「やろうやろう」と思っていても、つい先送りにしてしまう人は多いはず。最初の一歩が大事とわかっていても、いつも期限ギリギリになってから慌ててしまう……。

すぐやる人とやれない人はどこが違うのでしょうか。20万部超のベストセラー『「すぐやる人」と「やれない人」の習慣』(明日香出版社)の著者である塚本亮さんに、「すぐやる人」になるための方法を聞いてきました。

偏差値30台で退学寸前の問題児から、同志社大学に現役合格、さらにケンブリッジ大学で心理学を学んだ塚本さんのメソッドは、誰でもすぐできるシンプルなものでした。

「最初の一歩」を小さくすれば、「次の一歩」も踏み出しやすい

塚本亮
塚本亮(つかもと・りょう)。1984年、京都生まれ。偏差値30台から同志社大学に現役合格。その後、ケンブリッジ大学で心理学を学ぶ。現在は、グローバルリーダー育成を専門とした「ジーエルアカデミア」代表を務める。

──いきなりですが、高校1年生の時の全国模試は偏差値30台だったというのは本当ですか?

塚本:本当です。人生、劣等感のかたまりでした。小学生の頃は学年で一番の肥満児で、スポーツも勉強もまるでダメ。親は心配して塾に通わせるんですけど、どこも長続きしなくて。自分はデブだし、どうせ何をやってもできないんだという思いをずっと引きずっていました。

──ターニングポイントは何だったんですか?

塚本:高校は進学校ではありませんでしたが、それでも2年生の夏を過ぎると、受験の話が出てきますよね。親にもどこでもいいから大学に行けって言われて、受験用の参考書を買ったけど全然歯が立たない。それで塾を探して通い始めたんですけど、結果的にそこが自分に合っていました。

──その塾に何か秘密があったんでしょうか。

塚本:その塾は、集団授業ではなく、自分のレベルに合った映像授業を見て学ぶスタイル。だから、大学受験をするのに、中学生レベルの映像からスタートしました(笑)。そうしたら、各教科でつまずいているところがはっきり見えてきたんです。

──それがやる気につながったんですか?

塚本:そうです。これならなんとかなるんじゃないかと。日本史については、中学生の参考書すら難しかったので、小学生向けの「まんがでわかる日本史」みたいなものからやり直しました。

──いきなりハードルの高いことに取り組まず、逆に下げたのが良かったんですね。

塚本:「この一歩が進めたんだから、次もいけそうだ」と、どんどん前に気持ちが向くようになりました。いかに「最初の一歩」を小さくできるかが大切。いきなり山頂を目指すと途方に暮れてしまいますが、まず目の前の階段を一歩上がることを考えればいいんです。

塚本亮
「最初の一歩をできるだけ小さくすることが大切」と語る塚本さん。

「後でやればいいや」と思ってしまう人の処方箋

──ハードルを下げても、すぐにやれるかはまた別問題ですよね?

塚本:そうですね。しかも今はスマホがやる気を邪魔します。何か大事なことをしている最中にLINEの通知などに気を取られて、集中が途切れてしまったり、「あれ? 何しようとしてたんだっけ」と、やるべきことを忘れてしまったりということはありませんか?

──あります。たいした用事ではないのについ返信してしまったり……。

塚本:「すぐやる」といっても、何でもすぐやればいいわけではありません。重要度の高いことを「すぐやる」ことが大事なんです。大事なことを放っておくから、後で問題になるのであって、重要度の低いものは後回しにしてもOKなわけです。

──そうですよね。どうしたら大事なことを後回しにしなくなるんでしょうか。

塚本:自分を信用しないことです。「ちょっとだけ別のことを先に」とか「後でやればいいや」という考えが、そもそも自分のやる気と記憶力を頼りにしている行動です(笑)。ですから、やらなきゃと思ったことはすぐ紙に書き出すようにしてください。目に見えるところに貼っておけば、嫌でも思い出しますし、やらなきゃという気持ちになります。

──パソコンやスマホのTo Doリストではダメですか?

