会社は仕事だけをさせてくれない

サラリーマンの皆様、人間関係に疲れていますか。

僕は疲れています。人間関係って本当に難しいですよね。

仕事における人間関係は、あらゆる人間関係の中でも一番難しいものです。

特に、厄介なのが会社内での人間関係。

会社なのだから「仕事で成果を出せばいいだろう」と思いたいところですが、会社は仕事だけをさせてくれる場所ではありません。

上司や同僚への挨拶、電話の応対、喫煙所での雑談、会議での一挙一動、飲み会の盛り上げ方。社内に関わるありとあらゆる局面で、快or不快、好き嫌い、喜怒哀楽といった感情がつきまといます。

そして、こうした感情の蓄積からつくられた人間関係が、結果として自分自身の評価や社内の立ち位置さえ左右します。

「上司のご機嫌を取るのが上手なあいつが出世して、仕事は出来るが不器用なあいつが冷遇されている」

そんなことってよくありますよね。

これは本来的には言えば、おかしいことです。不条理な思いをされている方も少なくないでしょう。

それでも、会社内では仕事の点数を稼ぎながら人間関係の点数も稼いでいかねばならない。こうした世界を生き抜いていくこともまた仕事である、というのは否定できない事実だと思います。この現実といかに向かい合うか。考えていきましょう。

人間はわからない

人間関係をうまくやっていくために、我々は相手のことを「わかろう」とします。

しかし、人間というのはおおよそにして意味不明です。突然怒ったり、突然上機嫌になったりします。

もちろん、その背後で自分が認識できていない何らかの政治的な力が働いていることも大いにあり得るのがオトナの怖いところですが、そういったものを抜きにすれば大半の人間というのは理解不能に近い存在だと思います。

僕は発達障害という問題を抱えているので、一般の皆様以上に人間が理解不能に見えます。あの人が怒った理由がまったくわからない、あの人の言動にはまるで一貫性がなくてどうしていいのかわからない。

そんな悩みをずっと抱えて来ました。

それこそ本を一冊書くくらいそんなことに悩んできました。(「発達障害の僕が『食える人』に変わったすごい仕事術」、KADOKAWAさんより好評発売中になります、ステルスしないマーケティングです)

しかし、これについては最近一定の結論を出しました。

けっきょく、「人間はわからない」ということです。

あの人がどんな人で、どんなことを考えているか。そんなことは普通わからないのです。少なくとも、仕事上の付き合い程度では。むしろ、完全にわかり合えることなどありえないし、その必要もない。人間を理解しようという努力はおおよそにしてすべて無駄です。悩むだけムダなのです。

上司の話は真面目に聞くな

突然ですが、想像してみてください。

明日会社に行って、自分以外が全員動物だったらどうしますか? 

上司はゴリラ、取引先はキリン、同僚はハシビロコウのような状況下で、相手の気持ちをわかろうとしてもらちがあきませんよね。

でも、日ごろ仕事で無理にでもどうにかして相手をわかろうとする努力は、案外これと近いのです。必要なのは相互理解ではなく、バナナとか生魚だったりします。

「上司のためを思うなら、上司の話を真面目に聞く必要はない」

これは揺るがぬ結論だと僕は思います。

というのも、上司の話を真摯に聞いてすべてを理解することはできません。なぜなら、おおよそ人間の話というものは総合的に矛盾しているからです。

「お前は言われたことだけやっておけばいい」と言っておきながら、気が付くと最後は「仕事って、やっぱり創意工夫なんだよな」と結論するのは、何もあなたの上司に限ったことではありません。

かといって、その矛盾点を指摘したところで何の得にもならないということも、皆様はすでにご理解されているでしょう。

僕はこれを理解するのに25年くらいかかりましたが…。

「適当」という発想ー苦労、努力、能力さえ抑えれば、上司の理解者になれる

そこで「適当」の概念が導入されます。

上司の話の聞くべきポイントを抽出して、そこだけを抑えておけばいいという発想です。会社で自分以外は全員動物だったら、最低限危害を加えられないように気を付けておけばいいわけです、怒られる前にバナナを与えよ。

さて、この「聞くべきポイント」とは何か。

一つはまず「仕事に関する指示」です。これは聞き逃してはいけません。「AはBを踏まえてCしろ。ただしDはするな」といった指示を聞き逃すと、大変なことになります。これは言うまでもないお話だと思います。

では、そうではない感情的な部分。これは何を聞けばいいのか。

例えば上司とサシで呑んだ時、彼の話のどんなところに耳を傾ければいいのか。これは上司の「苦労」と「努力」、そして「能力」の三つで十分です。これは「共感」を効果的に起こす方法です。考えてもみてください。あなたは自分の苦労と努力、そして能力を理解してくれる人を嫌いになれるでしょうか。

