自分の積極性のなさや、人づきあいが苦手なことに悩み、仕事で大きなストレスを抱えていたカミノユウキさん。ところが自分が「内向型人間」だと気づいたことで、対人ストレスが軽くなり、仕事もグンと上向きになり、カミノさんの人生は大きく変わりました。

「ムリに頑張ることをやめたら、かえって職場の評価が上がりました」

現在は内向型プロデューサーとして活躍するカミノさんに、内向型人間が輝くための、目からウロコの仕事術を聞きました。

仕事のストレスが重なり、身体に変調が起こった 

カミノユウキ
カミノユウキ(かみのゆうき)。大きなストレスを抱えていた会社員時代に「自分は内向型人間なんだ」と気づいて人生が激変。その経験を活かし、現在は「内向型プロデューサー」として内向的な性格を活かすためのオンライン講座や講演、イベント登壇など、メディアでの情報発信を行っている。

──会社員時代に大きなストレスを抱えていたというカミノさんですが、どんなお仕事だったのでしょう。

カミノユウキさん(以下、カミノ):医療機器メーカーで技術職をしていました。病院に医療機器を販売する営業社員を技術的にサポートする仕事です。「今日中にこの資料を作成しておいて」「明日までにあれ調べておいて」と細々した仕事がたくさんあって、それが大きなストレスでした。

──なぜそれがストレスに?

カミノ:複数の事案を同時に抱え込むことや、ひとつの案件にじっくり取り込めないことがすごく嫌だったんです。一つひとつの仕事に興味や愛情が持てないというか。また、やった後の成果もわからなかったので、これはなんのためにやるんだろう? という思いもあって。要は、ただタスクをこなしていくだけという状態で、それがストレスだったんです。

──確かにそれはストレスかも……。他につらかった業務は何かありましたか。

カミノ:電話に出るのが嫌でした。突然、人から何かを聞かれ、すぐに答えるというのが苦手で……。だから会議で意見を求められるのも嫌でした。要はアドリブで対応するのがすごく苦手っていう。

──会社員としてなかなか避けにくい部分でもありますね。

カミノ:そうですね。会社員といえば、会社の人との飲み会もストレスの一因で。飲みに行くと疲れてしまうので、できれば行きたくないけど、断るのも気まずくなりそうで怖い。だから、誘われるがままに飲みに行っては、ストレスを重ねていました。

──同じような状況の会社員は多いと思います。

カミノ:そんな生活を送っているうちに、身体に変調が起こり始めて。仕事の時も家にいる時も、なぜか手や足がピリピリと痺れるようになったんです。なんだろう? と大きな病院で検査したんですが、特に異常は見つからない。そこで先生がこう言ったんです。「ストレスかもしれないですね」と。心当たりがありすぎましたね(笑)。

“活動的な人”になる必要はないと知った

カミノユウキ

──それは大変でしたね……。何か対処はされたんですか。

カミノ:ある日偶然ネットで「内向型の人の特徴」みたいな記事を見つけたんです。すると、そこに上げられていた特徴がすべて自分に当てはまったので、直感的に「これは自分にとってすごく大切なことかも」と、そこから「内向型」についてネットや本で調べるようになって。

──内向型の人の特徴とは?

カミノ:たとえば「一人の時間が好き」とか「大人数の飲み会が苦手」「雑談より本質的な話が好き」「行動する前に考えるタイプ」等々です。それにすべて当てはまっていて。

※カミノさんのブログ記事「あなたは内向型?外向型?30個の質問に答えて診断してみよう!

──カミノさんは典型的な「内向型」だったと。

カミノ:はい。そしてそれを知ったことで、だいぶ仕事がラクになったんです。なぜなら「内向型の性格は直さなくていい」と知ったからです。

もともと僕は自分の内向的な性格を直さなくてはいけないと思っていて、それがストレスの大きな要因だったんです。「もっと社交的にならなくては」「活動的に生きないと」と。でも調べてみたら、内向的は脳の性質なので、基本的に変えられないと。ならしゃあないか、と開き直れたんです。そして、むしろ内向型の性格を“活かせばいい”というのもわかって。

──内向型の性格を活かす?

