「じゃがアリゴ」のレシピ投稿が大人気となり、「じゃがりこ」の品切れ店舗を続出させた料理のおにいさんこと、リュウジさん。

1年で5冊のレシピ本を立て続けに出版、バズるレシピを生み出し続けるエネルギーの源、トラブルにもめげない気持ちの持ち方を聞いてみました。

「料理は息をするのと同じくらい当たり前」

リュウジ
リュウジ。料理研究家、料理のおにいさん。「今日食べたいものを今日作る!」をコンセプトに、次々とバズレシピを発表。Twitterのフォロワー数は約58万人(2019年3月現在)。第5回レシピ本大賞入選、著書累計15万部突破。

──レシピが続々とバズり、Twitterにも「作ってみた!」という人があふれています。ネタ切れで困ることはないのでしょうか?

リュウジさん(以下リュウジ):ネタに困って辛い……とかは、特にないですね。

──今日もパンナコッタを作りながらの取材で、処理能力が高くて、決断も爆速なのかなというイメージがあります。

リュウジ:僕にとって料理は、息をするのと同じくらい当たり前のことなので、料理をしながら他のこともする、というのは全然問題ないです。でも、決断は遅いですよ。

──遅い?

リュウジ:ファミレスの注文とか、なかなか決まらないですね。友達に “どっちがいいと思う?” って聞いて、さんざん迷った挙句すすめられたほうを選ばないとか。僕はそういう人間です。

──ファミレスにも行くんですね。

リュウジ:ファミレスもコンビニもよく行きますよ。おいしいし、“何このスウィーツ! セブンイレブンやるな!” とか、行くたびに驚きがあります。

料理は好きだけど、仕事にするのは無理かなと思っていた

──そこからも仕事につながるアイデアが。元々、料理研究家を目指していたんですか?

リュウジ:実は料理は “仕事にするのは無理” と一回思ってしまいまして。

──無理。挫折したってことですか?

リュウジ:高校生くらいかな、母が病気がちということがあって自分でやってみたというのが、料理を始めたきっかけなんですね。で、“やってみたらめっちゃ楽しい! 作ったものを食べてもらって、これすごいおいしいって言われるのもすごい好き!” という発見がありました。

それから独学で料理を始めて、イタリアンレストランで働いたこともあるけど、3カ月で僕がダメになってしまって。

──ダメになったとは?

リュウジ:ブラック過ぎて。ここにいたら、料理が嫌いになっちゃうなと。楽しくなかったんですね。それで料理を仕事にするのはいったんやめたんですけど、ホテルマンやりながらレストランのシェフにコツを聞いたりとか、料理の研究は続けていました。

──研究を続けたことが今の仕事につながったんですね。料理研究家として知られるようになったきっかけは?

リュウジ:Twitterに投稿した “大根の唐揚げ” がバズったんです。

──バズレシピが誕生したんですね!

リュウジ:バズレシピっていうのは、本の編集さんがつけてくれたので、その頃は言ってなくて。でもそのあたりからレシピが評判になって、本出しましょうってお話も来ました。

レシピ本を出すためのフォロワー数の壁!?

──そこから怒涛のレシピ本出版に続く、と。

リュウジ:でも、当時はフォロワーさんが1万人弱くらい。それで “フォロワー足りないですね。増やしてください” って。で、それってどれくらいを考えているんですかと聞いたら “10万人くらい” と。え~そんなこと言うんだ~って。

──それはビックリですね。

リュウジ:それで、じゃあ本は出せないんだなって思ったんだけど、いや待てよと。だったらちょっとやってみようかなと。

そこから、ウケることを意識して投稿するようにしてみたんです。

──具体的にはどんなことでしょう?

