人からの評価が気になる。仕事で結果を出すだけでなく、人としてもいい印象を与えたい。そんな気持ち、誰にでもあると思います。 

売れるために努力して、実績をつけてきたつもりが、うまく評価に結びつかなかった過去を話してくれたのは、お笑いコンビ品川庄司の品川祐さん。彼が自分のペースで働くことができるようになったのは、ここ最近のことのようです。

バラエティ番組『アメトーク!』での「おしゃべりクソ野郎」事件から早12年。品川さんは今何を思うのでしょうか。

仕事が減った時期も特別なストレスはなかった

品川祐
品川祐(しながわ・ひろし)1972年、東京生まれ。1995年、庄司智春と「品川庄司」を結成する。2006年には小説『ドロップ』を出版。映画監督としての作品に『ドロップ』『漫才ギャング』『サンブンノイチ』など。

──Dybe!ではたくさんお笑い芸人さんへのインタビューをしてきました。その中で、「落ち込んだ時に支えてくれた先輩」として、よく名前があがるのが品川さんなんです。

品川祐さん(以下、品川):えっ、そうなの(笑)?!

──後輩の天津・向さんも、相方のブレイクで自分だけ仕事がなかった時に、「『仕事がない時期こそ、やりたいことをやりなよ』『ピンチととらえるかチャンスととらえるかは自分しだいだよ』って言ってもらえて思考が変わった」と、感謝していました。

品川:僕、それ言ったのも覚えてないんですよ(笑)。ベロベロに酔ってて。後から向に「品川さん、覚えてますか?」って言われて、「俺、いいこと言うな〜」って自分が感銘受けちゃったくらい。

──TV番組への露出が減り、苦しい時代を乗り越えたからこそ、言葉にも重みがあるのでは、と思ってたんですが……。

品川:そもそも、別に乗り越えていないんですよ(笑)。仕事があんまりなかった時期も、特別なストレスを感じてたわけじゃないんですよね。

品川祐
天津・向さんのエピソードについて聞くと、「それ言ったのも覚えてないんです。ベロベロだったから」と笑っていた品川さん。

──えっ、そうなんですか?

品川:人って100%いいことばかりの時もないし、その逆もないじゃないですか。精神状態もそうですよね。「ダメだ」って思ってても、別のどこかに楽しみを見出してるし、「うまくいってる」と思っててもどこかでストレスを感じてる。常にプラスとマイナスの両面があるはずなんだけど、みんなどっちかに振り切って判断しちゃう。「今いい時期だ」「今は悪い時期だ」って。

──たしかにそうですね。特に、悪いほうに引っ張られがちかもしれません。

品川:僕は振り切らないタイプなんですよね。世間的には「うまくいってる」って言われるような時期にもストレスを感じてたし、「あいつ調子悪いな」って言われるような時期でも自分の中ではそこまで「ダメだ」みたいな思いがなかったんですよ。

──現状を客観的に受け入れてるんですね。

品川:それに「仕事がなくて14連休」とか、「好感度が低くて嫌われている」とかって、別に言わなけりゃ世間の人はわからないじゃないですか(笑)。でも、僕は芸人だから「ウケるなら言っちゃえ!」っていうスタンスなんです。

そんな時、脚本料はもらわない。「いりませんって言っちゃう」

品川祐
「好感度が低くて嫌われてるとか、ウケるなら言っちゃいます」と自身のスタンスを語る。

──仕事が減ってお休みが多かった時期は、どう過ごしていたんでしょうか。

品川:暇ってわけでもなかったんだよなあ。旅行したり、海外でショートムービーを撮ったり、柔術にハマったり。いつも小説や映画の脚本を書いていたし。僕は地雷とか時限爆弾って言ってるんですけど、小説でもなんでも、いっぱい作って埋めておけば、いつか誰かが踏むだろうって思ってるんです。仮に売れなくても「小説出したけど売れなかった」ってネタになるし。

──制作・準備期間って、不安やストレスを感じませんか?

