「社会人になってから、飲み会以外の遊びをしなくなった」「なんとなくSNSを眺めていると、まわりばかりが楽しそうに見える」。そんな、漠然としたモヤモヤを抱える人も多いのでは?

学生時代は自然とハマれるものがあったけれど、大人になってからは趣味の見つけ方や、友達の作り方がいまいちわからない……。そんな人のために、今回は同人サークル・劇団雌猫のひらりささん、もぐもぐさんをお招きしました。

趣味に全力でお金を使う女性たちの行動を集めた書籍『浪費図鑑 ―悪友たちのないしょ話―』がヒット。この10月には第二弾『シン・浪費図鑑』と、コスメにフォーカスした『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』を上梓した彼女たちは、一般企業で働く会社員です。

仕事をしながら、浪費してしまうほどに趣味やサークル活動を全力で楽しんでいるおふたりに、社会人のプライベートをぐっと鮮やかにするためのヒントを聞いてみました。

自分にとっては常識でも人から見ると面白い

劇団雌猫のもぐもぐ氏とひらりさ氏
劇団雌猫(げきだんめすねこ)。アラサー女性4人組からなるサークル。日々働きながら同人誌『悪友』シリーズを編集するかたわら、それぞれ熱い趣味を持ち浪費している。

──さまざまなオタク女性のお金の使い方を特集した『浪費図鑑』シリーズ、話題になっていますね。『これは「浪費」ではなく「愛」なのです!』というキャッチコピーが素敵だなと思いました。趣味にかけるお金の話って、あまり知る手段がないので、面白かったです。

ひらりさ:最初の同人誌を出して、もうすぐ2年経つよね。

もぐもぐ:当時は4人とも26歳くらいで、社会人の4〜5年目。遊んでた時にふと「ぶっちゃけ、みんな貯金ある?」って話になって。ちょうど人によって差が出てくる時期じゃないですか。

ひらりさ:転職ずみのメンバーも多くて、年収の変動も経験してたもんね。

──お金の話って、友人同士でもタブーになりがちです。赤裸々に話してたんですね。

ひらりさ:「もっといろんな人の話が聞きたいね」ってことで、同人誌を作ることにしたんです。最初はもっと下世話な内容になる予定だったけど、みんなの浪費記録を集めてみると、愛の表現ばかりになったよね。ジャニヲタとか、一部の話でくくるとチケット代とかもっと具体的な話になる気がするけど、ジャンルがバラバラだからこそ、みんなの人生の話になったのかもしれない。

もぐもぐ:お金を何に使うかって、人生観が出るからね。会社の同僚よりTwitterでつながってるオタクのほうがプライベートで何してるかわかるって不思議だよね。ネットを通して、その時その人がどんなことを考えて、何にハマっているかがわかるし、親近感もわく。素直に「この人、楽しそうだな」って思えるし。

ひらりさ:書籍と同人誌を出してよかったのは、読書感想としていろんな人が自分のことも話してくれるようになったことだよね。

もぐもぐ:自分が常識だと思っていたことも、人から見ると面白いってことがわかったよね。いろんな人に浪費話の寄稿をお願いしてきたけど、ほとんどの人は最初、「わたし、そんなに使ってないんですけど、これでいいんですか?」って言うんですよ。でも、そもそもそういう世界を知らない人にとっては結構な額だし(笑)、一見無駄に思えても、聞いてみると愛にあふれた新しい価値観で楽しい。使うお金の額で「いやいや自分なんてまだまだ」って思わないでほしいよね。

自分はどんなものが好きなのか、触れてみないとわからない

劇団雌猫のもぐもぐ氏
「使うお金の額で“自分なんてまだまだ”って思わないで」と、もぐもぐさん。ご本人はどれくらい浪費してるのか、ちょっと気になる。

──みなさん、趣味があるから平日の仕事も頑張れるのでしょうか。軍資金を稼ぐ、と割り切っている人も多そうです。おふたりはどうでしょうか?

もぐもぐ:わたし、そもそもあんまり働くの好きじゃないんですよね。特に新卒の頃は生活もガラッと変わって辛かったです。会社に入って、週5日働くのってしんどくない? と思って。週末の2日間くらいは楽しいことをしないと、心が死ぬなって思ったんです。

──週末、まず何から始めたんですか?

