仕事において効率を上げたいものの、うまくできていない人も多いのではないでしょうか。

メールの未読通知はどんどん増えるし、ネット上の役に立つ情報を拾っていたら時間を取られ、気が散り集中力が落ちたりする……。

こんな悩みを持つ人も多いはず。

そこで、脳のリハビリの専門家・作業療法士の菅原洋平さんに、脳科学の視点から、効率的な時間の使い方を聞きました。

メールの即レスは、仕事が中断されるのでやめる

菅原洋平
菅原洋平(すがわら・ようへい)。作業療法士。ユークロニア株式会社代表。精神科に勤務後、脳のリハビリテーションに従事。現在ベスリクリニックで外来を担当する傍ら、企業研修やセミナーを全国で開催。『超すぐやる! 「仕事の処理速度」を上げる“科学的な”方法』『脳と睡眠の仕組みでみるみるヤセる!ストレス0(ゼロ)ダイエット』など著書多数。

編集部

最近、私の仕事の効率が下がっている気がします。

菅原洋平

菅原さん

どういう時にそう感じますか?

編集部

たとえば報告書を作っている時、メールやスラックでの問い合わせがしょっちゅう来て、そのたびに作業を中断することになります。また、他の案件についてチャットでチームのメンバーが盛り上がっている時などつい見てしまいます。正直気が散ってイヤなのですが、話題に乗り遅れて事情がわからなくなるのも不安です。

菅原洋平

菅原さん

即レスをする必要はないんですよ。

編集部

自分に対して連絡があった場合、すぐに返信したほうが効率がいいのではと焦ってしまいますが……。

菅原洋平

菅原さん

必要以上に「急に来た連絡にすぐに対応する」ことを習慣にしている方が多いです。連絡は突然やってきます。それに即座に反応していればそのたびに、報告書とメールを同時処理することになり、集中力はそがれてしまいます。

編集部

そうですか。いつでも連絡が取れたほうが便利だと思っていましたが、逆に効率を下げていたんですね。時間をうまく使って仕事の効率を上げることってできるんでしょうか?

仕事の効率低下を招く要因は3つ

菅原洋平

菅原さん

時間をムダにせず仕事の効率を上げる方法は「マルチタスクをやめる」「情報、とくにネット経由の情報を取りすぎない」「ボーッとする時間をはさむ」の3つがあげられます。

編集部

3つ……。

報告書を作りながらのメールチェックは、マルチタスクですね。

菅原洋平

菅原さん

そうです。なので、報告書を作りながらメールやチャットに即レス、というのはマルチタスクになり非常に効率が悪い。同時に2つのことをするのは脳に負担がかかりますからね。報告書を完成させるという課題があるならば、“制作中はチャットからログアウトして、報告書に集中する”という意識を持つことが必要です。

編集部

そうなんですね。でも、気になってしまって。具体的にはどうしたらいいでしょうか?

菅原洋平

菅原さん

時間でブロックするんです。メールやチャットの通知をチェックする時間を決めておきます。その頻度は職種によってちがいますが、常時連絡を受け付けているより、むしろ落ち着いて対応できるはずです。突然やってくる連絡に翻弄されるのではなく、こちらから取りに行くイメージです。

編集部

自分で決めるんですね。それなら「急に来た連絡」で集中が途切れることを防いで、焦らずに返信することもできそうです。

菅原洋平

菅原さん

時間割を作るといいですよ。同時に複数のことを処理するのではなく、時間の区分を決めるんです。たとえば、「10~11時は報告書を作成する時間なので、メールチェックはしない」というように。

人間が一度に覚えられるのは4つまで。情報をたくさん取っても忘れてしまう

菅原洋平

菅原洋平

菅原さん

2つめの、情報量が多すぎて仕事の効率が落ちる点について。心当たりはありませんか?

編集部

たしかに、気になってブックマークした記事や、毎日届く通知を読むだけで時間がかかったりしています。

菅原洋平

菅原さん

仕事の成果を上げるために、情報を収集しているんですよね?

編集部

そうなんですけど、逆に成果が落ちているような……。

菅原洋平

菅原さん

情報って、本来は自分の行動を修正するために使うものですが、情報収集のほうが目的になってしまっていますね。結果、情報の取りすぎになっているんです。

編集部

人間が取っている情報の量は、昔より増えているんでしょうか。

菅原洋平

菅原さん

はい、かなり。でも人の脳は変わっていないので、情報処理能力も上がっていないんです。

編集部

ということは、たくさん情報をとっても、無駄なのでしょうか?

菅原洋平

菅原さん

はい。人間が一回で覚えられる量は4つぐらいで、それ以上は増えないんですよ。

編集部

4つ……少ないですね。

菅原洋平

菅原さん

カテゴライズしたり、似たものをまとめたりして増やしていくことはできるんですけれども、容量は4つしかないんです。そのキャパを超えたら覚えていない、忘れてしまうという状態になります。

編集部

情報収集に時間がかかって、しかも忘れてしまうという状況は避けたいです。

菅原洋平

菅原さん

情報量が多すぎると脳は疲れてしまい、十分な能力が発揮できません。目移りして「まだ足りない情報があるのでは?」というストレスも発生します。情報断食をして、取る情報の量を適量にしていきましょう。

自分の行動が変わらないのであれば、いらない情報

編集部

情報断食……。インプットする情報を減らすということですか?

