あったらいいな不労所得……。なんて思っても、リスクが高い不動産投資にはなかなか手が出せません。でも、結婚の約束をした恋人に去られたことをきっかけに、「低所得」「フリーランス」「独身」という三重苦を乗り越えて、渋谷区にビルを購入、人生大逆転した人がいます。フリーライターの柏木珠希さんです。

はじめまして。ライターの柏木珠希と申します。現在、私は年間9~10カ月ほどを海外で過ごしながら、ウェブメディアのコラムや、書籍の執筆をしています。ちなみに、この原稿はメキシコのビーチリゾート・カンクンで書いています。

このように私が旅先で自由に仕事ができるのは、ネット環境さえあればどこでも原稿が書けて納品できる「フリーランスのライター」だからですが、もうひとつ理由があります。それは私がライター以外の収入源を持っているから。実は私は東京・渋谷区に小さなビルを所有し、毎月家賃収入を得ているのです。

というと、私が資産家の娘か、バリバリ稼いで貯金がたくさんあったかと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。むしろ、ビルを購入するちょっと前まで所得が150万円程度で、貯金もありませんでした。それがひょんなことからビルオーナーになってしまったのです。

その過程ではかなり痛い思いをしましたし、海外で暮らすようになってからは、不労所得(不動産収入など働かずして得られるお金)があることによって、自由な働き方・暮らし方が可能になることも実感しました。今回はこの体験についてみなさんにシェアしたいと思います。

年収150万円からビルオーナーに。キッカケは失恋だった

私がビルオーナーになったきっかけは、結婚を前提に交際していた彼氏から、何の前兆もなく別れを告げられたことでした。理由は「好きな人ができた」とのこと。

ビックリしましたが、ショックを受けているヒマはありませんでした。というのも、私たちは一緒に湾岸地区にあるタワーマンションの一室を買っていて、その売却の手続きをしなくてはならなかったからです。

この部屋は私が物件価格の何割かを頭金として入れ、残りを彼が住宅ローンを組んで購入したもの。結婚前の同棲カップルでも、購入する際に「結婚予定です」と一筆入れることによって共同名義でマンションを買うことができたのです。ちょうどリーマンショックの後で世の景気は落ち込んでいたため、売却できるかどうか非常に不安でした。

湾岸のタワーマンションからシェアハウス暮らしへ

同時に私は次に住むところも探さなくてはなりませんでした。紆余曲折ありましたが、結局、私はシェアハウスで暮らし始めました。

というのも、私はそのころシェアハウスを経営したいと思っていて、そのためには実際に住んでみなくちゃと思っていたからです。

そのキッカケは、ライター業のかたわら2年間だけ古民家カフェを経営していたときのこと。築70年の古い長屋を借りて、友人たちと一緒にリノベーションしたカフェでしたが、来店するお客さまがよく「わー、ここ、すごい和む~。暮らしたい~!」とおっしゃるのです。

カフェはたいして儲かりませんでしたが、私は毎月遅れることなく大家さんに家賃を払っていました。ですから、「これが自分が所有する店舗なら、このお家賃ぶんが自分のフトコロに入ったんだな」とか、「大家さんは何もしてないのにお金が入っていいなー」と常々思っていたのです。

そこに「シェアハウス」という新しい住まいの形態が注目されている(当時はシェアハウスが注目され始めた頃でした)との情報を聞きつけた私は、「そうだ! 次は古い木造一軒家を購入して、シェアハウスを経営しよう! 私も大家さん側になろう!」と心に決めたのでした。

気がつかなかった! フリーランスの落とし穴

私はマンション売却という重大案件を抱えながら、シェアハウス用の物件も探し始めました。と同時に、確定申告書を持って2軒の金融機関に相談に行きました。マンションを売却すればまとまったお金ができるものの、シェアハウス用の物件を購入するにはローンを組まねばなりません。果たして銀行は私にお金を貸してくれるものなのか。

金融機関の答えは2軒とも「NO」でした。どちらにも「これから3年間は確定申告額をもっと多くしてください」と言われました。

実は私が確定申告書に記載した所得は150万円程度。「所得」とはフリーランスの年収のことで、私たちフリーランスは「必要経費」をできるだけ多く計上し、「所得」をできるだけ低く抑える傾向があります。そうすることで支払う税金も安くなるからです。

元彼と一緒に住んでいる間、主婦気分であまり稼いでいないうえに、いつものように経費を目いっぱい計上してしまった結果、私は「低所得者」になってしまっていたのです。

低所得、フリーランス、独身の三重苦から奇跡の大逆転

ひとつの金融機関には、「フリーランスの方は会社員の方に比べて審査は厳しくなります」と言われました。また、金融や不動産に詳しい友人には「夫を保証人にできないぶん、独身女性は既婚女性よりもお金を借りづらい」とも指摘されました。

低所得・フリーランス・独身と「三重苦」を抱えた私ですが、最初に金融機関に相談に行ってから約1年後、運命の出会いを果たします。それが、現在私が所有する渋谷区の古い4階建てのビルです。

