家庭内でコーヒーのお店を開業し、「小1起業家」が話題になりました。父親の佐藤ねじさんは、さまざまなデジタルコンテンツを生み出すブルーパドルの代表。「ハイブリッド黒板アプリ Kocri」ではグッドデザイン賞を受賞しています。

仕事柄、 “新しい企画を出さなければ”と悩んでいる人もいると思いますが、アイデア出しの達人・ねじさんによると、才能やひらめきはなくてもOKだそう。

誰にでもすぐできる、アイデアを出すコツを伺いました。

アイデアを出すには才能よりもコツが必要?

佐藤ねじ
佐藤ねじ(さとう・ねじ)。1982年生まれ。アートディレクター/プランナー。面白法人カヤックを経て、ブルーパドルを設立。『変なWEBメディア』『5歳児が値段を決める美術館』『Kocri』『レシートレター』『しゃべる名刺』『貞子3D2』など、話題のデジタルコンテンツを制作。著書に「超ノート術 成果を10倍にするメモの書き方」。

──『小1起業家』の他に、『5歳児が値段を決める美術館』『ダンボッコキッチン』など、子ども関連の企画をたくさんされていますね。

小1起業家 〜900円借金して、コーヒー屋を家庭内起業〜
5歳児が値段を決める美術館
ダンボッコ キッチン – ダンボール×スマホで おままごとが面白くなった –

佐藤ねじさん(以下、ねじ):息子が小学生なので、子ども系のアイデアを受信することは多いです。大人の仕組みを子ども目線で解釈するとどうなるかなとか。

──“受信”というと、アイデアが自然におりてくることでしょうか?

ねじ:自然にはおりてきませんね(笑)。

──そうなんですか?

ねじ:僕はアイデアを常に集めていて、子ども関連に興味もあります。なので “子どもに関した企画”にアンテナが反応しやすい。 “カラーバス”という発想法でもあるんですけど。

──カラーバスとは?

ねじ: “赤”と決めて街を歩くと赤いものがよく見つかるようになる、みたいな発想方法です。なにか自分の仕事のテーマを持って探すと、それに関するアイデアが受信しやすくなるので。

──なるほど。そういった発想方法などが、アイデアをポンポン出すコツになりますか?

ねじ:発想方法とかは知らなくてもいいんですけど、コツはありますね。

アイデアをポンポン出せる人になるには、「打席を増やす」「アイデアの箱を持つ」の2つの方法しかないと思っていて。

アイデアの種をたくさん集める

──「打席を増やす」とは?

ねじ:短くバットを持って打っていこうと。ホームラン狙いだとハードルが高いので。とにかく打席に立つ回数を増やすこと。

──大ヒット確実を狙わずに、とにかくアイデアを出していく?

ねじ:アイデアを出す環境にいる人は出しやすくなりますし、最初はいいアイデアと思えないようなものでも、タイミングや組み合わせで化けることもあります。出していく回数を増やすことが大切。

──なるほど。アイデア出しのハードルを下げて。では、 “アイデアの箱を持つ”とはどういうことでしょう?

ねじ:アイデアを貯めておくところを決めます。

──貯めておくところが必要?

ねじ:なにか思いついたり気づいたりしても、人ってどんどん忘れてしまいますよね。

なくさないようにポンポン箱に入れていくイメージです。紙のノートでもデジタルでもいいので、自分のルールを決めることが重要です。

今 “デジタルメイン、+αで紙”くらいがやりやすいですね。

──箱が決まっていれば、アイデアが行方不明にならないと。ねじさんのルールを具体的に教えてもらえますか?

一週間貯めたアイデアから一軍ノートへ

ねじ:僕はこんな感じでやってます。

1.メモアプリに「今週のアイデア」を毎日つける
2.日曜に見直して、良いものをEvernoteの「今週のアイデア一覧」にいれる

佐藤ねじ
iPhoneとiPad Pro、紙、その時使いやすいもので。

──なるほど。毎日小出しにして、一週間分たまったら整理するんですね。

ねじ:日曜日に1回終わるので、何も貯まらないと “今週は良くなかったな”と反省があったり、貯めたいというコレクション欲も出てきたりします。区切りがあったほうがいいですね。

──カテゴリー分けなどはせず?

ねじ:移動中で写真だけのメモになることもあるし、あまり細かく決めすぎず。ただ、アイデアと参考にしたい事例などがいっしょになると、メモが濁るのでそこは分けています。

佐藤ねじ
ノートの表紙はツバメノート風にしているそう。

──あのメモはどこだっけ、と混乱しませんか?

ねじ:週に一度Evernoteに整理しているので、混乱はしませんね。月に一回だと大変になってしまうかも。

──整理する時にブラッシュアップしたりしますか?

