消費税率10%も迫り、漠然とした生活の不安がしのびよる現代。でも、将来のことは考えたくないし、好きなことに使うお金もゆずれない、という人も多いはず。

そこで、現在28歳、MBAホルダーでファイナンシャルプランナーでもある“お金の専門家”横川楓さんに、それほど収入が多くない20代でもできる貯金のしかたを伺いました。

読者と同世代であり、若い世代にお金の知識を伝える活動もしている横川さんだからこそのお話です。

月収が同じでも、使えるお金は減っていく

横川楓
横川楓(よこかわ・かえで)。明治大学法学部卒業後、同大学院へ進学、24歳で経営学修士(MBA)を取得。ミレニアル世代のお金の専門家/経済評論家。著書に『ミレニアル世代のお金のリアル』。

──お金に関しては不安な気持ちしかありません。特に将来が見えなくて…。

横川楓さん(以下、楓):当然だと思います。たとえば、初任給の平均額は少しずつ上がっているものの、年間の手取りは実は減っているんです。

──なぜですか?

:会社員だと給料から社会保険料が引かれていますよね。月給20万円なら、毎月約3万円も引かれています。その中でも、厚生年金の料率は2017年でいったん固定されたものの、それまでは引き上げられていましたし、2003年からは、ボーナスからも社会保険料が引かれるようになりました。

消費税率もどんどん上がり、10月からは10%になります。

──ということは手元に残るお金は減っていますね。

:それなのに、物の値段は上がっています。たとえば、下の図を見てください。

牛乳IL¥250(2003年)、¥290(2018年)として計算。【編集部作成】

──あれ? 大卒初任給平均は増えているけれど、買える牛乳が減っています!

:パッケージが小さくなっている(以前は1Lパックが主流、現在は900mlのものが出てきた)こともあって気づかないかもしれませんが、牛乳の値段も上がっています。税金も増えるので年間の手取り額は減っていて、実際にはこの図よりも厳しいんです。

──そうなんですか……。

:以下のように、牛乳だけではなくて毎月なにかの値段が上がっている状況です。毎日買うような飲料水系も。ひとつひとつは10円、20円の差でも、1年だとけっこう大きくなりますよね。

──じゃあ、余裕がさらになくなって、貯金なんて無理な気がします。

:そんなことはないですよ。状況は厳しいけれど、お金の使い方も変わってきています。苦しい思いもせず、好きなこともがまんせず、貯金力もつけていきましょう。

──ちなみに、横川さん自身はどうやってお金との付き合い方を学んだんですか?

:育った家が会計事務所だったのもあるんですけど、実は両親の離婚がきっかけで独立した母と二人暮らしになりまして。庭に池があるような家から、すきま風の吹きこむアパートに引っ越したんですね。中学生の時に。

──それでお金の不安を感じた?

:祖父の援助があって大学に進学できたんですが、高校生の自分の力だけではむずかしかったはず。大学進学でなくても資格をとるとか、何かをしたいという時にお金がないと選択肢が持てません。そういう意味でお金はとても大切だなと感じます。

貯金は「アプリでお金の出入りを把握」「NG行動をしない」「使わないお金をつくる」の3ステップで考える

横川楓

──選択肢があることは大事ですよね。でも、そもそも“若い時は貯金なんかするな”という人もいますが。

:若いうちにしかできないことをしたほうがいい、というのはわかります。私も地下アイドル活動をしていたり、アイドルのファンでもあって、けっこうお金を使っていた時期がありました。

──それは浪費でしょうか。

:浪費といえば浪費。でも、好きなことや趣味って、すべてが無駄づかいではなくて、人間に必須なものじゃないですか。そういうのを押し殺してまでお金を節約……というのはちがうと思います。

──我慢しなくていい?

:我慢とか、苦しいことって結局続かないです。そのストレスで余分なものを買ってしまったり。だったら、好きなことのために計画的にお金を貯める、収入を増やす、というふうに考えたほうがいいのかなと。

子どもがいるかどうかなど事情がちがうので、年齢より、その人の状況しだいで優先順位も変わりますけど。

──好きなことをしながら、貯金する。そんなことできるのでしょうか?

:できます。月に貯金する目標……は、いったん忘れましょうか。苦しいので。

──!? まずは目標が必要ではないのでしょうか。

:お金の相談を受けていて、“お金がない!”という人はたいてい、そもそもお金の管理をしていない人が多いです。何が無駄づかいで、どれくらい足りないのか、きちんとわかっていないんですね。

──耳が痛いです。

:まずは、この3ステップで考えてみましょう。

:健康管理と同じで、まずは自分のお金の出入りを把握。どこかに問題がないかどうか調べないといけないです。

──でも家計簿とか、面倒くさくてできないという人はどうしたらいいですか?

