大学在学中に設立した、株式会社ウツワの代表取締役をつとめるハヤカワ五味さん(本名/稲勝栞)、23歳。胸の小さな女性のためにはじめたランジェリーブランドfeastにて「シンデレラバスト」「品乳」という言葉を創造し話題に。

ジェネレーションZの経営者、またインフルエンサーとして注目を集めるハヤカワさんの実現力の源、考え方とは?

何をしても認められない、という思いがあった

ハヤカワ五味
ハヤカワ五味(はやかわ・ごみ)。キュ~トでクレバ~な経営者。株式会社ウツワ代表。ファッションブランド、ランジェリーブランドなどを手がける。

ハヤカワ五味(以下、ハヤカワ):「陰キャですよ。スクールカースト上位とかでもないですし」

──陰キャとは意外です。

ハヤカワ:元々オタクですし。子どもの頃は、自分は何をしても認められない、という思いがありました。

──それはなぜでしょう?

ハヤカワ:親や教師から否定され続けてきたっていうことの影響が大きかったんだろうなと思います。

──否定とは、勉強で?

ハヤカワ:そうですね。自分が正しいと思って勉強をしても、やり方が違うと否定されたりとか。認めてもらった記憶はないです。たとえば、100点満点で99点だったら、けっこうすごいじゃないですか。でも、その1点外したことを指摘されてしまう。減点法が、自己肯定感の不足につながったのかなって思います。

リーダーシップは元々ある方で、文化祭の実行委員とかもやったりしていた一方、自己主張はあまりなくて。自分はダメなのかなっていう自信のなさがありました。

今は自分が正しいと考えることをやるっていう意識が内在化してきたって思うんですけど。

一番上手な絵は描けない

──どんなきっかけで変わることができたのでしょう?

ハヤカワ:大学受験が転機になったかもしれません。目的が合格であれば、100点である必要はないですよね。受かるラインにいかに乗るかっていうのが重要なので。

──多摩美術大学ですね。美大の受験というと評価の数値が見えにくいというイメージがありますが。

ハヤカワ:予備校に通っていたんですけど、その中で、最初は評価が一番低かったんですよ。それまでは自分で絵が描けると思っていて、アイデンティティでもあったんですけど。それこそ絵を始めたばかりの初心者の人よりも、全然点数が低いみたいな。

──そこでめげることはなく?

ハヤカワ:予備校に通い始めたのが中3の時で、美大志望者のなかでは早いほうなんですね。なので、他の人よりも時間をかけることができたのと、学科が得意だったので、そちらの点数で総合点を増やすことができました。

絵が描ける人しかいない環境のなかで、自分は一番の絵を描くことはできない。自分に絵の天性の才能はないんだなっていうのは、そこである意味、割り切ることができました。

そこで自分はどういうアプローチをしたら勝つことができるのか、合格できるのかってことを考えたら、100点じゃなくて80点でもいいこと、逆に最短の時間で80点取る方法を考えたほうがより成功率があがるんじゃないか、と気づくことができました。

──なるほど。合理的ですね。

ハヤカワ:そこで、一番評価が高い絵を描ける人に食らいつくことを考えて人より多くの絵を描いたり、得意な学科を伸ばすことはやっていて、実際に学科は予備校で一番になりました。

それで大学にも合格するのですが、その成功体験は自分の中ではわりと大きかったかもしれません。

コンスタントに80点を取っていく

ハヤカワ五味

──自分の特性を見極めて伸ばす、というのは今のお仕事にもいかされている気がします。

ハヤカワ:そうですね、春に大学を卒業していわゆる社会人になってから感じるのが、社会人って、何かを強制されるわけではないってことで。こういう人間になるべきとか、学校ほど拘束度は高くないし、大学受験みたいな明らかなゴールもないですよね。就職できてよかった、終わり、ではないですし。

その中で80点取れる人って、実はあまりいないんです。だからこそ、いかに80点をコンスタントに取っていくかとか、という部分はすごく意識しています。

100点の基準も人それぞれなんですが、やはり私から見てすごいな、100点だなと思う人もいて、そういう人は見に行くようにはしています。本当は見ないほうが楽なんですけど。

──それはどういう方を見て?

ハヤカワ:尊敬してる人とかもよく聞かれるんですが、いわゆる著名な方というわけではないです。世間的に評価されているかどうかより、自分が評価したいかどうかなので。グローバルな視点を持っていて、自分よりも視界が広いなと思う人は参考にさせていただいています。国内で事業を展開するにしても、国内の動向だけを知っているのと、国外も知っているのでは視点が違うので。

──同世代の方々はどんな感じですか?

