新潟を拠点に活動している3人組アイドル・Negicco。2003年の結成から活動歴はなんと16年。2010年にはご当地アイドルの全国コンテストで優勝をつかみ取りました。現在は「にいがた観光特使」をつとめるほか、地元企業のCMにもひっぱりだこ。地域密着型アイドルの成功例とされています。

その後もシングル曲がオリコンチャートTOP10入りするなど、着々とステップアップを続けてきたNegiccoですが、リーダーのNao☆さんが31歳の誕生日に結婚を発表。「結婚後もNegiccoは続けます」と宣言し、恋愛禁止ムードが漂うアイドル界に革命を起こしたのも記憶に新しいところです。

今回は、アイドル活動をしながら、新潟大学の工学部を2014年に卒業した「かえぽ」ことKaedeさんをお招きしました。年齢を重ねることで募っていく「今のままでいいの?」という焦りとどう向き合ってきたのか聞きました。

25歳で感じた「このままやっていく自信がない」というハードル

──小・中学生でデビューしたNegiccoも、アラサー世代に。年齢にとらわれず、自由にアイドル活動をしているように見えますが、以前は世の中に蔓延する「もう◯才だから」という空気を感じていたそうですね。

Kaedeさん(以下、Kaede):24歳から25歳になるとき、すごく高いハードルを超える感覚がありましたね。アラサーとしてカウントされる年齢だし、「アイドルとしてこのままやっていく自信がないな」「就職するなら、早いほうがいいのかな」と、毎日悩んでいました。

Kaede
Kaede(かえで)。1991年生まれ。Negiccoメンバー。あだ名は「かえぽ」。アイドル活動と学業の両立を果たし、2014年に新潟大学工学部を卒業。ラジオ好き。生誕記念ソロシングルとして2017年「あの娘が暮らす街(まであとどれくらい?)」、2018年「ただいまの魔法」をリリース。2019年4月には正式にソロ活動スタートとなる「クラウドナイン」をリリースした。

──漠然とした不安と焦りを抱えていたんですね。

Kaede:25歳って、ちょうど転職を経験する友達も増えてくるタイミングで。周りがどんどん前に進んでいるように見えて、焦ったんです。アイドルが嫌になったんじゃなくて、ただ年齢に縛られていました。「もう25歳だけど、アイドルでいいのかな……」って、ネガティブになっちゃって。

──実際に、アイドル以外の仕事を探したこともあったのだとか。

Kaede:転職サービスに複数登録して、いろんな求人をチェックしていました。「運転免許あり」で登録していたからか、出てくるのは運送業が多かったです。実際に応募することはなかったけど、「あなたに合う求人が見つかりました」みたいなメールを受け取っては「この仕事よさそう」とか「これは無理だ」って一喜一憂していましたね。

──新潟大学工学部に進学を決めた時も、「いつかアイドルを辞めてもいいように」という考えがあったからなのでしょうか。

Kaede:そもそもNegiccoがこんなに続くとは思っていなかったから、「解散することになっても困らないように勉強しよう」という気持ちもありました。大学に通っていたからこそ、Negiccoの活動にも集中できたのかもしれませんね。

──アイドルと大学生活は大変だけれど、精神的な保険になっていたんですね。

Kaede:卒業後もNegiccoは続けたい気持ちはあったけれど、親から就職を勧められたら、ほかの仕事も考えようくらいに思っていました。21歳くらいの時、親にさらっと「就職しないの?」って聞かれたんです。アイドルを続けることに反対というわけではなく、「大学まで行ったのに就職しないの?」という感覚だったみたいで。

──県内で1番の大学を卒業したわけですからね。

Kaede:中学高校の時は、父も「いつまでアイドルやるつもりなんだ」ってよく言ってたんです。私自身、Negiccoを続けながらも、「いつか辞めることになるんだろうな」「普通に就職するのかな」と思っていました。でも、大学卒業のタイミングで両親が改めて話し合いをしてくれたようで。二人とも「本人が今やりたいことを優先するのがいいんじゃないか」と言ってくれたんですね。