もぐもぐ:よく名前を聞くアニメを観たり、友達にくっついてAKBのライブに行ったり。楽しかったことを「楽しい!」ってあちこちで言ってたら、「ハロプロも観に行こうよ」とか「この舞台もどう?」って、周囲がどんどん布教してくれるようになったんです。片っ端からホイホイついて行って、今があるのかな。ハマらないものもあったけど、自分がどんなものを好きなのかは触れてみないとわからないし。よかったと思います。

ひらりさ:あの頃のもぐもぐさん、ほんとによく出かけてるなって思ってた!

──興味が持てるかわからないものも、まず触れてみる、って斬新ですね。

もぐもぐ:週末って、寝てたらいつの間にか終わっちゃうじゃないですか。だから、無理やり予定を作ってましたね。エクセルで観劇記録や行動経路を管理してたんですけど、それがどんどんたまっていくのが面白かった。

ひらりさ:セルフスタンプラリーじゃん(笑)。まずは触れてみるって大事だよね。

劇団雌猫のひらりさ氏
BL好きに始まりコスメ沼に落ちたという、ひらりささん。アクセサリーからネイルまで一瞬の隙もない。

──ひらりささんはもともと、BL(ボーイズ・ラブ)好きだったんですよね。

ひらりさ:大学受験であまり外に出かけられない時に、娯楽として読みふけってましたね。趣味の範囲が広がって、現場に行くことが増えてきたのは、大人になってからです。自分ひとりでオタクしてた時は、「遠征まではしないぞ……」と思ってたんですけど、ついでに旅行できるし、結構いいなって。でも、めぐりめぐって今は、北欧雑貨とコスメに夢中です。オタクっぽくなくなってきた(笑)

もぐもぐ:ひらりささんがいきなりコスメ沼に落ちたの面白かった! やっぱり、オタクはオタクっぽいハマり方をするんだね(笑)。

ひらりさ:そうかも。クリスマスコフレの争奪戦なんてコミケと一緒。人気のブランドだとデパートに開店前から並ぶんだけど、デパートごとの混雑情報も攻略しなきゃいけない。情報戦ですよ!

──コミケと一緒って斬新な発想かもしれません。

ひらりさ:「サロン・デュ・ショコラ」でめっちゃチョコ買っていた時期もあったんだけど、あれもチョコのコミケだと思ってました(笑)。

──そうやってコスメにハマったことが、『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』の出版につながったんですね。

ひらりさ:誰かに褒められたいわけでも、褒められたくないわけでもなくて、自分のためにメイクしてるんです。メイクにハマりだしてから、いろんな人の話を聞きたくなったので、本にしました。コスメって、社会人が両立しやすい趣味なんですよ。休日に買ったコスメ、使って外に出られるし。やっぱり楽しい!

オタクをやってると会社以外の友達を作りやすい

劇団雌猫の本
Dybe!読者に朗報。オタクになって「紹介おばさん」的な人とつながると友達がどんどんできるらしい。

──大人になると、友達を作るのが難しい、という声もよく聞きます。おふたりは、どうやって世界を広げたんですか?

もぐもぐ:オタクやってると、会社以外にも友達作りやすいと思う!

ひらりさ:紹介おばさんみたいなオタクとつながると、そこがハブになって面白い感じになるよね。私たち4人も、元々もぐもぐさんが3人とそれぞれ友達で引き合わせてくれて。わたしは、オフ会やったりしてますね。

──最初の一歩が踏み出せない場合は、どうしたらいいですか?

もぐもぐ:手っ取り早いのは、ブログやツイッターで発信することじゃない? 「友達募集」みたいなアカウントを作るよりは、自分自身が絡みたくなる人になるのもいいよね。

ひらりさ:文章じゃなくても、写真とか、何でもいいんだよね。あとは現場で、ちょっとだけ声をかけてみるのがいいかも。排他的じゃないジャンルで、怖くない人を選んで。

もぐもぐ:劇団雌猫でトークイベントをやると、100人くらいお客さんがいらっしゃるんですよ。たまたま相席になった人とおしゃべりしたら仲良くなって一緒に遊びに行くようになりました、とか結構よく聞きます。友達が欲しくなったら、劇団雌猫のイベントに来てください! って宣伝しておこう(笑)。

ひらりさ:あ! おせっかいかもしれないけど、ひとつ言っておきたいことがある! インターネットやイベントで人と会う時、やっぱり気をつけてほしい。「自分たちは特別」みたいな話をしてくるパターンは危険。スピリチュアルとか、ネットワークビジネスとかね。そこは、きちんと吟味してほしいな。

もぐもぐ:なるほどね。というか極論、友達いなくてもいいとも思うよね。

ひらりさ:わたしたちも、別にひとりだけでもどこでも行けるよね(笑)。

社会人とオタク活動を両立する時間のやりくりは?

