女性誌やビジネス誌、講演会などにひっぱりだこの睡眠コンサルタント・友野なお先生。

実は、ご自身が睡眠によって人生を一変させた経験を持っている。

今回、先生に身を持って体験した睡眠の大切さや、ストレスをためない睡眠のとり方について聞いてきた。

若いから寝なくてもなんとかなると思っている人に先生が伝えたいこととは?

ストレスでパニック障害に。体重も15キロ増加

友野なお
友野なお(とものなお)。順天堂大学大学院にて睡眠を研究し修士号を取得。睡眠コンサルタントとして企業向けの睡眠研修やコンサルティング商品開発などを行う。日本睡眠学会正会員。
Dybe!編集部男性記者

編集部

寝ることは大事だとは思いますが、仕事が忙しかったり飲み会や趣味の時間に費やしたりで睡眠時間が少なくなりがちです。

友野なお

友野さん

確かに若い世代は体力があることもあって、まずは睡眠を犠牲にしがちです。ただしそういう人も、睡眠が持つ“力”を一度体験すると、考え方が変わると思います。まさに私がそうだったので。

Dybe!編集部男性記者

編集部

先生が?

友野なお

友野さん

私は28歳の時、“職なし・金なし・彼氏なし”という状態で、大きなストレスを抱えていました。当時はパニック障害やアトピーにも苦しめられ、まさに人生のどん底。

外出もできない精神状態だったので、それを克服する方法を延々とネットで調べ、それで睡眠が削られてさらに症状が悪化するという悪循環でした。体重もあっという間に15キロ以上増え、メンタルもどんどん不健康になってしまったのです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

それはつらかったでしょうね…。

友野なお

友野さん

まさに出口の見えない真っ暗なトンネルにポンと置かれ、どこに向かって歩けばいいかもわからないという状況でした。

人生で一番不思議なことが起こった

友野なお

友野なお

友野さん

そんな状態を母が見かねて、ふとこう言ったんです。「一回、ちゃんと寝てみなよ」と。母は特に睡眠の知識があったわけではないので、完全に親心からの言葉でした。

Dybe!編集部男性記者

編集部

それで、睡眠をきちんと取ってみたんですか?

友野なお

友野さん

はい。それまでは夜中や朝方まで起きていましたが、まずはとりあえずちゃんと夜に寝るようにしました。そうしたら少し体調が良くなった感覚があったんです。

そこで、何時ごろから何時間くらい寝たらいいかなど、いろいろ試してみたんです。その結果、どうやら夜12時くらいに床につき、7時間くらい寝るのが自分の体には一番いいようだというのがわかりました。

Dybe!編集部男性記者

編集部

そうなんですね。

友野なお

友野さん

それ以降、睡眠のリズムを意識したり、眠る環境を整えたりしていったところ、体調はみるみる良くなっていきました。明らかにパニック障害の発作の回数が減り、気持ちが前向きになり、アトピーや生理のトラブルも改善。体重も半年で7キロ、1年で10キロ落ちました。結局、15キロ落ちて産後になった今でもそれをキープしています。

Dybe!編集部男性記者

編集部

すごいです。

友野なお

友野さん

あんなに長い期間苦しみ、何をやってもダメだったのに、こんなにわかりやすく良くなるものかと驚きました。そうしてありがたいことに、病気は完治しました。

このことが人生の中でも一番の衝撃で、あまりにも不思議だったので、「なぜなんだろう」とそこから科学的な睡眠の勉強を集中的に行いました。それが今の仕事につながっています。

「寝るとブタになる」はウソ

友野なお

Dybe!編集部男性記者

編集部

先ほどの先生が15キロのダイエットに成功した話ですが、睡眠が長いと太るようなイメージがありますが、ちがうのでしょうか。

友野なお

友野さん

以前は「寝るとブタになる」という通説がありましたが、今は科学的に完全否定されています。

Dybe!編集部男性記者

編集部

科学的に…。

友野なお

友野さん

たとえば、コロンビア大学の研究グループの調査では、7~9時間眠っている人と比べ、5時間しか眠っていない人の肥満度は50%高く、4時間以下しか眠っていない人にいたっては、肥満度が73%も高かったという結果が出てきます。

Dybe!編集部男性記者

編集部

73%!