リュウジ:元々は僕が好きなレシピを投稿していたんで、けっこう凝ったレシピも出してたんですよね。でもみんなが求めてるのはそれじゃないなと。手に入りやすい身近な材料で、作りやすく、つまり〝料理をする〟というハードルをものすごく下げました。作ってもらってなんぼだなと。

──なるほど。

リュウジ:“大根の唐揚げ” も、最近の僕のレシピからするとけっこう面倒な工程なんですよね。今だったら “コンビニのおでんを使えばもっと簡単にできるな” と考えて、またあらたなレシピが誕生しました。

──ご自身のこだわりとの葛藤とかはなかったのでしょうか?

リュウジ:その時点でプライドとかこだわりとか、全部殺しましたね。そしたらコツはわりとすぐにつかめたかなと思います。言葉がすごく重要なんだな~とか。

──料理名とか説明とかですよね。

リュウジ:たとえば最近の “鯖缶の即席あら汁” 。これはものすごくシンプルなレシピだけど、“お寿司屋さんの味になる!” っていう言葉があるからこそ、みなさんに喜んで作っていただけています。他の人に教えたくなるようなのがいいのかなと。

── “お寿司屋さん気分” はたしかに盛り上がります。レシピ名やキャッチコピーはどれくらい考えるんですか?

リュウジ:2~3分くらいですかね。

──やっぱり速い。そしてその後フォロワーさんはTwitterだけでも約58万人に。本の出版も実現しましたね。

リュウジ:結局最初のお話はお断りしたんですけど、他にも数社からお声がけいただいていて。そのときもフォロワー数はそんなに増えてなかったんですけど、“十分ですよー” と。そこから “バズレシピ” が生まれました。

圧をかけられたと感じたことも、自分のプライドを捨てるきっかけにはなったので、結果的には無駄ではなかったんですけどね。

自炊人口を増やして、僕と会話できる人を増やしたい!

リュウジ

──Twitterの話を聞いても、“やってみる” 精神がありますね。無理だなと思ってもそこで終わらず、“やってみよう” という気持ちを持てる理由ってなんですか?

リュウジ:やってみるかどうかは……リスクがあるかどうかで決めますね。僕が動くことでどういうリスクがあって、動かない場合どうなるのかを考えて。このインタビューも、僕が話すだけだしリスクはないですよね。

──どんな風に書かれるかでイメージダウンのリスクもありますよ。

リュウジ:主役は料理で、僕は素材に過ぎないから、自分をよく見せるとかはそんなに気にしてないんですよね。料理が引き立てばいいので。

──それは、料理が好きだから?

リュウジ:僕の好きなこと、趣味も、ほぼ料理しかないんです。だから会話も料理を通してしかできない。でも、料理が好きな人って、周りにいなかったんですね。

“みそ汁わかしすぎちゃったんだけど、みそ汁は沸騰させないほうがみその香りが立っていいよねー” というような、とりとめのない話をすべての人としたいんです、僕は。

エゴといえばエゴなんですけど、だから自炊人口をもっと増やしたいというのがあります。

料理の時間は無駄だから全部コンビニ飯にして時間を買うよって人も世の中にはいて、それはそれで尊重しますけど、僕は料理が楽しいと思うので、自炊を推しています。

──好きなことにブレがないですね。

リュウジ:好きなことしかしてないし、できないんですね。

逆に苦手なこと、片付けとかですね。そういうのはもう最低限でいいかなって、優先順位はかなり低いです。

──優先順位をつけられるから、営業もできるのかも。

リュウジ: 僕のTwitterとか見てもらえばわかるんですけど、セールストークがすごいですよね。何回革命起こしているのかな、という。でもそれでちょっとやってみようって気持ちになってもらえればいいのかなって。やってみてもらって、“おいしかった” “彼がはじめて作ってくれたんです!” とか感想もらうのはすごく嬉しいですよね。

レッドオーシャンな料理研究家の世界で生き抜くには。

リュウジ

──今、大注目の料理研究家として活躍されているわけですが、差別化は意識していますか?

リュウジ:意識はしてないけど、特異な存在ではあるかもしれませんね。僕は “これが自分の味です” みたいなことは、さらっさら思ってないので。

それに、僕は本5冊出してますけど、レシピ界ではペーペーですからね。バイトも最近までやってたくらいで。

──こんなに人気なのにバイトも!