菅原洋平

菅原さん

そうです。意識しないとどんどん増えて、処理できる量を超えてしまいます。

編集部

でも、メールのチェック漏れなども気になります。どの情報が必要で、どの情報をブロックしていいのかわからなくて混乱してしまいそうです。線引きのポイントってありますか?

菅原洋平

菅原さん

自分の行動が変わらない情報なら、必要ありません。

編集部

行動が変わらない情報とは、具体的にどんなものでしょうか。

菅原洋平

菅原さん

それはその人の目的によって違います。たとえば、仕事で商品企画のネタを探すために見るニュースは、必要な情報ですよね。そのあとに企画制作という行動があります。

習慣だからという理由で無目的に見るニュースであれば、必要のない情報になります。

編集部

人によって何が必要かは違うんですね。

菅原洋平

菅原さん

目的が違えば必要なものも違いますよね。なんのために「情報断食」をするのかという目的を持つことが大事です。「情報で気が散るのを避けて、仕事への集中力を高めたい」のか、「寝る前のネットサーフィンで良質な睡眠を妨げるのを避けたい」のか。目的が明確であれば、それに合った取捨選択ができるので。

自分がどんな情報を収集しているのかをリストアップして、行動につながっているかどうかチェックしてみましょう。

編集部

情報収集している時間を意識してカットすれば、時間が節約できそうですね。

あえてボーッとする時間をはさむことが、脳が情報を整理してくれる

菅原洋平

編集部

3つめの“ボーッとする時間をはさむ”とはどういうことでしょう?

菅原洋平

菅原さん

脳科学的に、脳に負担がかかる時間の使い方をしている人が多いです。たとえば、長時間集中して仕事をするのは効率が悪いですね。

情報の量を “ゼロ”にする時間もあったほうがいいことはご存知ですか?

編集部

知りません。“ゼロ”とはどんな状況でしょうか。

菅原洋平

菅原さん

情報に触れたりしていない“ボーッとする時間”のことです。その時間に、それまで得た情報を整理することができるんです。

編集部

休まるだけでなく、整理を。

菅原洋平

菅原さん

人がボーッとしている時、脳のデフォルト・モード・ネットワーク(※)というものが使われて、習得した情報を分解したりまとめたりしています。なので、集中する時間の間に、あえてボーッとする時間をはさむことが効果的なんです。

(※)特に思考や集中をせず、ぼんやりとした状態の脳に見られる神経活動。記憶に関係がある。

編集部

仕事に集中して疲れた時、Twitterをぼんやり眺めたりしていますが、それもボーッとする時間ですよね?

菅原洋平

菅原さん

それは画面を見ていますよね。視覚情報を取っているので違います。“ボーッっとする時間”とは、ぼんやりと景色を眺めたり、昼寝や散歩したりする時間のことです。

編集部

なんと。自分ではぼんやり休んでいるつもりで、休めていなかったとは……。

菅原洋平

菅原さん

画面を見続けている時、脳内の情報は整理されません。

効率よく脳内の情報を処理するには、デフォルト・モード・ネットワークを使う時間を定期的にはさむといいです。90分集中して作業したら10分ボーッとするという感じで。コピーをとるとか、単純作業にあててもいいんですよ。

必要な情報だけを、自ら選びとる

菅原洋平

編集部

マルチタスクをやめ、情報の取りすぎに気を付けて、ボーッとする時間を作ることが必要なんですね。

菅原洋平

菅原さん

そうですね。あと、ランチタイムにご飯を食べながらにスマホを見ている人がよくいますが、そんな些細な行動でも脳に負担がかかります。

「ながら活動」は記憶に残りにくい情報の取り方というだけでなく、脳のエネルギーをたくさん使ってしまうんです。疲れるし、仕事に集中したい時の力も奪ってしまいます。

編集部

そうなんですね。一人でランチを取る時はだいたいスマホを見ています。

菅原洋平

菅原さん

情報を提供する側はその情報にアクセスしてほしいですから、見てほしくなるように作っています。なので、つい見てしまうほうが自然です。それを防ぐために「何のためにこの情報が必要なのか」を意識して自分でルールを作っていくことが有効です。

編集部

目的もなくスマホをチェックをするのはやめたほうがいいということですね。わかっていても、ついついやってしまいそうです。

菅原洋平

菅原さん

急に習慣を変えるのは大変なので、小さい課題を作ってクリアしていくといいですよ。「全部ダメ」ではなく、「10分だけにしよう」「食事中は見るのをやめよう」という目標を設定するとか。そうして小さな成功体験を積み重ねていくと、習慣づけに効果があります。

編集部

まず、いらない情報を仕分けして、時間割を作る。少しずつ習慣を変えて、効率よく時間を使えばいいんですね。

菅原洋平

菅原さん

突然やってくる情報にふりまわされないように、目的を明確にして時間を区分し、自分主導で情報を取っていくことです。

そうして時間をコントロールすることを意識すれば、きっと仕事の効率も上がります。

菅原洋平(すがわら・ようへい)

作業療法士。ユークロニア株式会社代表。民間病院精神科に勤務後、国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事。現在ベスリクリニックで外来を担当する傍ら、企業研修やセミナーを全国で開催し、テレビや雑誌で注目を集める。『超すぐやる!「仕事の処理速度」を上げる“科学的な”方法』『脳と睡眠の仕組みでみるみるヤセる!ストレス0(ゼロ)ダイエット』など著書多数。

Twitter:@ActiveSleep

ブログ:作業療法士 菅原洋平のブログ

取材・文/樋口かおる(@higshabby
撮影/津田聡