友野なお

友野さん

さらに、睡眠時間が短い人は、1日当たりのカロリーを350~500kcal余分に摂取しているという指摘もあるほどです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

そうなんですね。でも、なぜでしょう?

友野なお

友野さん

研究では、睡眠が不足すると、食欲増進ホルモンが増え、食欲抑制ホルモンが減るということがわかっています。睡眠不足は「食べたい」という欲求を強くし、「お腹いっぱい」というシグナルをホルモンレベルから弱めてしまうのです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

ホルモンのせいなんですね。

ストレスが蓄積し、ある日心がポキッと折れる

友野なお

友野なお

友野さん

話は変わりますが、なぜきちんと睡眠を取ることで、体だけではなく、心の状態が劇的に良くなるのかわかりますか?

Dybe!編集部男性記者

編集部

いえ、いまいちよくわかりません。

友野なお

友野さん

睡眠には浅い眠りのレム睡眠と、深い眠りのノンレム睡眠がありそれぞれ異なる役割を担っているのですが、レム睡眠には、感情や思考を整理する機能があるのです。

だからしっかり睡眠をとらないと、感情の抑制機能が低下したり、イライラして人とぶつかりやすくなったりします。そうすると自己嫌悪に陥り、ますますメンタルが落ちやすくなる、というわけです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

なるほど…。

友野なお

友野さん

また何か嫌なことがあった時に、適切な睡眠を取らないと負の感情が整理されず、翌日に持ち越してしまいます。そうしたストレスが蓄積されていくと、あるとき心がポキッと折れてしまうことも。心が折れるというのは、たいてい一つの原因ではなく、ストレスの積み重ねの末に起こるものです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

なんかそれ、すごく実感できます。心が折れてしまう時って、直接の原因はほんのささいなことだったりしますよね。

友野なお

友野さん

もちろん昼間の活動でもストレスはケアできます。たとえばマインドフルネス(瞑想)などです。でも心や脳を根本的にリセットしてニュートラルな状態に整えられるのは、睡眠だけなんです。

また睡眠は仕事の生産性にも関係します。適切な睡眠により、集中力や注意力、コミュニケーション能力、クリエイティブ能力というビジネスに必要な能力が高まることがわかっています。

Dybe!編集部男性記者

編集部

そうなんですね。

友野なお

友野さん

そして生産性が上がると仕事が早く終わり、飲みに行ったり趣味に没頭したりと、ストレスを解消することに多くの時間を割けます。そうするとぐっすり眠れ、より高いパフォーマンスで働ける、という好循環が生まれます。

逆に睡眠が足りないと当然、仕事の生産性も落ちます。

Dybe!編集部男性記者

編集部

どのくらい落ちるのでしょう?

友野なお

友野さん

もちろん個人差はありますが、睡眠時間が5時間を切る日が何日か続くと、酔っぱらっている状態と同じレベルまで脳の機能が低下すると言われています。お酒を飲みながらダラダラ仕事をしているようでは、生産性が低くて当然です。

Dybe!編集部男性記者

編集部

それは当然、仕事が進みませんね。

 

睡眠の質を高める「最強の方法」とは?

友野なお

友野なお

友野さん

では、どう睡眠をとればストレスが軽くなり、仕事の能率が上がるのかについてですが、まずベースとなるのが、適切な睡眠時間と睡眠時間帯です。

睡眠時間に関しては、7~9時間が目安となります。まれに3時間ほどの睡眠でOKなショートスリーパーの方もいますが、多くの方は7~9時間が理想的です。その範囲内でいろいろ試してみて、特に翌日の心身の調子がいい時間を見つけるのがいいでしょう。

Dybe!編集部男性記者

編集部

時間帯はどうでしょう?

友野なお

友野さん

睡眠のコアタイムは0~6時なので、この時間帯にかぶせて7時間程度睡眠時間を確保できるのが理想です。22時~2時までのゴールデンタイムという説は睡眠都市伝説なので、信じなくて大丈夫です。

これらをふまえたうえで、さらに睡眠の「質」を上げることがポイントです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

具体的には?

友野なお

友野さん

重要なキーワードとなるのが「光」です。まずやっていただきたいのが、就寝1時間前になったら蛍光灯の明るい白い光ではなく、暗めの暖色系の照明にすることです。オレンジ色の白熱灯や間接照明ですね。光量を調節できるタイプや、スイッチを押すと白色と暖色が切り替わるタイプが便利です。

Dybe!編集部男性記者

編集部

なぜ暗めの暖色系が睡眠の質を高めるのしょう?