リュウジ:リスクヘッジということもありまして、老人ホームの事務みたいな仕事ことをやってたんですね。 “無限湯通しキャベツ” もそこで生まれました。

── “無限に食べられる!” と評判になったあのレシピが……。

リュウジ:住居者向けの料理が、仕出し屋さんのものだったんですけどおいしくなくて、クレームがすごかったんですよね。それでどうする? ってことになって、僕がちょっと作ってみましょうかと。月1回バータイムに、おつまみ用意してお話しましょうみたいな企画をして。

──それは殺到しそう。

リュウジ:最初は全然でしたよ。5人ぐらい来て。でも “アイツの料理うまいぞ” って口コミが広がって、50人くらいに増えて。そしたら今度 “そんなにたくさんの調理どうするんだ?” って問題が。

──給食施設とかじゃないですもんね。

リュウジ:キャベツを柔らかくしたかったんですけど、ちょっと食感も残したくて。でもレンジに入る量じゃない。そこで寸胴で沸かしたお湯をバーっとかけたらいい感じになって、これは無限に食べられるぞと。それでTwitterに投稿したらものすごくバズって。

──別の職場でのトラブル課題にアイデアが生まれるヒントがあったんですね。

リュウジそうですね。料理のほうが忙しくなりすぎて1カ月前に辞めちゃったんですけど、わりと何を見てもレシピのことを考えてます。

──YouTubeリュウジのバズレシピチャンネルの「奇跡のじゃがアリゴ」動画も137万回視聴されて、水溜まりボンドさんも作ってみたりと広がりがすごいですね。

リュウジ: YouTubeを始めたのは最近なんですよ。だからYouTube界では多分「じゃがアリゴの一発屋」と思われているんだろうなと。それで、本も出しているんですよということを伝えるために背景に著作を並べたりしています。

──そのほうがどんな人か伝わりやすいかも。

リュウジ:僕は “○○で修業しました!” みたいな肩書きがないんですよね。でも、たとえばフォロワー数だったりとか、数字や肩書ってやっぱり強い。そういう社会であるならば、僕のレシピを作ってもらうために、箔は必要なのかなと思っています。

本を出している人だから、人気の料理研究家だから、というのがあれば “レシピも作ってみよう” につながりますよね。

──つながります。

リュウジ:そういう箔があれば、台所にはびこるブラックなこと、“手の込んだ料理が一番” みたいなのは意味がないですよってことも聞いてもらえるし、台所のホワイト化にもつながるかなと。

──料理も仕事もホワイト化、したいです最後に、疲れてしまってどうやってもやる気がでないという人のために、カンタンに幸せにになれるレシピを教えてください。

リュウジ:それなら “レンジとろとろネギの塩ダレうどん” ですかね。ほぼレンチンだけですぐに幸せになれると思います。

──幸せになれそうです。

リュウジ:コンビニ飯はどうなのとか、○○の味じゃないとダメだとか、誰かが苦しい思いをして料理を作り続けなきゃいけないとかの思い込みはなくして、パパっと作っておいしければ、みんな幸せになるんじゃないかと、最近は思っています。

リュウジ

料理研究家、料理のおにいさん。YouTuber。「今日食べたいものを今日作る!」をコンセプトに、次々とバズレシピを発表。Twitterのフォロワー数は約58万人(2019年3月現在)。「クタクタでも速攻でつくれる! バズレシピ 太らないおかず編」「ほぼ100円飯 家にある材料でソッコー作れる最高に楽しい節約レシピ」など1年で5冊のレシピ本を発売、第5回レシピ本大賞入選、著書累計15万部突破。

Twitter:@ore825

Instagram:@ryuji_foodlabo

YouTube:リュウジのバズレシピ

取材&文/樋口かおる(@higshabby
撮影/奥本昭久(kili office)