乃木坂46 の卒業後、女優としての才能が開花しNHK連続テレビ小説『まんぷく』など、数々のドラマに出演をはたしている深川麻衣さん。現在、『まだ結婚できない男』でも好演しています。

23歳の時に乃木坂46の卒業を意識しはじめ、”25歳で卒業しよう”と決めたという深川さんに、「人生の転機」の決め方、仕事のポリシーなどを伺いました。

人気が上向きになった時の卒業発表

深川麻衣
深川麻衣(ふかがわ・まい)1991年、静岡県生まれ。「乃木坂46」の1期生メンバーとして活躍。2016年に女優業に専念するためグループを卒業。NHK連続テレビ小説『まんぷく』、テレビ東京ドラマ25『日本ボロ宿紀行』などに出演。現在、KTV『まだ結婚できない男』で好演している。

──乃木坂46を卒業してから、女優としての活躍がめざましいですね。

深川麻衣さん(以下、深川):ありがとうございます。

──卒業した時のことについて伺います。フロントメンバーに選ばれ、グループ自体も上り調子になったタイミングでの卒業発表(2016年1月7日発表・2016年6月16日卒業)でしたね。自分の中で迷いはなかったですか?

深川:お芝居をやりたいという気持ちが強かったので迷いはなかったですね。

──前年の8月に初めてフロントメンバーに選ばれて、それほど日が経っていなかったですよね。

深川:そうなんです。なので、卒業について、「もう少しグループで頑張ってからでも遅くないんじゃない?」というアドバイスをいただいたこともありました。

──乃木坂にいるからこそ回ってくるチャンスもあるかもしれないですしね。

深川:でも、乃木坂46で私を知ってくださったという方が99%の中で、そこから飛び出してグループの看板がない、フラットな状態で個人として勝負したい気持ちが強くなったんです。

──卒業したのは25歳ですね。決めたのはいつ頃ですか?

深川:意識し始めたのは23歳の時です。自分の将来を考え、これから一人の人間としてどう生きていこうかと考えた時に、一番興味のあるお芝居の仕事をもっと学びたいと思うようになりました。そして、25歳で卒業しようと決めたんです。

──計画的だったんですね。

深川:卒業の1年ちょっと前からスタッフの方と相談をはじめました。その段階では次に所属する事務所も決まっていなくて。私はイチからお芝居の勉強をしたいけど、受け入れてくれるところがあるのかわからないから、やりたいことができずに終わってしまう可能性もありました。

計画的ではありましたが、先が見えていたわけではないんです。

最悪のパターンまで考えて「後悔のない決断」をする

深川麻衣

──では、どうやって最終的に卒業を決断したのでしょうか?

深川:実は、グループをやめた後自分の人生がどうなっていくかを、頭の中で何パターンもシミュレーションしました。いろいろなパターンを何度も想像してみて、少しでも「グループを卒業しなければよかった」と後悔するくらいの覚悟だったら、辞めないほうがいいと思ってたんです。

──なるほど。合理的ですね。

深川最悪のパターンも考えました。

──最悪のパターン?

深川:はい。「全然芽が出ずに、実家の静岡に帰る」ということも考えました。そして、たとえ実家に帰ることになったとしても、「グループをやめなきゃよかった」と後悔することはないと思えたから、決断できました。

──潔いですね。ご家族や友人に相談しましたか?

深川:いえ、卒業前に自分から積極的にアドバイスを求めることはありませんでした。それが理由で決意が揺らいで、上手くいかなかった時に誰かのせいにしてしまうのは良くないと思ったので。

女優として、「続ける」ことを意識している

深川麻衣

──現在の事務所に入ってイチから演技をはじめて、継続して仕事が入るまでは約2年間あったと思います。その2年間はどんな思いで過ごしていましたか?

深川:いやぁ、いまでも継続しているとは思っていません(笑)。先がわからない仕事なので常に危機感を持っています。事務所を移籍しても最初から順調にお仕事ができるとはまったく考えていなかったですし、最初のうちはお仕事をいただいても、グループを卒業したばかりのめずらしさや期待を込めたご祝儀的な意味合いも大きかったと思うので、3年、5年経ってもこの仕事を続けていけることを目指しました。

──「続ける」ことを重視していたんですね。

深川:はい。女優は何歳になってもできるお仕事。これから年齢を重ねていくことで演じられる役もあるだろうし、逆に、『まんぷく』(NHK)の時は24歳から37歳までという、実年齢より10歳離れた役も演じさせていただきとても勉強になりました。

──アイドルから女優になって、意識して変えたところはありますか?

