会社員という立場にどっぷり浸かっていたのに…

2019年4月から、6年続けてきた会社員生活に終止符を打ち、フリーランスになりました。

正直、独立は僕自身も想定外のことでした。SNSを開けば『フリーランス最高〜!』派による「フリーになるべき論」が飛び交っていますが、若干のうらやましさはあるものの、兼業会社員生活に不満はなかったからです。むしろ、「会社員」という立場の居心地の良さにどっぷり浸ってました。

会社という組織の中にいることに、僕は、多くのメリットを感じていました。たくさんの人と関わることができるし、学ぶことが多く、一人では到底扱えないような大きなプロジェクトに携われて、万が一の場合には会社が守ってくれる。

毎月固定したお給料をもらえるし、上司や営業先からいろいろと教わることもできるし、夜や土日を使えば、自分の好きなイラストを描いて、副業も無理せず続けられる。会社員、最高じゃないですか! ってね。

……ですが、家庭の事情で滋賀県へ引越しすることが決まり、通勤が難しくなってしまいました。それを機に退職し、「フリーランス、やってみるか!」と一念発起したんです。

そして半年経った今、独立初月に感じた「あれ、もしかしたらフリーランス最高じゃね?」って気持ちをぶん殴ってやりたいぐらいに向いてないかも! と感じている最中です。前回Dybe!さんで「会社員最高!!」って記事を書いたのちに、こういう事情となりました……ごめんなさい……。

実際にやってみるとフリーランス最高! ってわけでもなかった

毎朝好きな時間に起きて、通勤電車に揺られることもなければ、朝礼で声揃えて社訓を読む必要もない。自宅作業なので家族との時間も増え、その名の通り「フリー=自由」になれた気がしていました。

けど、そのフリーランス最高〜! な生活を維持しようと思うゆえの、「収入」に対する焦りが押し寄せてきました。仕事モードON/OFFの切り替えが上手くできず、子どもをお風呂に入れながらも「明日仕事なくなったらどうしよう! 腕が折れたらどうしよう! だから今休まず稼いで貯金したほうがいいのでは?」……と、極度の不安に飲み込まれそうでした。

そんな悩みを誰かに話したい……と思うものの、会社のように常に誰かと話せる環境ではないのがフリーランスなんです。

僕にとって、収入と同じぐらい不安に感じているのは「孤独」。自営業、思ってた800倍は孤独なんです。家族とはずっと一緒にいるものの、仕事に関して相談できる人はいないし、意見交換もできないからすっごい寂しい。その上、引っ越しした先に友達もいないので、飲みにも行けない。

フリーになるや否や、自分自身でキッチリ自律しないといけないんだなと思わされました。

毎日のルーティーンを決めて、朝8時に起きています。労働時間はきっちり10〜18時。基本的には子どもに合わせた生活リズムにして、家族の時間を増やしたり、週2でジム通いしたり。「疲れが蓄積されてきたな」と感じたら、仕事を早めに切り上げてサウナに行くこともあります。

「無理しない!」「ストレス溜めない!」「たくさん寝る!」をルールにして、自分自身の生活を守るようになりました。意図的に仕事から離れる時間をつくり、スケジュールを1カ月単位で組むようにしたことで、ずるずると仕事を引っ張ることがなくなりました。会社員の時より、自分のことちゃんと考えてるかも。思っていたフリーと違う。セルフ社訓、唱えてる!

