もう、部下を管理するだけの上司とはサヨナラしたい。誰でもそう思っていることでしょう。うちの上司は問題があるんじゃないか? そう感じている人も多いでしょう。

メンタルカウンセリングで2万人の管理職と向き合ってきた見波利幸先生は、「日本一、上司に詳しい男」。

問題上司とはどう付き合えばいいのか。心を折られないために、つぶされないために、どうしたらいいのか? 部下にとって役に立つお話を聞いてきました。 

常識中の常識、ホウ・レン・ソウにも落とし穴が!

見波利幸
見波利幸(みなみ・としゆき)日本のメンタルヘルス研修の第一人者。これまで、数多くの講演、研修、カウンセリング、職場復帰支援などをおこなっている。
 
Dybe!編集部男性記者

編集部

ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)が仕事の基本だと教えられてきました。でもそれが上司との関係をこじらせることもある、と先生の本に書いてあります。それはいったいどうしてですか?

見波利幸

見波さん

たしかに、そこ、落とし穴の一つですね。部下のホウレンソウに頼る上司は失格、なのです。ホウレンソウは部下がやることで上司はそれを待っていればいい、というのが間違いですね。コミュニケーションは相互に行うべきで、ホウレンソウを要求するだけの上司はその役を果たしていません。

そういう上司に当たるとしんどいです。上司から部下に声をかけられるか。そこが大切なんです。ホウレンソウは上司にとって都合がいい制度だったのです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

でもホウレンソウ、やらないとまずいですよね。やらなきゃ、仕事が回らなくなる。

見波利幸

見波さん

もちろん、きちんとやるべきです。でも今は、ホウレンソウをしていればそれで終わりというわけにはいかないですよ。上司にもいろいろなタイプがありますが、昔は無条件に上司に従っていればよかった。指示の通りに動いていれば、それでよし、と。

Dybe!編集部男性記者

編集部

今は部下も頭を使って判断して、考えていかないと、ということですよね。

見波利幸

見波さん

そうですね。でも、いろいろと難しいこともあります。

たとえば飲みに行こうと誘われたけれど行きたくない時ってありますよね。仕事の話なら本来は業務時間中に片付けるのが上司の役割です。それを飲み会でやられたら…。

Dybe!編集部男性記者

編集部

あ、行きたくありません。でも断わるとカドが立つし。

見波利幸

見波さん

仕事の延長なら無理に行く必要はありません。そんな上司なら行ってもメリットないですよ。けれど、会社の中で上司との関係を断つことはできません。部下もそこは努力すべきです。5回に1、2回は行って、こちらの話も聞いてもらうなどをしたほうがいいでしょう。

上司に問題がある場合、部下としては被害を最小限にするしかない

Dybe!編集部男性記者

編集部

同じ職場に鬱などの不調者が続くのは職場環境が悪いのか、上司が悪いのか…。

見波利幸

見波さん

それはもう、上司。上司のキャラクターに問題があるケースが圧倒的です。上司が代われば職場は変わる。

Dybe!編集部男性記者

編集部

そうは言われても…。部下のほうから上司は代えられません。

見波利幸

見波さん

昔も今も難しいのはそこなんです。部下にできることは、被害を最小限に食い止めること。

大切なことは、自分の身をどうやって守るかですよ。ムチャクチャな上司ってどこにでもいるんです。それと、部下のことが目に入らない無頓着な上司も。

Dybe!編集部男性記者

編集部

問題上司とは、具体的にはどういう人なのでしょう?

見波利幸

見波さん

性格的に難あり、の場合ですね。4つのタイプがあります。部下の感情が汲み取れず機械的にしか動けないタイプ。激情型ですぐ興奮するタイプ。自己愛が強すぎて自分中心なタイプ。部下は出世の道具としか見ない謀略好きなタイプ。こういう上司に当たると災難ですね。そして、複合型もいるんです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

なるほど。確かにどのタイプも嫌ですね。しかも、複合型とか無理すぎます…。

見波利幸

見波さん

当たったらあきらめる。昔はそうでした。嵐が過ぎ去るのをじっと待つ。辛抱して耐えて、自分が上司になれる日までひたすらがんばる。でも、それで心が折れてしまったら元も子もないんです。まずは上司のタイプを見抜くこと。見抜いた上で、上司との関係を壊さずに慎重に行動しないといけません。

要注意の上司4タイプの対処法とは?

見波利幸

Dybe!編集部男性記者

編集部

4タイプの上司の対処法を教えていただけますか?

