グラビアタレントとしては遅咲きの29歳でデビュー後、妖艶なルックスと知的なキャラクターで大ブレイクを果たした壇蜜さん。現在は女優の他、ユーモアと切れ味鋭い発言でコメンテーターや執筆の世界でも活躍し、その人気は男性にとどまらず女性からの支持も得ています。

「粛々と与えられた仕事をまっとうするだけ」と語る壇蜜さんからは、プロ意識の高さと覚悟がひしひしと伝わってきます。

起伏に富んだ経歴と、それに裏付けられた仕事の処世術までいろいろなお話を伺いました。

おっぱいが揺れないとテレビには出られない⁉

壇蜜
壇蜜(だんみつ)。さまざまな職業を経て、29歳の時に、グラビアタレントとしてデビュー。現在は、テレビ、ラジオ、雑誌、文筆業など幅広く活躍中。

──芸能界に入るまでにさまざまな職を経験されている壇蜜さんですが、具体的にどんなお仕事をしていたのですか?

壇蜜さん(以下、壇蜜):大学を卒業してから、お菓子の専門学校に通って調理師の資格を取り、まずは和菓子工場で働きました。そこをクビになり、通信会社の受付を半年。27歳になって、葬儀の専門学校に通い、「エンバーマー(遺体衛生保全士)」の資格を取りました。

──エンバーマー?

壇蜜:遺体の消毒や保全はもちろん、損壊などがある場合に修復処理を行う専門家です。ところが、卒業しても就職先がないという不測の事態が起きたんです。結局、大学病院の研究所に拾ってもらいました。でも、それだけでは暮らすことはできず、同時期にホステス、グラビアと3足のわらじをはく生活をしていました。29歳になっていましたね。

──29歳から本格的にグラビアデビューとのことですが、失礼ながらかなり遅いデビューですよね。

壇蜜:はい。とにかく年齢のことがあるから、露出度をあげていこうという方程式ができてしまっていたので、大変でした。「水着で頑張りたいです!」と言うと若い子たちと同じ土俵になってしまうので、「もっと露出を!」と言っている人たちの船に乗ってみるしかないなと。

──年齢の高さ=露出度の高さにつながるとは厳しい世界ですね。

壇蜜:とにかくジャンプしておっぱいが揺れないとテレビには出せないと言われたこともありました。ファミレスで「ちょっとピョンと飛んでみて」って言われたり。でも、実際飛んだのに出られなかったんですよ。コーラだけ飲んで帰ってきました(笑)。

──そんなこともあったとは……。その後、バラエティでブレイクしましたが、きっかけはなんだったのですか?

壇蜜:テリー伊藤さんとの雑誌での対談がきっかけですね。なんか面白いから「サンデー・ジャポン」に出ろよって。

巡ってきたチャンス。他人と同じことはしない

壇蜜

──テリーさんの言うとおり、壇蜜さんの面白さって抜群ですよね。どうやって身につけたのか気になります。

壇蜜:すごく厳しい女子校で育ってきたというベースが関係していると思います。ロールパンの食べ方など「これはコントなのか?」と思うようなことが生徒指導書に書いてあったんですよ。人間、エグい拘束をされると笑いで片付けようとするんですよ。抑圧に抑圧を重ねると「こんなやつ」が生まれてくるんだから、無駄ですよね(笑)。

──逆に個性が育ちますね。

壇蜜:どんなに厳しい環境でも「ふっ」と笑えるようになりました。だから、きわどいグラビアもできたんだと思います。泣いちゃう子もいるとよく聞きますからね。「おはようございます」とスタジオに入って、今日の衣装は「靴2足だけ」という現場もおかげさまで乗り切れました。

──なかなかハードですね。そんな厳しい世界を生き抜くために工夫してきたことはありますか?

壇蜜他の人と同じことをしない、ということですかね。たとえばバラエティ番組で「芸能界で誰に口説かれたことがある?」とよく聞かれるんです。「実は◯◯さんに口説かれて」と言っている他のグラビアの子たちとは、真逆のことを言おうと思いました。

──真逆のこと?

壇蜜:「いやー、照明さんとは付き合ったことはありますけどね」とか(笑)。よく「技術さんにしか目が行かない」と言っていました。だってプロデューサーや有名人など、懐が潤っている人間とデキていても、当たり前すぎて面白くないじゃないですか。寝ぐせをつけたまま仕事場に来るようなエンジニアと付き合っている人がいてもおかしくないでしょと思って。そういうふうに、他の人と同じことはしない、言わないように心がけました。

「自分のやりたいことをやるのはダメだ」と気づいた

壇蜜

──目の付け所がさすがすぎます。バラエティ番組で一気にブレイクして順風満帆に見えますが、お仕事でつらかったことなどはありますか?

壇蜜:この仕事をやめてしまおうと思ったことがあるんです。前の事務所で、忙しくなりすぎて、私もマネージャーもどうにもならなくなったことがあって。パニックになっているマネージャーを見て、「私がここにいるせいでこんなことになっている。人を困らせている。もういちゃいけないんだ」と自分に苛立ちを覚えたことがありました。

──タレントを引退しようと?

壇蜜:頭を下げて、病院や水商売の仕事に戻ろうかなと思いました。また仲間に入れてもらえませんかと土下座くらいすれば許してもらえるだろうと。31歳くらいの時ですね。

──そこからどうやって、また芸能界でやっていきたいと意識が変わったのでしょう?