塚本:紙がベストですね。パソコンやスマホだと、まずは画面を開いてTo Doをチェックすることが、To Doになってしまってひと手間増えます。それに紙だと、ひもづいて浮かんだアイデアも自由に追加できますしね。

塚本亮
すぐやる人になるには、「自分のやる気と記憶力を信用しないことが大事」なのだとか。

すぐやる人は「自分を動かす仕組み」を作っている

──その他に気をつけておくべきことはないでしょうか。

塚本:そうですね……サッカーの本田圭佑さんのやり方は参考になると思います。本田さんは自分が思いついたことを自分でやろうとしない天才なんですよね(笑)。だから、すぐやれる。

──自分でやろうとしないから、すぐやれる……?

塚本:本田さんはサッカー以外に、ビジネスとかいろいろやっていますけど、アイデアを思いついた瞬間に、自分よりその分野に長けている人に話を振っちゃったり、マスコミに話しちゃったりするんですよ。これの何がいいかと言えば、そうした手前、自分にも責任が生じることなんです。

──やらなきゃいけない状況を作ってしまうということですか?

塚本:すぐやる人は、「自分を動かす仕組み」を作るのがうまい。自分の中に留めておくと、やるかやらないかは自分の意思に左右されてしまいます。でも、周囲を利用することで、自分がやらざるを得ない状況を作ることができれば、自然と動けるようになります。

──宣言することで自分を追い込むのも「自分を動かす仕組み」ですね。

塚本:逆に、すぐやれない人に多いパターンが「一人でどうにかしないといけない」と考えてしまうことです。だから、自分の力では足りないと思うと、簡単に断念してしまう。もったいない話ですよね。そうならないように、誰かを巻き込んでしまうのは有効だと思います。

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すぐやる人は、「自分を動かす仕組み作り」がうまいのだとか。

根拠がない自信を持つことも大事

──でも、「まだ人に言える段階じゃない」とか「人に負担をかけたくない」と思ってしまう人が多いのでは?

塚本:それは教育の影響が大きいと思います。学校や塾での勉強を思い出してください。授業は講義を聞くだけの受け身のものだし、あとは参考書などと向き合って自分一人で考えて、答えを出すという自己完結型なんですよね。チームで協力してプロジェクトを動かしたり、何かをみんなで成し遂げたりする機会があまりない。

──言われてみるとそうですね。

塚本:会社でも、報・連・相の苦手な人がいると思いますが、理由は同じだと思います。人の知恵を借りて何かを成功させた経験が少ないので、一人で処理しようとしてしまうんです。でも、一人では大変だからすぐやれないし、結局は放置したまま終わっちゃうことも多くなります。

──やらないと自信も経験も得られないし、悪循環ですね。

塚本:たしかにその通りなんですが、経験や実績がないから自信が持てないと考えていると、新しいことは何もできなくなります。ですから、「自信が先で、実績は後」とか、「誰かにできることは、自分にもできる」といった根拠のない自信を持つことも、「すぐやれない人」にとっては大切です。

──でも、そんな自信をどうやったら持てるんでしょうか。

塚本:自信がないなら強気のポーズを取ってください。うなだれたり、ため息をつくなど、弱気なしぐさは厳禁です。自信があるように振る舞うことで、本当に自信が湧いてくることは心理学の実験でも確かめられています。

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「自信がないなら強気のポーズをとってください」と真剣な表情で。

プラスの言葉、ポジティブな言葉を心がける

塚本:「すぐやる」習慣を身につけるためには、言葉の使い方を意識的に変えて、自己肯定感を高めることが重要です。「でも」「そうはいっても」「だって」「できない」「無理」……。こうした言葉を口にしそうな時は、ぜひ「だから、〇〇しよう」に変えてみてください。

──「こんな目標は達成できない」と思ってしまいそうだったら、「次は結果を出したい。だから先輩に相談してみよう」と切り替える。こんな感じでしょうか?