──素敵なご両親ですね。

Kaede:Negiccoを続けるかどうかを自分に委ねられてから、きちんと自分の意思で「Negiccoとして、歌で食べて行くぞ」とキャリアを選ぶことができたように思います。

周囲の助けがあったからできた「大学生活との両立」

Kaede
「いつか辞めるんだろうな」と思っていたNegiccoの活動。続けるかどうかを自分の判断に委ねられた時に「歌で食べていく」と自分の意思で決めることができた。

──それにしても、アイドル活動をしながら国立大学を4年間で卒業するのは大変だったと思います。どう乗り切ったんでしょうか。

Kaede:アイドルと大学生活を両立するには、周囲の理解が必要だと思ったので、自分がどうしたいのかを周りの人たちに丁寧に説明しました。仕事もセーブして、できるだけ授業を優先しました。でも『笑っていいとも!』はどうしても出たかったので、当日は教授を説得して1回だけおまけしてもらいました。ありがたいですね。

──いい話。というか、1回しか休まなかったんですね。

Kaede:無事卒業した後も「どうせ代返してもらったんでしょ」とか言われることがあるけど(笑)、1回もやってません。大学のみんなが厳しい環境で頑張っているから、ズルをしたら一生自分の中でひっかかっちゃうと思って。意地でも出席しました。

──Negiccoは基本的に新潟〜東京を車で移動しているそうですが、よく乗り越えましたね。

Kaede:今のレーベル(T-Palette Records)に入ってからと大学生活が重なってからは大変でした。東京の仕事が終わったあと、夜から車で移動、朝に新潟についてそのまま大学の講義に出ることも多かったですね。

──想像を超えるハードさです……。

Kaede:複数のことを同時にやりきるのって、時間的にも体力的にも、本当にしんどいんですよ。眠れないから体調不良にも繋がりますし。卒業できたのは、周りのサポートがあってこそです。大学生の同級生も、みんな協力してくれて、家に帰ってからもグループ通話で助けてもらいながら勉強していました。

──Negiccoは新潟でみんなが知る有名人ですが、同級生たちは特別扱いすることなく普通に接してくれたんですね。

Kaede:大学の研究は、周囲と協力しながら進めることが大切なんです。みんなでひとつのことを達成することを学べたので、大学に行って本当によかったと思います。

──授業とNegiccoの活動が重なってしまった場合は?

Kaede:Negiccoの活動スケジュールも、事務所のみなさんやメンバーに調整してもらって、私が出演できない現場は2人で回ってもらいました。周囲のサポートがなければ、絶対に卒業できませんでした。

──ほかの2人もNegiccoに人生をかけていたのに、Kaedeさんが授業で活動を休むことを受け入れてくれたんですね。

Kaede:大学での研究が大変で、Negiccoの活動との両立が難しい時期があって。どう見積もっても厳しかったので「1カ月、Negiccoを休ませてほしい」と相談したら、事務所の方もメンバーも「いいよ!」って即答してくれました。

──即答!? 他のメンバーは不安や不満を抱かなかったのでしょうか。

Kaede:後でそのときの心境を2人に聞いたら「活動を休んでいる間に気が変わって、就活しちゃうかもしれない。かえぽがちゃんと戻ってくれるように、Negiccoを守ろう」って話していたみたいなんです。ありがたいですね。

やりたいこと、好きなことが仕事につながるようになった

──これからは人生100年時代。「長く働く」がテーマになる時代です。Negiccoは結成16年周年を迎え、アイドル業界ではとてつもなく長く続いているグループです。ここまで続けられた秘訣は?

