会社に勤めながらイラストレーターをしています。吉本ユータヌキです。兼業生活を始めてからの5年間で、漫画の連載から出版、グッズ販売、音楽フェスのグッズデザインなどなど……自分にとっては夢のようなお仕事をたくさんさせてもらっています。そんな僕を見て、周りからはよく「会社辞めてイラストレーターを本業にしないの?」と聞かれます。うーん。

SNSでフリーランスのイラストレーターさんたちを見てると、コンスタントに自分の漫画をアップしたり、昼過ぎに起きたりしている人が多いんです。僕が会社で働いている間に、みんなは自分のしたいことを優先に生活している。うらやましい。めちゃくちゃうらやましい。だって通勤ラッシュもないんでしょ?

でも、会社員との兼業を選んだのは自分の意思。僕は、「会社に勤める=ちょっとした『気持ちの余裕』を買っている」ものだと思っています。

フリーランスをうらやむ必要なんてない

「フリーランス最高! ストレスばっかりの会社なんてやめたほうがいいよ」なんてツイートを目にするたびに「ひ〜! 会社辞めてぇ〜〜〜!」ってなるんです。けど、辞めたほうが自分にとっては不都合が起きるんじゃないかと思っています。

まずは、収入面。妻と子ども2人を生活させられるぐらいの固定収入が自分にとって最優先で、稼ぎが不安定になることが一番のストレス。で、これが創作物に影響してしまうのが恐いんです。

もともと会社員で、好きな趣味をみつけるために始めたSNSでイラストを描きはじめ、自分のイラスト好きになってくれる人たちと出会えた今。趣味の延長だったイラストを本業にしてしまうと、稼ぐための手段になってしまいそうで。

月初めに「今月もまた30万円稼ぐためにイラスト描くぞ〜」ってなると、たぶん好きなこと描けなくなってしまう。好きなことで稼ぎがついてくる現在の状況のほうが、自分にとってはちょうどいい。

吉本ユータヌキ

気持ちの余裕の作り方は、ひとりひとり違う。会社に行かないことが余裕になる人もいるし、僕と同じように「固定収入がなによりの安心」と感じる人もいる。それぞれ。だからSNSで眩しく見える「フリーランス最高〜!」は、「その人”には”合ってるんだな」くらいの感覚でいるのがいいと思っています。

バンドマンとして、たくさんの「人気の終わり」を見てきた

やっぱり、二足のわらじはすっっっごい大変! 今も、息子を抱えたままパソコンぽちぽちしてる午前1時。もうすぐバンプが天体観測に行っちゃうよ。毎日寝る時間削って作業時間を捻出するしかない。なんでそこまでして兼業をしてるかというと、僕自身が、「イラストレーターとして一生お仕事をいただけると思っていないから」なんです。

ずっとプロとして活動してきた方に比べたら、技術もセンスもない。たまたまのめりこんだTwitterで、フォロワーさんが増えただけ。SNSブームの恩恵を受けられたからこそ、ここまで良い波に乗せてもらっていただけ。世間に出るとイラストが上手い人なんて星の数ほどいる。自分の代わりだってたくさんいる。SNSでの人気だって、いつ終わるかわからない。すごく悲観的かもしれないけれど、これは昔、バンドをやっていた経験から感じることなんです。

大好きだった先輩バンドは、メジャーデビューして、人気アニメの主題歌を担当した。後輩バンドは結成してすぐに、大型フェスに引っ張りだこになった。今はみんな音楽を辞めてしまった。「一生続くかも」と思っていたバンドの音楽も、もうCDでしか聴けなくなった。好きなことしか考えず、ガムシャラに生きてきた僕も、26歳の時にバンドをやめました。

結婚して子どもが生まれ、人生の第2章がはじまった

その後、結婚して子どもが生まれたことで、僕の人生の第2章が始まりました。妻と付き合い出したのは、18歳の頃。お金がなかったバンド時代は、デートもろくなところに連れていってあげれなかった。バンドを辞めたからこそ、次は家族のために頑張ろうと思えるようになったんです。