劇団雌猫のもぐもぐ氏とひらりさ氏
「極論、友達いなくてもいいと思う」という心強い言葉をいただきました。おふたりが言うんだから間違いない、はず。

──社会人とオタク活動の二足のわらじ、さらに劇団雌猫としてのお仕事、時間のやりくりってどうしてるんですか? 

ひらりさ:残業はしない! みんなが残っていると、つられてしまいそうになるけど、「定時にはオフィスを出るぞ」のスタンスを貫いてます。でも、本業には手を抜かない。時間内で成果を出しますね。

もぐもぐ:なんだろう? 余裕がある時は人を助ける。なぜなら、わたしも助けてほしいから(笑)! 会社員だと、同僚を頼ることができるのが強いですよね。「今日は宝塚だから、どうしても18時には会社を出て日比谷に行かなきゃ!」って時も多いので、会社で趣味を公言してます。

ひらりさ:オタクの強みは、取捨選択ができるようになることですよね。

もぐもぐ:会社に残ってしゃべるのが楽しい時もあるしね!

──なるほど。マイルールがあるんですね。

ひらりさ:「自分は自分の働き方をするぞ」という鉄の心が必要ですね。

毎月テーマを決めて動いてみるのがおすすめ

劇団雌猫のもぐもぐ氏とひらりさ氏
趣味のためには「自分の働き方をするぞ!」という鉄の心も必要。オタク活動を始めると、仕事の生産性が上がる!?

──会社と家の往復で、マンネリを感じてしまう人もいます。ひとりでもできる趣味の見つけかた、教えてください。

もぐもぐ:フットワークの軽さは大事! あとは、毎月テーマを決めて動いてみるのがおすすめですね。今月は2.5次元に触れてみよう、とか、毎週末パフェ縛りでカフェを巡るとか。わたしも、短歌をテーマに設定して勉強してた月とかありました。短期間集中して触れてみると、自分との相性がわかるんだよね。

ひらりさ:友達は「毎月、人生で一度もやったことないことをやる」って決めてたよ。立ち食いそばに行く! とか、ハードル低いことからチャレンジしていくんだって。

もぐもぐ:帰り道にある、行ったことない居酒屋に入ってみるとか、ひとつ手前の駅で降りて歩いてみるとか。いつもとちょっと違うことをしてみるだけで結構気分変わるよね。

──それくらいなら負担にならないですね。

もぐもぐ:いきなり趣味を作ろうしなくていいと思うな〜。突然、「今日からわたしはソフトクリーム好きとして生きてく!」とか、無理じゃないですか(笑)?

──最近は、自分の気持ちよりもブランディングから先に入っちゃうパターンが多いですよね。

ひらりさ:誰かからの反応が欲しい、という気持ちが先にきちゃうよりは、「自分がやっていて楽しい」だといいかな。もぐもぐさんもそうだよね?

もぐもぐ:それすごく大事だよね。反応を期待しちゃうと振り回されちゃうし。映画館や劇場でも、鑑賞中に手元でメモをしているんですけど、一年後に読み返すと、自分が面白いんだよね。発信するためではなくて、今思いついたことを未来の自分に読ませたい! って感じでやってるよ。

ひらりさ:映画を観た後にはすぐFilmarks(映画レビューアプリ)に記録するとか、読書メーターを使ってみるとか。自分用の記録に小さいことを数カ月続けるだけでもいいと思うんです。そこから、思いがけず知らない人とつながることもあるし。無理しないことが大切ですね。

劇団雌猫(げきだん・めすねこ)

インターネットで知り合い意気投合したアラサー女性4人組からなるサークル。日々働きながら同人誌『悪友』シリーズを編集するかたわら、それぞれ熱い趣味を持ち浪費している。著書に『シン浪費図鑑』(小学館)、『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』(柏書房)など。

劇団雌猫Twitter:@aku__you

取材・文/小沢あや(@hibicoto
撮影/飯本貴子(@tako_i