ハヤカワ:グラフィックデザイン科だったので、美大の中でもマーケティング的なことが、学べるかというと、それはなかったです。なので逆に危機感があって、どう食べていくか、どう評価されていくかってことに対しての意識を持てている人が多いなって印象がありました。

今の時代、就職すれば安定が築けるってわけではないことはみんなわかっていますよね。じゃあ自分なりにどうアプローチしてこうかっていうのは、他の世代より考えているなって印象があって、経営者としてもそれはやりやすいです。身の回りにも自分から動く人が多いので、参考にもしています。

自分に合うゲームを探すことが大事

──働いていて、明らかに上司の指示がおかしいなってときがありますよね。効率の悪いExcelの使い方をしなくてはいけないとか。そういう場面があったらどうしますか?

ハヤカワ:そもそも上司の指示が間違ってることって多いじゃないですか。それに対して違和感を感じて仕事ができなくなってしまうタイプなんで、難しいと思います。

──空気を読んでその場は合わせるとかは……

ハヤカワ:できないです。意味のない作業とか全体像が見えない仕事が苦手なので。いわゆる変人なところもあるので、自分を曲げて周りに合わせる必要のある仕事をやれるのかなって考えると、使いものにならない気がします。

──では合わない職場だった場合は……

ハヤカワ視点を変えると理解できることもあります。

女子高生時代にお年玉を原資として開発したタイツがヒットして、メディアに紹介されるようになりました。商品ではなく私の外見についてばかり紹介されたり、いやな気持になることも多くて。でも自分も番組にレギュラーで出るようになると、制作サイドの気持ちに触れるようになります。そうすると、今まで“安易につけている”と考えていた番組のテーマなどにも“こう見せたい”という意図があるのかな、と読み取れるようになりました。それでもいやなもの、おかしいなと思うものはお断りしますけど……。

──なるほど。

ハヤカワ:間違っていると思われる上司の指示にも、その方が数十年守ってきた何かとか、意味があるかもしれないので、いったん尊重する必要はあるなと思っています。

ひとつ言えるのは、学校での生活をゲームにたとえると、ゲームのタイトルもルールも最初から決まっていて、そこでにいかに適応して戦うかだと思うんですね。でも社会人になると、みんな同じゲーム上にはいないんです。まずジャンルを選ばなきゃいけない。格ゲーが得意な人が、リズムゲーで対決するのは、不利ですよね。でもそれをやろうとしている人がけっこういる気がします。“合わないとことであえて頑張るのがかっこいい“みたいな考えもありますが、変なバイアスがかかっているかなと。

かわいさで勝負するのは、ハードモード

ハヤカワ五味

ハヤカワ:かわいさで勝負するとかもすごいハードモードで……

──生まれ持った素材で戦闘力が変わりますね。

ハヤカワ:素材も必要だし、メイクや加工技術とか、レベル上げにキリがない。プレイヤーも多いんで、そこで勝とうと思うと元々かなり強い人以外には無理ゲーですよね。なら、別の場所を探したほうがいいです。自分が評価されやすい場所に身を置くってことはもっと意識していいと思います。それは逃げではなく、そういうずる賢さはもつべきだと思います。私は“キュ~ト&クレバ~”というキャッチコピーを使っていますが、「クレバ~」には“ずる賢さ”という意味も込めています。

──具体的には、動くということでしょうか?

ハヤカワ:今、起業や転職をもてはやす風潮がありますが、そういうつもりではないです。同じ会社の中でも経理なのか人事なのかでも違うし、ゲームや取り組み方を選んでいけたら、自分も楽だし、成果上がるし、昇給もできるし、winwinwinですよね。これは、経営側としても働く側としてもどん欲に突き詰めていきたいことです。

コンプレックスに意味はない。特徴に過ぎない

──自分に合う場所を探すというのは、ハヤカワさんが作っている胸の小さい人のためのブラという考えにも通じる気がします。

ハヤカワ:胸以外でも身長や体重、何でも大きい人小さい人がいて、中心から外れている人は何かしら悩んでいるとは思っていたんです。私自身痩せているほうではあるので、下着や服のサイズが合わなかったり探せなかったりすることがあって。でも、大きめでも着れないことはないので、その悩みは顕在化しづらいんです。

──痩せてるからいいじゃん! と流されやすいかも……

ハヤカワ:そうですね。大きいサイズがないという悩みはそれなりに顕在化しやすいので、比較的商品も開発されていたのですが、小さいサイズについてはそもそもそれが悩みとは認めてもらえなかったんです。そこで、“小さいサイズなのでかわいい、小さいサイズだから着られる”という商品を提案したんです。

──いつ頃ですか?

