見た目にまつわるコンプレックスは、誰にでもあるもの。

もしも美人ばっかの世の中じゃ、つまらない。容姿だけがすべてではないし、それぞれの個性があるからこそ面白い。わかってはいるはずなのに、自分がなんだか好きになれない。褒められても、謙遜なのか自虐なのかわからない返しをしてしまう……そんなこと、ありませんか?

今回お話を伺ったのは、お笑いコンビ・尼神インターの誠子さん。「もともと自分の顔が大嫌いだった」と話す彼女ですが、今は自分の笑顔に自信を持てるようになったそう。前向きになるまで、どんな心境の変化があったの? 聞いてみました。

芸人になって、コンプレックスが強みになった

──尼神インターの漫才は、ぶりっ子キャラの誠子さんが、ヤンキーキャラの渚さんから厳しめのツッコミをくらうのが鉄板です。外からみると「渚さんにいじめられるかわいそうな誠子さん」にも見えるんですが、実はネタを書いているのは誠子さんなんですよね。

誠子さん(以下、誠子):そうそう。ネタを通して、相方にブスって言わせてるんです。自作自演ですね(笑)。

尼神インター誠子
尼神インター 誠子(あまこういんたー・せいこ)。1988年生まれ。2007年に尼神インターを結成。17年4月に東京へ進出し、バラエティ番組を中心に活躍。

──しかも、ネタの中でキャラとしての誠子さん自身は容姿を自虐はしていない。

誠子:あはは! 今でこそブスネタをやっているけど、デビューして1〜2年目は、ブスネタ完全封印。わたしがツッコミをやって、ブスイジリもなしで、スタイリッシュな漫才をやってましたね。垢抜けなかったし、自分の顔にもコンプレックスがあった。受け入れられなかったんですよ。本当に、本当にブスで……。

(たまたま横にいた品川庄司の品川さんからツッコミが入る)

品川さん:誠子、なんて悲しい話をしてるんだよ!

誠子:いやいや、笑ってくださいよ(笑)。

──心が苦しかったんですね。

誠子:でもね、その時のネタ、どれもまったくと言っていいほどウケなかったんです。「どうしよう? 渚もキャラが立ってるし、活かせる漫才をやらなきゃいけない」と考えた時、開き直って今のスタイルができあがりました。

──急に切り替え、できましたか?

誠子:だんだんウケるようになって「芸人としてはいいことなんだ! ブスは武器だ! 輝けるところを見つけたぞ!」と思えるようになったんです。今の自分にとっては、ブスはマイナスじゃなくて、プラスの言葉。おいしいと思ってますね。

──コンプレックスが強みになったんですね。でも、誠子さんの名前で検索すると「誠子 美人」「誠子 ブスじゃない」ってサジェストされるんですよ。よくファンからもコメントされると思いますが、実際のところどうとらえているんでしょうか。

誠子:嬉しいです。わたしって、賛否両論顔なんですよ。ブスネタでも笑ってもらえるし、可愛いとも言ってもらえる、おいしいバランスしてるなあって。TVやお笑いのステージに立つ時は薄化粧だから、変身企画の時にもウケる。でも、好きな人とごはんに行く時は、がっつりメイクします。TVの時とのギャップがいいみたい。薄化粧、おすすめですよ。

──意外にも戦略的!

誠子:最近はもう気持ちも切り替えられていて、ネタ以外で「ブス!」って言われても、自分のことを卑下しなくなりました。心の中では「わたし、別にまだ本気出してないから」って思ってるんです。「プライベートはちゃんと可愛いんだからね!」って、自信もついてきました。

かわいい子がいるからこそ、わたしたちが引き立つ

尼神インター誠子
TVやステージでは薄化粧。でも好きな人とごはんに行く時はがっつりメイク。誠子さんは意外と戦略的だった。

──ずっとコンプレックスを抱えていたのに、マインドが変わったのはなぜでしょうか?

誠子:学生時代は、本当にずっと自分に自信がなかったんですよ。双子の妹が美人だし「妹は可愛いのにアンタは……」っていじられてたんです。でも、芸人になったらネタで輝けた。この職業が、一筋の光でしたね。

──そんな誠子さんが、お笑いに目覚めたきっかけは。

誠子:高3の時に初めてM-1見て。親が厳しくて、バラエティー番組を観せてもらえなかったから、漫才を観たのもほぼはじめて。男性のブサイクもネタにしているし、容姿が悪くても輝ける人いるんだ! わたしもできるかも! って思ったんです。大学も受かったけど、蹴ってNSCに入りました。

──そこで人生を決めたんですね。

誠子:絶対にやりたい! と思って。自分でやりたいことにまっすぐいったのは、お笑いが初めてでした。

──迷ったのですが、どうしても誠子さんに聞きたいことがあって。バラエティー番組で尼神インターとにゃんこスターが共演した際、アンゴラ村長さんが「顔とか変えられないものを蔑(さげす)む笑いは、もう古い」って、誠子さんに噛みついた時あったじゃないですか。

誠子:あったあった! はっきり覚えてます。

──時代によって、お笑いのありかたも確実に変わってきている今、誠子さんがあの発言をどういう心境で受け止めたのか、気になっているんです。

誠子:アンゴラちゃんは、やっぱりかわいいじゃないですか。女芸人も、多様性が出てきたなと思いますね。ああやって、可愛い子がいるからこそわたしたちが際立つんですよ。喧嘩もできるし、議論もうまれる。バラエティとして、新しいタイプの女芸人が出てきたのが本当にありがたいんです。