深川:グループ時代、ミュージックビデオの撮影や歌番組で抜かれた時はキレイに映りたいという気持ちがあったし、カメラで抜かれる瞬間を意識していました。卒業してもしばらくはどこか無意識にカメラを気にしてしまうこともあったと思います。でもお芝居のお仕事をするようになってからは、表現するうえで綺麗さというのは気にならなくなりました。たとえば顔が涙や鼻水でぐしゃぐしゃであろうと、役をまっとうすることのほうが大事だと思っています。

──『日本ボロ宿紀行』(テレビ東京)での深川さんの顔をゆがませるような演技を観て、「キレイ」や「かわいい」だけじゃない女優さんになるんだろうなと思いました。

深川:あのドラマでは「春子(深川さんの役)は喜怒哀楽の感情表現が豊かなので、春子の気持ちを表現するうえでどんな顔で映ってもいい」と思っていました。

振り返った時に「歩いてきたから道ができたんだ」と思いたい

深川麻衣

──ひとつひとつの仕事に対して準備を怠らない印象がありますが、工夫をしているところはありますか?

深川:ありがとうございます。自分が責任を持たなければいけないので準備は万全にしようと思っています。

映画『パンとバスと二度目のハツコイ』の時、今泉監督に「もっとワガママになってもいいんだよ」と言われたことがあって。それまでは監督の意図を汲み取って表現できる女優になりたいと思っていたけど、役のことを深く考えたうえなら「私はこうだと思うんです」と意見を言ってもいいんだなと思うようになり、実際にそうしていますね。

──女優活動は順調に見えますが、落ちたオーディションはいくつもあるわけですよね。

深川:もちろん。受かったことよりも落ちたことのほうが全然多いですから(笑)。そのたびに悔しいし、落ち込みますけど、ずっとひきずっているわけにもいかないので、切り替えて「また頑張ろう」と前を向いてます。

──落ち込んだ時の自分の立て直し方を教えてください。

深川:気分転換としては友達に会ったりすることもあります。あとは悩む時はとことん、落ちるとこまでいってその日に悩み尽くし、次の日には持ち越さないですね。でも落ち込む日々が続いた時は、朝起きてから意識してスイッチを切り替えるようにはしてます。

──もうすっかり女優が体に染み込んだ感じでしょうか?

深川:いやいやいや。正直、まだ「女優」という肩書きには恥ずかしさがあります(笑)。ひとつひとつの作品に向き合いながら仕事を続けて、振り返った時に「歩いてきたから道ができたんだ」と思うことができればいいですよね。

いま「あのタイミングでの決断がベストだった」と思えて安心している

深川麻衣

──現在放送中の『まだ結婚できない男』に出演していますが、そうそうたる俳優たちの中でのお芝居にプレッシャーは感じますか?

深川:大先輩たちに囲まれた中での撮影ですし、前作のファンで楽しみにしている方もたくさんいると思うので、新キャストとして緊張しています。

──共演している方々の演技に刺激を受けることはありますか?

深川:クランクインして最初が阿部寛さんと二人のシーンだったんですけど……。「このシーンはこういう表情がいいんじゃないか」と阿部さんはアイデアを出しながらこだわりを持って演じていらして、映像での伝え方の勉強になっています。

──成長できそうですね。今後、どういう女優になりたいかや、演じてみたい役柄を教えてください。

深川:型にハマることなく、どんなシチュエーションでも、どんな時代でも、自然に存在しているような説得力のある役者になりたいです。以前から「時代劇に挑戦したい」とはずっと言っているんですけど、ミステリーなどシリアスな作品も演じてみたいと思っています。

──将来が楽しみです。では、乃木坂46を卒業した決断について、3年経った現在はどう感じていますか?

深川:やっぱりあのタイミングがベストだったと思います。決断した時に迷いはなかったですが、本当にやめた時に自分がどう感じるかはわからなかったので、正直不安でした。でも、結果として早くもなかったし、遅くもなかったなと。いまそう思えることに安心しています。

──何パターンかシミュレーションしたうちの、一番いいパターンになったんじゃないですか?

深川:いや、それ以上だと思います。卒業を決めた時に想像していた未来以上に、たくさんのことを経験できる環境にいさせてもらっています。

──素晴らしいです。では、最後に読者に向けて、自分の転機の「決め方」についてアドバイスをください。

深川:私はあまり人に相談しなかったのですが、自分の中だけで考えて頭でっかちにならず、まわりの意見を聞くことも大切だと思います。ただ、最後に決めるのは自分自身なので、たくさんのパターンを想像したうえで後悔のない決断をしてほしいです。

深川麻衣

深川麻衣(ふかがわ・まい)

1991年、静岡県生まれ。「乃木坂46」の第1期メンバーとして数多くのヒット作を生み出し、グループを牽引する存在として活動。女優業に専念するべく2016年にグループを卒業。2017年には舞台『SKIP』初主演を務める。2018年には主演映画『パンとバスと2度目のハツコイ』(今泉力哉監督)でTAMA映画賞最優秀新進女優賞を受賞。NHK連続テレビ小説『まんぷく』、テレビ東京ドラマ25『日本ボロ宿紀行』で注目をあび、KTV『まだ結婚できない男』に現在出演中。

公式HP:TEN CARAT「深川麻衣」

インスタグラム:@fukagawamai.official

取材・文/大貫真之介
撮影/小原聡太(@red_tw225
スタイリング/原 未来
ヘアメイク/山口朋子(HITOME)