結果や実績、もちろん出したい。でも、うまくいった後こそ「過去の自分を超えられるのだろうか」と、かまえてしまうことはありませんか?

今回お話を伺ったのは、「M-1グランプリ 2017」の「ピンポンパンゲーム」で話題を集めたお笑いコンビ、ジャルジャルのおふたり。「あれを超えるネタは、もうできないかもしれない」と、不安な気持ちを跳ね返し、2018年のM-1では「国名わけっこゲーム」で大爆笑をつかみ取りました。

この2月には初のツアーDVDを発売。ジャルジャル が実践する「結果にナーバスにならず、努力を継続するコツ」とは? ジャルジャル独自のSNSの発信方法についても聞いてみました。

最後のM-1で「国名わけっこゲーム」が大きな話題に

ジャルジャル(左:後藤淳平、右:福徳秀介)
ジャルジャル(じゃるじゃる)。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑いコンビ。2003年4月結成。左:後藤淳平(ごとう・じゅんぺい)。右:福徳秀介(ふくとく・しゅうすけ)。

──最後の「M-1グランプリ」、おつかれさまでした。「国名わけっこゲーム」は大きな話題となりましたね。前年の「ピンポンパンゲーム」が超傑作だっただけに、「これを超えるものを作れるのか?」とプレッシャーが大きかったのではないでしょうか。

後藤淳平さん(以下、後藤):「もう無理なんちゃうか」と「できる! やるしかない」という気持ちが半々でした。でも、やってみたらできちゃったんですよ。

福徳秀介さん(以下、福徳) :「国名わけっこゲーム」ネタのタネができた時は、ほぼご飯も食べず、 集中して作り込みましたね。「コレは逃したらあかん!」という感じで。

──その超勝負ネタを準々決勝から出しちゃったのは、衝撃でした。「決勝まで温存しなくていいの?!」って。

福徳:銀座の高級寿司屋の人がね、「ウチは最初に最高のトロを出すんですよ。空腹の時の一口目って、お客さんも忘れられないから」って話してたんですよ。やっぱり、1発目に僕らは「国名わけっこ」出しとけば間違いない! と思って。

ジャルジャル(福徳秀介)
「最初に最高のトロを出す」。そんな粋な寿司屋があるんですね。

後藤:でもね、鶴瓶さんが「その寿司屋行ったけど、最初にトロ出てこなかったわ」って言ってましたわ(笑)。

福徳:僕が聞いた話、なんだったんだ! っていうね(笑)。まあ、一極集中しすぎて、他にネタを作る余裕がなかったんです。それだけです。

「“おふざけ”が僕らのテーマ」いつ見ても笑えるネタを作りたい

ジャルジャル(後藤淳平)
「“最初にトロ出てこなかったわ”って鶴瓶さんが言ってましたわ」

──おふたりは、小さな「面白いこと」を拾い上げる力がすごいですよね。ハードルを下げるのではなく、「面白いこと」への嗅覚をあげるコツってありますか?

後藤:どんなことでも、ネタにはなるんですよ。些細な出来事として忘れるのか、ネタにするかの違いなのかな?

福徳:ふたりでいる時に起きた「面白いこと」は全部メモしますね。昔は、過去を思い出しながらネタを作っていたんですけど、「思い出が尽きたら、ネタ作れなくなっちゃうかもしれない」っていう恐怖があったんです。でも、本気で掘り起こして言語化すると「あれもあった、これもあった」ってどんどん出てくるんですよ。

後藤:ネタ合わせ中に、 高校時代の友達に電話する日もあるよね。 ネタにしようと思っているわけではないけど、「10分くらい話したら、何か面白いことあるんちゃうか」って。

ジャルジャル(奥:後藤淳平、手前:福徳秀介)
「どんなことでもネタになるんです」(後藤さん)。「面白いことは全部メモしますね」(福徳さん)

──常に小さな刺激と、ネタのタネを探しているんですね。

福徳:大事ですよ。ニュース番組とか見てたらネタがポンポンできますね。

──あれ? でもジャルジャルは時事・風刺ネタはあんまりやらないですよね?