見波利幸

見波さん

まず、機械型の上司。「部下の仕事に関心を示さない」「融通がきかない」という特徴が見られます。独自のこだわりがあり、自分の好きな仕事にはのめりこむが、マネジメントに向いてないタイプが多いですね。

Dybe!編集部男性記者

編集部

マネジメントに向いてない…。いそうですね。 

見波利幸

見波さん

 対処法としては、上司には自分の好きな仕事に集中してもらい、組織運営など上司が苦手な仕事は、部下たちがフォローすることでうまく行ったりするケースも多くあります。「うちの上司はそういう人」と割り切って仕事をするのをおすすめしています。

Dybe!編集部男性記者

編集部

なるほど。下手に問題解決するよりも、そのほうがいいかもしれません。

見波利幸

見波さん

次に激情型。これはパワハラ上司の典型です。部下の人格を否定する、達成できないようなノルマを与える、暴力振るうなどをしてしまう自分の感情をコントロールできないタイプですね。

Dybe!編集部男性記者

編集部

ヤバい上司の典型ですね。機械型のほうがましな気がします。

見波利幸

見波さん

このタイプはカウンセリングでもなかなか改善しない厄介なタイプです。部下ができることはその上司の怒りのポイントを見極め、そこには触れないようにしつつ、万一怒らせてしまった場合は、まずは言い分を吐き出させること。反論すると、もっと長く怒られ続けるうえに、恨みを買うこともあります。

Dybe!編集部男性記者

編集部

恐ろしいです。なぜ会社はそんな人を上司にしてしまうのでしょう?

見波利幸

見波さん

やる気が前面に出て、上に気に入られたりすることもあるのです。会社としてはそんな人を上司にしてしまうのは損失のはずなんですけどね。

3つ目は、自己愛型。このタイプは自己評価と他者評価のギャップが大きい人で「有能だと思われたい」という意識が非常に強い人です。自分のことを褒める部下の評価は高く、自分に反抗的な部下の評価は低いですね。また、部下の手柄を自分の手柄にします。

Dybe!編集部男性記者

編集部

ゴマすりに弱く、えこひいきする上司ですね。

見波利幸

見波さん

対処法は、他に比べたら比較的簡単です。上司への賞賛を続けていれば、敵意の対象にされるリスクは低くなります。不本意かもしれませんが、バカにできない真実です。

最後は、謀略型。これは最も危険な上司です。支配欲や権力欲が強く、結果のためには手段を選ばないうえ、部下をつらい目に遭わせても良心が痛むことはありません。そして、このタイプは出世をすることが多いのです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

なんだかサイコパスみたいですね、怖いです。

見波利幸

見波さん

対処法は、その上司が「命令、強制、処罰」によるマネジメントをする人間だと認識し、従う姿勢を見せるしかありません。ただ、あなたが「使える」人間と認識しているうちは、攻撃をしてこないので、ことさら慌てる必要はありません。有効な対処法はないので、休日を充実させるなど、意識を外に向けてリフレッシュすることが大切です。

いい上司、悪い上司。見分け方のポイントはこれだ。

見波利幸

 
見波利幸

見波さん

ところで、性格とは別に、上司には2種類あるのを知っていますか?そこが大切です。

Dybe!編集部男性記者

編集部

いや、知らないので教えてください。

見波利幸

見波さん

管理するだけの上司と、育ててくれる上司です。この2つができるのが、本当の意味でできる上司。管理しかできない上司は、今はもう通用しません。

Dybe!編集部男性記者

編集部

それをどうやって見抜くのでしょうか。

見波利幸

見波さん

怒り方でわかります。何度か叱責されると見えてきます。自分の評価を気にして怒っているのか、部下のことを考えて怒っているのか。

部下の成長を素直に喜んでくれる上司なら信頼できます。部下に配慮し育成してくれる上司だったら、こちらももっとがんばって上司の期待に応えられる。

Dybe!編集部男性記者

編集部

そんな上司はめったにいない気がします。それともこちらが気づいていないだけでしょうか?

見波利幸

見波さん

残念ながら少ない。少ないけれど、どの会社にもいるんですよ、自分の成績を犠牲にしても部下の成長を自分のことのように喜んでくれる上司。部下は上司を見抜くことも仕事なのです。

ストレスに強くなることは心がけ次第でできる

見波利幸

Dybe!編集部男性記者

編集部

そういう恵まれた場合はいいですが、さきほどの例のような問題上司に当たってしまった時、対処法がうまくいかないこともあると思いますし、究極的にはどうしたら良いのでしょうか?

