「生産性」や「効率」を過度に重視する今の風潮に「本当にそれだけでいいの?」と疑問を感じている人もいるのでは?

そこで今回は、「無駄なものを淡々と作り続けていたら、それで生活できるようになっていました」と語る、藤原麻里菜さんにお話を伺いました。「無駄づくり」と称した、実用性のない発明を繰り返してYouTubeにアップし続けている彼女。

「札束で頬を撫でられるマシーン」「会社を休む理由を生成するマシーン」「歩くとおっぱいが大きくなるマシーン」など、これまでに発明した作品は累計210(2018年11月時点)。また、台湾での初個展で2万5000人も動員と成功を収め、2018年には初の著書となる『無駄なことを続けるために ほどほどに暮らせる稼ぎ方』(ヨシモトブックス)を上梓しました。

無駄なことを続けるために - ほどほどに暮らせる稼ぎ方(著:藤原麻里菜/発行:ヨシモトブックス/発売:ワニブックス)
無駄なことを続けるために ほどほどに暮らせる稼ぎ方(著:藤原麻里菜/発行:ヨシモトブックス/発売:ワニブックス)

藤原さんの仕事は、無駄づくりを軸にして映像制作や執筆活動、TV番組の司会など大きく広がっています。なぜ彼女は「無駄」を仕事にできたのか、彼女の作る「無駄」が人の心をつかむのはどうしてなのか、その理由に迫りました。

「人を楽しませたい」より「人に面白いと思われたい」

藤原麻里菜
藤原麻里菜(ふじわら・まりな)。コンテンツクリエイター、文筆家、映像作家。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。頭の中に浮かんだ不必要なものを作り上げる「無駄づくり」が主な活動。

──藤原さんは元々芸人さんなんですよね。なぜお笑いの道に進もうと決めたんですか?

藤原麻里菜さん(以下:藤原):普通に大学入ろうと思ったけど、本当にバカで勉強ができなかったんですよ。もともと芸人への憧れがあったので、進路をNSC(※)に決めました。

(※)吉本総合芸能学院。吉本興業が新人タレントを育成する目的で作った養成所

──大学に行きながらNSCという選択肢もありますが、一本だったんですね。

藤原:芸人をやるにあたって、「お笑いにどれくらい時間を使うことができるのか」が大切だと、その当時は思って、大学には進学せず養成所に入所しました。

──人を楽しませたい、という気持ちが昔からあったのでしょうか。

藤原:人を楽しませようというよりは、「人に面白いと思われたい」という気持ちが強かったですね。

藤原麻里菜
NSC入りの理由を聞くと、「お笑いにどれくら時間を使うことができるのかが大切だと、その当時は思った」。

──藤原さんの世代は、ネットを使って個人発信のできる環境が整っている世代だと思います。いきなり芸人を目指すのではなく、「まずはSNSで何者かになろう」とは思わなかったですか?

藤原:「デイリーポータルZ」が大好きだったし、ネットに面白い人はたくさんいると知っていました。けど、「面白いことをやりたい」という思いがあったので、本質的なことを知るためにも芸人になったほうがいいんじゃないかと考えたんです。

──お笑いの基礎を学ぶためにNSCに入った、と。

藤原:あとは、どうすればネットで活動できるかがわからなかったというのもあります。今でこそTwitterなどSNSがメジャーですが、当時はそこで作ったコンテンツをアップするという発想がまずなかったです。

自分の中にあるモヤモヤ。その奥に見えたのは?

藤原麻里菜
当時は「どうすればネットで活動ができるかわからなかった」藤原さん。今や活動の幅は大きく広げている。

──芸人になってから、しばらくはあまり仕事がなかったそうですね。それでも続けた理由はどこにあるのでしょうか。

藤原:自分の中にモヤモヤとした塊のようなものがあって、それをうまく表現できたらすごく面白いことができると思っていました。そう思い始めたのは、深夜にやっていた大喜利番組で応募した回答が優秀作品として読まれたことからですね。

──芸人になる前のことですね。

藤原:他人からしたらすごく小さいエピソードですが、「私って才能あるんじゃない?」と思えましたし、「私の中にあるモヤモヤした塊はやはりおもしろいものが詰まっている……」と自信にもつながりました。そんな成功体験をずっと大切にしているからこそ、めげずに続けられたのかもしれないです。

──藤原さんの作品には、不思議な魅力があります。鬱屈とした部分がベースにあるのに、人を傷つけない。発想の源はどんなところにあるんですか?