塚本:OKです。ネガティブな言葉をプラスの言葉に変えるように習慣づけていくと、今まで見えなかった可能性が見えてきて、思考が変わってきます。

「前も失敗したから、今度も……」と思ってしまうように、ネガティブな考えに陥りやすい人は、過去の経験からそれ以外の選択肢が見えない状態になっているだけなんです。プラスの言葉、ポジティブな言葉を心がけることで、「あ、そんな可能性もあるのか」と気づくことができるようになります。

──「すぐやる人」と「やれない人」の違いは能力ではなく、自信や考え方によるところが大きいんですね。

塚本:それから、「すぐやる人」は感情のコントロールが上手です。上司に怒られた翌朝は仕事に向かうのは気が重いでしょうが、褒められていれば足取りも軽やかなはずです。感情と行動は切っても切れない関係にあるので、やっぱりもやもやしている人ほど、すぐやれない人になりがちです。

──「すぐやる人」は感情を切り替えるのがうまいということですか?

塚本:いえ、無理に切り替える必要はありません。感情をコントロールする最善の方法は、その感情を素直に受け入れることです。その上で、誰かに話したり、紙に書き出したりして感情を吐き出すようにしてください。マイナスの感情が排除されるから、やる気が引き出されるわけです。

──たしかに、マイナスの感情を抱えていると、やる気もパフォーマンスも落ちますね。

塚本:他には、「儀式でスイッチ入れる」という方法もあります。私の場合、精神的に負荷のかかる仕事の前には自分の好きな紅茶を飲んだり、糖分を取ったりすることでスイッチを入れるようにしています。

──どんな儀式でもいいんですか?

塚本:気持ちを切り替えるスイッチにな儀式なら効果はあります。でも、「朝、豆から挽いたコーヒーを飲んだ日の商談は成功した」というように、その儀式によって成功体験が生じたと思えるものだとベストです。行動心理学的には「オペラント条件付け」といって、行動とその結果の関連性を学習することでより大きな効果が得られます。

塚本亮
「ネガティブな言葉をプラスの言葉に変える」「儀式でスイッチを入れる」といったことも有効だそう。

「すぐやる人」になるには最初の一歩がすべて

──単調な作業が山積みで、気が重くてなかなか始められない時はどうしたらいいでしょうか。

塚本:そんな時は「ゲーム性」を出していくことも有効です。たとえば、手をつけやすいものから並べて、「ここからタイムアタックで片づけるぞ!」みたいにルールを決めるんです。視点がそれてはかどりますよ。

──締め切りまで時間がある仕事はどうしても後回しにしがちな人が多いと思います。何かいい対策はありますか?

塚本:私も本を書く時などは、意識的に「すぐやる仕組み」を発動させないと、締め切りまで半年もらっても、1年もらっても最後の1カ月になるまでノータッチになってしまいますね。

──塚本さんの「すぐやる仕組み」とはどんなものですか?

塚本:簡単なことで、本の執筆依頼を受けたら、「半年で200ページ」といった最終ゴールの約束のほかに、その場で相手と相談して、1カ月後に○ページ、2カ月後に○ページというように、小さな締め切りをいくつも設定するようにしています。

──相手に見張ってもらえるようにしているんですね。

塚本:それもありますし、実際、小さな締め切りを設けないと、毎日どれくらいのペースでやったら間に合うか把握できません。それがつい後回しにしてしまう原因のひとつになります。

──やっぱり最初の一歩を小さくして、積み重ねて行くことが大事なんですね。

塚本:そう思います。どうしようと考えて立ち止まってしまうのではなく、まずは動くことです。どんなことでも、最初の一歩が勝負。やろうと思った時こそが、最高のモチベーションのはずなので、その瞬間を逃さないようにしてください。後回しにするほどモチベーションは落ちていくので、余計に行動に移すのが難しくなります。小さな一歩でいいので、まずは動いてみてください。

塚本亮(つかもと・りょう)

1984年、京都生まれ。偏差値30台から同志社大学に現役合格。その後、ケンブリッジ大学で心理学を学び、帰国後、グローバルリーダー育成を専門とした「ジーエルアカデミア」を設立。のべ150人以上の日本人をケンブリッジ大学、ロンドン大学をはじめとする海外のトップ大学・大学院に合格させている。近著に『すぐやる力 自然に動き出す自分に変わる!』(PHPビジネス新書)など。

Twitter:@ryo_cambridge8

取材&文/小寺賢一