福徳:そうですね。やっぱり、いつ見ても笑えるネタが作りたいので。鮮度が大事なネタは作らないですね。メッセージ性とかも、特に考えてないです。「おふざけ」が、僕らのテーマかもしれないですね。

──時事ネタを使わなければ、炎上リスクもおさえられる。ジャルジャルの強みですね。

後藤:最初は欲があって「旬のネタをアップしたら、YouTubeも再生数上がるんかな」という話もしていたんですけど 、 結局できなかったですね。不器用だし、マーケティングとかできないんですよ。

ジャルジャル(奥:後藤淳平、手前:福徳秀介)
「いつ見ても笑えるネタが作りたい」(福徳さん)。「不器用だしマーケティングとかできない」(後藤さん)。

「ファン目線」で発信する公式Twitter。その狙いは?

──ジャルジャルはSNSの活用法が独特だなと思うんです。芸人さんのSNSは、個人活動や、公式情報をPOSTするためのアカウントが多いですよね。でも、ふたりでひとつのアカウントだし、中の人がファンみたいな温度感で発信しているんです。告知もほとんどなくって、不思議です。

福徳:前の前のマネージャーが、「これだけはやらせてくれ」って言ってくれてね。そのまま続いているんです。

後藤:だから、出演番組の情報がないんですよ。前の前のマネージャーだから、僕らのスケジュールがわからなくて、つぶやくだけになっているんです(笑)。

──だからファン目線なんですね。M-1の時も、「#優勝しろジャルジャル」というハッシュタグが盛り上がっていたんです。公式アカウントも、視聴者と一緒になって応援していました。公式LINE@からは、昨日も変顔写真が唐突に送られてきました。高校生が友達に送るようなノリで。

後藤:僕らもね、あからさまな宣伝するのが苦手で、恥ずかしいんです。ちょっと痒い。だから、あんな感じになっているのかも。

福徳:やっぱり笑ってほしいんで、そこは工夫してますね。

──「ネタを広く届ける」で考えると、テレビが一番リーチが広い。次が、YouTube、Instagram、LINE@、舞台ですかね? 「SNSを使ってファンを増やそう」というよりは、ファンの濃度を上げていく運用なのでしょうか。

福徳:そうかもしれないですね。拡散させるより、濃さ。劇場に来てくれるファン。僕らの単独ライブ、はっきり言ってチケット代高いんですよ。ファンに満足してほしいし、プレッシャーがある。逆にYouTubeは僕らも気軽に1日1本ネタをあげられるんですよ。タダだから、ええやん! って。

後藤:単独ライブが一番緊張しますね。TVのネタ番組はあんまり緊張しないです。 日本中の人が観ていても、平気ですね。

ジャルジャル(後藤淳平)
「単独ライブが一番緊張します」(後藤さん)。劇場に足を運ぶ”濃いファン”を大切にしている姿勢が伝わってきた。

──いろんなコメントも寄せられると思いますが、エゴサーチとか、しますか?

後藤:しないですね。世間からどう思われてるとかって、こっちが操作できないんでね。それだったら、内面に目を向けてネタを作っていったほうがいい。

福徳:人の気持ちは「後藤はどう思うんだろう」しか考えないですね。 心の中で、ゴトサだけしてます。

YouTube「1日42本撮り」も。アウトプットを継続するコツは?

ジャルジャル(奥:後藤淳平、手前:福徳秀介)
ふたりともエゴサーチはしない。「内面に目を向けてネタを作っていったほうがいい」(後藤さん)、「心の中で、ゴトサだけしてます」(福徳さん)。

──ネタ作り以外は、基本的にスタッフさんに任せているんですよね。普段から周囲の人にやりたいことを言語化していることって、ありますか?

