高杉真宙さんは現在、テレビ、映画、舞台等で活躍する22歳。
王子キャラ、オタク、不良、宇宙人など演じる役の幅がとても広く、注目を集めています。
華々しい活躍をしている高杉さんですが、実は本人曰く、“超”がつくほどの人見知り。さらに性格は内気だというオプションまでついています。
そんな性格でありながら、10代から俳優としての仕事を経験してきた高杉さんに、人と関わること、そして自分をどうやって奮い立たせて現場に立ち続けているのかを伺いました。
仕事以外に自分が打ち込めるものをキープする

──唐突ですが、イケメンですね。正直、かなりモテますよね?
高杉真宙さん(以下、高杉):……モテたいんですけどねえ(笑)。でも私生活は地味だし、ヒゲも4〜5日剃らなくても平気だし、無理……ですねえ……人見知りですし。
──(笑)。イケメンっぷりからは想像がつきづらいんですけど、筋金入りのオタクだと聞きました。
高杉:もう各所でお話しているので、多分どこかのインタビューで読まれた通りなんですけどアニメと漫画とゲームオタクでして……。休みの日は1日中この3つに囲まれていたらずっと笑っています。
──アニメオタクというのはキャラ萌え的な?
高杉:ではないんですよ。なんでアニメが好きなのかと改めて聞かれると特に理由は見当たらないんですよね。たまに声優さんがいいな、と思って観ることはありますけど。そもそも何故ハマっているかと聞かれても上手くは話せないかもしれませんねえ。
──ハマっているっていうのは、まさにそういう感覚ですよね。恋愛と同じで特段の理由はない、それが日常になっていることを指すので。
高杉:そうなんですよね。僕みたいに特殊な仕事とはいっても、やっぱり苦しいことはある。でもその日常を忘れさせてくれる時間があるかないかで、働く意欲はだいぶ変わってくると思うんです。
──仕事は楽しいばかりじゃないですからね。
高杉:(一拍置いて)はい。僕、今年22歳でいわゆる普通の大学生と同じ、社会に出る年齢になりました。13歳から働き出して、この年齢になったと思うと感慨深いものがあるんですけど、実際は辛いこともありました。でもその中に楽しさもあったなって。そう思えるのは趣味があったからなんですよね。
仕事以外に打ち込めることがあるって、働くうえで大事なこと。今、現役で働いている人もなんでもいいから趣味を持つことをおすすめしたいです。
──高杉真宙にハマるっていう手もありますが。
高杉:僕ですか? それはないなー、そんなにおもしろい人間じゃないと思う(笑)。
毎回、現場でゼロの自分に立ち戻る
──王子キャラ、オタク、学生、宇宙人……と演じるキャラクターイメージが全く固定されていないのですが、その切り替えはどこで?
高杉:いただいた台本があってそれに沿って与えられた役を作っていくのが僕ら俳優の仕事なので、意識して切り替えはしていません。読んでいるうちに自然と切り替わっているんでしょうか。
──台本は俳優にとって重要なもの……。
高杉:自分の役を作る上での“教科書”です。
──台本からいろいろ勉強を重ねていくということですか?
高杉:一冊から何かを学ぶというよりは、教科書があって撮影という授業があって作品が完成していく感覚です。
──これからその授業を重ねて、高杉さんの出演作品が増えて、教科書が自宅にコレクションされていきますよね。そのぶん、知力が増えて自信がついていくイメージですか?
高杉:僕、いまだに自信を持ったことがないんですよ。
──え、高杉さんクラスの俳優さんが……きっと自信があると思っていて、そこから読者に向けてアドバイスがもらえたら、と甘い期待をしていたのですが(汗)。
高杉:これは僕のルールなのでみなさんに適用するかどうかもわかりません。でも僕は基本的に自信がない、求められた演技がまだできない、そう思っています。そう自分に言い聞かせることで毎回、台本をもらうたびにゼロに立ち戻ることができる。だからどの仕事でも
「どう努力をしようか?」
と、自然と考えるようになるんですよね。
──それが高杉さん流の自信じゃないですかね。
高杉:そうなんですかね? みなさん、どんな仕事でも一人前になろうとか、自信を持とうとするけどその感覚がわからないんですよね。不思議(笑)。周囲には
「できます、大丈夫です!」
って体裁を装っておけばいいんですよ。でも自分の中では常にゼロ、一年生になって仕事と向き合う。
最悪の状況を常に想定して仕事に臨む
──今、高杉さんの元には絶え間なくオファーが届いています。これは用意されたものだと思いますか? それとも実力でつかんできたものだと思いますか?
高杉:基本的には僕をマネジメントしてくれているいろいろなスタッフさんたちが用意してくれているものだと思っています。
──自分から発信するタイプではない?