カミノ:たとえば、予定をあまり入れないこととか。僕はそれまで、土日のどちらかは必ず何か予定を入れていて、平日も仕事終わりによく勉強会や異業種交流会とかに行っていました。できるだけ努力しないと、活動しないと、インプットしないとという先入観があったからです。でも内向型の人は活動することでエネルギーを消耗するので、それで疲れてしまっていたんです。

内向型はむしろ休むことで活力が増すというのを知ってからは、本当に行きたい予定しか入れなくなりました。また、休日に家でダラダラ過ごすのにも罪悪感がなくなって。それで結果的に心身がだいぶ元気になったんです。

飲みの誘いは「そんな気分じゃないんで」と断る

カミノユウキ

──とても興味深いですね。ちなみに、予定に入れるかどうかはどう決めていますか。

カミノ:予定に関しては、「3つの基準」を決めたんです。ひとつめはワクワクすること。テンションが上がる用事かどうかですね。2つめは、それをやってメリットがあること。3つめは、体力に余裕があること。前後に予定が詰まっていると、内向型はエネルギー不足になってしまうので。こうした3つの基準のうち2つ以上に当てはまるものだけを予定に入れるようにしたんです。

──ただ、飲みの誘いとかは会社員として断りづらかったりもします。

カミノ:それが、不思議なことに断っても全然大丈夫だったんですよ。「1杯どう?」などと誘われたら、「ちょっとそんな気分じゃないんで」とか「いえ、行かないですね」と断っていました。

──え、それで気まずくならないんですか!?

カミノ:逆に「おおい、そんなこと言うなよ」とか「出た出た出た」と、いじられるようになりました。僕もちょっと冗談っぽく、親しみを込めて言っているのもあって。

こうして断ることで、かえって相手との関係性が深くなった感じです。それまで僕はあまり本音を出せませんでしたが、そうやって本音で話すことが自己開示となり、相手も接しやすくなったのかなと。もちろん、たまに本当に行きたい時は、飲みにも行っていました。

──仕事のやり方で何か変化は?

カミノ:仕事をきちんと取捨選択するようになりました。それまでは振られた仕事のすべてに100%で臨もうとして逆に中途半端となり、イマイチなアウトプットになってしまっていて。でも内向型はエネルギーが限られているし、マルチタスクも苦手なので、やることを絞ったほうがいい成果が出せると知り、やる仕事を絞り込んだんです。

──どのように絞り込んだのでしょう。

カミノ:営業さんから何か振られても、これは自分の仕事じゃないなと思ったら、「この件は、そちらでお願いします」と言うようになりました。ただそれだけだと角が立つので「こういうふうにやるとできますので、よろしくお願いします」などと添えて。そうすると、次から同じような仕事はもう振られなくなります。

──ひとこと添えるだけでちがいそうです。

カミノ:さらには、やるべき仕事自体も仕分けしました。力をある程度抜いてもほとんど影響ない仕事というのがけっこうあるもので、そこで力を抜く分、本当に大事な仕事に全力を注ぐようにして。そうすることで、トータルの成果は上がりました。全体の仕事のうち、本当に大切なものは2割くらいの感覚でしたね。

やることを減らしたら、逆に「積極的」と評価された

カミノユウキ

カミノ:それと、苦手だったアドリブ対応の方法も見直したんです。

──アドリブ対応を見直す?

