異様なハイテンションとカラフルなファッションが印象的なYouTuber芸人のフワちゃん。最近ではバラエティ番組に出る機会も多く、テレビとYouTubeを股にかける活躍を続けています。
そんなフワちゃんもYouTubeに出会うまでは芸人として売れない時代を過ごし、苦労をしていたそうです。ご本人によると「決められたネタをやるのが苦手だった」のだとか。自分に向いていることや好きなことを見つけるにはどうすればいいのか聞いてみました。
女子で唯一「ちんちん」と言えるカリスマだった

──子どもの頃ってどんな感じでしたか?
フワちゃん(以下、フワ):ブチ上がり! 3歳の時の学芸会の映像が残っているんですけど、最後にみんなで「バイバイ」って言って幕が閉まる時に、そこの幕の中から出てきて「ママ、ちんちん!」って言ってる。だいぶ目立ちたがりで明るかったんだと思う。
——子どもの頃はどういうことをして遊んでいたんですか?
フワ:割と普通に外で遊んだりしてました。女子の中で唯一「ちんちん」と言えるやつとしてカリスマ的人気があって。自分たちで遊びを考えるのもハマってて、ブランコから靴飛ばして相手の陣地に入れる「靴飛ばしバドミントン」とか。
——YouTubeの企画みたいですね。
フワ:そうじゃん、今と変わってないじゃん。恥ずっ!

——学生時代には学校に親が呼び出されたこともたびたびあったそうなんですが、問題児だったんですか?
フワ:そうですね、ヤンキーとかではなかったんですけど。黒板にビスケットとかグミ貼り付けたりしてて。
——何してるんですか(笑)
フワ:面白いんですよ、見た目が。勉強するための黒板なのにグミ貼り付けられてやんの、ってゲラゲラ笑ってたら、先生がブチ切れて。
——芸人になろうと思ったきっかけは何ですか?
フワ:大学の時に友達のギャルが「やばい、フワ、マジ面白すぎ。絶対芸人になったほうがいいよ」って言ってきて。私も何となくテレビに出たいなっていうのはあったから、「芸人行くっしょ」って言って、そのまま養成所に入りました。

ネタがうまくできず売れなかったコンビ時代
——芸人になりたいっていうより、テレビに出て有名になりたいっていう感じだったんでしょうか。
フワ:テレビ出たい、圧倒的そっち。だから、ネタやって舞台で食える芸人みたいなのはあんまり理想じゃなかったかもしれない。卒業文集を見ても、将来の夢は「ベッキー」って書いてある。
——そういう人がお笑いの養成所に入るとどうなるんですか?
フワ:ひどかったですよ。最初の自己紹介でも「私、マジで大学で一番面白いんで」って言ってた。ヤバいヤバい。やりながら徐々に自分のイタさに気づきました。
——たとえば?
フワ:最初、養成所の講師の人が本を出しているっていうのを聞いて、すぐ近くのブックオフでその人の本買って「はい、見てください、本買いました。だから次のライブ出してください」って言ったりして。今思えば、そんな媚び方するのはイタいってわかるんですけど、その時は「はい、売れたー」って思ってました。

——その後、コンビを組んだりしてからの活動はどうだったんですか?
フワ:最初は女の子とコンビ組んで、モエヤンみたいなネタをやってたんです。でも、相方の子が辞めちゃったので、次に男の相方と組むことになりました。
そこからは完全に相方が主導権を握ってネタをやっていたんですけど、私が相方の作るネタを上手くできなくてめちゃくちゃ迷惑かけたんですよ。それで解散しちゃいました。
——残念でしたね。
フワ:でも、仲悪かったわけじゃないから今も連絡取るし、私がピン芸人になった時とかもネタの相談聞いてもらったりして、相方が最高の友達になっちゃったって感じ。

道に落ちてるポテトを食べたり、泥水を飲んだり…
——ピン芸人になってから、どうしてYouTubeを始めることになったんですか?
フワ:ピンになってから1年間はネタをやって、『R-1ぐらんぷり』や『THE W』にも出ていました。コンビの時よりは自分の人間性を出すネタをやってたんですけど、それでも舞台上でネタ忘れちゃったりして。
ヤバいヤバい、ってなってた時に放送作家の長崎周成が「フワちゃん、YouTubeやってみない? 向いてると思うんだよね」って誘ってくれたんです。そこから始めました。
——YouTubeの活動にはすぐ馴染めたんですか?
フワ:でもやっぱ最初のほうは「芸人がYouTuberみたいなことしてる」ってなめられたくないっていうプライドから、道に落ちてるポテト食べたり、泥水飲んだり、振り切ってやってました。今考えたら「そこまでしなくていいんじゃね?」って思うけど(笑)。