「いつも本当にお疲れ様です」

「~さんじゃなければやれない仕事ですよ」

皆様も、こんな相槌のコンボを無意識的に使ったことは多々あることでしょう。こと会社内での人間とのコミュニケーションにおいては、これを見つけ出して的確にプッシュするのが一番重要です。

人間は、共感してくれる人が大好きです。常に理解者に飢えています。あの嫌われ者の怒鳴り散らす上司こそ、こういったものに飢え乾いていたりします。

そして、それ以外の細かい話は適当に聞けばいいのです。

この「適当」の力はとても強い。「上司がわからない」という悩みを抱える皆様は是非、苦労、努力、能力の三点に絞って上司を観察してみてください。

それだけで、あなたが「理解者」と認知される確率は跳ね上がるでしょう。的を絞って適当にやる。それが一番大事です。

これに気づいて以来、僕は随分人間関係が楽になりました。

会話というキャッチボールで重要なのは「投げ返すこと」

こうした「適当」という発想は、いろいろな場面に応用できます。

よく、会話はキャッチボールにたとえられますね。しかし、この会話というキャッチボールにおいて、最も重要な要素とはいったい何なのでしょうか。

僕はそれを「球を投げ返すこと」、そしてそれを「続けること」だと考えています。相互の球の投げ合いが続いてさえいれば―「ピッチングマシーン」や「デッドボール」にならなければ、それでいいのです。

これは、相手が取れるような球を投げ返してやればあとは「適当」で大丈夫だということです。

それ以外の要素―フォームが崩れていようと、球速が遅かろうと、何回バウンドしようといいのです。受け取ってさえもらえれば、投げ返す球がテニスボールやピンポン玉にすり替わっていてもOKです。ただし、手りゅう弾はやめましょう。

このことを、さほど親しみが湧くわけでもない上司や同僚のような、あまり望まない仕事仲間との雑談に置き換えてみるとどうなるでしょう。

愚痴、近況、プライベート、悩み相談……次々に飛んでくる仕事とは関係のない聞きたくもない話に対して、どんな球を投げ返せばいいのでしょうか。

雑談では「適当」な同意に「共感」を添える

あくまで雑談、悩むことは何もありません。実は、相手もそんなに重要で深刻な話をしているつもりはなかったりします。むしろ、肝心なのはその会話が続くこと。

そんなときこそ、「適当」という球は有効です。たとえば、こんな感じです。

相 手「今月からまたタバコが値上がりしたねえ」

あなた「そうですねぇ、上がりましたね」……①

相 手「いっそ1,000円くらいまで上がれば禁煙できるんだけどね」

あなた「確かに! そうすれば禁煙できますね」……②

相 手「俺、禁煙は何度もチャレンジしてるけど、一週間が限度だよ」

あなた「いやあ、一週間でもつらいですよ。僕なんて禁煙しようって思うだけで一日もできなくて。チャレンジするだけでもすごいですよ」……③

①や②は、相手の言葉を拾って「そうですねぇ」「確かに」「あぁ、なるほど」といった共感的な相槌を「適当に」返しているだけで、何も言っていないのと変わりません。

しかし、コミュニケーションの上手な人はこうした無内容な応答を非常によく使います。

また、③のように、先述の苦労、努力、能力という共感ポイントをプッシュするだけであなたの印象はガラリと変わります。

返事に困ったら、「適当」な同意に「共感」を添えて投げ返しましょう。

「茶番」だからこそ「適当」に乗り切れ

雑談は、会社という部族の通過儀礼のようなものです。会社の人間関係なんてくだらない、茶番だ。そんな気持ちになる皆さんも多いでしょう。

しかし、僕はこれができないために新卒で入った会社をほうぼうの体で逃げ出すことになりました。このちょっとした意識でコミュニケーションは本当に大きく変わります。是非、試してみてください。

繰り返しになりますが、大前提として、人間はわからないものです。ゆえに、適当で良いのです。

自分を追いつめ過ぎないでください。それは多くの場合、あなたの人格ではなく純粋にテクニカルな問題です。「相手の気持ちを理解して誠実に対応」すればするほど事態が袋小路にはまりこんでいく。

人間はわかりあう必要などないのです、適当に気楽に毎日を。

やっていきましょう。

この記事を書いた人

借金玉(しゃっきんだま)

借金玉(しゃっきんだま)

発達障害サラリーマン。1985年生まれ。診断はADHD(注意欠如・多動症)の発達障害者。幼少期から社会適応ができず、紆余曲折を経て早稲田大学を卒業後、金融機関に就職。まったく仕事ができず逃走した後、一発逆転を狙って起業。一時は調子に乗るも大失敗し、それから1年かけて「うつの底」を脱出。現在は営業マンとして働く。著書に『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』。

Twitter:@syakkin_dama