女性が憧れるキャバ嬢として、今年3月にキャバ嬢を引退するまで、新宿・歌舞伎町でカリスマ的人気を誇っていた愛沢えみりさん。

愛沢さんは20代前半で数店舗のキャバクラにてNo.1を獲得した後、雑誌『小悪魔ageha』の専属モデルに抜擢。その後、自身がオーナーとなり立ち上げたアパレルブランド「EmiriaWiz(エミリアウィズ)」の社長も務め、キャバ嬢の枠を超えて幅広いフィールドで活躍されています。

そんな愛沢さんに、キャバ嬢や社長業で培ったコミュニケーション術を聞いてみたら、「自分の発言が原因でスタッフが辞めたことがある」と、ガチの失敗談を告白してくれました。

ダメキャバ嬢から立ち直れたのは「不安と向き合う方法を見つけたから」

愛沢えみり
愛沢えみり(あいざわえみり)。18歳で夜の世界へ入り、2011年、22歳の時に新宿・歌舞伎町の「ジェントルマンズクラブ」でNo.1を獲得。以後、“歌舞伎町の嬢王”として君臨する。2013年にブランド「Emiria Wiz」を発起し、2015年には月商1億5千万円を達成。

──現役時代、愛沢さんは“歌舞伎町の嬢王”(※)と呼ばれていたそうですが、実際どのくらい稼いでいたのでしょうか…?

愛沢えみりさん(以下、愛沢):今年3月に行われた引退式では、2日で2.5億を売り上げました。

※語源は、倉科遼原作の漫画『嬢王』。一般的には、日本でトップクラスの売上を誇るキャバ嬢を指す言葉として使われている。

https://www.instagram.com/p/Bvyq7AegL7f/?utm_source=ig_web_copy_link

愛沢さんが所属する、新宿・歌舞伎町にある「FOUTY FIVE(フォーティーファイブ)で行われた引退式の様子。全国から愛沢さんを慕うキャバ嬢や、女性ファンも多く駆けつけた。

──に、2.5億…すごい! 愛沢さんは18歳でこの業界に入られたそうですが、最初は全然指名がとれなかったと聞きました。

愛沢:最初の頃は、決めた通りにちゃんと出勤もできない“ダメキャバ嬢”でした。出勤しても、ただフリーの席をぐるぐる回るだけの回転寿司みたいな状態で(笑)。やる気がないから指名もとれなくて、いつも愚痴ばっかり言っていた記憶があります。

──愛沢さんにもそんな時代があったんですね。何かそこから変わるきっかけがあったのでしょうか?

愛沢:20歳の時にお付き合いしていた彼と別れて、心機一転、新しいお店に移って頑張ろうと思ったんです。でも、いざ新しい環境に飛び込んでみると「変わりたい」という気持ちがあっても、何から始めたらいいのか全然わからなくて……。「まずは、毎日出勤することから始めてみよう」って担当のスタッフさんが声を掛けてくれたことで、何とかスタート地点に立てました。

──最初から有言実行できましたか?

愛沢:はじめは頑張って毎日行ってたんですけど、そのうちお店に行くのが急に怖くなっちゃったんですよね。

愛沢えみり
「あの頃は、本当にメンタルが弱かったんですよね」と、当時を振り返る愛沢さん。

──どうしてですか?

愛沢:毎日行っても全然指名がとれなかったんです。すぐに結果が出ないことは頭ではわかってはいたけど、自分に期待することに疲れちゃって。どんどん辛くなって、軽く“ひきこもり”みたいな状態になっていました。

──結果がついてこないことに焦りや不安を感じていたんですね。

愛沢:そうですね。でも、「今日、出勤できないかも……」と、私が電話で弱音を吐く度、担当のスタッフさんが「とりあえずお店に来てから考えよう」って励ましてくれて。毎日そのやりとりを繰り返しているうちに自然と立ち直れました。

愛沢えみり
「面倒見の良いスタッフに恵まれて、本当に幸せだったなと思います」

愛沢:その時から、何だか「嫌だな」「不安だな」と感じたことは、すぐにそのスタッフさんに伝えるようにしました。そうすると「何が嫌なの?」って返してくれるので、自然とやりとりの中で、自分が今、何に不安や不満を抱えているのか、わかってくるんです。

──モヤモヤした気持ちを言語化することで、楽になれたんですね。

愛沢:そうですね。今でもそのスタッフさんには感謝しています。吹っ切れてからは、当たり前のように毎日出勤できるようになったし、徐々に指名も増えていきました。結果がついてくるとキャバ嬢の仕事が本当に面白くて、いつの間にか「No.1になってみたい」という気持ちが芽生えていた気がします。

お酒が飲めなくてもNo.1に! 「あえて言わない・聞かないことが必勝法」

──No.1を目指すにあたって、毎日出勤すること以外にやっていたことはありますか?