品川:結局、ストレスや不安って、一生なくならないんですよ。欲しいものが全部手に入っても次は「欲しいものがない」っていうストレスが出てくる。だったら、あんまり気にしないほうがいいというか、自分のとらえ方しだいなんじゃないかな。

──準備が実を結ばないこともあると思うんですが……。

品川:そんなの、しょっちゅうですよ。たとえば「映画撮りませんか?」って言われて、脚本まで書いたけど話自体が流れることってよくあるんです。そんな場合、通常は脚本料が発生するんですけど、僕はもらわない。いりませんって言っちゃう

品川祐
脚本まで書いたけど成立しなかった話について「去年はめちゃくちゃありましたね」と何でもないことのように。

──えっ、なんでギャラをもらわないんですか?

品川:脚本を書く練習になった、経験になったからいいや、って思うようにしてるんです。なぜ映画が成立しなかったのか、脚本が時代に合わなかったのか、自分のネームバリューが弱かったのか、ダメだった理由を考えて「次はこうしよう」って思える。それに、ギャラをもらうことで次回僕に声をかけづらくなるなら、ギャラなしで書いたほうがいいっていう思いもありますね。

──普通はタダ働きだって思っちゃいそうですが……。

品川:場数が何よりも大事だと思ってるんです。脚本だって、人間って弱いから、締め切りがないと書かないでしょ。企画がダメになっても、最後まで書き切ることが大事なんです。何かアイデアが浮かんだ時、「これ絶対面白いよ」とか言ってるだけじゃ何も進まないですから。

人への感謝は盛大に。でも期待はゼロにする

品川祐
「脚本は書けば書くほどうまくなるし、企画が流れても何も損がないんです」と映画について語る表情は真剣そのもの。

──企画が実現しなかった時、自分や周囲を責めたり、がっかりした気持ちになることはないですか?

品川:ないですね。僕が最近思っているのは、「感謝は盛大にしたほうがいいけど期待はしないほうがいい」ってこと。どこの業界も同じだとは思うんですけど、エンタメの世界にいると「一緒に映画やりたいね」「また番組やろうよ」ってよく言われるんですよね。

──社交辞令的なものでしょうか。

品川:でも、具体的な話は何もないまま2、3年経っちゃうことのほうが多い。ただ、そこに悪意はないんですよ。そういう時「なんだアイツ、口だけかよ」ってなるのは嫌じゃないですか。だからハナから期待しないことが大事ですよね。

──たしかに。期待すると「裏切られた」って思っちゃいますね。

品川:「今度映画撮ろうよ」って言われたら、「ありがとうございます!」って感謝して「今こんなこと考えてるんですよ」って自分のやりたいことを伝える。で、あとはもう期待しないことですね。僕は自分で営業もしているけど、話が実現すればラッキーで、ダメだったら他でやればいい、くらいに考えています。

──やりたい仕事をつかむ術を教えてほしいです。

品川自分から過度に営業しないこと。僕はMVも撮っているけど、たとえば仲良いミュージシャンと会うたびに「MV撮らせてよ」って言ってたら、仕事取れないどころか友達まで失うと思うんですよ。「品川うぜえ!」ってなるじゃないですか。最初に「俺、MVも撮ってるんだよね」って伝えるだけで止めておく。ただ、「動画見せてください」って言われたら、すぐに過去作品をまとめて送るようにしています。

──営業をしない、という営業スタイルなんですね。

品川:こっちからお願いした仕事より、向こうが自発的に「僕に撮ってほしい」と思ってくれた仕事のほうが、求められてることがわかりやすいっていうのもありますね。僕の過去作に何かを感じてオファーしてくれてるわけですから。

批判があるうちにやったほうが絶対おいしい

品川祐
営業しすぎないのが品川さんのスタイル。「チャンスください、チャンスくださいって言っても相手にとっては鬱陶しいだけなんで」

──芸人の複業も今ではあたりまえになってきましたが、2006年に品川さんが小説『ドロップ』を出した時にはまだめずらしかったですよね。芸人がお笑い以外の仕事をすることに、批判的な人もいたのでは?

品川:いましたね。仲間内だけじゃなくて世間にも言われてました。でも、批判があるうちにやったほうが絶対においしいんですよ。みんながやってからやるんじゃ遅いし、第一人者にはなれない。これも良い面と悪い面の両面あると思うんです。批判される分、うまみもあるっていうね。僕は芸人だから「失敗したらネタにすればいい」っていう保険もありますから。

──品川さんは物事を常に両面から考えるんですね。

品川:どんなことでも両面あると思うけど、僕はダメなほうを言っちゃうのが好きなんです。そのほうが単純に面白くないですか?

