「もう◯歳だからこうしなきゃ」「社会人だから」「母親だから」……。そんな言葉に抵抗はあるけれど、一人でハミ出すほうが怖い。そんな時、「それでも自分を貫いてるのがギャル。ギャルは見た目のことじゃなくて生き方だと思います」と話してくれたのが、話題のギャル誌『姉ageha』の編集長、小泉麻理香さん

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『姉ageha』の「自分らしく」「自由でいい」というメッセージがギャルだけでなく多くの女性に支持されている(写真は2019年5月号表紙) 。

見た目で誤解されたり、偏見を持たれたりしがちな「ギャル」。でも、彼女たちの「周りの目を気にして生きたくない」「好きなものを好きと堂々と言える自分でいたい」という真っ直ぐなマインドに共感する人たちが、今、増えているようです。

自身も10代からギャルを貫き、誌面やSNSで「もっと自由でいい」というメッセージを発信し続ける小泉さんに、「自分らしく生きるためのヒント」を聞きました。

読者と同じ目線で、読者と一緒に生きていきたい

小泉麻理香
小泉麻理香(こいずみ・まりか)。雑誌編集者。10代で『Happie nuts』の編集部に入る。その後フリーランスとして、さまざまなギャル誌に編集・ライターとして携わる。2018年夏頃より、『姉ageha』の編集長に就任。同時に『姉ageha』のInstagram、Twitterの運営も担当。

──『姉ageha』、話題になっていますね。「元気が出る!」「もう一生ついて行くしかない」との声がTwitterでもあふれています。

小泉麻理香さん(以下、小泉):『姉ageha』はファッション誌ではなく、生き方や考え方を発信していくのがコンセプトなんですよ。美容とファッションの情報も載せているけど、「今年の春はこのアイテム」とか流行はどうでもよくて、モデルの子たちのマインドやメッセージを発信しつつ、読者の悩みや葛藤を取り上げていこうっていう雑誌なんです。

──そのメッセージが共感を呼んでるんですね。

小泉:読者目線を大事にしたいので、モデルも読者と身近な立ち位置の子を起用しています。読者モデルに近いイメージですね。特集企画も、読者から直接リアルな悩みを聞きながら、意見をもらって、そこに自分の考えをミックスして出しています。

──1月号の表紙コピー「 “この年齢だからこうしなきゃいけない” なんて決まりは存在しない」にも、とても勇気づけられました。

小泉:仕事にしろ、生き方にしろ、「もう何歳だから」っていう謎の年齢縛りってありますよね。それを払拭していきたいんです。よく「背中を押してあげたい」って言うけど、それだと偉そうだから、読者と同じ目線で「わたしたちはこう生きてるけど、みんなはどう?」って投げかけていきたい。読者の皆さんと一緒に生きていきたいんですよ。

──読者と共に考えていくってことですね。

小泉:雑誌って、上から目線になりがちじゃないですか? 「◯◯レッスン」とか「春の着こなし教えます」とか。「教えます」じゃないだろって、わたしは思っちゃう(笑)

人生に正解はないから、いろんな生き方があっていい

小泉麻理香
表紙を見ながら、「もう何歳だからっていう謎の年齢縛りを払拭したいんです」と小泉さん。

──「年齢にとらわれない」をテーマにしつつも、モデルさんのスナップには年齢が書かれていますね。それだけでなく、子どもの有無 / 既婚未婚などのプロフィールも。これはどんな意図があるんでしょうか。

小泉:みんな、世の中から「こうじゃなきゃいけない」みたいな謎の圧力を受けて「何歳だから子ども産まなきゃ」とか「離婚したらダメなのかな」って考えがちですよね。でも、人生に正解とかないと思うんですよ。『姉ageha』のモデルには、結婚してるとか離婚したとか、子どもがいるとかいないとか、いろんな子がいるんです。だから『姉ageha』を読みながら「いろんな生き方があっていいんだ」って感じてもらえたらいいなと思ってます。

──たしかに、20代半ばになるとギャルも落ち着いてきたり、路線変更したりしますよね。『姉ageha』には30代の子もいて、元気が出ます。

小泉:ギャル卒業でも、押切もえちゃん(『Popteen』『egg』で読者モデルをしていた)みたいに、自分の意思で綺麗なお姉さん路線になるのはいいと思うんです。でも、「会社に言われて」とか「なんとなく年齢を気にして」自分を殺して地味にするのはもったいなくないですか? 自分の意思と違うことをすると、みんな輝きを失っちゃうんですよね。

──『姉ageha』はインスタの運用もすごいですよね。クリスマスイブに「予定がある人もない人も 誰かと過ごす人も一人の人も みんなみんな自分らしく好きに生きていこう #人さまの迷惑にならなければ #悪と法に触れなければ #私たちは自由だ」と発信していたのが印象的でした。

