人とは違う面白いアイデアを生み出す。それができるようになれば、仕事や人生の大きなプラスになるでしょう。

でも、いきなりやれと言われても、そうそうできるものではありません。ましてや仕事となると、会社やクライアントの目を意識し、つい無難なほうにいってしまいがち。結果、普通のつまらないものばかりが生まれる……。

そこで今回は、「ゆるキャラ」や「マイブーム」の名付け親で、書籍『「ない仕事」の作り方』もベストセラーとなったみうらじゅんさんにインタビュー。

クリエイティブなものを生み出すための“なるほど!”な方法を聞いてきました。

みうらじゅん
みうらじゅん。イラスト、エッセイ、小説、音楽、映画、ラジオなど幅広い分野で活躍するサブカル界の鬼才。1980年武蔵野美術大学在学中に雑誌「ガロ」で漫画家デビュー。1997年「マイブーム」で新語・流行語大賞受賞。著書に『アイデン&ティティ』『青春ノイローゼ』『人生エロエロ』『「ない仕事」の作り方』など多数。

自分に注目してもらうとっておきの方法

──今日はぜひ、クリエイティブなアイデアを生むコツをうかがわせてください。

みうらじゅんさん(以下、みうら):そんなもんあるわけないでしょ(笑)。

──え(汗)? でも何かヒントを…。

みうら:まず頭に刻んでいただきたいのが、本当にオリジナルのものを生み出すなんて、無理だということです。たとえ自分が生み出した! と思っても、たいていはもうどこかで誰かがやっています。「ゆるキャラ」や「マイブーム」だって、もともとある言葉を合体させただけですからね。

──つまり、ゼロから何かを生み出すために頭をひねるのは無駄だということでしょうか?

みうら:少なくともメインストリームはもう食い尽くされていて、難しいでしょう。まだ、残っているとしたら、わき道とか裏道ですよ。昔からスキマ産業っていうけど、なんで隙間に挟まっているかというと、みんなやりたがらないことだからです。人がやりたがらないものをやれば、とりあえずみんな気になって見てくれるんじゃないでしょうか。

──いわゆる“ニッチ”なものですね。他にもポイントを教えてください。

みうら:自分が生み出すものでトクしようとか思わないことですね。トクしようと思うと、たいていバレます。「こいつ、これで当てようとしているな」「儲けようとしているな」と。だから嫌がられるんですよ。逆に、こいつ明らかに損してるなと思ってもらえれば「なんでそんなことやっているんだろう?」と気にしてもらえます。そこなんですよ。

──損しているものごとのほうが、注目されるということでしょうか?

みうら:たとえば売れてるITの社長さんが「これ今面白いんですよ」と言ったら、「ああ、ここに何か鉱脈があるんだろうな」と思ってしまうじゃないですか。でもいい年した上にこんな髪の毛を伸ばしてサングラス掛けた僕が言うと、「この人まともじゃないし、きっと損しているんだろうな……」と、逆に気になりますよね。そこは演出をしてほしいなと。みうらじゅんという役は、あくまでうちの事務所で育てているタレント、キャラクターなんですから。

──キャラクターなんですか?

みうら:常にサングラスかけてなきゃいけないし、このサングラスのせいで大変なこともある。よく昔は、飲み屋で「おい、サングラス取れや」とからまれたもんです。

──なるほど。キャラの演出も楽じゃないですね。やはり、見せ方や伝え方も重要になってくる、と?

みうら:やっぱり、もの自体は良いのに説明が悪くてダメなものって、たくさんあると思うんです。だってみんなもともとあるものを紹介しているだけなんですから。要は面白いものを見つけられるかというより、「面白く伝えられるか」なんです。その点、“どうかしている”人は無視されるか、気になってつい聞いちゃうかのどちらですから。

クリエイティブのヒントは「叱られそうなこと」にあり

みうらじゅん

──確かに、おかしな人の方が、確実に印象には残ります。

みうら:逆に三つ揃えのスーツをびっちり着てバカなことをやったりしても印象には残ります。でもごく普通のコンサバな格好をしていては、普段は生きやすいかもしれないけど、やっぱり印象には残らない。面白いことを追求する世界でやっていくには、それでは生きにくいと思いますね。

──そうかもしれませんね……。

みうら:だから1年に1回、みんなで集まってハロウィンとかをするんでしょうね。でもこっちは毎日がハロウィンだから、わざわざ渋谷に行ってバカ騒ぎする必要がないんですよ。ずっとハレの日なんでね。

──毎日がハロウィン(笑)

みうら:とはいえ、おかしいことをやりながらも、後ろめたさや恥ずかしさはあるんです。そこは、まともな気持ちが自分の中に残っているんでしょうね。やっぱり完全にキ◯ガ◯になってしまうのもダメなんです。そこはバランスが重要です。彼岸(あの世)と此岸(現世)の狭間に立つくらいの。

──他に、何か面白いものを生み出すヒントはありますか?

みうら:僕が今までやってきたことって、たいがい初めはすごく叱られたもんです。「ゆるキャラ」の初期は、「うちのマスコットはゆるくない!」と自治体の方に叱られましたし、仏像ブームの時も「仏像をブームと呼ぶなんてけしからん!」と住職に怒られました。「クソゲーム」なんて書いた日には、メーカーに怒られて雑誌の連載がなくなりましたから。

──怒られてもやりたいものだったということでしょうか?