──たしかに、ダメな話や失敗した話のほうが笑えます。

品川:ビジネスの世界は実績がものを言うから、みんないいことばっかり話すじゃないですか。これだけ売ってますとか、これだけフォロワーいますとか。でも、僕はダメなほうを言って笑いにしたいし、実はそういう逆張りのほうがうまくいくことって少なくないんですよ。

品川祐
「本当はあんまりバラしたくないんだよな」と言いながらも丁寧に質問に答えてくれた。優しい……。

──どういうことでしょうか。

品川:たとえば今度、品川庄司で初の漫才全国ツアーをやるんですけど、「漫才のチケット、全然売れてないわ」って言うと、不思議と売れるんですよ。これ本当はあんまりバラしたくないんですけどね……(笑)。

──なぜ売れるんでしょうか?

品川:「売れてない」っていうことがニュースになるんです。今はネットに情報があふれてるから、うまくいってる話をしても取り上げてはもらえない。僕にはアンチがいるので、その人たちが喜ぶネタを出せばニュースになりやすいし、「だったら漫才見てやろう」っていう人が出てくるんです。

──そういえば、オンラインサロンも、オープンしたら会員数がたったの2人だったとか……。

品川:「2人しかいないじゃん!」ってニュースになったら、一気に50人くらい増えたんですよ(笑)。
そもそも、僕がうまくやってるところを見たい人ってどれくらいいるんだろう? って思っちゃう。成功例を見たいなら、僕じゃなくて(キングコングの)西野のサロンに入ったほうがよくない? オンラインサロンに入ってくれた人も、ダメだったり人気なかったりする僕を見たいんじゃないかなって気がするんです。そこをつっこまれたり、ネタにしたり、そういう僕の姿をエンタメとして見てもらえればいい。自分でも「俺、人気ないな」って思うと笑っちゃうんですよね(笑)。

「なんかハナにつく」。そう言われたのは“すべてが売れるため”だったから

品川祐
オンラインサロンの会員が2人だったことについて聞くと「人気のなさを単純に面白いなって思っちゃうんですよ」

──最近、品川さんは仕事が増えていると思うんです。勝因は、どこにあると思いますか。

品川:「自分は何が好きなんだろう」って考えたら、結局、僕がやりたいのは「つくる」ことと「しゃべる」ことなんですよね。僕の場合は小説と映画で「つくる」は満たせる。「しゃべる」については生きてればしゃべれる。なら、それで飯が食えれば十分じゃないかと思うようになりました。

──品川さん、ガツガツしているイメージがありました。意外です。

品川:昔は、「冠番組持って売れたい」っていう気持ちが人一倍強かったんですよ。人気につながるならと思ってブログ書いてブログ・オブ・ザ・イヤー獲ったり、クイズ番組やスポーツ系の番組で優勝したり。これだけ結果残してるのになんで自分の番組を持てないんだろうって思ってました。

──芸人・品川としての評価にはつながらなかった……?

品川:そうですね。すべて「売れるため」にやってたからなのかな。それが周囲にも伝わってたから、「品川ってなんかハナにつくよね」って言われてたんだろうなと今は思います。そういう意見がなくなったかっていえば今もあるんだけど、今は自分が好きなことを楽しんでるから、それも気にならなくなりましたね。

「売れるため」「儲けるため」に何かをやるんじゃなくて、「やりたいことをやって結果的にお金が入ってくればいい」と考えて動くと、自分の行動にも胸をはれるんじゃないかな。その順番が逆だと説得力がないし、深いファンってできないんだろうなって思います。

「感じ悪いなと思うと、全部顔に出しちゃってたんです」

品川祐
以前は尖っていたと言われているが「今は24年目なんですってちゃんと言えるようになりました(笑)」

──品川さん、以前は相当尖っていたんですよね。「態度が悪かった」なんて説もたくさん出てきますが……。

品川:ちょっとでも感じ悪いなって思った人に対して、全部顔に出しちゃってたんですよ。たとえば、インタビューで「品川庄司は結成何年目ですか?」とか言われると「調べてこいよ」って思って、その感情に引きずられちゃってた。でもそれって、良い取材をしてもらうチャンスを自分で摘んでたんだって気づいたから、今は「24年目なんですよ」ってちゃんと言えるようになりました(笑)。

──当時もめた人とは、今は和解できてますか? 一度ついてしまった悪いイメージを変えるのは、大変だと思いますが。

品川:「昔は品川のこと嫌いだった」っていう話はよく聞きますね。ただ、ついてしまったイメージってなかなか挽回できないですよね(笑)。ひとつあるとしたら、離れていく人たちを追いかけるより、残ってくれた人たちを大切にしたほうがいいと思います。

品川祐
品川さんはとても素敵な言葉をたくさん聞かせてくれました。

──残ったのは、どんな人でした?