──ご自身の中で軸は持ちつつ、他のスタイルも認めているんですね。

誠子:そうですね。昔は、「かわいい女芸人なんて、絶対おもろないわ!」とか「努力して、体張って笑いとって芸人やろ!」って、思ってたんです。でも、最近やっと大人になれた。

──そんな時代もあったんですね。誠子さんは穏やかなイメージなので、尖っている印象がなくて意外でした。

誠子:TV出させてもらって、アイドルと共演するんですけど、彼女たちはかわいいを仕事にしていますよね。昔は嫉妬してたかもしれないけれど、ブスネタやっているわたしも、やっていることは一緒なんです。いろんな人がいるからこそ、わたしたちが引き立つし、前に出られることもある。他者に対して、きちんと感謝できるようになりました。

尼神インター誠子
「かわいい女芸人なんて、絶対おもろないわ!」と思っていたこともあるという。そんな尖っていた時代があったなんて……。

──女芸人の中で、「誠子」としての差別化はどうしてるんですか?

誠子:女芸人の中でも色分けがあるんですよ。ブスキャラでも、相席スタートのケイちゃんはクールな女。わたしはキュート、みたいな。細かく、それぞれの出方を見て常に被らないように演じていますね。「このポジションは誰がいる、この枠でいこう」みたいな。

──プライベートも、貪欲にお笑いを研究しているんでしょうか。

誠子:努力・勉強・研究、というわけでなく、自然と考えますね。「今日ご飯なに食べよう」という感覚です。「やらなきゃ!」ってのはなく、毎日当たり前にお笑いDVDを観ています。お笑いが大好きだから。楽しいことをずっとやってたら、今につながっていますね。

──相方の渚さんとの関係は?

誠子:渚は気強くて意見言いそうなイメージだけど、わたしにネタを全任せしてくれるんです。それが絶対的な自信につながっています。彼女は華やかで目立つし、渚と組むだけでいけると思うんですよ。フラットな関係です。言い争いが起こることもまったくないですね。

──誠子さんがピンでTV出演する機会も増えてきましたが、ふたりのバランスは変わらずでしょうか。

誠子:渚も、大工だった経験を活かして、リフォーム番組にひとりで出てるんですよ。わたしたちは、個人の仕事も領域がかぶらないのが強みですね。アイドルみたいなこと言っちゃうけど、ソロ活動で得たものをグループのためにつなげたい、っていう感覚でいますね。

無理して外見を変えるより、マインドの持ちようが大事

尼神インター誠子
イケメン俳優さんを中目黒のバーに誘ったエピソードを聞かせてくれた誠子さん。笑顔がとても素敵でした。

──「女芸人は彼氏ができるとつまらなくなる説」とか、どうなんでしょうか。理不尽だなと思うんですけど。

誠子:昔は、ちょっとタイプの男性と絡む時には、いつもより前に出られなかったこともありました。収録の後、反省しましたね。今は両立できますよ。「彼氏が一番!」とはならないし、お笑いとはきちんと切り替えできる自信もあります。

──そんな誠子さん、恋の兆しは?

誠子:ふふふ! 最近、異性に対しても、堂々と振る舞えるようになったんですよ。仕事で一緒になった俳優さんを中目黒のバーに突然誘ったら、本当に来てくれたんです! 以前のわたしだったら、そんな行動考えられないんですけど。

──大胆! すごいです!

誠子:お笑いのおかげで、素の自分をやっと好きになれたんです。可愛いとかブスとか、顔の造形じゃなくてね。自分には自分の役割がありますから。「漫才で元気もらえました」「尼神インターの舞台を観に行くのが生きがいなんです」なんて言ってくれるファンの子もいて。

──お笑いが、誠子さん自身を変えたんですね。

誠子:学生時代の友達にも、明るく社交的になったとよく言われます。昔は、クラスの男子に喋りかけたこともなかったんですけど。

──オシャレについても?

誠子:「わたしなんかがオシャレしちゃだめ」「どうせ似合わない」とか思ってたんです。誰に言われたわけでもないのに、自分で自分に制限をかけて、勝手にウジウジしていたんですよね。今は自分のことが大好き。ファッションブランドの展示会にも堂々と行きます。自分自身が楽しんで明るく笑っていたら、周りにもそういう人が集まってくるようになりました。

──誠子さんの柔らかな笑顔は、癒されます。

誠子:昔は「変わってやる!」と、無理やり似合わないファッションに挑戦して、たくさん失敗もしました。履きたくもないミニスカートで歩いたり、金髪にしたり。「お姉ちゃん、ブスが際立ってんで」と、妹から厳しいツッコミをもらったこともあります。

──金髪! イメージできないです。

誠子:結局どれもしっくりこなかったし、自分自身の気持ちも満たされなかったんです。お笑いの道は自分から選んだからこそ、全力で楽しくやれる。そこで、マインドが変わったんだなって思います。

尼神インター 誠子(あまこういんたー・せいこ)

1988年生まれ。2007年に尼神インターを結成。11年には「第32回ABCお笑い新人グランプリ」新人賞を受賞。17年4月に東京へ進出し、バラエティ番組を中心に活躍。

Twitter:@seiko1204

取材・文/小沢あや(@hibicoto
撮影/金子山