昼食をとった後、頭がボーッとして眠くなってしまう。大事な会議やプレゼンがあるのに集中できない。食べ過ぎがよくないのかと食事を少なめにしてみても、やっぱり眠気に襲われて気がついたらいつの間にか意識が飛んでいた……。

なんてこと、ありませんか?

実は、人間の体のリズムから午後1〜3時頃はちょうど眠くなる時間帯だという。

でも……、

「ちょっとしたことに気をつけるだけで、午後の眠気を抑えることはできますよ」

と教えてくれたのは、脳活性・アンチエイジング・ダイエットを専門とする、管理栄養士の高杉保美さん。

脳をシャキッと目覚めさせて、午後の仕事を乗り切るための食事法について、お話を聞いてきました。

お腹いっぱい食べても眠くならない昼食の選び方のコツは?

高杉保美
高杉保美(たかすぎ・ほみ)。管理栄養士。業界最大手プライベートジムで2,000人以上のカウンセリング、栄養指導を実施。自身も管理栄養士を取得後に半年間でマイナス15kgのダイエットに成功している。

──いつも昼食の後に、ものすごく眠くなってしまって……。午後に大事な会議や商談が入っていても、集中できなくて困っています。眠気を防ぐ方法ってあるんでしょうか?

高杉保美さん(以下、高杉):眠気を防ぐポイントは血糖値にあります。血糖値を上げないよう、できるだけお米などの糖質を避けた食事を選ぶようにするのがポイントですね。

──糖質と血糖値ですか?

高杉:糖質をとると血糖値が上がりますが、それに反応してインスリンという血糖値を下げるホルモンが出ます。そのあと急激に血糖値が下がることで低血糖状態になって眠気がきてしまうんです。

──もしかして、ゲン担ぎでカツ丼を食べたりしてたのがよくないとか……。

高杉:カツ丼はお米やカツの衣に糖質が多く含まれていますからね。眠くなりやすいと思いますよ。

──逆にお腹いっぱい食べてしまうのがよくないのかと思っておにぎり1個だけで我慢したり、いろいろやってみたんですが……。

高杉:必ずしもお腹いっぱい食べたから眠くなるというわけではありません。食べる量よりも栄養素の質が大事なんです。

──そうだったんですね……。

高杉:できるだけお米などの糖質を避けて、お肉やお魚でたんぱく質をとるよう意識してみてください。食べる順番としては、まず野菜で食物繊維をとっていただくのがいいかと思います。腸内で糖を抑制するのは食物繊維の役割がかなり大きいので。

──コンビニで買うとしたら、具体的にどんなふうに選べばいいんでしょうか。

高杉:「栄養のバランスを考えて幕内弁当」と考えがちですが、お弁当ではなくて、主菜・副菜・汁物をバラバラに選んでいただいたくのがいいですね。主菜でお肉か魚を選んで、副菜でお野菜を選ぶ、というようにすると、バランスは整いやすいかと思います。

──バラバラに選ぶのがいいんですね。最近だと、パウチのお惣菜で美味しいものも多いですし、そういうのを選ぶのもよさそうですね。

高杉:そうですね。おにぎり1個で空腹を我慢するよりも、糖質を避けて食べたいものをお腹いっぱい食べたほうが眠くなりにくいので、午後のパフォーマンスは上がります。

カフェインは眠気防止にならない!?

高杉保美
「食べる量よりも栄養素の質が大事なんです」。ランチの後に眠くなる理由を説明してもらった。

──ただ、お米がすごく好きで……どうしてもお米を食べたくなってしまった時は、どうすればいいんでしょうか。

高杉:白米よりも玄米や雑穀米など、色がついたものを選ぶようにするといいですね。白米だと、糖を代謝するのに必要なビタミンB1がうまくとれないんです。

──なるほど。糖を代謝できれば眠くなりにくいってことですね。

高杉:あとは、食物繊維をしっかりとるようにすると効果が期待できます。「特定保健用食品(トクホ)」のドリンクには食物繊維がたくさん含まれているものも多いので、食事中に飲むのはおすすめですね。

──食後に眠気覚ましでコーヒーを飲んだり、カフェイン入りの栄養ドリンクを飲んだりしているんですが、これって効果あるんでしょうか。

高杉:食後のコーヒーはすごくいいですね。ただ、カフェインが眠気を抑えてくれる、というわけではないんです。コーヒーに入っているクロロゲン酸という栄養素が、血糖値の上昇を抑える働きがあるので、結果的に眠気を抑えてくれるんですよ。

──そうだったんですね!