愛沢:私、実はお酒がほとんど飲めないので、とにかく同伴をたくさんこなしました。多い日は、1日4人のお客さまと同伴したこともあるかな。お店に出たり入ったり、とにかくバタバタでしたね。

──1日で4人も! 売上げが良いキャバ嬢はお酒が飲めるイメージがあったので、すごく意外です。お客さんによっては嫌な顔をする方もいたのでは?

愛沢:うーん飲めない事実を自分から伝えたことがなかったので、場がしらけることはあまりなかったですね。

──普通にバレませんか(笑)?

愛沢:それが意外とバレないんですよ(笑)。私のハイテンションな接客も相まって、長年気づかなかったお客さまもいるほどです。キャバクラはいかにその場をお客さまに楽しんでいただけるかが大切なので、飲めないことを伝えて場がしらけるよりも、一緒に乾杯できる楽しさを優先していました。

愛沢えみり
「お酒が飲めないってバレることもありますよ(笑)。でもバレる頃にはお客さまとの信頼関係が築けているので、大抵は笑って許してくれましたね。」と、愛沢さん。

──キャバ嬢は、お客さんにシャンパンやブランデーを頼んでもらうことでプラスの売上げが得られるシステムですよね。お酒が飲めない愛沢さんは、どうやってお客さんに営業していましたか?

愛沢:“とりあえず言ってみる”スタイルを貫いていました。席に着いたら「次は何飲む? キャバクラに来たらやっぱりシャンパンだよね〜」みたいな感じで。オーダーしてほしいと思った時は、お客さまが断っても変な空気にならないように、冗談ぽくおねだりするようにしていましたね。

──お客さんに逃げ道を作ってあげていたんですね。他には、何か気をつけていことはありますか?

愛沢:お客さまにできるだけ“質問をしない”ことですかね。会話が発展する質問はしますが、どこに住んでいて、今日は何をしていたとか、お客さまのプライベートに踏み込んだことは自分から聞かないようにしていました。

愛沢えみり
「優先すべきは、お客さまの居心地の良さ。長いこと指名してくださったお客さまも、引退するまで何をされているのか最後までわからなかった方もいます」

──質問をする側からすると何気ない質問でも、受け取り方によって居心地が悪く感じたりすることもありますもんね。

愛沢:そうですね。あとは、この手の質問は相手がバトンを渡してくれないと、一問一答になっちゃって会話のラリーが続かないことが多いんです。

──たしかに。キャバクラだけではなく、ビジネスシーンでも初対面の人と会話が弾まない時にやりがちかもしれません。

ブランドを立ち上げるも、スタッフが相次いで退職

──2013年にアパレルブランド「EmiriaWiz」を立ち上げられた愛沢さんですが、きっかけは何だったのでしょうか?

愛沢:何カ月も連続でNo.1を獲れるようになった頃、雑誌『小悪魔ageha』に取材してもらったことがありました。それがきっかけで専属モデルになったんですが、自分でもビックリするくらい女の子のファンが増えたんです。お店に指名で来てくれる子もいて。そんな状況を見ていた常連のお客さまから「自分のブランドを始めるなら今がチャンスだよ」とアドバイスをもらったんです。

愛沢えみり
「キャバ嬢と接点のないOLや学生の女の子から指名をもらった時は、すごく嬉しかったです」と当時を振り返る愛沢さん。

──もともとアパレルブランドをやってみたいという気持ちがあったのでしょうか?

愛沢:ブランドを立ち上げるというよりも、“洋服を着る意味”が好きでした。ダメキャバ嬢だった時代も、可愛いドレスを着るだけで勇気が湧いて、強くなれた気がした。そんな洋服を自分で作れたら最高だなと思って、ブランドを立ち上げる決意をしました。

──ECからスタートした「EmiriaWiz」ですが、2015年には月商1億5000万円を突破しています。数字だけ見るとすごく順調そうに思えますが、実際はそうではなかったそうですね。

愛沢:売上げは本当に順調でした。でも、休みがくる度にスタッフが辞めていく状況が続いていて、社内の雰囲気は最悪でしたね。

──何が原因だったのでしょうか?

愛沢:原因は100%私にあったと思います。キャバ嬢をやっている時と同じようにスタッフとコミュニケーションをとっていたら、「ついていけない」と言われてしまったんです……。

──具体的に思い当たる節はありますか?