藤原:以前、「Twitterで『バーベキュー』とつぶやかれるたびに藁人形に釘を打ち付けるマシーン」というのを作りました。私は、SNSでバーベキューの写真を見ると心がぎゅっと苦しくなるんですよ。なんでこんな気持ちになるんだろう……と考えたところ、「バーベキューやってるやつらムカつくな!」の奥に、本当はバーベキューに憧れている自分が見えたんです。人を攻撃するというよりかは、悲壮な私を笑いに変えたいなあと思っています。

──なるほど! だから見る人を惹きつける面白いものができるんですね。

『月曜から夜ふかし』出演で一気に知られるように

藤原麻里菜
「SNSでバーベキューの写真を見ると心がぎゅっと苦しくなるんです」。そういう気持ちは誰もが持っているものでは?

──メディアなどで紹介されてから視聴層は変わりましたか?

藤原:TV番組『月曜から夜ふかし』で無駄づくりが紹介されてから、一気に知られるようになりましたね。小中学生が面白いって言ってくれたり、自分とはタイプが違う方にフォローされたりして驚きました。

──フォロワーが増えてから何か意識していることはありますか?

藤原「人を変えようとしない」っていうのは意識していますね。フォロワーが多くなると、自分と違う意見の方からリプライが届くことが多くなりました。自分の物差しと違っていることを言われると、それが許容できない時もあります。その時に、「この人は間違ってる!」って言いたくなったりするんですけれど、それは自分の中で止めています。私の意思の外で自由に私がアップしたコンテンツを楽しんでほしいなあと思っています。

藤原麻里菜
「フォロワーが多くなると、自分と違う意見の方からリプライが届くことが多くなりました」。それでも、反論せず自分の中で止めているという。

──見る人の解釈で自由に楽しいでほしいということですね。

藤原:無駄づくりはなんとなく始めたけど、なんとなくアイデンティティになってきましたね。お金も稼げるようになって、個展にもたくさんの人が集まってくれました。その中で、私は私で好きなことをして、みんなもみんなで好きなことをしてくれたらいいなあと思っています。

──藤原さんは、欲がなく、創作活動を淡々とやっている印象があります。夢や目標はありますか?

藤原:お金持ちにはなりたいですけど、将来の理想を描くよりは、自分の今の幸せを持続するほうが、人生が肯定できるかなと考えています。お金持ちにはなりたいですけどね。

 ひとりで作るから混沌として面白い

藤原麻里菜
「お金持ちにはなりたいです」と正直な気持ちを教えてくれた藤原さん。

──無駄づくりは、もくもくとひとりで製作しているとか。孤独な作業ですよね。

藤原:他人に公開して、ツッコミが入って初めて発見することって、多いじゃないですか。ひとりで作るとアドバイスが入らないから混沌とするんです。その混沌を形にしていけば、すごく面白いものができあがると思うんですよね。

──その発想は意外です。第三者の視点って大事だと思うのですが……。

藤原:少し前、街の発明家のおじいちゃんに会ったんです。4畳半で、わけのわからないものを淡々と作ってるんですよ。横から眺めていると「もっと効率よくできるのに」って思っちゃう内容。でも、ひとりでやってるから面白くて変なものができるんだなと思って。

──なるほど!

藤原:そこから自分も「ひとりで全部やるぞ」という気持ちが強くなりました。書籍も、コラムの仕事も、すべて自分で執筆しています。

──すべてひとりで! これまで他の人を入れようと思ったことは、一度もないのでしょうか。

藤原:ひとりでいるほうが楽っていうのもありますね。

あきらめは早いほう。でも無駄づくりだけは続けられる理由

藤原麻里菜
「ひとりでやってるから面白くて変なものができるんだな」と気づいてから、「ひとりで全部やるぞ」という気持ちが強くなったそう

──「無駄づくり」活動がここまで続いている理由はどこにあるのでしょうか。

藤原:単純に、会社の大人たちが関わっているからかな。個人でやってたら、3日で終わってたと思いますよ(笑)。

──もともと、継続は苦手なタイプですか?

藤原:すぐにあきらめちゃいますけど、いろんなことはしてきました。彫刻をしたり打ち込みで作曲をしてみたり、絵や小説、漫画を書いたり。次はバンドをやりたいですね。

──やりたいことはとりあえず挑戦するんですね。それは強みなのでは。

藤原:そうかもしれないですね。でも、壁にぶつかるとすぐやめちゃうからダメですね。才能ないなーって思うと、すぐにやる気がなくなってしまいます。そう考えると、私にとって「才能あるな!」って思えるのが無駄づくりなのかもしれません。

藤原麻里菜

藤原麻里菜(ふじわら・まりな)

1993年生まれ。コンテンツクリエイター、文筆家、映像作家。よしもクリエイティブ・エージェンシー所属。頭の中に浮かんだ不必要な物を何とか作り上げる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを広げている。2018年、国外での初個展「無用發明展−無中生有的沒有用部屋 in 台北」を開催。25,000人以上の来場者を記録した。著書に「無駄なことを続けるために」(ヨシモトブックス)。

Twitter:@togenkyo

YouTube:無駄づくり/MUDA-ZUKURI

取材・文/小沢あや(@hibicoto
撮影/飯本貴子(@tako_i