高杉:ただし、コーヒーを飲む時に砂糖を入れてしまうと血糖値が上がりやすくなってしまうので、ブラックがおすすめです。

オフィスで手軽にとれて集中力がアップするものって?

高杉保美
「カフェインが眠気を抑えてくれる、というわけではないんです」と教えてくれた高杉さん。その知識、まったく知らなかったです。

──脳を活性化させたり集中力をアップさせたりできる食べ物ってありますか? できれば、オフィスで手軽に食べられるものがいいんですが。

高杉:くるみやアーモンドなど、ナッツ類がおすすめです。くるみには、オメガ3脂肪酸がたっぷり含まれていますし、アーモンドにはオレイン酸という、オリーブオイルと同じ脂肪酸が含まれています。

──「ナントカ脂肪酸」ってよく耳にしますが、どんなものなんでしょう?

高杉:脳のエネルギー源を作ってくれる油のことです。以前は、ブドウ糖しか脳の栄養にならないと言われていましたが、今はケトン体という物質が、脳のエネルギー源として使われるということがわかってきたんです。ケトン体は、良質な油に含まれる中鎖脂肪酸から作られます。

──脳のエネルギー=甘いもの、のイメージでしたが、違うんですね!

高杉:あとは、ここでもコーヒーがおすすめです。眠気覚ましにいいとお話ししましたが、脳を覚醒させるホルモンのオレキシンの分泌が増えるので、集中力アップにも効果が期待できます。中鎖脂肪酸が多く含まれているオイルをたらすと、よりいいです。

──中鎖脂肪酸が含まれたオイル?

高杉:ココナッツオイルがおすすめです。私はお昼過ぎに打ち合わせがある時は、昼食の代わりにコーヒーにココナッツオイルを入れたものだけですませることもあります。

──え、コーヒーだけですか? お腹すきませんか?

高杉:お腹がすく=血糖値が下がっている状態なので、エネルギー源となる油をきちんと摂取していれば大丈夫です。

──ダイエットにも効果がありそうですね。

高杉:ココナッツオイルは、最近は小分けになったものも売られているので、オフィスでも使いやすいと思います。ココナッツの香りが苦手な方には、無味無臭のMCTオイルがおすすめですね。これも中鎖脂肪酸が含まれたオイルで、すぐに代謝されるので脂肪になりにくい性質があるんです。

いい油を取ることで脳の老化を防いでパフォーマンスもUP

高杉保美
高杉さん自身は、昼食に代わりにコーヒーにココナッツオイルを入れたものだけですますこともあるという。

──じゃあ、大事な日のランチは糖質を避けて、ナッツをかじりながらココナッツオイルをたらしたコーヒーを飲む……と(メモしながら確認)。

高杉:ただ、食事は即効性があるものではないので、できれば普段の食事から気をつけたいですね。まず意識したいのは油です。

──油! 美味しいけど取りすぎは体に良くないっていいますね。

高杉:油を取ってはいけないというわけではなく、いい油をとって悪い油を制限することを習慣にできるといいと思います。

──悪い油ってどんなものでしょうか?

高杉:酸化した油ですね。酸化した油をたくさん摂取してしまうと、体も脳も酸化しやすくなります。酸化はいわゆる老化なので、油には気を使って日々生活していかないと、老化が進んでしまう原因にもなります。

──老化……! 怖いです。酸化した油というのは古い油のことですか?

高杉:そうですね。すべてではありませんが、サラダ油を使っているものは、よくない油のことが多いようです。たとえば、コンビニのおにぎりでも、美味しそうに見せるために油をコーティングしている場合もありますし、揚げ物にもよくない油が使われているケースは多いです。

──そうなんですね。気づかないうちに摂取してしまっているのかも……。逆に、いい油ってどんなものなんでしょうか?

