朝の情報番組「とくダネ!」の「アマタツ~!」でおなじみの気象予報士・天達武史さん。

わかりやすい気象解説と画面から伝わってくる人柄のよさで今や人気No.1のお天気キャスターに。

しかし実は、気象予報士になる前はファミリーレストランに9年間勤め、7度目の受験でやっと合格したという苦労人。

本番にとにかく弱く、成功体験ゼロだったという天達さんに、資格取得までの紆余曲折や夢をつかんで今に至るまでのお話を詳しく伺いました。

気象予報士をめざした理由は、劣等感から?

天達 武史
天達武史(あまたつ・たけし)。1975年、神奈川県横須賀市出身。気象予報士。『情報プレゼンター とくダネ!』(フジテレビ系)のお天気コーナーで活躍。レギュラー14年目となる。ORICON STYLEの『好きなお天気キャスターランキング』で通算6度も第1位に輝いたことがある人気キャスター。

──天達さんは気象予報士になる前は、ファミレスに9年間も勤めていたとか。

天達武史さん(以下、天達):はい。専門学校時代から気象予報士の仕事に就くまでずっと働いていました。高校時代の友人に誘われて始めたのですが、その友達は2日で辞めて(笑)。

──なんと。

天達:僕も辞めようかなと思ったのですが、一緒にアルバイトをしていた人たちが同世代で、すごくよくしてくれて。 結果的に9年も長居してしまいました(笑)。

──そこからどうして気象予報士を目指すようになったのでしょうか?

天達: アルバイトをしていると、学生が多いのでみんな就職をしていくわけですよ。あれ、自分だけいつまでもここにいるなという気持ちになって、劣等感がすごくありました。それに、成功体験が何もなくて……。

──成功体験?

天達:僕、本番にとにかく弱いんですよ。高校球児だったんですけど、練習の時は結構打てるのに、試合ではまったく打てない。ファミレスの従業員の大会でも、慣れているはずなのにいざ本番となると緊張して手が動かなくて全然ダメでした。

──毎日、生放送をしているのに、本番に弱いなんて意外です。

天達:そんな感じで、練習ではうまくいくのに本番ではうまくいかないケースが多くて。とにかくそんな自分を「変えなきゃダメだ」と思って、あえて人がチャレンジしないような資格を取ることで、自分に少しでも自信をつけたいと思ったんです。

負い目を感じる息子を救った両親の言葉

天達 武史

──人がチャレンジしなそうな資格の中でも、気象予報士を選んだ理由はなぜですか?

天達:ファミレスで食材の仕入れを担当していたんですけど、天気によってお客さんの数がかなり変わるので、自分で予報ができたら仕事もラクになるんじゃないかと。

そう思っていたタイミングで、新聞の広告欄に気象予報士養成講座というのを見つけて見学に行ったんです。そしたら、マンガで授業をしていて、これなら俺でもできるなと思って。

──マンガならわかりやすそう!

天達:次回から授業を受ける人は受講料を払ってくださいということだったので、半年分払っちゃったんですよ。たしか30~40万円くらい。

──結構な額ですね。

天達:払って「よーし、頑張るぞ!」って次の週に行ったら、もうマンガではなく、いきなり内容が難しくなったんですよ。だまされた気分でした(涙)。払ってしまったから続けたというのはあります。払ってなかったら辞めていたかも(笑)。

──気象予報士の試験には7度目で合格されたんですよね。心が折れることはなかったんですか?

天達:いや、もう最初で「ダメだこりゃ」って折れていました(笑)。でも、この試験については、講座にお金も払ってしまったので気象予報士の勉強が義務みたいになっていた部分があって。そして、自信をつけるためにも成功体験が欲しかったので、何年かかっても取れるまではやろうと思っていました。

──試験をあきらめようと思ったことはないですか?

天達:当時実家にいたので、親には申し訳ないなという気持ちはありました。就職をしていなかったので、近所の目もあるじゃないですか。

──天達さんちの子は何してるのかしら? って感じですね。

天達:そうそう。それで両親に「家を出ようかな」みたいな話をした時に、「まだ20代だろ。人生まだ何倍もあるんだから、好きなことをやればいいんだよ」と言ってくれて。

──素敵なご両親ですね。

天達:この頃もう20代半ばになっていて、周りが就職していく中で、僕だけが試験に落ち続けてファミレスでバイト。正直、「生きてる価値あるのかな」みたいな負い目がすごくあったんです。だから、両親にそういう言葉をかけてもらえたのは、気持ちが救われましたね。

勉強法の改善で点と点が線につながった!

天達 武史

──ご両親の理解もあり、20代後半に入っても試験を受け続けたわけですよね。最終的に受かった秘訣はありますか?

天達:バイト先に勉強ができる高校生が入ってきたんです。その子に「気象予報士の試験に全然受からない」と話すと、「どうやって勉強していますか?」って聞かれて。「休日に10時間まとめて」と話したらダメ出しをくらいました(笑)。

──何がダメだったんでしょう?