ねじ:Evernoteに入れたメモが一軍で、その前のメモは二軍になります。イラストをつけて見やすくしたりすることはあるけど、あんまり大変にはならないように。続かないと自己嫌悪につながるので。

ネガティブ発想など、成功パターンを持っておく

──日常で気づいたことを集めていけばいいのなら、できそうな気がします。

ねじ:0から1を生み出すのは大変なんですけど、0.1ならできそうな感じになるじゃないですか。そういう小さいアイデアとか、スキマからも面白いものが見つかるんじゃないかなと思ったりしています。

──他にもアイデア出しのコツってありますか?

ねじ:飽きる時ってありますよね。先ほどの工程が基本なんですが、A4の紙に太いサインペンだったり、普通にPCとキーボードでとか、その時の出やすさで変えています。

──会議でアイデア出しを効率よく行う時は……。

ねじ:たとえば “新しい名刺を考えよう”という議題があったとしますね。

参加者から活発に意見がでない時は、 “こんな名刺はイヤ”という逆の発想から考えると発言しやすくなったりします。

佐藤ねじ

──「こんなのがイヤ」なら、気軽に発言したくなりますね。

ねじ:「重いのはイヤだよね」とか。ネガティブなものをたくさん出していって、 “重いってどういうこと?” “石でできている?” “紙でも重さって表現できるかな”と連想していけば、アイデアにつながることも。

──なるほど。

ねじ: “こういう時に出たな”というパターンを持っていると、出せるようになります。誰かのアイデアに対して「無理」という反対意見が出ても、「だったらこういうのは」と選択肢を増やしていくのがいいかなと思います。

佐藤ねじ

──一人で考える場合と、複数人で考える場合のちがいはありますか?

ねじ:一人で考えることのほうが多いですけど、複数人でもそんなに違いはないのかなと。

──そうなんですか。

ねじ:アイデアって、実はなにかしらの組み合わせなんですね。

1.もとになるワードをたくさん思い出す 
2.組み合わせる 
3.それがイケているかどうかジャッジする

この3工程に分けられます。人数がいれば、1 .で思い出せるワードの量も増えて、メモリも作業領域も増えます。ファシリテーター(進行役)はいたほうがいいですけど。

──一人でじっくり考えるだけがベストではないと。

ねじ:相手としゃべりながらのほうが脳が活性化して、いろいろ出てくることもあります。自分のアイデア出しにいつでも付き合ってくれるような存在がいたらいいなと思いますね。そういうツールもそのうち出てくるんでしょうけど。

出発点はメモ魔。使えないメモが使えるアイデアに

──メモの習慣は以前からあるんですか?

ねじ:もともとメモ魔で。でも、数があるだけでうまく使えていなかったんです。

──それが変わった?

ねじ:入院して時間があった時、嶋浩一郎さんの『嶋浩一郎のアイデアのつくり方』をヒントに、自分のメモから選りすぐりのアイデアを別のノートに写してみたんですね。そうしたら使いにくかったメモが、アウトプットにつながるアイデアに変わって。

──そうなんですね。

ねじ:それからやり方を工夫していって、自分でも『超ノート術 成果を10倍にするメモの書き方』を出版しました。若手のクリエイターにアイデアの出し方について相談されることもあります。はじめは同じようにやってもらうんだけど、それぞれのやり方で少しずつアレンジされるのも面白いですね。

──突飛なアイデアを急に思いつかなくてもいいと聞いて、アイデア出しに対してのハードルが下がりました。でも、やっぱりすごいアイデアをポーンと生み出す人もいるんですよね。

ねじ:いますね。

──ねじさん自身は、そういうタイプではない?

ねじ:天才肌とかではなくてコツコツ派だし、石橋も叩いて渡るような。

だから、僕がコツコツ地味にやってる間に天才肌の人はすごいアイデアを出して先に行くんだろうな、というモヤモヤがあったんです。

──いろんな企画もヒットして、モヤモヤは解消されましたね。

ねじ:僕の “アイデアの出し方”は偶然に頼るわけではないので、逆に天才肌の人がうまく出ない時や、他の誰にでも使えるのかなと思っています。

──天才肌ではないからこそ生み出された…。

ねじ:「佐藤」という日本で一番多い苗字、A型で親は転勤族、次男で、僕のテーマは “ノーマル”かもしれません。奇抜なものというのは普通があってこそ。普通はこうだよねっていうところを少しだけずらすと、面白いアイデアになったりします。

そういう小さいスキマを探すというのが、僕のスタンスですね。

佐藤ねじ(さとう・ねじ)

1982年生まれ。アートディレクター/プランナー。面白法人カヤックを経て、コンテンツ制作スタジオ・ブルーパドルを設立。『変なWEBメディア』『5歳児が値段を決める美術館』『Kocri』『レシートレター』『しゃべる名刺』『貞子3D2』など、話題のデジタルコンテンツを制作。著書に「超ノート術 成果を10倍にするメモの書き方」。文化庁メディア芸術祭・審査員推薦作品、Yahoo Creative Award グランプリ、グッドデザイン賞BEST100、TDC賞を受賞。

Twitter:@sato_nezi

note:佐藤ねじ(ブルーパドル)|note

取材・文/樋口かおる(@higshabby
撮影/小原聡太(@red_tw225