みうら:やっぱりおかしいじゃないですか。キャラクターって本来キャラが立っているものなのに、なんだかよくわからない、所在なさげなキャラが各地にいっぱいいるんです。仏さまは昔から美しいもの、崇高なものとされてきたけど、実際は「かっこいい」とか「色っぽい」とか「変」と思ってしまうものもたくさんあるでしょ。そういう、誰もが心のどこかで思っているのに、声には出さないポイントに気づくかどうかなのかなと。要は「王様は裸だ」と言ってしまって、叱られるっていうことです。

心のどこかで感じる「変」を大切にする

みうらじゅん事務所にあるラブドール(ダッチワイフ)の絵梨花さん
みうらじゅん事務所には、ラブドール(ダッチワイフ)の絵梨花さんが佇んでいます。

──そういったポイントに気づくにはどうすれば?

みうら:やっぱりヒントは、「マイナスの部分」にあると思います。それと自分の場合、未だに正しい大人になれてないというか、小さい頃に思った疑問がそのままどこか残っているんですよ。だからセックスに対しても、「こんなことしちゃっていいの?」と未だに後ろめたい気持ちがあるし、口説いている人とかを見るのも恥ずかしいんですよ。だってみんなごまかして生きてるんです。愛という名のもとにとか言ってね。

──(笑) まあ確かに、童心を忘れないというのも、大切になってきそうですね。

みうら:小さい頃の疑問がずーっと宿便のように残ってしょうがない人が本来、芸術家でね。だって「芸術は爆発だ!」って発言、やっぱ、どうかしてるじゃないですか(笑)。

──岡本太郎さんの言葉ですね。

みうら:太郎さんは1970年の大阪万博で大人の仕事を頼まれて「太陽の塔」を作ったんですが、お祭り広場の屋根のサイズに合わず、そこだけ屋根をぶち抜いて塔を置いたんです。実は初めっから縮尺に合うものなんて作る気なかったんだと思うんですよ。

──貴重なお話ですね。

みうら:僕はそれを小学校高学年の時に見に行って、万博で唯一強烈な印象として残っています。「建物をバーンと壊して頭が出ちゃってるやん!」って。やっぱり見た時に、変だなと思いました。子どもって変が好きじゃないですか。でも大人になると、変を変と言ってはいけないみたいな態度になるから、もはや気がつかないんでしょうね。小さい頃はよく幽霊を見たのに、大人になったら見なくなったというのと同じで。

──ああ、なるほど……。

みうら:ゆるキャラにしたって、「ゆるいのに、なぜこれがキャラ!?」と変に思ったことが原点になっています。そこから各地に出向いてゆるキャラの写真やグッズを集めるようになり、その後ゆるキャラという言葉がたまたま誤解されて流行った。でも実はその裏には、まったく日の目を見ていない“変なこと”が山ほど僕が借りてる倉庫には眠っているんです。だから、流行語大賞になる言葉とか、巷で流行る面白いこととかって、生もうと思って生めるものではないんですよね。

最大の秘訣は、仕事を本業と思わないこと

みうらじゅん

──岡本太郎さんの他に、みうらさんがクリエイティブを生む上で影響を受けた人は?

みうら:やっぱり横尾忠則さんですね。もう、すごすぎですから。本当に足元にも及びません。

「叱られるかもしれない」ことを平気でやっちゃう。その衝動ですよ。やっぱり喜ばれようと思ってやると、嘘みたいなものが入っちゃうと思うんです。気に入られないかもしれないけどやるってところが、本気ですよね。

──やっぱりそこでしょうか。

みうら:といっても、それは飯を食えなくてもいいという覚悟でやるもので、なかなかできることではありません。だから僕はいろんな仕事をしているんです。よく「いろいろなことに興味がおありなんですね」と言われるけど、そうではなくて、いろんなことをしないとやっていけないんです(笑)。

──最近は、副業をする人も多くなっています。

みうら僕は全部が副業ですから、どれも本業ではないんですよ。そこが大きいかもしれないですね。やっぱり勤めている人って、それが本業だと思うわけじゃないですか。でも、本業なんて作らないことが一番だと思うんですよね。本業だと思うとしんどいじゃないですか。そもそも仕事って、人間の本業じゃないですもん。他の生物を見てください。そんなこと言ってるの人間だけですから。

──そう言われてみると、そんな気がしてきました(笑)

みうら:そのことに定年になったとたん気づくとね、燃え尽き症候群ってやつになってしまったりする。そんなことになってしまわないためにも、今のうちから自分がやっている仕事は本業じゃないんだというのを、心に刻んでおくべきだと思います。そういう本業じゃないと思ってやるところにこそ、面白いものが生まれるんですからね。

みうらじゅん

1958年京都市生まれ。イラスト、エッセイ、小説、音楽、映画、ラジオ等々、幅広い分野でその特異な才能を発揮するクリエーター。1980年武蔵野美術大学在学中に『月刊漫画ガロ』で漫画家デビュー。1982年ちばてつや賞受賞。1997年「マイブーム」で新語・流行語大賞受賞。2005年日本映画批評家大賞功労賞受賞。2018年仏教伝道文化賞 沼田奨励賞を受賞。著書に『アイデン&ティティ』『青春ノイローゼ』『色即ぜねれいしょん』『人生エロエロ』『「ない仕事」の作り方』など多数。2月7日に、新刊『マイ遺品セレクション』が発売。

オフィシャルサイト:miurajun.net

Twitter:@miurajun_net

取材・文/田嶋章博(@tajimacho
撮影/奥本昭久(kili office)