見波利幸

見波さん

その答えはズバリ、ストレス耐性を高めることです。折れない心を作ること。理不尽な上司につぶされないために、抵抗力をつけることです。うまくやりすごす力、と言ってもいいでしょう。言い換えれば、ひどい扱いを受けても気にしないようにする、ということです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

では、ストレス耐性が低い人はどうすればいいのですか?

見波利幸

見波さん

多くの人はストレス耐性という言葉、その意味すら、知らない人が多いと思います。まずはこのことをネットなどで調べてください。ストレス耐性が必要なのだということをしっかりと自覚するのです。今の若い人は、ストレス耐性が弱い傾向もある。子供のころ外で遊ばなかったり、兄弟がいなかったり、原因は多々あります。叱られたことも少ないでしょうし。

Dybe!編集部男性記者

編集部

ストレスに対する対応力を高めることでストレスは軽減できることを知る、ということですね。

見波利幸

見波さん

そうです。問題上司はいるのだ、という前提で、自分の身を守るためにも勉強しましょう。ストレスとは何かを知ることで、ストレスに立ち向かえるし、耐性が身につきます。やれることはたくさんあるんです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

具体的には、どんなことを勉強すればよいのでしょうか?

見波利幸

見波さん

5つほどあります。勉強して知っておきたいことは、①ストレスでなぜ病気になるか、そのメカニズム。②病気にどう対処するか。③睡眠がいかに大切か。④ストレスの受けとめ方、認知の仕方。⑤感情のコントロール。

たとえば①を知るためには、ストレスで自律神経がどう影響するのか、どうしたら健康のために副交感神経を高められるか、といったことを勉強するのです。こういうことがちゃんと頭でわかっていれば鬱にはなりにくい。

Dybe!編集部男性記者

編集部

過重労働だけでは鬱にはならないということでしょうか?

見波利幸

見波さん

そうです。問題なのは、その人にストレス耐性がどれほどあるかということなのです。

こんなひどい上司だからこちらとしてはやりようがない、ではダメ。少しでも自分を守るためにできることはないか、と勉強するのです。すると、ストレスから解放される小さな可能性が必ず見つかります。そして、その時、助けになってくれるのが、もう一つ。

Dybe!編集部男性記者

編集部

なんでしょうか?

見波利幸

見波さん

同僚同士で話をしましょう。「あの上司、どう思う?」とか「今、大変なんだけどあなたはどう?」とか。一人で上司とやり合うのは大変です。しんどいし、孤独です。仲間がいて痛みを分け合えることができれば、気持ちは楽になります。サポートしてくれる人間関係を同僚との間に作っておくのです。直接問題にぶつかる前に緩衝地帯があるといいのです。それを同僚に期待しましょう。

Dybe!編集部男性記者

編集部

問題のある上司がいた場合、その上司を飛び越えてその上に訴えるのはやはりタブーでしょうか?

見波利幸

見波さん

組織の一員としては、してはいけません。それが上司に伝わればもっと攻撃されますから。けれどもハラスメントの被害を受けた場合は別です。パワハラ、セクハラなどは、受け続ければ体の不調か離職かのどちらかに陥ります。そうなってからでは、手遅れです。そうなる前に手を打たなくてはいけません。そこは勇気を出して訴えましょう。

Dybe!編集部男性記者

編集部

あらゆる手を尽くしても事態が改善されない。もうだめだというところまで追いつめられたら…。

見波利幸

見波さん

自分が壊れてしまいそうなら、それはもう、転職です。会社に依存して、しがみつくのは危険です。かつては転職が多いとそれだけでレッテルを貼られて人間性が否定されましたが、今は違います。ここを辞めたら仕事はない、なんて思わないことです。

見波利幸(みなみ・としゆき)

1961年生まれ。外資系コンピューターメーカーを経て、野村総合研究所に入社。キヤノングループのエディフィストラーニングの主席研究員などを経て日本メンタルヘルス講師認定協会の代表理事に就任。日本のメンタルヘルスの黎明期から、管理職の一日研修を提唱し、メンタルヘルスの開拓者として活躍し、現在講師の育成に当たっている。『心が折れる職場』『上司が壊す職場』『心を折る上司』など、著者も多い。

取材&文/竜野つとむ
撮影/ケニア・ドイ