高杉:ないです、一切ないです。たとえば俳優業以外に監督をしたいとか、脚本が書きたいとかそういう欲もないんですよ。もしどうしても、って言われたら助監督とか?
──でも新しいことをするってワクワクしません?
高杉:しないんですよねえ、これが。僕、現場に入る時に期待をしながら入るタイプではないんですよ。
「演技が監督に納得してもらえないかも」
「最悪、役から外されるかもしれない」
そんな風にいつも最悪の事態を想定してることが多いです。もちろん内向的な性格からきているんでしょうけど、不安であることが原動力にもなっているんですよね。
──こんなにたくさん話してもらえると内向的だとは全然思わないですよ?
高杉:そうですよね。僕、同年代の方には人見知りがちな傾向はあるんです。この仕事は毎回「初めまして」の連続で、緊張しっぱなし。年上の方とならそうでもないんですけどね。
──同年代はライバルでもありますよね。会社組織でも昇進がどうとか、そういう比較というか、みんな葛藤はいつでもある。
高杉:人と比べてもどうにもならないという意識はあります。その分、自分が頑張ればいいって。でもさっき、同年代の人に人見知りしてしまうって言いましたよね?
──はい。
高杉:それはひょっとすると、同年代の共演者と話してみたら自分よりもダントツに(演技の)スキルがあって自分の方が劣っているとわかってしまう。そしたらできないことを年齢や経験不足のせいにできないんですよ。それを確認したくない、比べたくないことの表れかもしれません。
──だから毎回、現場に入る時は緊張するんですね。相手役がどんな経歴で実力を持っているのかわからないから。
高杉:自分の持っている実力よりもワンランク高いものを出そうと意気込んでいますからね(笑)。昔、『仮面ライダー鎧武/ガイム』で共演した志田友美さんとも、撮影スタートしてから2カ月間、話したことがなかったこともあります。
「また会いたい」と思われる人になりたい
──いま、自分がしている仕事と収入はリンクしていると思いますか?
高杉:あんまりそこまで深く考えたことはないんですけど……(悩んで)どんな仕事でもそうですけど、相手があってこそじゃないですか。
──エンドユーザーがいて、ということですよね。
高杉:はい。たとえばですけど飲食店店主なら、お客さんが来なければ経営は成り立たない。僕らの仕事も同じで、高杉真宙を使ってくれるスタッフ、観てくれる人がいて初めて成り立つ。その相手を思うことを適当にしちゃいけないんですよね。
だからいつも心がけているのが、
「また会いたい」
と思われる人になること。これは仕事内容だけではなくて、僕の人間性が関わってくることなんですけどね。
──「また会いたい」と思われますよ。今回も、人見知りだって言いながらも、ちゃんと俳優である自分のスイッチを入れて、丁寧な言葉で話してくれているじゃないですか。
高杉:(恥ずかしそうに)ありがとうございます。
──そうやって嬉しそうにされると「また会いたい」につながることも多いんじゃないでしょうか(笑)。高杉さんが「楽しい!」ってテンションが上がることはあるんですか?
高杉:あります、あります! むしろ現場で楽しさをずっと探しているほうかもしれません。そしてそれが「嬉しい」っていう感情にも変換されている。
──最近「嬉しい」と思ったことはありますか?
高杉:そうですねえ、同じ監督さんに続けて作品に呼んでもらえた時。あとずっとやりたかったと思っていた仕事のオファーが来た時、ですかね。昨年末に劇団☆新感線さんと一緒の舞台に立たせてもらったんですけど、すごく難しかったけど楽しかったです。
──そんなに楽しいことでも俳優をやめたいと思ったことはあるんですか?
高杉:上京したばかりでまだ俳優業を仕事だと認識できなかった時期は、やめたいと思ったことありました。うん、すごくありました(笑)。でも今はないです。できないことが当たり前、毎回がゼロの状態。これを繰り返していることで、やっと楽しさにたどり着いたのだと思います。そしてこれからも変わらないだろうな、って。
高杉真宙(たかすぎ・まひろ)
1996年生まれ、福岡県出身。2009年、舞台『エブリ リトル シング’09』で俳優デビュー。2013年放送の『仮面ライダー鎧武/ガイム』では仮面ライダー龍玄を演じ注目を集めた。今年公開の主演映画『笑顔の向こうで』が第16回モナコ国際映画祭でエンジェルピースアワード(最優秀作品賞)を受賞。また、5月3日(土)より、鈴井涼太役で出演している映画『賭ケグルイ』が公開。
ブログ:高杉真宙 公式ブログ
Twitter:@MahiroTakasugi_
Instagram:@mahirotakasugi_
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取材・文/小林久乃
撮影/小森 慧
スタイリスト/石橋修一
ヘアメイク/天野優紀