友野なお

友野さん

明るい蛍光灯の光は、体を覚醒させる「交感神経」を活性化させるのに対し、落ち着いた暖色系の光は心身を緩めてリラックスさせる「副交感神経」を活性化させるからです。

逆に、光に関してぜひ「やめてもらいたいこと」もあります。

Dybe!編集部男性記者

編集部

なんですか?

友野なお

友野さん

就寝30分前になったらスマホ、テレビ、パソコンを見ないことです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

スマホ見ないとか厳しいですね。なぜダメなのでしょう?

友野なお

友野さん

画面から発せられるブルーライトが、睡眠ホルモンの分泌を抑制してしまうからです。特にスマホは至近距離で集中して画面を見るので、光の影響はダイレクトですし、SNSなどの情報によって心理的に睡眠が妨げられてしまうとことも考えられます。現代人はなかなか難しいと思いますが、睡眠の質を上げるにはこれが一番のポイントになるので、ぜひ意志をもってやめてもらいたいです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

とはいえ、LINEやメールがきたら見ないわけにはなかなかいきません。スマホをいじるのがクセになっている部分もあるので、寝る前にまったく見ないというのはけっこう難しそうです…。

友野なお

友野さん

ちょっとした工夫と慣れで、意外と簡単にやめられますよ。たとえば「お風呂を出たらもうスマホはやらない」などとルール化する、寝る30分前になったら「睡眠モード」に切り替えて通知がされない状態にする、LINEの返信やアラームの設定は、帰りの電車ですべて済ませてしまう、などです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

なるほど、ルールを決めてしまえばできるかもしれませんね。

「睡眠力」は一生モノのスキル

友野なお

Dybe!編集部男性記者

編集部

睡眠が大切なことはよくわかりました。でも、仕事などでどうしても睡眠を充分にとれない状況もあります。そういう時に応急処置的にできることってありますか?

友野なお

友野さん

量が充分にとれない時こそ、ぜひ質を高めることでカバーしてもらいたいです。たとえ短い睡眠であっても服を着たままソファで寝るのではなく、きちんとリラックスできるパジャマを着ておふとんで寝るとか、お風呂に入る時間もなければ、ネックウォーマーやレッグウォーマーで首・足首を温めて寝る、などです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

ちゃんと寝れない時こそ、睡眠の質を高める、ですね。あと、ランチの後、睡魔が襲ってくるのですが、どうしたらいいでしょうか?

友野なお

友野さん

お昼休みに仮眠をとることをお勧めします。

Dybe!編集部男性記者

編集部

仮眠? 会社でですか?

友野なお

友野さん

はい。自分のデスクで椅子に寄りかかり、15~20分目を閉じてください。顔を見られたくないという人は、アイマスクをしたり、ストールを頭からかけたりしてもいいでしょう。眠れないという人は、まずは目を閉じるだけでも効果があるので習慣づけていただきたいです。

Dybe!編集部男性記者

編集部

周りを気にする人だと最初は難しいかもしれないですが、効果はありそうですね。

友野なお

友野さん

はい、健康効果はもちろん、午後の仕事の効率アップにもつながりますよ。

Dybe!編集部男性記者

編集部

いいことを聞きました。ぜひ試してみたいです。

友野なお

友野さん

あらためて、日々のストレスを軽くし、仕事の生産性も高めてくれる「睡眠力」を、ぜひ一生もののスキルとして習慣化してもらえたら嬉しいです。

友野なお(ともの・なお)

睡眠コンサルタント。順天堂大学大学院 スポーツ健康科学科にて睡眠を研究し、修士号を取得。 自身が睡眠の改善で体質改善および15kg以上のダイエットに成功した経験から、睡眠を専門的に研究。 科学的なエビデンスを基本とした行動療法からの睡眠改善、快眠を促す寝室空間づくりを得意とする。企業向けの睡眠研修やコンサルティング、健康・美容市場における商品開発などを行う。 日本睡眠学会正会員。元ミス日本。著書に『正しい眠り方』など。

ウェブサイト:SLEEP CULTURE

取材・文/田嶋章博(@tajimacho
撮影/ケニア・ドイ