“楽器を持たないパンクバンド”と呼ばれ、『アメトーーク!』でも「BiSHドハマり芸人」が放送されるなど話題のBiSH。

メンバーのモモコグミカンパニーさんはBiSHに入る前は、友達と過ごしながらも、本気で向き合えない苦しさを持っていたそう。「楽しそうだな」という気持ちで加入したBiSHで、仕事や周囲と本気で向き合う勇気を持つようになったこと、またそのおかげで得たものについて伺いました。

笑う意味がわからないまま、 BiSHになった

BiSHモモコグミカンパニー
モモコグミカンパニー(ももこぐみかんぱにー)。2015年3月、BiSHとして活動開始。2016年5月、シングル「DEADMAN」でメジャーデビュー。「JAM」「Nothing」など手掛けた歌詞にも定評があり、「リズム」はBiSH初のメンバー作詞作曲となる(モモコグミカンパニー作詞、アイナ・ジ・エンド作曲)。初の著書『目を合わせるということ』は8刷りに。

──BiSHの活動はもちろん、執筆した書籍『目を合わせるということ』も高く評価されています。いろんな才能がありますね。

モモコグミカンパニーさん(以下、モモコ):全然。すべてにおいて不器用で、常に逆の方向に向かってしまうんです。左利きだし。ひとりだけ歌もダンスも未経験で加入した、はぐれもの。自分に一番向いていないであろうことを仕事にしています。

──BiSHのオーディションに参加したきっかけを教えてください。

モモコ:本屋さんに行った時、たまたまメンバー募集のチラシを見つけました。全然知らないグループだから、「ここなら面接にまで行けるかも?」と思って軽い気持ちで応募したんです。

──学生時代、他に目指していたものはありますか?

モモコ:当時、周りに目標がハッキリしている子が多かったんですね。海外留学とか、この企業に就職したいとか。それに比べて、自分にはこれだっていうものが見つかっていなくて。だからいろんな世界を見てみたいという気持ちがあって、オーディションの紙を見つけた時、「面白そうだな」と興味を持ったんだと思います。

──アイドル活動が、面白そうだと……。

モモコ:アイドルを目指している女の子たちに会ってみたいな、というのがありました。人前に立つということに対してどんな想いを持っているのかなと。だからオーディション会場に行ってみたくて。

──アイドルにどんなイメージを?

モモコ:キラキラしてかわいくて素敵だけど、なんで面白くなくても笑えるのか不思議でした。自分が面白いから笑うのではなく、人に向けて笑うことの意味がわからなかったんです。

──愛想笑い的なものが……。

モモコ:できませんでしたね。バイト先で愛想が悪すぎるって注意されたくらい(笑)。

笑顔に「ありがとう」の意味があることを知った

BiSHモモコグミカンパニー

──なぜ笑えなかったんでしょう?

モモコ:やれって言われたことは全部ちゃんとやるけど、それ以上はやらなかったんです。バイト先には友達と話をしに行くような感覚で、仕事として本気ではなかったんですよね。

──BiSHでは本気ですよね。

モモコ:BiSHの活動では、言われたことだけやればいいとか、LIVEで他のメンバーがいるから自分は手を抜いてもいいとか思ったことは一度もないです。

──BiSHの活動に本気で向き合えたのは何でだと思いますか。

モモコ:それまでは、自分を出すことはあまりなかったんです。周りに合わせるタイプで。でも、自分の感情をちゃんと出すようにしたこと、そして自分の悔しい気持ちにも気づけたからですね。

活動をする中で、意味がないと思っていた笑顔に「ありがとう」を伝える意味があることを知って、笑えるようにもなりました。

「歌詞を書くことが好き」 直された悔しさに泣いて気づけた

BiSHモモコグミカンパニー

──周りに合わせるばかりだったのに、自分を出せるようになったのはどうしてですか。

モモコ:ずっと友達はいて、楽しくやっているんだけれど、家に帰るとどっと疲れて、自分の部屋から出たくないということが多かったんです。でも、BiSHでそれまで自分の周りにいなかった、本気で自分の感情を表現する人たちに会って、「周りに合わせて中立でいる必要はないんだ」と衝撃を受けました。

──コミュニケーションのとり方も変わりましたか?