高杉:魚にはいい油がたくさん含まれているので、おすすめです。焼き魚でもいいんですが、魚に含まれるオメガ3脂肪酸は熱に弱いので、生のお魚が一番いいですね。あとはサバ缶にもオメガ3脂肪酸はたくさん含まれています。

赤身の魚や肉を食べて鉄分不足を防ぐ

高杉保美
常に笑顔で、編集部の質問にわかりやすく答えてくれる高杉さん。

──さっきも出てきたオメガ3脂肪酸! 揚げ物を減らして魚を食べるといいってことですね。魚の種類はどんなものがいいですか?

高杉:白身よりは赤身や青魚で、脂がたくさんのったものがいいです。赤身のお魚には、血液に含まれるヘモグロビンがたくさん入っているので、鉄分も補給できます。ちなみに、鉄分不足も、仕事のパフォーマンスが下がってしまう原因になるんですよ。

──えっ、そうなんですか?

高杉:鉄分不足は貧血のイメージが強いと思いますが、ほかにも、頭がぼーっとしたり、眠気が出てしまったり、ネガティブになってしまうこともあります。

──鉄分って重要なんですね。

高杉:鉄分ってミネラルの中でも吸収が悪くて、不足しがちな栄養素なんです。でも、貧血じゃないから自分は大丈夫だと思って、鉄不足に気づかない方も多いんです。普段から、鉄分が含まれた食材を意識してとっておくといいかもしれませんね。

──レバーとかほうれん草とかでしょうか。

高杉:レバーはいいですね。植物性のものよりも動物性のほうが吸収されやすいので、赤身のお魚やお肉もいいかと思います。それと、鉄分の吸収を促進させる働きがあるビタミンCを、必ず一緒にとるようにしていただくといいですね。レモンをかけたり、ピーマンやブロッコリーなどビタミンCの含有量が多い野菜と一緒に食べたりするのがおすすめです。

たんぱく質が不足するとパフォーマンスが下がる?

高杉保美
鉄分不足もパフォーマンス低下の原因だという。貧血じゃないから大丈夫と安心せずに鉄分をとることを心がけよう。

──ほかに、日々の食事でこれが足りてないとパフォーマンスが下がる、というものはありますか。

高杉:たんぱく質が不足すると安眠ホルモンが生成されにくいので、翌日のパフォーマンスが下がってしまうんです。しっかり睡眠を取るという意味でもお魚やお肉を食べるといいと思います。

──たんぱく質が安眠にいいなんて知らなかったです。どれくらいの量をとったらいいんでしょうか。

高杉:1日で体重×1〜2gのたんぱく質をとったほうがいいんですが、足りていない方がほとんどなんです。

──お肉の食べ過ぎはよくないと思っていたので意外です。

高杉:朝は魚、昼はお肉、夜は大豆製品など、いろんな種類のたんぱく質をとっていただくといいですね。あとは、卵もおすすめです。ホルモンの生成も促してくれます。

──卵は1日何個くらい食べていいのでしょうか。

高杉:ビタミンCと食物繊維以外の栄養素がすべて含まれているので、1日2〜3個くらいとっていただくといいですね。

──そんなに食べていいんですね。

高杉:たんぱく質をしっかりとること、いい油を選ぶことを意識してみてください。日々の食事でベースをつくっておいて、プレゼン当日など、ここぞという時にはナッツやコーヒーで頭をスッキリさせる、という考え方がいいのではないでしょうか。

──日頃の食事が大切なんですね。

高杉:食事は楽しめたほうがいいので、ストイックになりすぎないことも重要です。気づいた時にちょっと意識するだけでも効果が期待できるはずです。プレゼン当日にカツ丼でゲン担ぎをするよりも勝算はあがると思いますよ。

──ホントにそうですね……高杉さん、ありがとうございました!

高杉保美(たかすぎ・ほみ)

管理栄養士。業界最大手プライベートジムで2,000人以上のカウンセリング、栄養指導を実施。東急スポーツoasisで元インテルの長友佑都選手とコラボレーションしたダイエットプログラム「NAGATOMO Method」の食事プログラムの作成を行う。現在は、ダイエット、アンチエイジング、脳活性などの分野でセミナー講師、個別栄養指導をメインに活動中。自身も管理栄養士を取得後に半年間でマイナス15kgのダイエットに成功している。

Instagram:homi1112

Twitter:@homi_takasugi

オフィシャルブログ:美活Life

取材・文/中村英里(@2erire7
撮影/黒澤宏昭