僕自身、決して裕福ではない家庭で育ったけど、今振り返ってみると、両親は不自由ない暮らしをさせてくれました。僕のバンドの活動資金が足りなくなったときも、「応援しているよ」と、そっとお金を貸してくれました。自分の子どもが夢を見つけた時も、そうしてあげたい。

だからやっぱり、自分の好きなことよりも収入の確保が大事。そう考えると、僕がイラストを本業にするのは無謀すぎる〜!

 「好きなこと」の割合は100%じゃなくてもいい

会社員としての安定を選ぶタイプの人には、やっぱりいいですよ、兼業。

YouTuberのキャッチコピー「好きなことで生きていく」って、誰もが理想とする生活じゃないですか。でも、その好きなことの割合は100%じゃなくてもいいと思う! 「会社8:好きなこと2」でも、ちゃんと好きなことして生きているじゃないですか!

吉本ユータヌキ

そもそもなんですけど、会社員って楽しくないですか? フリーランスでは到底扱えないような仕事だったり、莫大なお金を動かしたり、お得意先の社長の長話にも、全部どこかに学べることはあるし、そんな貴重な経験を楽しむことができたら、勝ちだと思ってます。

集団生活で身につく教養って、少なからず人を成長させてくれる。ムカつくことも多いけど、会議では自分にない意見を得ることができる。僕の場合、ひとりだと凝り固まってしまう思考も、またイラストの活動に生きています。だから会社を全力で楽しむし、「兼業万歳」の姿勢です。

僕はサラリーマンとして、訪問販売・広告代理店・グッズ製作の下請け・店舗コンサルなどなど、いろんな仕事をしてきました。どの仕事も、やってみるうちに、だんだんと興味が湧いてきます。単純かもしれませんが、会社の業務を好きになったら「好きなこと100%」の生活にだんだん追いつくと思いませんか? 一石二鳥〜!

給与+αで稼ぐと生活にゆとりが生まれる

兼業していると、寝る間も惜しんで仕事をしちゃうけど、会社の給料に+αで稼ぐことができるのは、やっぱり嬉しい。「稼いでるぜ〜〜〜〜!」みたいなことは言いたくないんですけど、稼ぐと何が良いかって、単純に、好きなことにお金をたくさん使えるんです。

めちゃくちゃ贅沢な暮らしをしたいとは思っていないけど、食器洗浄機は欲しい。ルンバも欲しい。たくさん稼いで買いたい。僕が仕事に専念できるように、家事は妻が率先してしてくれるけど、それが大変なこともわかってる。だから、生活を整えるための家電を買うのは投資だと思ってます。家事を効率化して、作業時間が増えれば、受けれる仕事の数も増やせる。そして、それが自分の好きなイラストの仕事ならオールハッピー! 感動のフィナーレです! 

自分の心地よい形態で無理なく働こう

どんな環境下でもストレスはあるし、不安もある。人を羨んでしまうこともあるけど、自分が自分らしくいれる環境にいることが一番だと思います。フリーランスも兼業もそれぞれ良さがある。収入に差はあるかもしれないけど、お金では買えない安心もある。それだけは見失わないように。

あと、兼業生活が楽しくなると睡眠時間を削ってしまいがち。心身が悲鳴をあげて、負のループに迷い込んでしまうこともあるので、ほどほどに気をつけてくださいね。

この記事を書いた人

吉本ユータヌキ

吉本ユータヌキ(よしもと・ゆーたぬき)

滋賀県在住の漫画家・イラストレーターであり、二児の父。子ども観察漫画「おもち日和」がネットで話題となり、2017年に集英社よりコミックスを出版。バンドや大型フェスのグッズデザインなど手広く活動中。

Twitter:@horahareta13