2018年10月の生誕祭では3日間の売り上げが2億5000万円超。日本一売り上げるキャバ嬢といわれるエンリケこと小川えりさん。お店での仕事のほかにも、著書の出版やテレビ出演のほか、講演やファッションショーへの出演など、幅広く活躍しています。

明るく、ポジティブな立ち振る舞いが人気のエンリケさんですが、もともとは自分に自信がなく、ネガティブ思考に陥りがちだったとか。かつてはお客さまの目の前で上司に怒鳴られて、必死で泣くのをこらえたこともあるそうです。

エンリケさんはどんな下積み時代を過ごし、どうやって今のポジティブさを身につけていったのでしょうか。2冊目の著書『日本一売り上げるキャバ嬢の億稼ぐ技術』が大好評のエンリケさんにお話を伺いました。

はじめは「ある程度のお金が稼げればいい」と思っていた

小川えり
小川えり(おがわ・えり)。 通称:エンリケ。名古屋・錦の老舗高級キャバクラ「アールズカフェ」に週7日、年間360日出勤中の現役キャバクラ嬢。「売り上げ」「指名数」「顧客数」8年間連続No.1記録を更新中。2018年のバースデー・イベントでは3日で2億5000万円超を売り上げた。

──エンリケさんにも、“売れない”時代があったそうですね。その頃はどんなキャバクラ嬢だったんでしょうか?

小川えりさん(以下、エンリケ):欲がなく、「ある程度のお金が稼げたらいいや」って思っていました。海外旅行が好きだったので、そのために働いているようなものでしたよ。アブダビ、モルジブ、タヒチ、カンクーンとか結構、遠いところに行っていましたね。

──「この店で一番になりたい」くらいの野心はあったのでは?

エンリケ:全然。すごい先輩がいっぱいいらっしゃったので、そんなことは考えたこともなかったです。

──本当に欲がなかったんですね。売れなかった時代につらかったことは?

エンリケ:うーん……。よく罵声を浴びせられていましたね。

──罵声!? お客さんにですか?

エンリケ:いえいえ、お客さまではなくて上司に。お店のトップ、会社でいえば社長にあたる人から「そもそもお前、全然かわいくないし、仕事の段取りも全然ダメだな!」って罵倒されたんです。それもお客さまの目の前で!

──パワハラじゃないですか……。その話、もう少し詳しく聞きたいです。読者世代の中には上司との人間関係に悩む人が少なくないので。

エンリケ:今だったら大問題だし、女の子も辞めちゃいますが、その時はまだそういう空気が残っていたんです。今のお店に移ってきた時も、当時の上役から「どうしてドリンクを自分から飲みたいって頼まないんだよ」とか、「初歩的な気遣いがなってねえんだ、お前は」とか怒鳴られたことがありました。

──接客について注意されるのはしかたないとしても、言い方がひどい……。

エンリケ:そうそう。すごく悔しかったです。うん、いろいろ思い出してきた……。絶対に泣きたくなかったので、その場では表情を変えずに必死で我慢していたのを覚えています。

──エンリケさんにもそんな局面があったんですね。

エンリケ:パワハラは論外だけど、仕事で認められるようになるまでは我慢も大事だと思いますよ。自由に接客している今の私は、やりたい放題のように見えるかもしれないけれど、下積み時代に礼儀やマナーを身につけたからこそなんです。今でも引くべき場面ではおとなしくしています。

小川えり
今ではテレビ出演や講演など幅広く活躍するエンリケさんにも、上司に怒鳴られ涙をこらえた日があったという。

仕事で受けた理不尽をどう消化したのか

──上司に対する怒りはどうやって消化したんですか?

エンリケ:怒り続けてもどうにもならないから、今に見てろよってパワーに変えました。もちろん落ち込みはしますけど、もっと頑張ろうと考えましたね。実際、仕事で結果を出すと、相手の態度はコロッと変わりましたから(笑)

──すごく前向きですね。

エンリケ:キャバ嬢に限らず、仕事って理不尽なことが少なくないですよね。上司以外にもひがみや妬みで潰しにかかろうとしてくる人はいるし、お客さまの要望にもできる限り応えていかなくてはならない。いろんなストレスは、結局のところ仕事で見返すしかないんです。

──欲のないキャバ嬢だったエンリケさんが、そのように変わったきっかけは?

エンリケ:お客さまから「同伴の時はおもしろいのに、お店に行くと急につまらんがや」と言われたことですね。外では素の自分を出せていたのに、お店では気を遣って静かにしてたんです。そういうのを取っ払ってアホな自分をさらけ出してみると、応援してくれる方が増えてきて、頑張ろうって思えるようになりました。

──エンリケさんらしさがウケたんですね。

エンリケ:初めてお店でNo.1になった時、見える風景が違って、ここから落ちたくないっていう気持ちになりました。「もっともっと」と欲が出てきたのはそれからですね。

「どうしたらいい?」と悩むことが成長している証拠

小川えり
「初めてNo.1を取った時、見える景色が違った」。こうして欲のないキャバ嬢だったエンリケさんは8年間連続No.1に。

──売れるための努力を始めてから、すぐに結果は出ましたか?