ハヤカワ:大学に入学する前くらいから考えてはいたんですけど、実際、商品に反応があるのかっていうのはわからなかったんですね。たまたまその自分の前のブランドの展示会が落ち着いて学校の課題も落ち着いた時期に、Twitterに試作品をUPしたらかなり反響があって。そこから実際に商品化し、2015年には法人化しました。

──小さいサイズの悩みが顕在化したんでしょうか?

ハヤカワ:数は少なくても、悩みはやはり存在していて。今はSNSもあるし、そういったマスではない声も共有できるんですね。

──胸が小さいというコンプレックスをプラスに?

ハヤカワ:コンプレックスをプラスに、というつもりはないんです。コンプレックスがあるからいい、だと違う気がします。コンプレックスは持っていても意味がないと思っているので、ゼロとしてとらえたいと。

世間的に良いとされているところからずれたところがコンプレックスになりますが、でもそれが個性であったり、スキルにもなりうることですよね。だからこそ、世間的に良いとされてることをまず疑っていきたいし、コンプレックスがない世界を実現したいと考えています。

SNSで発信すること。終わりは悪いことじゃない

ハヤカワ五味

──コンプレックスをなくしたいということですが、「そのままでいい」とはちがいますよね?

ハヤカワ:まったくちがいます。noteとかの発信でも、読んでるだけで満足、みたいなのは想定してなくて、本当に知識を必要としてる人じゃないと意味を見出せないかも、くらいのラインで考えています。そしてその分アイコンやビジュアルはラフ、それこそ“キュ~トでクレバ~”みたいな感じでゆるくしています。ビジネス系の発信をしていて逆のタイプの方が多いので、逆張りで。

──オンラインサロンはやらない?

ハヤカワ:サロンはやる予定はないですね。ハヤカワ五味というメディアを通して、どういう情報を提供していったらいいかって部分を意識しているので、noteやTwitterくらいがバランスが良くて。あと本の執筆もしています。

「ハヤカワ五味」が絶対的な価値基準になってしまうと、目的がすりかわったりすると思うんです。“ハヤカワ五味にいいね!してもらいたい”とか、“ハヤカワ五味にリツイートしてもらいたい”とか。それは目標ではないので。

──では目標は?

ハヤカワ:最終的に何が自分に能力として身についていくかとか、どういった影響を世の中にもたらせるのかって部分が重要なのかなってことは考えてますね。コンプレックスがない世界をつくることもそうですし。

──ハヤカワさんのように、実現力を持つためにはどうすればいいでしょうか?

ハヤカワ小さい規模感でまず始めてみることだったりとか、人がそこまで自分のこと気にしてないって部分は、持っていると思います。

あと、失敗や、終わることがいやだという人が多いと思うんですが、始めた以上どこかしらには終わりがあるわけで。なのでそのタイミングを早めるか遅めるかとかは、あんまり気にしていないですね。世間体とかは、そこまで気にしなくていいのかなと。そのほうが何事も気軽に始められる、というのはあるかもしれないです。

──インフルエンサーと言われていて、気を付けていることは?

ハヤカワ:インフルエンサー界(笑)ではやっぱネアカの人のほうが強いです。モテも大事。それは経営者でもそうです。私はフォロワーの数でインフルエンサーと言われていると思うんですが、それも規模の大きい中国のSNS、Weiboだと全然ふつうだったりするので、数はそんなに重要ではないと考えています。

──いい流れでお仕事ができているように感じます。

ハヤカワ:自信がなかったときに比べて、自分の意見に賛成してくれる人が増えて自己肯定感があがり、それが結果としてまた自信につながり、といういいループに入れているなっていうのは感じます。自分が肯定されることだけを求めるんじゃなくて、傷つくのも算段にいれて、人を肯定したりとか、心を開くみたいなことはするように努力はしてます。

でも基本的に不快なことはしないようにしているので、飲み会とかは得意じゃないんであまり行かないようにしていたり。

キラキラでは、ないですね。

ハヤカワ五味(はやかわ・ごみ)

1995生まれ東京出身、多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。課題解決型アパレルブランドを運営する株式会社ウツワ代表取締役社長。 高校1年生の頃からアクセサリー類の製作を始め、プリントタイツ類のデザイン、販売を受験の傍ら行う。大学入学直後にワンピースブランド《GOMI HAYAKAWA》、2014年8月には妹ブランドにあたるランジェリーブランド《feast》、2017年10月にはワンピースブランド《ダブルチャカ》を立ち上げ、Eコマースを主として販売を続ける。複数回に渡るポップアップショップの後、2018年にはラフォーレ原宿に常設直営店舗《LAVISHOP》を出店。

Twitter:@hayakawagomi

note:ハヤカワ五味|note

取材&文/樋口かおる(@higshabby
撮影/moco.(kili office)