——最近の動画を見ていると、やっぱりYouTubeはフワちゃんに合っていて楽しそうな感じはしますね。
フワ:めっちゃ楽しいです。ネタみたいに決まったこと言わなくていいし。編集もやり始めたら、私、これ割と好きだなと気づいたんで。今やってる作業は全部好きかもしれないです。
もともと『(世界の果てまで)イッテQ!』に出たいって言ってYouTubeをやってて。もちろん今もめっちゃ出たいんですけど、YouTubeの企画で海外に行けて『イッテQ!』っぽいことができてるから、芸人だけの時よりも楽しいなって思います。

お笑いで学んだことがYouTubeでウケた
——YouTubeで人気が出てきたのってどのあたりからですか? 何かきっかけがあったんでしょうか。
フワ:(人気YouTuberの)アバンティーズとコラボした時と、(人気YouTuberの)あやなんが呼んでくれた女性YouTuber大運動会っていうのに出た時ですかね。そこでYouTuberの女子がたくさんいる中で、私がちょっと芸人っぽいことしたから目立っていて。お笑いで学んだことがYouTubeを見ている層にウケたので嬉しかったです。
——そうやってお笑いファンだけでなく、YouTubeを見ている人にも知られていったんですね。
フワ:そうですね。今ちょうどお笑いファンとYouTubeファンが半々ぐらいでいい感じのバランスかもしれない。
——企画は作家さんと一緒に考えるんですか?
フワ:そうですね、割と相談して決めてます。最近は任せてるので(長崎)周成がいっぱい考えてますけど。
——ほかの人気YouTuberに比べると、動画を更新するペースもそんなに早くないですよね。
フワ:最初のうちはこのままだとヤバい、みたいなことを言ってたんですたけど、最近は周成も吹っ切れたのか、「1回1回、神回を狙ってます」ってうまいこと言い方変えて逃げてます。

面白いことをやっていれば結果はついてくる
——フワちゃん自身は最近テレビ出演も増えていますね。
フワ:まだ深夜番組にちょろちょろっとですけど、テレビは楽しいですね。やっぱ子どもの頃から出たかった場所だから、スタジオ行くたびに「これは夢か!?」って思います。でも、やっぱりYouTubeとは全然違うなと思いますね。YouTubeは言い方間違えたりしたら撮り直せるけど、テレビはどっちかと言うと舞台に近くて、一発本番な感じ。
——その分、緊張感がありそうですね。
フワ:でも、みんな超助けてくれる。芸能界の人、思ってたより優しい。「フワちゃんはこんなこと言ってたよね」って話を振ってくれたりすると「優しい!」って思っちゃう。
——テレビは出演者全員で作るものっていう感じがありますよね。
フワ:そう、かかわってる人数も多いから。YouTubeはショートケーキ、テレビはホールケーキです。私、たとえるの超下手じゃん(笑)。わけわかんないし。

——テレビはテレビで面白いっていうことですね。最近では指原莉乃さんとも仲良くしているみたいで、一緒に旅行したりしていますね。
フワ:さっしーはマジで同年代なんで、性格とかも結構合うからちゃんと友達みたいな感じ。めっちゃ面白いですよ、指原さん。どんなテーマが来ても、絶対そのエピソードトークを持っているんですよ。芸人っぽい。
——気が合う感じなんですね。
フワ:最初は「テレビの指原さん」って感じだったけど、ようやく最近は「友達がテレビ出てる」っていう感覚になってきた。
——それはすごいですね。フワちゃんは指原さんに限らず、人と距離を詰めるのが上手い感じがします。友達を作るためのコツはありますか?
フワ:人との詰め方に関しても、人脈優先で動いてるわけじゃないんですよね。自分がやってることが面白いと思われたら、向こうから言ってきてくれるから。結局、面白いことをやっていればいいんだと思います。
だから、人脈とか友達作りよりも、自分の作品作りとかを頑張ったほうが結果がついてくる。こっちも褒められたらテンション上がって友達になるし、すべてが上手く回る。