小泉:多くの人に共感してもらおうと思って投稿するとぼやけるので、「こういう子に向けて言おう」と、具体的なイメージを持って狭いところを意識しています。「部屋でひとりで落ち込んでいる子」とか。読者一人ひとりにメッセージを届けたいんです。

──あえて狙いを狭くすることが多くの人の共感を呼んでいるんですね。ギャルじゃない子たちもSNSで話題にしています。

小泉:市況を考えると、ギャル雑誌って厳しい。けど、狭くていいんです。ギャル人口がそもそも少なくて、大人でギャルとかもっと狭いじゃないですか。『CanCam』とか『ViVi』とは土俵が違いますからね。見た目がギャルじゃなくても、マインドやメッセージに共感してくれる人はいるので、そういう人たちにも届くものを作っていきたいです。

25歳くらいの頃、ギャルモデルたちが急に落ち着き始めて……

小泉麻理香
話題のSNS投稿について聞くと、「部屋でひとりで落ち込んでる子に向けて、とか具体的にイメージをもって発信してます」。

──小泉さん自身も、ずっとギャルとして生きてきたんですよね。

小泉:若い頃からギャル誌の編集をやってきて、今は『姉ageha』でお姉さんギャル雑誌。わたし、モデルの子たちと同じくらいの年齢なんです。ずっと同じ時代を過ごしてきたんですけど、25歳くらいの時にギャルモデルの子たちが急に落ち着き始めた時期があったんですよね。

──どんなことがあったんでしょうか?

小泉:金髪だった子も地味な髪色にしちゃって、「えっ、そんなに髪暗くしてどうしたの?」って聞いたら、「もうこの歳だから」って。それがもうショックで、「そんなに年齢に縛られなきゃいけないの?」って。

──ギャル、25歳引退説? ギャルも、年齢にプレッシャーがあるんですね。

小泉:それでも最近はギャルの寿命が伸びてはいるんです。昔は、18歳とか20歳でギャル卒業でしたから。「高校卒業したのにギャルとかヤバくない?」「20歳でギャルとか痛いよね」なんて言ってたんですけど、それもそもそも謎じゃないですか?

──なんとなく、ふわっと引退しちゃうんですね。世間の圧で。

小泉:「似合ってるし、やりたいならずっとギャルやればいいのに」って違和感がずっとあったんです。誰が言い出してるってものではなく、世間の空気感なんですよね。モデルの子が落ち着くと、それに読者の子が引きずられちゃうんで、そこは壊していきたいですね。

ギャルは見た目じゃなくてマインド。自分を貫くのがギャルマインド

小泉麻理香
ギャル25歳引退説?! 「もうこの歳だから」とギャルモデルたちが地味になっていくのがショックだったそう。

──もうすぐ平成も終わりますが、ギャルはどう変わっていったと思いますか。

小泉:白肌とか黒肌とか、流行りはあるけど、基本的にギャルの中身は変わっていないと思いますよ。見た目が派手な子がギャルって思われがちですが、本来はギャルってマインド的なものだと思うんですよ。

──どういうマインドを持っている子がギャルですか。

小泉:自分ありきで生きてるかどうか、ですね。しっかりと自分を持っている子がギャルだと思います。ギャルって、見た目で誤解されたり批判されたり、辛い目にあってる子が多いんです。それでも、自分が着たいファッションを楽しむ力があるのがギャル。

──自分を貫けるかどうか、ですね。

小泉:彼女たちは、モテとかどうでもいいんですよ。彼氏とか大切な人には愛されたいけど、チヤホヤされたくてギャルやってるわけじゃないですから。「派手な女はモテないよ」とか大きなお世話だと思っちゃいます。

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「私たちは、一生かわいいままでいい」というコピーが刺さる。あえて「私たち」とすることにも、読者と同じ目線に立ちたいという小泉さんの思いが込められている。

──そもそも、ギャルやってたら、ギャルが好きな人しか寄ってこないですもんね。

小泉:そうなんですよ。自分を貫けば、それを愛してくれる人しかこないから。幸せですよね。でも、お母さんになるとギャルを引退しちゃう子が多いんです。

──「ママだから」でしょうか?