エンリケ:いえいえ。思い返すと、一歩一歩という感じだったと思います。まだまだ自分に自信がなかったですし。当時はネイルをして、カラコンも入れていて金髪でした。

──今はネイルもカラコンもせず、メイクもナチュラルですね。

エンリケ:自分に自信がない時ほどごちゃごちゃ気合いが入っていた気がします。アイプチして二重バッチリとか、エンリケの黒歴史ですね(笑)。売れるにつれて自分に自信がついて、そういうことをしなくなったんじゃないかな。

──自分に自信が持てなかった時、周囲と自分を比べてしまって落ち込むことはありませんでしたか?

エンリケ:売れていなかった時は、私も他の子のことが気になりました。でも仲の良かった同僚が、「性格の悪い子に抜かれても気にしないのよ。どうせ、そのうち自滅するんだから」と言ってくれたんです。見ていると本当にそうだった。汚いやり方でのし上がった人って長続きしないんですよ。逆に信頼できる人がいるなら、素直に教えを請えばいいし、その人のいいところを真似すればいいと思います。

──妬んだり、自分を否定したりせず、素直に学べばいいということですね。

エンリケ:はい。私のインスタを見て、現役キャバ嬢のお客さまとかもお店に来てくださって、「どうやったら人気が出るんですか?」と聞かれることもありますけれども、「見て聞いて吸収して帰ってね」って話します。あと「どうやったら人気が出るんだろう」と悩むこと自体、それがもう成長している証拠だと思うんですよ。

落ち込んだ時、気持ちをどう切り替えてるの?

小川えり
「エンリケの黒歴史ですね(笑)」と売れていなかった時代についても明るく語ってくれた。

──努力が結果につながるまで時間がかかったということですが、失敗もあったのでは?

エンリケ:いっぱいありすぎて思い出せないくらい。しつこく営業しすぎて大切なお客さまに嫌がられてしまったことがありますし、自分の誕生日イベントなのに途中で酔い潰れてしまったことも。閉店まで残り2時間だったんですけど、穴を空けてしまったことは痛恨の思い出です。

──お店でつらいことがあった時、どうやって気持ちを切り替えるのでしょうか。

エンリケ:まずトイレに行きます。自分の顔を見られないところへ避難して、深呼吸。

──あまりお客さんをお待たせできないですよね。

エンリケ:ですから、ほんの10秒くらいですよ。呼吸を整えてから水をジャーッと流す。嫌なことも水と一緒に流れ去り、浄化されるような感じがするんです。手を洗い、「よし、頑張ろー」と気合いを入れて席へ戻ります。

──10秒で気持ちを切り替えられますか? 一日中イライラしちゃう、みたいな人もいますが。

エンリケ:お客さまは時間をお金で買ってくださっているので、それが限界なんですよ。これも慣れですかね。自分の居場所がトイレっていうのもなんか汚いですけど(笑) 。気持ちをリセットできる場所やルーティンを持っておくのはおすすめです

小川えり
エンリケさんが言うように、自分の気持ちをリセットする方法を持っておけば、ネガティブな気持ちを引きずらなくてすむかもしれない。

──気持ちが落ち込んで出勤したくないと思ったことはありませんか?

エンリケ:落ち込んだ時に気をつけないといけないのは、負のループにはまってしまわないこと。休んでしまった日に限って、大事なお客さまがいらしたりするんです。だから無理矢理にでも負の連鎖を断ち切ってお店に出る。そうすれば必ず「やっぱり出勤してよかった」と思うことがあるので、その繰り返しですね。

──落ち込んでお客さんとの会話を盛り上げられない、なんてことは?

エンリケ:私だって、失恋とかプライベードでいやなことがあった時は行きたくないですよ。休んでしまえば楽だし、完璧な状態で接客したいという気持ちはあります。でも、どんなに嫌なことがあっても絶対に表情には出さないっていうのがプロだと思うんですよ。

──よく休まなかったなと自分でも思うことがあったら教えてください。

エンリケ:空き巣に入られて数千万円の被害を受けたことがありました。さすがの私も落ち込んでしまい、休もうかと思いましたが、ちゃんと出勤しましたよ。行ったら行ったで「空き巣事件」をネタにして、お客さまに慰めのシャンパンを入れていただきました(笑)。お客さま相手の商売なので、お店にいることが何より大切ですし、マイナスをプラスに変えていかないと。

