社のメリットをA社メリット欄に書きます。さらに「残業が多い」というA社のデメリットを、今度はB社メリット欄に「残業がA社より少ない」と書き入れます。

項目を挙げ終わったらいったん作業をやめ、寝かせます。その間に追加項目が思い浮かんだらまた加えます。24時間経っても追加項目が出なかったら次のステップへ進みましょう。

次のステップでは、挙げた項目すべてへ0~5までの点数を付けます。あとは各選択肢の合計点を出し、点数が高い方を選ぶ。たったそれだけです。

Dybe! ライター

編集部

ちょっと成績表のようでもありますね。でも…もし片方だけメリットがたくさん挙がったら、その時点でそちらが選ばれることが決まりそうです。項目の数を統一する必要はないのですか?

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

揃える必要はありません。なぜなら点数はあくまで「自分視点」で付けるからです。要は自分の主観だけで付けるのです。

そうすると、客観的には良さそうなメリットが並んでいても、主観的には0点や1点というのがけっこう多くなります。

そして多くの場合、表に書き出すことで「自分にはこれがポイントなんだ!」と、“決断材料”がひらめきます。これが見えると一気に自分にとっての“5点”が見定められて、自分的に腑に落ち、悩みやモヤモヤが解決することも多いです。

Dybe! ライター

編集部

なぜ客観的視点ではなく、自分視点なのでしょう?

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

それは、「自分の基準で決断する」ためです。人生は、他人から見られた幸せ度ではなく、自分の幸せのためにあります。だから「一般的、社会的に見て良さそう」ではなく「自分にとってはこれがベスト」で選ぶことが何より重要になります。こうして人生選択表を作ることで、メリット・デメリットを一歩引いた目線で俯瞰的に眺めつつ自分の価値観でものごとを決断できるというわけです。

Dybe! ライター

編集部

なるほど、そういうことなんですね!

人生選択表で選んだものこそが「天職」だ

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

さらには、この人生選択表が最も真価を発揮するのが、実は“選んだ後”なんです。

Dybe! ライター

編集部

選んだ後。どういうことでしょう?

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

人は「明らかにこちらの方がいい」とわかっている時は、選んだものに確信を持てます。でも差がわずかな場合や甲乙つけがたい場合は、なかなかそうはいきません。

そういう時に「なんとなく」で決断してしまうと、決めた後に「やっぱりあっちの道を選ぶべきだったかも…」と再び迷いが生じがちです。特に辛いことや壁にぶち当たった際は、それが顕著に出るでしょう。当然そんな迷った状態では、そうそういい結果は得られません。壁もなかなか越えられません。

Dybe! ライター

編集部

確かに、人生でよくありそうなことです。

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

一方、人生選択表できちんと時間をかけて分析・検討して決めたものに対しては、「自分はベストの選択をした!」と自信を持てます。だからその後、壁や辛い目に遭った時でも、迷うことなく全パワーを“前に進むこと”に注げるのです。また、表を見直すことで『やはり、この選択肢は正しかったんだ』と再確認でき、心がぶれなくなります。

Dybe! ライター

編集部

当然、こちらの方がいい結果は出やすいですよね。あれこれ迷っている状態とは雲泥の差が生じそうです。

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

その通りです。「自分はこの道だ!」と確信を持って壁を乗り越えることができ、それにより自然と成果も付いてくる。成果が出ることで楽しくなり、よりがんばれる…。

Dybe! ライター

編集部

それこそ、「天職」ですよね。のぶきさんが冒頭で、当初は決してやりたい仕事ではなかった画家の秘書やポーカーが天職だったと言ったのも、そういうことだったんですね。

のぶき(本名:新井乃武喜)

のぶきさん

すべての仕事の中には必ず、“現在の自分の器”にとってベストな仕事が存在します。もちろん人生には、「子供を授かった」とか「もうこれはやりきった」というように、とりまく状況や価値観が変わることも多々あります。そうしたら、また新たに人生選択表を作ればいいのです。

Dybe! ライター

編集部

人生選択表と聞いた時は、「ちょっと面倒くさそう」とか「そんなことして意味あるの?」とも思ってしまいました。でも成功する人としない人の違いとは、こういうちょっとした工夫やアイデアを実際に行動に移してやるかどうかなのかなと感じさせられました。いま迷っていることがあるので、さっそく今日やってみようと思います!

のぶき(本名:新井乃武喜(あらい・のぶき))

1971年生まれ、東京都出身。大学を卒業後、25歳の時にプロギャンブラーを志し、2年間の修業でギャンブルの必勝法を体得する。以降は世界のカジノで勝負し、勝ちすぎて各所で出入り禁止に遭い、ブラックリストに挙げられながらも、勝ったお金で世界を旅して周るという生活を15年間続ける。訪れた国は計82カ国。東日本大震災のボランティアで一時帰国したのを機にさまざまな依頼が殺到し、現在は執筆や講演、メディア出演などを中心に活動する。著書に『勝率9割の選択』『ギャンブルだけで世界6周』。

Facebook:プロギャンブラ のぶき

<取材・文/田嶋章博 撮影/小森 慧>