愛沢:思い当たる節しかないですね(笑)。恥ずかしいんですけど、当時は本当に口が悪かったんですよ。たとえば、洋服のデザインについてやりとりする際、可愛くないなと思ったら「やばっセンスない」「下手くそ」って、むき出しの感情をそのまま口に出してしまっていたんです。

──それは相手に対してダメージが大きいかもしれませんね……。

愛沢えみり
「キャバクラの接客は、言葉遣いより空気を読む力の方が大切。接客で“ヤバい”と“ウケる”ばかり使っていたので、昼の仕事で人に意見を伝えるのは本当に苦労しました」

失敗を経て気づいた「コミュニケーションで気をつけるべきこと」

愛沢:キャバ嬢の時はスタッフが何かミスをしても、自分が怒れば大抵のことはどうにかなっていました。ついその調子でどんどん言ってしまって。休みの度に人が辞めていく状況になって初めて、自分のコミュニケーションのとり方に問題があることに気づきました。このままでは「ブランドを続けられなくなってしまう」と感じた時に、自分が変わるしかないと思ったんです。

──変わろうと決意してから、具体的にどんなことに気をつけましたか?

愛沢:まず、絶対に必要な時以外は怒らないと決めました。次に、思ったことはすぐに口に出さない。いったん飲み込んで、頭の中で整理してから話すようにしました。あとは、イライラしやすい状態を作らないこと。当たり前だけど、人間って睡眠不足だったりお腹が空いていたりすると、些細なことでイライラしちゃうじゃないですか(笑)。

──すごい徹底ぶり……! 努力の成果は実感できましたか?

愛沢:そうですね。自分の発言がどんな風に伝わるのかを考えると、自然と伝える“相手を理解しよう”とするスタンスになれるので、一緒に働くスタッフとのコミュニケーションもスムーズになりました。

愛沢えみり
取材中も、ゆっくり丁寧に笑顔を絶やさず話をしてくれた愛沢さん。

愛沢:それでも人と人のことだから、悩みは尽きません。つい最近も、長年働いてくれている「EmiriaWiz」の店舗スタッフに本部への昇進を勧めたら「辞めたい」と言われたことがあったんです。

──昇進するのは嬉しいことですよね……?

愛沢:多くの人はそうだと思います。でも彼女は、“店舗で接客”することが心底好きで、ずっと店頭に立ち続けたかったみたいで。立ち仕事を長年続けるのは大変だし、長い目で見たら昇進することが彼女のためだと私は本気で思っていたんですけど……。

──昇進できることよりも接客ができなくなることのほうが大きかったんですね。

愛沢:そうですね。仕事において何を重視するかは本当に人それぞれだなと思います。他人を理解するためには自分の価値観を常にアップデートしていく必要があるんだなと実感しました。

──自分の価値観で判断しないって簡単なようで難しいですよね。愛沢さん自身は、他人からなかなか理解されにくいと感じることはありますか?

愛沢:私の場合は、キャバ嬢という職業ですね。今まで、モデル業でも社長業でも、「キャバ嬢だからできない」というレッテルを貼られることが本当に多かったので……。でも、その悔しさをバネにできたからこそ、今まで頑張ってこられたんだと思います。

──キャバ嬢を引退された今は何がモチベーションになっていますか?

愛沢:最近少しずつなんですけど、キャバ嬢というフィルターを通さずに、純粋に「すごいね」ってポジティブな反応をしてくれる人が増えてきました。少し前までは「キャバ嬢“なのに”すごいね」って言われることも多かったので、それがすごく嬉しいんです。それでも、まだまだ批判的な意見も耳にするし、キャバ嬢に対する世間の風当たりは強いなと感じています。

私がモデルになれたのも、ブランドを持てたのも、すべてキャバ嬢をやったおかげだと思っているので、自分が着実に事業を続けていくことで、見方を変えてくれる人がひとりでも増えたら嬉しいですね。

愛沢えみり

愛沢えみり(あいざわえみり)

18歳で夜の世界へ入り、2011年、22歳の時に新宿・歌舞伎町の「ジェントルマンズクラブ」でNo.1を獲得。以後、“歌舞伎町の嬢王”として君臨する。2012年に雑誌『小悪魔ageha』の専属モデルに抜擢。2013年にブランド「Emiria Wiz」を発起し、2015年には月商1億5千万円を達成。現在は、アパレルブランドや美容クリニックを経営しながら、プロデュースを手掛けた新宿・歌舞伎町のキャバクラ「FOUTY FIVE」でマネージャーも務めている。

Twitter:@emirio9o1

Instagram:@emiri_aizawa

取材・文/文希紀 (@gigi_kikifumi )
撮影/佐野円香(@madoka_sa