Kaede:以前は、仕事を選びたくないし、休みたくないと思ってたんです。1カ月休みなしで、平気で働いていました。でも、20代後半で体調を崩して倒れてしまって。休むことの大切さを痛感しましたね。今はマネージャーさんも最低でも週1は休みを入れてくれて、やっと自分たちのペースがつかめたように思います。

──大学との両立も含めて、ずっと動き続けてきたからこそ、「休んでいいのかな?」と思ってしまうことはありませんか。

Kaede:前までは、余白がなさすぎて「仕事の準備のための時間」が取れなかったこともありました。それだと、依頼してださった方々にも、ファンの方にも失礼だなと思ったんです。いただいた依頼はなんでも受けるのではなく、パフォーマンスを高めるための準備期間としてスケジュールの余白も必要なんだと思うようになってからは、素直に休めるようになりましたね。

──年齢を重ねて、考え方が変わったのでしょうか。

Kaede:年齢というよりは、「やりたい」「好き」と思える仕事をやらせてもらえるようになったからですね。その分、良いパフォーマンスを見せなきゃと思えるし、そのための準備の大切さにも気づけたんだと思います。

──すごくいい流れですね。

Kaede:以前は「この仕事が決まりました」と言われるまま、受け身だったんですよ。最近は趣味の時間も大切にして、自分がやりたいことや好きなことをどんどん口に出すようになりました。それが結果的に、仕事につながることもあって。

──具体的には?

Kaede:「ラジオが好き」と言い続けていたらTBSラジオさんから出演依頼をいただけたんです。以前は「この仕事がしたいんです!」というアピールみたいになっても嫌だなあ、という気持ちがどこかにあったんですが、好きなものは好き。素直に口にするようになったことで、好転しましたね。

Kaede
仕事を選びたくない、休みたくないと思っていたというKaedeさん。考え方が変わってからは、仕事も好転したという。

Kaede:あとは、無理をしないこと。ファンの人にも、甘えられるようになりました。3人の中で、私は一番アイドルらしくないんです。握手会でも、なかなかファンの方の顔が覚えられなくて。ファンの方がTwitterで「かえぽファンは見返りを求めちゃいけない」ってつぶやいているのを発見して、本当に申し訳なかったんです(笑)。でも、「その分、歌で楽しんでいただこう!」と、レッスンを頑張るようになりました。

──できないことは無理しない、得意なことでファンに応えよう、と切り替えたんですね。

Kaede:アイドルなのに自撮りも苦手だし、自信もない。ただ、歌が好きだからステージに立っているだけなんです。「全然アイドルじゃないじゃん」と自分でも思っちゃうし、申し訳ない気持ちもあるんです。けど、無理をしないでいたからこそ、ここまで続けられているんじゃないかなと。

──そして今では「継続」自体がNegiccoの強みになっていますね。

Kaede:20歳くらいの頃は「そろそろ就職? いつまでやるの?」「解散しないの?」って、悪気なく言われることが多かったんです(笑)。今では「15年以上アイドルやってるのすごいね!」と言われることが増えましたね。

私はもともと、歌うのが好きという気持ちだけでここまでやってきたんです。結果的にこれまで続いたからこそ言えることなんですが、今になって「売れる売れないよりも、やりたいことを続けること自体が、特別なことなんだ!」と気がつきました。これからも、地元新潟の街でNegiccoを続けるつもりです。

Kaedeニューシングル「Remember You」リリース
発売日:2019年10月15日(火)
形 態:CD、7inchアナログ

タイトル曲「Remember You」がKaedeさんの誕生日に合わせて、9月15日(日)深夜0:00からストリーミングで先行配信!
【対象サービス一覧】
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Kaede(かえで)

1991年生まれ。Negiccoメンバー。あだ名は「かえぽ」。アイドル活動と学業の両立を果たし、2014年に新潟大学工学部を卒業。ラジオ好き。生誕記念ソロシングルとして2017年「あの娘が暮らす街(まであとどれくらい?)」、2018年「ただいまの魔法」をリリース。2019年4月には正式にソロ活動スタートとなる「クラウドナイン」をリリースし、6月にはミニアルバム「深夜。あなたは今日を振り返り、また新しい朝だね。」をリリースした。

Twitter:@Kaede_NGC

公式サイト:Negicco

取材・文/小沢あや(@hibicoto
写真/きくちよしみ