天達:「まとめて10時間やるよりも、少しでもいいから毎日続けることが大切」だと言うんです。あまりにも受からないから、その勉強法を試すことにしました。

バイト前に、近くの図書館で毎日1~2時間勉強したんです。それを続けて3カ月たった頃から、今までチンプンカンプンだった問題が解けるようになっちゃったんです!

──習慣づけって大切なんですね。

天達:点と点だった知識が線でつながるようになって。それで勉強が楽しくなったのと、毎日やることで安心感のようなものも出てきました。そしてその半年後の試験で無事合格することができたんです。27歳の時でした。

──成功体験が得られて、自信はつきましたか?

天達:はい、つきました。「自信がつく」ってやっぱりすごいことで、僕、ファミレスで働いてた記念に、その後、調理師の試験を受けたんです。そしたらなんと一発合格したんです!

──すごい!

天達:勉強の仕方がわかるようになっていたのと、やっぱり気象予報士の試験に合格していて自信を持てるようになったのが大きかったですね。

「天気の達人」でアピール!

天達 武史

──その後、どうやって「とくダネ!」の気象予報士に抜擢されたんですか?

天達:気象協会に入って1年後ぐらいに、オーディションがあったんです。上司に「おまえも一応履歴書を送ってみれば」と言われて。自己PR欄に名前をもじって、「天気の達人です」と書いてダメ元で送ったところ、会ってみたいと言われて。

──たしかに「天気の達人」はインパクトがあります!

天達:面接では主婦向けの企画を提案し、1分間のアピールタイムは前日に先輩がラジオで語っていたお天気の小ネタを59秒で話すことができて。たまたまだったのですが、時間管理もできると高評価につながったようです(笑)。後日、上司からまさかの合格を告げられました。

──晴れてお天気キャスターの仲間入りをされたんですね。

天達:でもすぐにボロが出ました。

──と言うと?

天達:先ほども話しましたが、僕、本番に弱いんですよ。もちろん練習して本番にのぞむんですが、ドキドキしちゃって……。予報が当たる以前に噛んじゃったり、時間に収まりきらなかったり、すごく落ち込みました。

大恩人の言葉に支えられて今がある

天達 武史

──そんな時期もあったんですね。

天達:半年経った頃、「もう辞めようかな」と思い、メインキャスターの小倉智昭さんに相談したんです。「半年もやっているのに全然ダメなんです」って。すると「俺は40年以上やっているのにまだこんなに間違いばっかりするんだよ」と言ってくださって。

──大御所なのにやさしい!

天達:あと嬉しかったのが、小倉さんが全体会議の時にみんなの前で「俺はアマタツを有名にするんだ!」と言ってくれたんです。毎日「アマタツ~!」って本番で呼んでくれるけど、声のトーンを毎日変えてくれていて、そのプロ意識と心遣いに感謝してます。

──プロ意識と心遣い……。

天達:小倉さんの会議でのひと言をきっかけに、「本番でうまくできないとか悩んでる暇はない、この人のためにもっと頑張ろう」と決意しました。

成功体験の積み重ねがきっと自信につながる

天達 武史

──14年間の生放送で何か大きな失敗はありましたか?

天達:失敗のほうが多いです(笑)。でも自分にとってターニングポイントになったアクシデントがあるんです。

──アクシデント?

天達:本番の5秒前に突風が吹いて、入念に準備した原稿が飛ばされてしまったんです。

──ドラマの1シーンのようです。

天達:もうどうしようもなくて、画面を見て自分の言葉で話すしかなかったんですよ。15秒に1回くらいは噛んだとは思うのですが、わかりやすかったと好評で。その突風事件以来、本番では原稿を丸読みせず、自分の言葉で伝えるようにしています。僕にとってはある意味神風だったのかもしれません(笑)。

──少しくらい失敗しても、一生懸命伝えようとすることが大事だということでしょうか。

天達「一生懸命やっていると見てくれている人が必ずいる」ということなんだと思います。そう思って、続けてきました。

──本番に弱くバイト時代には劣等感の塊だった天達さんですが、今はとても前向きですね。

天達:資格をとって自信がついてから、心に余裕が生まれたんだと思います。今まで気づかなかったことに気づけるようになったり、人の助言に素直に耳を傾けられるようになったり。あとは小倉さんやスタッフさんとの出会いのおかげで、仕事への意識が変わったんです。

──自信をつけるって大事ですね。

天達:大きい成功体験でなくてもいいと思うんです。小さい目標をひとつずつクリアしていくと、自分に自信がついてくるはずです。それをやり続けたら、きっと高い目標や夢にも手が届くと僕は信じています。

天達武史(あまたつ・たけし)

1975年4月18日生まれ。神奈川県横須賀市出身。2002年に気象予報士試験に合格し資格取得。2005年10月からテレビの情報番組「とくダネ!」でお天気コーナーのキャスターに。ORICON STYLEの『好きなお天気キャスターランキング』で通算6度も第1位に輝いたことがある人気キャスター。著書「天達のお天気 1日1へぇ~」ほか。

Twitter:@ama_tatu

取材・文/田代祐子
撮影/小原聡太(@red_tw225