福徳:昔はネタ番組が多かったので、ネタを出す機会が多かったんですよ。でも今は、どんどん減っている。しょっちゅう「ネタが腐るわ〜、カビ生えてもうてるわ〜。ジャルジャル、ネタ腐るほどあるのに〜」って楽屋で言うてたら、「YouTubeやりましょうよ」ってスタッフが提案してくれて。

──YouTubeって、「よく再生される尺」があるじゃないですか。そういうデータをネタに活かしたりはしているのでしょうか。

後藤:ツイッター投稿と連動するためには、動画は2分以内がいいらしいんです。でも、全然守れてないですね。好き勝手にやっちゃうんで。

福徳:尺が長いのは、未完成コントなんです。ふたりでオチを探りながら、ダラダラやってる。

ジャルジャル(福徳秀介)
「尺が長いのは未完成コントなんです」(福徳さん)。オチを探り合った結果、長くなってしまうそう。

──結局はやりたいネタを好きにやる! と。毎日YouTubeを更新するために、1日に42本撮りすることもあるそうですね。アウトプットを継続できるようになるコツとかってありますか?

福徳:ベタですけど、「お笑いが好きで、楽しくてたまらん、たまらんわ〜」と思いながらやること。これしかない。

後藤:一番仕事が忙しかった時にも、毎日やってたんですよ。撮影の合間とかにもネタ作ったりして。「この状況でできるんだったらずっとできるわ」っていう感覚になったら、自然と続けられるんじゃないかな。

──忙しい時ほど手を動かすことが大切、と。

後藤:そうですね。 ネタだけは誰にも負けないと思っているんで、これからも作り続けますよ。

 「届ける手段は何でもいい。僕らはネタさえやれたらいい」

ジャルジャル(奥:後藤淳平、手前:福徳秀介)
ずっとネタを作り続けたいと語るふたり。毎日YouTubeを更新するために「1日42本撮り」することも。

──WEBを通した発信だけでなく、最近はアートイベントでの即興コントなど、リアルでも新たな取り組みをされていますよね。

後藤:放送作家の倉本美津留さんが、「ジャルジャルはアートや」って話していたんですよ。それがずっと気になっていて。

福徳:倉本さんと一緒に美術館に行った時に、「昔は娯楽がなかったから、人を笑わせるために、絵を使っていたんだよ」と解説してくれたんですよ。その絵、話を聞きながら鑑賞すると、本当に面白かった。俺ら、ゲラゲラ笑ったんですけど、スタッフさんに怒られてしまったんですよ。

──「静かにしてください」って?

福徳:そうそう。でも倉本さんは「これ、数百年後の人たちがジャルジャルのコントを真顔で黙って観ているのと同じ状況だよね。おかしいよね」 って、えらい怒ってはって。アートって不思議やなーって。そこから、僕らも、ずっと笑えるネタを作りたいと思ったんです。

後藤:YouTubeとか、SNSとか、届ける手段は何でもいい。もっと新しいツールも出てくるかもしれないけど、僕らはネタさえやれたらいい。ずっとふたりで、ネタを作り続けますよ。

ジャルジャル(左:後藤淳平、右:福徳秀介)

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「JARU JARU TOWER 2018 ジャルジャルのたじゃら」

  • 価格:4,000円(税込)
  • 発売元:よしもとミュージックエンタテインメント
  • 内容:結成15年を迎えたジャルジャルの全国ツアー「JARU JARU TOWER 2018」。名古屋・大阪・福岡・東京をめぐるライブツアーの最終日、11月4日の東京公演を収録。
  • 収録時間:本編106分+特典映像13分

ジャルジャル(じゃるじゃる)

よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑い芸人。2003年4月結成。

Twitter:@jarujaru12th

HP:JARUJARU TOWER

後藤淳平(ごとうじゅんぺい)

生年月日:1984年3月20日。出身地:大阪府吹田市。

福徳秀介(ふくとく・しゅうすけ)

生年月日:1983年10月5日。出身地:兵庫県。

取材・文/小沢あや(@hibicoto
撮影/高橋知也(@hutari0315