「こうじゃなきゃ」を捨てれば自分に合った場所は見つかる
——フワちゃんがYouTubeに出会ったように、普通の人が自分に合っていることを見つけるにはどうしたらいいと思いますか?
フワ:凝り固まった考えをなくすことが一番大事だと自負しておりまして。コンビの時は相方と「まずネタで売れて、そこから人間性を出そう」っていう計画が決まってたんです。だから、その通りに売れるんだって思ってたんだけど、今、客観的に考えればできるわけないんです。ネタは得意じゃないから。
——ひとつの道にこだわりすぎることは危険だということですね。
フワ:そっちのパターンがいい人もいるかもしれないですけど、私はそれで足踏みしてる時間が長くなったから。ちょっと見方を変えてみたら意外と向いてることが見つかるかもしれないよ、っていうのを言いたいです。
——どうしても「こうじゃなきゃいけない」って凝り固まって考えてしまいがちだけど、それをやめると新たな道が見つかることもある、っていうことですね。

フワ:つるむ人とかにも影響されるから。いつもと違う友達とつるんで、ちょっと別分野にも目を向けてみたりしたら、自動的にいけるかも。もともとの仲間を切る訳じゃなくて、別のところにも踏み出してみる。友達変えろっていうのは無理すぎ。切ない。
——フワちゃんも芸人としてはウケない時期も長かったけど、見方を変えたらYouTuberという別の場所が見つかったんですよね。
フワ:そうですね。それがわかるようになってからは肩書きも自由自在に操ってて。「芸人なのに素人っぽい」っていうほうがウケると思ったら「芸人」って言うし、YouTuberって思われたほうが面白いならYouTuberって言うし。マジハンドリング。
——なるほど。ただやりたいことをやるだけじゃなく、相手がどう思っているかを踏まえて自分の見せ方も変えるっていうことですね。
フワ:そうです。両方取り、最高。

好きなことがないなら「得意なこと」を見つけてみたら?
——では、「好きなことやればいいって言われても、自分が好きなことややりたいことがわからない」っていう人はどうしたらいいと思いますか?
フワ:私は割と私は好きなことよりも得意なことから始めるタイプなんですよ。最初はバスケ部だったんですけど、足速いなと思ったからすぐ陸上部に変えたし。モデルになって写真撮られたりするの楽しそうって思ったけど、私は見た目よりも面白さのほうが強いと思ったからそっちにシフトしたし。
——得意なことを見つけて、どんどんシフトしていけばいいんですね。
フワ:あと、「ゲームが得意だからゲームの仕事をしよう」とかだけじゃなくて、ゲームが得意っていうことは集中力があるから、実はこういうこともできるんじゃないか、って考えたり。ちょっと視野広げた見方をしたらめっちゃいいかも。

——自分が普段どういうことで他人に褒められているかを考えてみるといいかもしれませんね。
フワ:褒められてないんだったら、もしかしたら環境が良くないかも。絶対得意なことはあると思うから。
——フワちゃんも、もともとInstagramで自分で加工した面白画像みたいなのをアップしていて、それを見た周成さんが「フワちゃんは動画編集もできるんじゃないか」と思って、実際にやってみたら上手くいったんですよね。
フワ:だから、周りの力も大事かなと思う。アラ探しするような友達じゃなくて、「これが得意だよね」とか褒めてくれる友達。あと、何でもいいから自分が一等賞を取れることがあるとテンション上がる。私、原付とかも好きだけど、一等賞のほうが上がるから、原付の仕事じゃなくてこっちの仕事にした。
——ちょっと得意なぐらいじゃなくて、一番になれることを見つける、っていうことですね。
フワ:こんまり(近藤麻理恵)だって整理整頓が得意だから先生になったし。「好きこそ物の上手なれ」の逆パターンで、「得意こそ好きなれ」で考えてみたら、みたいな。ことわざ逆にしてみれば。ヤバい、上手くない。超言葉下手(笑)。
フワちゃん(ふわちゃん)
東京都出身。大学在学中にワタナベコメディスクールに入学、お笑いの道へ。コンビ解散後、ピン芸人として活動中の2018年4月にYouTube個人チャンネル「フワちゃんTV/FUWACHAN TV」を開設。登録者数は33.6万人(19年9月現在)。YouTubeとテレビを股にかけて活躍している。
Twitter:@fuwa876
Instagram:@fuwa876
YouTube:フワちゃんTV /FUWACHAN TV
取材・文/ラリー遠田(@owawri)
撮影/佐野円香(@madoka_sa)