──マイナスをプラスに変えるコツはありますか? それができなくて落ち込んでしまう人が多いと思うんです。

エンリケ:私自身、もともとは何でもネガティブに考えがちだったので、意識して変えていきました。とにかく否定的にならないよう、どんな小さなことでもいいから前向きに考えるよう努力しましたね。今よりもっとつらい過去を思い出して「まだ大丈夫」って考えるとか、今こうやって生きていること自体に感謝するとか。とにかく自分の中のいい部分を探すんです。

──やっぱり意識して変える必要があるんですね。

エンリケ:そうそう。あと自分で自分を褒めることですね。「大丈夫、絶対に大丈夫だ、エンリケ」とか「出勤しただけでも偉いぞ、エンリケ」みたいな。私、褒めまくってますよ、自分のこと(笑)

自分を信じて結果を出せれば好循環が生まれる

──エンリケさんといえばSNSで圧倒的な人気を誇っています。シャンパンの直瓶動画や変顔が多くの人の心をつかみました。

エンリケ:今の私にとって、SNSは大きな武器のひとつになっているんですが、お店からは「こんなの絶対にやめろ」と怒られたんですよ。「店の品位を汚す」って。キャバ嬢なのに変顔を載せたりしてますからね。インスタも禁止だったんですよ。

小川えり
エンリケさんの知名度を全国区にしたインスタのフォロワーは31.5万人。女性ファンが全国から名古屋のお店に訪れる人気ぶり。

──えっ? お店からは止められてたんですか?! 驚きです。

エンリケ:でもやめなかった。その頃には少しは自分に自信を持てるようになっていたし、これをやり続ければ話題になって、もっとお客さまが来てくれるという確信があったんです。

──その確信はどこから来ていたんですか?

エンリケ:毎日のアクセス数をノートに手書きでつけていたので、数字で手ごたえを把握できていました。いいか悪いか決めるのはお店じゃない。ジャッジするのは世の中の方。だから何と言われようと無視して続けました。

──結果を出したことで、結局は認めてくれることになったわけですね。

エンリケ:そう。実は誕生日イベントでのシャンパンタワーやお祝いの花飾りを置くことも禁止だったんですよ。でも、「どうしてもやりたい」と言って突っぱねたんです。逆らってやり通したら、上司は「俺はもうなんも言わん。最後まで応援するわ」って言ってくれました。これも自分を信じることができた結果なんですよね。結果が出れば、ますます自分に自信が持てるようになるし、いい循環が生まれるんです。

引退を決めたエンリケさん。新たな挑戦は?

小川えり
お店からはSNSをやめるよう言われていたそう。それでも「これを続ければもっと話題になる」と確信を持って続けたという。

──結果を出したくても、なかなか新しい一歩を踏み出せない人もいます。そんな人たちにアドバイスをするとしたら?

エンリケ:えっ、なんか難しい質問ですね。どうして一歩を踏み出せないんですか?

──自分には無理と最初からあきらめてしまったり、失敗が怖くて尻込みしてしまったり……。

エンリケ:まずは踏み出しちゃうんですよ。そこから形になっていくはずです。誰か背中を押してくれる人がいればいいけれど、いなければエイッと自分で自分の背中を押しちゃう。

──たしかに。最初からうまくやらなきゃと思うから、失敗が怖いんですね。

エンリケ:そうそう。かくいう私だって今年の11月のバースデーイベントでキャバクラ嬢を引退したあと、東京でエステのお店を開くつもりなんです。女性のための仕事がしたくって。

──大胆な決断ですね。当然、引き留められましたよね?

エンリケ:いろいろな方から「どうして辞めるの? まだまだ稼げるのにもったいない」と言われます。でもやっぱり一番いいタイミングで辞めたかったし、別の世界で新たな成長にトライしてみたかったんです。新しい世界に飛び込む時、誰だってうまくいく保証はありません。だったら自分を信じて一歩踏み出してみる。やらなくて後悔するより、ずっといいじゃないですか。

小川えり

小川えり(おがわ・えり)

通称:エンリケ。名古屋・錦の老舗高級キャバクラ「アールズカフェ」に週7日、年間360日出勤中の現役キャバクラ嬢。「売り上げ」「指名数」「顧客数」8年間連続No.1記録を更新中。2018年のバースデー・イベントでは3日で2億5000万円以上を売り上げた。SNS展開が話題で、毎日のインスタライブを楽しみにするファンも多い。2冊目の著書『日本一売り上げるキャバ嬢の億稼ぐ技術』(KADOKAWA)が好評発売中。

Instagram:eri.ogawa1102

Twitter:@rie0985

ブログ:エンリケブログ

取材・文/赤澤竜也
写真/花井知之