壇蜜:以前勤めていた大学病院の教授に「今できることをちゃんとやらないと後悔する」と言われたんです。チャンスがあるなら、もっとちゃんとやれと言われ、芸能活動の後押しをしてもらいました。

──覚悟が決まったという感じだったのでしょうか?

壇蜜:そうですね。あの時のアドバイスがなければ、今こうなってはいないなと思います。また、この時から「タレントは商品だから、自分のやりたいことをやって迷惑かけるのはダメなんだ」と思うようになりました。

──やりたいことをやらない?

壇蜜:はい。なので、仕事で「これだけは譲れないことは何か」と聞かれたら、タレントであるうちは、「自分のやりたいことをしない」と答えます。アイデアなどを求められたら出したりはしますけど、自分発信で「これを書きたい!」「あれをやりたい!」ということは言いません。

──自己主張あってのタレント業かと思ったので、意外な答えです。

壇蜜求められるもののコマであれというのはあります。与えられたお題を自分なりに料理する。それが一番だと思います。あとは宣言や断言をしない。「これからは女優でいきます」などと絶対言わない。この世界は流動的だから、誰かの意見で変わることもたくさんあるし、その時にウソつきって言われることが何より自分を傷つけると思うので。

手に負えないものと向き合うことで心の平安をキープ

壇蜜

──「自分のやりたい仕事をしない」という発言からも、達観しているように思える壇蜜さんですが、人と比べてしまうことはあるでしょうか?

壇蜜:今は他人と比べる手段が多すぎると思いますね。昔は目の前にあるもの以外の情報は入りづらかったけど、今は見たことも聞いたこともないような国の夫婦がしているセックスの平均回数などもわかってしまいますからね。

──確かに。ネットなどでも簡単に調べられますし。

壇蜜:なんでも他人と比べてしまって、「全然セックスしてないな」とかへこむ要素が多いですよね。だから目の前に見えているものだけでいいんじゃないかなって思うんです。人と比べることで悩む人に、私はいつも「手に負えないものと向き合え」とアドバイスするんですよ。

──手に負えないもの?

壇蜜:うちには小鳥とか蛇がいるんですけど、全然手に負えないんですよ。だからネットを見る暇がないんです。なので、誰とも比べることがないんですよ。

──お世話で手いっぱいということですか?

壇蜜:はい。みんな心が暇なんだと思うんですよ。だって誰かと比べてるということは、比べるという時間があるんです。検索する時間も、悪口を書き込む時間もある。結局自分が暇だと思うと、その暇をつぶそうと一番手の届きやすいネットに行くじゃないですか。だったら動物を飼ったり、植物を育てたり、何か自分の手がないと生命が保てないものと共存してほしいと思うんです。手に負えないものと向き合うと心の平安が保てるということを知っておくとだいぶ違いますよ。

一喜一憂は厳禁。与えられた仕事を粛々とまっとうするのみ

壇蜜

──グラビアデビューをされて約10年。仕事に自信を持てるようにはなりましたか?

壇蜜:まだまだです。何をやっても「できた!」と思うことはないですね。

──どうしてですか?

壇蜜:視聴者や読者から「よかった」という反響があれば、ある程度はやってよかったと思うのですが、雑誌の連載はいつまであるかわからないし、テレビにまた来てくださいと言われたって、いつその番組が終わるかもしれない。すごく流動的なものを相手にする商売だから、一喜一憂は厳禁だなと思っています。与えられた仕事を粛々とまっとうするだけです。

──その浮き足立たない客観性が、多くの人を魅了している理由のひとつですね。

壇蜜:与えられた仕事に関しては、先ほどもお伝えしたとおり、何を求められているかを考えながらやっています。たとえば、「好きなタイプは?」などの月並みな質問に対して、その媒体にあった答えを出すということを粛々と。「週刊◎◎」みたいな男性誌で聞かれたら「できれば息をしてる人がいいですね」、でも女性誌で同じ質問をされたら「やっぱり仕事をしている人がいいですね」と言ってみたり。

──絶妙な答えですね(笑)。

壇蜜:どちらもウソではありません。まぁ、無職で息をしていなかったら、ご臨終ですよね(笑)。

──最後に、多くの場数を踏んだ経験から読者にアドバイスをお願いします!

壇蜜:面倒くさい話を振られた時にそれをかわす「3語」をお伝えしたいと思います。

“武勇伝”を語られたら「ロックですね!」で上司の心をくすぐりましょう。“有名人と知り合いだ”は「お顔が広いんですね。うらやましい!」で撃退。一番やっかいで永遠に続く“身内自慢”には「楽しみですね」がもっとも効果的です。だいたいこの3語があれば、なんとかなりますよ。

イライラする前に盾となる言葉を身に着け、ぜひ日々を粛々と乗り切ってください。

壇蜜

壇蜜(だんみつ)

1980年、秋田県生まれ。大学卒業後、専門学校へ進学し調理師免許を取得。その後、和菓子工場、銀座のクラブでホステスのアルバイト、冠婚葬祭の専門学校に通学など、さまざまな経歴を持つ。現在は、テレビ、雑誌、文筆業など幅広く活躍中。「サンデー・ジャポン」(TBS系)にレギュラー出演や「大竹まこと ゴールデンラジオ!」(文化放送)の水曜パートナーを務める。『死とエロスの旅』(集英社)が好評発売中。

ブログ:壇蜜オフィシャルブログ「黒髪の白拍子。」

取材・文/田代祐子
撮影/シオヤミク
ヘアメイク/新井祐美子