小泉:そうそう。母親が派手だと、保育園とかで浮いちゃって、子どもに迷惑がかかるから。もったいないなとは思うんですけど……。やっぱり「母親はこうじゃなきゃ」みたいな圧力があるんですよね。そんなものに縛られずに、みんながもっと自由に自分らしくいられればいいですよね。

ギャルだって落ち込む時もある。だから「弱さ」を見せることも大切

小泉麻理香
「母親のくせにって思う人も、きっと何かに縛られてる。みんながもっと自分らしくいられれば……」。そんな思いから小泉さんは「自由でいい」というメッセージを出し続けている。

──『姉ageha』は、前向きなメッセージとともに「弱さ」「病み」要素も出してますよね。

小泉:弱さをさらけ出すことも大切です。ギャルだって人間だから、思うようにいかなくて落ち込んで病んじゃう時もあるんですよ。ギャルモデルって、華やかで彼氏いて、お金もあるイメージじゃないですか。でも「彼女たちもそれぞれ苦労してるよ」っていうところを見せると、「わたしも一緒に頑張ろう」って読者も思えるみたいなんです。

──「お悩み」ばっかり発信すると、暗いメディアになっちゃう。「ポジティブ」だけだと疲れちゃう。『姉ageha』は、そのバランスが絶妙だと思うんです。

小泉:明るく、人生を肯定する気持ちは8割で発信しています。全部アッパーでも疲れるし、闇ばかりぶつけられてもしんどい。誌面でも色調やテーマ、文体のテンションのバランスを常に意識しています。コンサートのセットリストを組む感覚ですね。バラード入れたり、盛り上がる曲を入れたり。

──とってもわかりやすいです!

モデルたちの日常、ありのままが読めるギャル雑誌が好きだった

小泉麻理香
弱さをさらけ出すことも大切。でも、そのバランスには気を使っていると教えてくれた。

──小泉さんはどんな雑誌を読んで育ったんですか?

小泉:やっぱり、『egg』ですね。モデルたちの日常が読めたのが好きでした。「Aちゃんのバッグの中身」とか、「彼氏見せ」とか。スタイリストや編集者の提案コーデとかじゃないし、本人のありのままだから嘘がないんです。

──彼氏見せ、ありましたね! 数カ月先の号でしれっと彼氏変わってたりして、面白かったのを覚えています。

小泉:そうそう(笑)。自分に対しても、読者に対しても正直だから好きでしたね。PRで「このコスメ使ってる」とか言われても、絶対わかるじゃないですか。

小泉麻理香
読者にも自分にも嘘はつきたくない。「モデルが本当にしていること、愛しているものだけを載せています」。

──『姉ageha』のモデルを選ぶ基準を教えてください。

小泉:自分を貫いてるっていうのはもちろんあるんですけど、何か1個、持ち物がある子がいいですね。自分で何かをやっている子。手に職があるとか、自分で会社やってるとか、何か自分がしたいことを仕事にしている子です。

──逆に避けたいタイプは?

小泉:「インスタだけで食べてます」って感じの子は、どんなに可愛くても避けたいですね。突き抜けておもしろい子ならいいんですけど、自分から「インフルエンサー」ってプロフに入れてる子とか、ちょっと謎じゃないですか? あとは、話しててつまらない子は、魅力がないし、やっぱり写真にも出るんですよね。

──小泉さんがおもしろいと思うのは、どんな子ですか?

小泉:自分に芯があって、好きなものにこだわってる子たち。まわりに流されないで自分にポリシーがあって生きてる子たちですね。そういう子は話してておもしろいし、やっぱり魅力的なんですよ。

──かっこいいですね。

小泉:最近だと、筋トレにはまって、大会で優勝した子がいて。モデルだから腕の筋肉は控えめなんですけど、腹筋がバッキバキだし、お尻なんて超プリプリなんですよ。ギャルは自分がこれって思ったことについてはとことん突き詰める子が多いかな。好きなことに対する執着がすごいし、中途半端なことはしないでやり抜く子が多いですね。

「妥協も必要とか、超ムカつきません?」

小泉麻理香
「ギャルは好きと思ったことはやり抜く子が多い」と語る小泉さん自身も、ギャル誌の編集をずっと続けている。

──『姉ageha』は毎号、制作サイドのこだわりが伝わってきます。「売れるためにこれをやりなさい」とか「妥協しなさい」とか、外からの意見もあると思うんですが……。

小泉:表紙に入れたくないものを入れろって言われたことはありましたね。闘って拒否しましたけど。

──その話、聞きたいです!

小泉:ハイブランドの読者プレゼントの告知を写真付きで入れろって言われたんです。読者プレゼントは売り上げにつながるから、理屈はわかるんですけど、それを入れちゃったら作り上げた世界観が台無しになっちゃう。そんなのあり得ないから「絶対に無理!」って言って突っぱねました

──もうちょっと大人になれ、みたいなことを言う人はいませんでしたか?