モモコ:劣等感のかたまりなので、歌のタイミングがうまくとれなくてダメ出しされるたび、落ち込んでいて。でも、本当に匙を投げられたらダメ出しもされないですよね。わたしのために言ってくれているとわかって、自分も言わなきゃいけないことは、頑張ってちゃんと言うようになりました。

──悔しい気持ちに気づけたと言っていましたが、きっかけは……。

モモコ:最初に歌詞を書いた時、プロデューサーの渡辺(淳之介)さんに「ちょっとここがわかりにくい」「文字数合わせて」などの指摘をうけて、BiSHに入ってから一番泣いたんですよ。それで、自分はここが悔しいことなんだ、ここで頑張ればいいんだって、気づいたんです。

──本気だからこそ悔しかったんですね。

モモコ:昔からバイト中もヒマな時間を見つけて文を書いていて、自分の部屋には言葉を綴ったノートがたくさんあって。でも誰かに見せるということはなかったんです。それが初めて人に見せて悔しさを感じることで、わたしは書くことがものすごく好きなんだと知ることができました。

自分が書いた歌詞をライブで聴いてもらった時、ああ生きてるなって。初めての感覚でした。

苦手なことこそ、世界を広げる

BiSHモモコグミカンパニー

──他にも、仕事に本気で向き合えるようになって変わったことはありますか?

モモコ:苦手なものへのチャレンジでしょうか。

──苦手?

モモコ:実はV系の音楽が苦手だったんで、対バンが決まったと言われた時、逃げたい気持ちになりました。

でも、V系バンドは人気もすごくあるし、その魅力を知らないのはもったいないと思いYoutubeなどで聴きまくったんです。そうしたら、V系の音楽の魅力もわかるようになりました。

──前向きですね。

モモコ苦手なことほど世界を広げるチャンスだと思います。仕事をする上では苦手なことを受け入れる努力も必要かなと。

試しに一回やってみるっていうのは、若い人は特に必要なんじゃないかなと思います。すごくこわいことだと思うんですけど。

弱みがあって、アンバランスだからこそ、面白い

BiSHモモコグミカンパニー

──BiSHに入ってから、人と向き合い前向きにもなったモモコさんですが、落ち込んでしまった時はどうしていますか。

モモコ:“自分の居場所なんてない” “自分だけ頑張れない”って落ち込んでいた時に、ボイトレの先生に「みんな元気そうに見えるかもしれないけど、それぞれ悩みはあるんだし、元気な日もあれば落ち込む日もある。そういうアンバランスな自分も含めて自分なんじゃない?」と言われてから、無理しなくてもいいのかなって思えるようになりました。

──アンバランスな自分も自分……。

モモコ:そんな日があってもいいし、もっと周りを信用したらいいのかなと。ちゃんとしなきゃ、いつでも元気じゃなきゃここにいちゃいけないっていう完璧主義的な考えがあって苦しかったんですけど、完璧な人っていないし、それも含めて自分だし、面白いなって。

──人間らしいですよね。

モモコ:自分が“もうダメだ”って時に出てきた歌詞に、元気をもらったと言ってもらえることが多くて。自分を救うために赤裸々に書いた歌詞だからこそ、誰かを救うこともあるのであれば、アンバランスなりにいいとことがあるんだなと思います。

──アンバランスなりにいいところ……。

モモコ弱みをかかえてるからこそ自分が落ち込んだ時のことを自分の言葉でライブで話したり、仕事に生かしたりもできるのかなと。

BiSHもそれぞれ違うタイプで、完璧じゃないメンバーが集まっています。ふつうなら出会わないであろうアイナと曲を作ることもできました。不思議な縁があるから、生まれるものも面白い。

けっこうそれが、BiSHを続けられている理由でもあるかもしれないですね。

BiSHモモコグミカンパニー

モモコグミカンパニー(ももこぐみかんぱにー)

2015年3月、BiSHメンバーとして活動開始。2016年5月、シングル「DEADMAN」でメジャーデビュー。「JAM」「Nothing」など手掛けた歌詞にも定評があり、「リズム」はBiSH初のメンバー作詞作曲となる( モモコグミカンパニー作詞、アイナ・ジ・エンド作曲 )。初の著書『目を合わせるということ』は8刷りに。現在のBiSHメンバーはモモコグミカンパニーの他、アイナ・ジ・エンド、セントチヒロ・チッチ、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・Dの6人。ニューシングル「KiND PEOPLE / リズム」が発売中。

Twitter:@GUMi_BiSH

取材・文/樋口かおる(@higshabby
撮影/小原聡太(@red_tw225