会社員とフリー、どちらもやったから言えること

会社員6年、フリーランス半年。どっちがいいぞ〜! なんて明言はできませんが、それぞれの良し悪しが見えてきました。

会社員を経てからフリーになって良かったと思うことは、営業・企画・計画立てなど会社で教えてもらったスキルが、フリーランスの世界ではすごく役立ったこと。会社員のように待っていても仕事が降ってくることがないから、自分で開拓していくしかない。

そんな時に「人見知りで営業苦手〜」なんて言ってられないんです。会社時代に営業しててよかった〜! と思いながら、企画書片手に順序立てて話をしたりしています。僕はイラストレーターですが、最初から絵だけに集中していたら、経済的には厳しかったと思います。会社で働いてたからこそ、創作だけじゃなくて、経営的な視点も持てる。

めんどくさい上司との飲みの場でさんざん聞かされた営業術も経済学も、今となっては理解できるし、活かされてる。会社員時代の経験は、すごく貴重なものです。今はもう、会社員時代のように間違いを指摘してくれる人がいるわけじゃないし、責任はすべて自分にある。できるだけミスを起こさないように、フリーであるからこそ、注意と自衛の大切さも感じます。

フリーランスこそ、仕事を絞る勇気が必要

自分で自分を追い詰めることになったのは、仕事を断れないこと。前項にも書いたように、僕は極度の心配性。独立した当初は、焦りからいただいた依頼をほぼ断ることなく受けていました。おかげさまで兼業時代よりも収入は増えたものの、完全にパンクし、心身ともに疲弊してしまいました。

会社を辞めた当初は「これで漫画家としての活動に没頭できる! いろんな媒体で連載を目指すぞ!」と意気込んでいたんですけど、実際問題、今の僕では、連載の原稿料だけで家族4人の生活費を稼いでいくのはかなり厳しい。生活のためのお仕事を受ける必要もあるんです。

気がつけば本来やりたい創作よりも、目先の生活費のために単発の仕事ばかり受けていたり、連載に向けての「企画を考える無報酬の時間」に不安を感じたり。会社員の時にはなかった新たな焦りが生まれたんです。毎月の固定給が、自分にとっての大きな安心になっていたんやなと改めて感じました。

自分がやりたいことに挑戦するためには、仕事を断って時間を捻出する勇気も必要。フリーになったからこそ、自分で目標を決めて、自分で時間を捻出して、自分の気持ちをコントロールしないとうまくやっていけないかも。そんな風に感じています。

その結果、僕が思ったこと

フリーランス生活半年ながらもたくさんの気づきがありました。

兼業の時は、睡眠時間を削って労働時間を増やしていました。「会社も漫画も成果出さなくちゃ!」という気持ちでいっぱいだったけれど、会社で吸収できることが多くて、漫画に活かされていたって良さもある。

フリーになってからは、好きなことに全力で時間を注げるようになって、夢のようなお仕事をさせてもらうこともできた。けど、「収入が〜〜〜〜」「将来が〜〜〜〜」って不安は、ずっとつきまとってくる。

双方の楽しみやツラさがわかってこそ思うのは、挑戦という意味での背中を押してもらうのは別として、フリーランスも兼業も誰かに推されてなるもんじゃないなと。どっちの生活も悪くない。向き不向きだと思います。だからSNSで見かけた「会社員なんて辞めてフリーランスになるべき!」なんて無責任な言葉をうらやましがる必要はないなと思いました。

自分でちゃんとプランを立てて、なにかあった時のリスクヘッジもできるぞ! なんて人はフリーランスに向いてるかもですが、僕みたいなスーパーネガティブ思考な人は、多少収入が少なくても、給料をもらいながら好きなことをする生活が向いてるかも。特に家族がいれば。もちろん会社も倒産することはあるし、ずっと安定を保証してくれるものじゃないけど。

僕はネットでのお仕事をメインに活動してるので、この先どうなるかわからない。それこそ、近いうちにツイッターブームが終わるかもしれない。それでもしフリー生活が厳しくなったら兼業に戻ろうと思えるし、兼業に戻ったら、また会社員を楽しもう! という柔軟な気持ちでいます。

この記事を書いた人

吉本ユータヌキ

吉本ユータヌキ(よしもと・ゆーたぬき)

滋賀県在住の漫画家・イラストレーターであり、二児の父。子ども観察漫画「おもち日和」がネットで話題となり、2017年に集英社よりコミックスを出版。バンドや大型フェスのグッズデザインなど手広く活動中。

Twitter:@horahareta13