カミノ:それまでは会議で発言できなくて悩んでいましたが、実際は意見がないのではなく、考える時間がなかっただけなんです。そこで可能な限り事前にどんな意見を求められるのかを聞いておいたり、たとえ会議中に発言できなくても、後でメールで送ったりしました。じっくり考えて意見するので、「深い意見をありがとう」と逆に評価されたりもして。

また電話や打合せでも、なるべくアドリブで対処しなくてもいいように、よく「後でメールでお送りしますね」「お調べするので折り返させてください」と対応するようになりました。

──そうした内向型の人の仕事術を実践したことで、仕事の成果はどう変わったのでしょう。

カミノ:営業先でプレゼンもよくしていたのですが、大事なプレゼンの準備にきちんと時間を使えるようになり、結果を残せるようになりました。あと、それまでは言われたことをただこなすだけだったのが、余裕ができて自分からやることを提案するようにもなって。そうやって仕事に付加価値を付けられるようになったんです。

──会社での評価はどうでしたか?

カミノ:上司からの評価も、それまでは「積極性がない」「意見がない」「もっと前のめりになってほしい」などと言われていたのが、「意見を言うようになった」「先々を読んで仕事している」「自分から主体的に仕事している」と言われるようになりました。

世のノウハウのほとんどは外向型向け

カミノユウキ

──自分が内向型だと知ったことで、なぜこれほど大きな変化が起こったのでしょう。

カミノ:それまで自分が頑張っていたのは、外向型の人向けのノウハウだったんです。とにかく行動を起こせとか、人脈を広げろとか、当たって砕けろとか。実際に世の多くのビジネス書や自己啓発書は、外向型の人向けのノウハウが載っています。なぜなら外向型のほうが人数が多いし、世の中的にも「外向型が理想」とされていて、子どもの頃からそうなるよう教えられているからです。

──確かに、とにかく行動を、とかよく言われますよね。

カミノ:でも実際は、世の人の1/3は内向型人間だと言われていて、そういう人は外向型のやり方が合わなかったりします。だから内向型の人は、一般的なノウハウをムリに実践するのではなく、内向型の特性に合わせたノウハウや生き方を実践するべきなんだと。それを知ったことが大きかったです。

──あらためて外向型と内向型の違いとは?

カミノ:大まかに言うと、外向型は人と接したり活動することでエネルギーが回復するけど、内向型は一人でいたりのんびり過ごすことでエネルギーが回復する。どちらとも、その反対の行動をとると、エネルギーを消耗しやすい。だから内向型人間は頑張って活動するのではなく、人間関係も予定も仕事も程よく絞り込むことで、自分の力を存分に発揮できるようになるんです。

──正直、外向型と内向型ではどちらがトクなのでしょう。

カミノ:今の「外向型がよし」とされている世の中では、普通にしていれば外向型のほうがトクでしょう。就活でも、社会人になっても、僕のように外交的になれず悩む人はたくさんいます。でも、内向型というのを理解して、自分なりの仕事のやり方を見つければ、まったく損ではありません。思考力や集中力が高かったりするので、やり方次第で外向型の人以上の成果も出せます。

──外向型以上の成果も……。

カミノ:事実、アメリカのCEOの半分以上が内向型だというデータもあります。だから良し悪しではなく、自分が内向型というのを知り、特性をフルに活かせるやり方を見つける。それが何より重要なのかなと。たとえ完璧な内向型ではなく“内向型の気がある人”であっても、当てはまる内向型のノウハウはいろいろあると思うので、ぜひ一度、内向型診断をしてみてください。

カミノユウキ(かみのゆうき)

1989年生まれ。会社員として大きなストレスを抱えるなか、自分が内向型人間であることを発見。それにより対人ストレスが軽くなり、会社内での貢献度も増し、仕事が大きく好転する。その経験を世の中に活かそうと、「内向型プロデューサー」として独立。内向的な性格の人を対象としたオンライン講座や講演を開催するほか、Twitterやブログで内向型の概念を世に広めている。

Twitter:@YukiKamino

ウェブサイト:内向型人間の教科書

取材&文/田嶋章博(@tajimacho
撮影/奥本昭久(kili office)