そのビルは古いためにほとんど土地値だけで売られており、でも、まだまだ家賃収入を生み出してくれる「お買い得物件」でした。シェアハウス用の物件を探し続けていた私は、すっかり不動産の目利きになっており、発見した瞬間、これは早い者勝ちだなと即決してしまったのです。

でも、なぜ「三重苦」の私が銀行からお金を借りて不動産オーナーになれたのでしょうか。その奇跡の理由をご説明したいと思います。

(1)共同名義のマンションが売れたこと
マンション価格が、買った時から50%ほど値上がりしていて、かなりまとまったお金が手に入りました。お金がないから借りたいのに、金融機関はお金がない人には貸してくれないというパラドックス!

(2)銀行の決算月にたまたま欲しい物件が出てきたこと
決算月になると、銀行は「お金貸しちゃえー!」モードになり、融資の審査が甘くなるらしい。

(3)「事業ローン」に比べて審査がそれほど厳しくない「住宅ローン」を使ったこと
賃貸用の物件を購入するには事業ローンを組まなければなりません。事業ローンは審査も厳しく、金利も高いです。ですが、建物の半分以上(金融機関によっては3分の1以上)を自宅にすれば、賃貸に出す部分があっても住宅ローンが使えます。買ったビルはたまたま半分が空室だったため、半分を自宅にすることができました。

(4)その後の確定申告で経費を少なめにし、所得を多くしたこと
確定申告は毎年2月半ばから3月半ばまでにすることになっています。最初に銀行に行った時には3月上旬で、まだその年の確定申告をしていなかったため、さっそく経費を少なく計上した所得額(350万円ほど)で確定申告をすませ、その翌年も350万円ほどの所得額で申告しました。
その結果、3年分の確定申告書を銀行に提出した時には、それぞれ「前々年度150万円」「前年度350万円」「今年度350万円」という年収(所得)になり、低所得が薄まった印象に。

理由は他にもあるのですが、字数の関係でこのくらいにしておきます。このようにいろんな偶然が重なり、頭金を入れることなく全額ローンで買うことができました。

みんな意外と知らない「お金のリテラシー」

その後、私は結婚しまして、銀行に事情を説明して自宅部分の部屋も貸すことになりました。収支的には、ローンを返済して毎月手元に残るのは大卒の初任給の平均よりちょっと多いくらい。ですから、私が海外生活しているのは、不動産による潤沢な収入があるからではありません。実は、海外に長期出張することが多い寂しがりやの夫に帯同しているからなんです。

今は不定期ではありますが、一時帰国の時に自分の「しくじり先生」的体験をセミナーでお話しすることもあります。不動産投資は、物件を見きわめる目が必要ですし、物件を買っても入居者が決まらないかもしれない「空室リスク」、さらには物件価格が下落するリスクなどもあり、誰にでもおすすめできるものではありません。ですから、そこはプロにおまかせして、私がお話しするのはもっと基本的な「お金のリテラシー」についてです。

フリーランスの方には「確定申告のやり方ひとつで自分の夢の実現が遠のくこともあるよ」という話をよくします。

長い人生の中では金融機関にお世話になることもあります。何かビジネスを起こしたいとか、子どもの教育資金とか。マイホームを手に入れる時だって借り入れが必要です。そんな時に、確定申告のやり方が思わぬ「落とし穴」になることは意外とみなさん気づいていません。

そして、サラリーマンは私たちフリーランスよりもずっと金融機関的信用が高い、つまりローンを組みやすいのに、それにまったく気づいていない人が多い。本当にもったいないです!!

ですから私は、独立したいというサラリーマンには「会社員としての信用があるうちにマイホームでいいからローン組んで買っとけ!」とよくアドバイスします。でも、そういう人は独立することに気持ちが向いてしまい、私の助言などスルー。

会社を辞めて数年後にマンションが欲しくなっても銀行の審査に通らず、「あの時、たまちゃんの言う通りにすればよかった!」と言われたことも1度や2度ではありません。

お金の信用は時間をかけて積み上げていくもので、クレジットカードの返済の遅滞など「一度の過ち」で一瞬にして崩れてしまうもの。

フリーランスもサラリーマンも「5年後、10年後にどうなりたいか」を考え、お金の信用を積み立てていくことが大切だなぁと思います。これをキッカケに長期の人生設計、お金とのつきあい方などについて考えていただければ幸いです。

この記事を書いた人

柏木珠希

柏木珠希(かしわぎ・たまき)

大学在学中より執筆活動を始め、卒業と同時にフリーライターに。現在、日経新聞電子版「NIKKEI STYLE」などで執筆。著書には「おひとりさま女子の田舎移住計画」(朝日新聞出版)などのコミックエッセイの他、ビジネス書も。近著はコミックエッセイ「占いで結婚しました!」(イースト・プレス)。

Twitter:@tamaki_ka