品川:仕事が減っていた時でも、慕ってくれる後輩とか優しく声をかけてくれる先輩、僕らを売ろうとしてくれるマネージャー、映画の話を持ってきてくれる製作会社の人とかですね。そういう人たちって宝物だから、そこをめちゃめちゃ大切にしていれば、いつかなんとかなりますよ。

──こいつ、昔俺の悪口言ってたな! って人についてはどう思います?

品川:僕は単純だから、過去にイヤなことがあっても一回褒められたら全部忘れちゃう。「おまえって面白いよな」って言われたら、もう「好き」ってなっちゃうんですよ(笑)。そこはあんまり根に持たないほうがいいのかなって思いますね。

今もツイッター上で悪口言ってくるやつがたくさんいるけど、徹底無視です。でも、いいこと言ってくれた人には全部「いいね」押してます。こういうのも、若い時は「ファンに媚びてる」「売れてないからやれるんだ」と思っていたかもしれません。でも、えこひいきしたいんですよ。ちょっとでも前向きな言葉をくれた人に「ありがとう」を伝えたい。本当にうれしいですよね。

【品川庄司・漫才初全国ツアーのお知らせ】

結成25年を迎える品川庄司が、4月14日(日)より初の全国ツアーを開催!
大好評につき異例の追加公演が決定!!

チケット好評発売中チケットよしもと

  • 名古屋公演
    【日時】2019年4月14日(日)
        13:30開場 14:00開演
        (追加)17:30開場 18:00開演
    【会場】愛知・伏見JAMMIN’
  • 札幌公演
    【日時】2019年4月20日(土)
        12:30開場 13:00開演
        (追加)16:30開場 17:00開演
    【会場】北海道・BFHホール
  • 福岡公演
    【日時】2019年4月26日(金)
        11:30開場 12:00開演
        (追加)18:45開場 19:00開演
    【会場】福岡・よしもと天神ビブレホール
  • 熊本公演
    【日時】2019年4月27日(土)
        16:30開場 17:00開演
    【会場】熊本・熊本DRUM Be-9 V1
  • 岡山公演
    【日時】2019年5月3日(金・祝)
        16:30開場 17:00開演
    【会場】岡山・岡山シンフォニーホール イベントホール
  • 広島公演
    【日時】2019年5月4日(土・祝)
         16:30開場 17:00開演
    【会場】広島・広島市南区民文化センター スタジオ
  • 福島公演
    【日時】2019年5月11日(土)
        16:30開場 17:00開演
    【会場】福島・いわき芸術文化交流館アリオス 小劇場
  • 仙台公演
    【日時】2019年5月12日(日)
        16:30開場 17:00開演
    【会場】仙台市戦災復興記念館 記念ホール
  • 大阪公演
    【日時】2019年6月15日(土)
        17:30開場 18:00開演
    【会場】大阪・ZAZA HOUSE
  • 東京公演
    【日時】2019年6月16日(日)
        13:30開場 14:00開演
        17:30開場 18:00開演
    【会場】東京・シアター代官山

品川祐(しながわ・ひろし)

1972年、東京生まれ。1995年NSC東京校に1期生として入校、庄司智春と「品川庄司」を結成する。2002年、2004年にM-1グランプリ準決勝、2005年に決勝進出を果たす。2006年には小説『ドロップ』を出版。映画監督としての作品に『ドロップ』『漫才ギャング』『サンブンノイチ』など。執筆活動、映画監督としての活動は品川ヒロシ名義で行っている。

Twitter:@shinahiro426

ブログ:品川祐オフィシャルダイアリー

取材・文/小沢あや(@hibicoto
写真/鈴木勝