:スマホひとつでできますよ。お金を管理する無料アプリがたくさんあるので。

──日々の入力で挫折しそうなのですが。

:クレジットカードや電子マネーなどを紐づければ、それだけでほぼカバーできます。キャッシュレス化のおかげで、お金の動きは管理しやすくなっています。今の20代はデジタルに抵抗がなく、堅実世代でもあるのでうまく使いこなしている方が多いですし。

アプリである程度お金の出入りを把握して、明らかな無駄づかいがあれば、まずはそれをやめてみましょう。

やってしまいがちなNG行動

横川楓

お金の出入りが把握ができたら、ある程度の知識が必要です。実は、お金の話をしていると、“お金がすべてじゃない”みたいな意見をいただくこともあるんです。でも、特に若い子たちは、お金の知識がないせいで損をしていることもあって。「NG行動」をしてしまうこともあるんです。

──NG行動、先ほどの2ステップ目ですね。

:たとえば、絶対やってはいけない「NG行動」はリボ払いです。毎月定額の支払いなので一見便利そうに見えますが。高い手数料を払うことになり、支払いが長期的になるしくみです。キャッシングやカードローンも、金利が高いです。

──借金ってことですよね。手数料や金利、怖いです。

:借金といえば、キャッシングだけではなく、友人や知人に借りるのもNGです。

お金がからむことほど、人間関係をこじらせることはありません。どうしても借りなければならない時は、親に頼るほうがマシです。

もし、キャッシングをしてしまったならば、どこにどれくらいの金利で借りているのかをちゃんと調べて、できるだけ損をしないで返済していく方法を考えないといけないです。

──知らないと損をすることが多そうです。

しんどくない金額から始める。月1000円でもOK

──手取りが少なくても「苦しくない」貯金、具体的にはどうしたら良いですか?

:まずは先ほどもお伝えしましたが、自分のお金の動きをきちんと把握すること、お金に関するNG行動をしないということですね。そして、お金も貯めていきましょう。

貯める習慣がない人であれば、まず「絶対に使わないぞ!」というお金を作りましょう。本当に、小額からでいいです。月1000円でも。しんどくない金額にすることがポイントで、それが無理なく続けるコツです。ダイエットと同じで、習慣づけすることが大事なんです。

──何か便利な方法はありますか?

おつり貯金アプリは楽しく少額からはじめられるので、貯金初心者にもおすすめです。収入がそれほどないなかで、急に毎月3万円貯金するとか、無理じゃないですか。

──そうですね。でも、どうしても「月1万円貯金したい!」というときには。

:貯金用に1万円を死守する、というのであれば、最初からなかったことにしてしまうこと。方法は人によって違うと思うのですが、私なら“たんす貯金”にします。

──たんす貯金!?

:家にいる時間も少なく、キャッシュレス化で現金を使わないので、私の場合はそれが“使いにくい場所”なんです。口座を分ける方法もありますが、簡単にスマホで移してしまえるので、意味がなくて。

古典的な方法ですが、私には合っていました。

お金より大切なもののために、お金を増やす

横川楓

:自分が継続しやすい環境をつくることが大切ですね。“貯金する”という習慣をつけて、収入が増えた時に、貯金の額を増やしていけばいいので。

──金額よりも習慣づけが大事ということなら、できそうな気がします。

:お金がかかる趣味がある人は、きちんと年間予算も組んで、収入が足りないならば転職や副業を考えるとか、計画的にやっていきましょう。

簡単にはじめられる投資もありますし、起業もいいのですが、まずは自分のお金の現状を把握して不要な出費をおさえたり、守りをかためてください。

──お金初心者はまずそこからですね。

:手取りが少ないのに、無理して高い保険に入る必要もないですし(ただ女性の場合は妊娠する前に入ったほうがいいこともあったりもします)。

お金の知識はアップデートも必要で、“お金の専門家”を名乗っている私でも、見直すとちょこちょこ失敗しています。

仕事でも、貯金でも、計画的に続けていくことが一番大事なのかなと。

それで、残高をちょっとずつでも増やしていく。そしたら好きなことにも使えるし、自分のキャリアアップにも使えます。

お金より大切なもののためにも、お金はとっても有用だと思います。

※参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」/明治乳業「プレスリリース

横川楓(よこかわ・かえで)

明治大学法学部卒業後、同大学院へ進学、24歳で経営学修士(MBA)を取得。地下アイドルという異色の経験を持ち、特に若い世代やお金のことをあまり知らない世代へお金の知識の啓蒙を行い、唯一のミレニアル世代のお金の専門家/経済評論家として活動中。「お金のことを誰よりも等身大の目線でわかりやすく」がモットー。初の著書「ミレニアル世代のお金のリアル」(フォレスト出版)が好評発売中。

Twitter:@yokokawakaede

Instagram:@cae0813

取材・文/樋口かおる(@higshabby
撮影/奥本昭久(kili office)