小泉:そういう人とは闘ってきたし、ダメなら縁切ってきました。それで自分の仕事がなくなったとしてもいいやって思ってるんです。「妥協も必要」とか、超ムカつきません? そういうこと言うのはどうせ“おじさん”だし。

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毎号、こだわり抜いて作り上げるこの世界観。“おじさん”の意見を入れてしまうとこうはならない。

──おじさん!?

小泉:おじさんは年齢や性別じゃなくて、マインドなんですよ。何歳以上はおじさんとか、そういうことじゃない。年齢が上でもおじさんじゃない人はいるし、若くても謎の大人論とか言われると「おじさん」認定しちゃいますね。

──ギャルもおじさんも、マインドなんですね。小泉さんはギャル雑誌一本でやってきましたが、もし異動を命じられたらどうします?

小泉:無理! ただ編集がやりたいんじゃなくて、ギャル雑誌を作りたくて今までやってきましたから。仕事がなくなっても、最悪、アルバイトもできるし、本当に食いっぱぐれることって、多分ないんですよ。不本意な仕事をするくらいなら、好きなケーキ屋さんでバイトしたほうがいいです。

──仕事がなくなるのが怖いからガマンする人が多い中で、そこまで言い切れるのはすごいです。

小泉:そうですか? わたしからすると不本意なこと、嫌なことをガマンしてやっていることのほうがわからないんです。日曜日になると「明日は仕事か」って憂鬱になるって聞くけど、そういうの一度もないんですよね。

──まったくないんですか!?

小泉:ないですね。「編集部いってくるね」っていうのと「遊びにいってくるね」っていうのが、わたしにとってはまったく同じテンションなんですよ。体が疲れて大変とかはあるけど、気持ち的に「仕事行きたくない」って思ったことは一度もないです。

──驚きました。ちょっと信じられないような思いです……(笑)

「逆に聞いちゃいますけど、なんで他人の評価が気になるんですか?」

小泉麻理香
小泉さんにとっては「編集部行ってくるね」と「遊びに行ってくるね」が同じテンション。そういうの憧れます。

──まわりを気にしてしまう人が、自分を貫けるように一歩踏み出すにはどうしたらいいでしょうか。

小泉:逆に聞いちゃいますけど、なんで他人の評価が気になるんですか? 人の目を気にして好きな服が着られないとか、耐えられなくないですか? 私も高校時代は散々怒られましたけど、全部無視してました。校則を破っていただけで、法律違反はしてなかったし。素行が悪いわけじゃないのに、髪色とスカート丈で怒られるの、意味がわからなくって。

──社会人になってからはどうでしょう?

小泉:大人になってからも「髪色、もっとおとなしくしたら?」とか言われたことあるけど、「うるさいな」って思ってましたね。

──やっぱりギャルは妥協しないんですね。大人になっても「オフィスカジュアル」を守るために、様子をうかがっている人は多いんです。

小泉:でも、「社則」がないんだったら、自分が突破口になったらいいんじゃないですか? 最初は何か言われたとしても「あの子はああいうタイプだからしかたないね」ってレベルにまでいったら、何も言われなくなるんじゃないかな。そのうえで、仕事で結果を出せばいいんですよ。だって、黒髪でおとなしい子が全員仕事ができるわけじゃないですしね。

──ギャル、強いです! 勇気が出ない人が、自己肯定感をはぐくむ秘訣を教えてください。

小泉:たとえば見た目にすごくコンプレックスがあって自信がなかったとしても、ひとつ頑張ってみることかな。たとえばスキンケアを頑張ってお肌が綺麗になれば、「私はお肌が綺麗だ」ってひとつ自信になるじゃないですか。スキンケアが大変なら「ネイルだけは綺麗にする」でも、「髪の毛だけは綺麗にしよう」でもいいと思うんです。

顔のパーツだと整形になるからお金も時間もかかっちゃうけど、「できるところからやる」っていうことでいいと思います。「わたしはいつもネイルを綺麗にしてる」「わたしはお肌がきれい」っていうのをひとつずつ積み重ねていけば自然と自己肯定できるはず。

そうやって自分の努力で得た結果がひとつでも手に入ると、「これだけ頑張ったんだもん!」って思えるし、結果を出した自分、頑張れた自分を好きになれる。それを繰り返したらいいんじゃないでしょうか。

小泉麻理香

小泉麻理香(こいずみ・まりか)

10代で『Happie nuts』の編集部に入る。その後フリーランスとして、さまざまなギャル誌に編集・ライターとして携わる。2018年夏頃より、『姉ageha』の編集長に就任。同時に『姉ageha』のInstagram、Twitterの運営も担当。

Instagram:@aneageha

Twitter:@aneageha_info

取材・文/小沢あや(@hibicoto
写真/佐野円香(@madoka_sa