できる人がうらやましい。才能がある人は何でも器用にこなせて特だよな……。なんて思ったことはありませんか?

「才能がない人でも結果を出す方法を教えてください!」

坪田塾の塾長や吉本興業ホールディングス株式会社の社外取締役を務め、『ビリギャル』の先生としても知られている教育のプロ・坪田信貴さんにこの悩みをぶつけたところ、「努力は今の1.2倍だけにしてください」との答えが返ってきました。

ハードな努力をしたほうが結果は出そうなのにどうして? 詳しくお話を伺いました。

才能は「生まれつき」ではなく「自分で身に付ける」もの

坪田信貴
坪田信貴(つぼた・のぶたか)。『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』の著者。現在は教育者の傍ら、人材育成・組織構築を、講演や執筆などを通して広めている。

──才能を持っている人がうらやましいです。自分にも才能があればいいのにと思うことばかりで……。

坪田信貴さん(以下、坪田):「そもそも才能とは」というお話から始めたほうがよさそうですね。多くの方が才能は生まれつき持っているものだと思っていますが、僕は違う考えを持っています。

──生まれ持ったものではない? では、才能って一体何なんですか?

坪田:努力したら結果が出たもののことを才能と呼んでいます。トイレトレーニングを例に説明しますね。

──トイレトレーニング……?

坪田:トイレで用を足すのって、人間には基本的に備わっている能力って感じがするじゃないですか。だからトレーニングをしなくても勝手にできるようになるのでは? と思って、長女をあえて自由にさせておいたんですよ。でも結局、3歳半頃になってもトイレで用を足せるようにはならなくて。

──壮大な実験ですね。

坪田:今になって思うと、申し訳ないことをしたなと。トイレほど日常的にできていることですら、努力を積み重ねないとできるようにはならないんですよ。だから、才能だと感じるスキルもすべて努力の結果身に付いたものだと考えているんです。

お箸を使うのも書道をするのも私たちにとっては当たり前にできることですが、海を渡るとそうではないですから。一種の才能といえますよね。

──とはいえ、『ビリギャル』のさやかさんには元々勉強の才能があったのでは?

坪田:それはよくいわれます。そのたびに「その通りですよ。でも、あなただってそうですからね」って答えてるんです。誰もが才能のタネは持っている。そこからどれだけ努力できるかが道を分けるんです。

──では、さやかさんも地道な努力をされたのでしょうか。

坪田:そうです。聖徳太子を「セイトクタコ」と読むところからのスタートでしたから。「この女の子、超かわいそうじゃね? 超デブだったから『セイトクタコ』って名付けられたんじゃないの?」って言ってました。

──「セイトクタコ」!それはなかなかの衝撃です。

坪田:そこで僕は、「むしろよく最初の2文字読めたね」って言ったんです。皮肉に聞こえる人がほとんどだと思いますが、さやかちゃんは褒められたと思って喜んでいて。できないことやわからないことがあると恥ずかしくて行動できない人も多いと思うんですけど、さやかちゃんは失敗を恐れずに努力し続けたから結果が出たんです。まぁ、正しくは「セイトク」ではなく「ショウトク」なんですけどね(笑)。

坪田信貴
「さやかちゃんは平安京を『ヘイアン キョウさん』って人だと思ってたんです」と珍回答エピソードが続出。

今の1.2倍の努力を1年半継続する

──努力が大切ということはわかったんですが、何から手を付けたらいいのかがわかりません。

坪田:まずは人よりも少しできることに手を付けるといいと思います。やりたいことがあれば努力できると思っている人が多いんですけど、実は逆で。できるから努力するんです。走るのが速い人は走ることが好きになるし、数学が得意な人は勝手にどんどん自分で進めていく。

──できることに目を向ければいいんですね。

坪田:要は、すぐに芽が出そうなものを選んだらいいと思います。やっぱり、イマイチ成果が出てないのに努力するのって難しいですからね。結局、人間は得意だから好きになるし努力できるんですよ。

──芽が出るかわからないものは、選ばないほうがいいんでしょうか?

坪田:いいえ、そういうわけではありません。社会人である以上、そういうものとも向き合わなければならない場面はたくさんありますからね。そういう時は、今の1.2倍の努力を意識してみてください。

──1.2倍だけでいいんですか?

坪田:結果を出すために何よりも大切なのは、努力の継続です。でも、「急激に成長しなければいけない」と思い込んでいるから続けられない人が多いんですよね。たとえば、筋トレを始めた人がいきなり初日から、腕立て伏せを100回やってしまったり、ダイエットしたい人が1カ月に10キロ痩せようと目標を立ててしまったり。

──たしかに、高い目標を立てがちな気がします。

坪田:1日で急激に変化する必要なんてないし、そもそもそんなこと無理なんです。成功よりも成長を意識するようにしてみてください。

──どういうことでしょうか。

坪田:たとえば、テストで90点を目指しているとします。結果が75点だった時、「達成しなかった」と悲しむのが「成功」のとらえ方です。でも、前回のテストが70点だったとしたら、5点「成長」してるってことじゃないですか。僕は「5点伸ばせたこと」にもっと目を向けるべきだと思っていて。

──これまでの自分との比較が大切なんですね。

坪田:成功できたかできなかったかは、ある段階までは気にしなくていいんです。一歩一歩着実に積み重ねていけば、後々大きな成果につながっていくはずですから。

──どのくらいの期間が経てば成功を意識したほうがいいですか?

坪田: 1年半真剣に努力したのに成功しないようであれば、それは実現が難しいことだといえます。誰もが才能のタネは持っていますが、向き不向きがあるのが現実です。リンゴを育てるのに適している土もあれば、ミカンが適している土もあるし、ブドウが適している土もあるじゃないですか。それと同じです。違うものに目を向けて、もっと自分に向いていることを探したほうがいいです。

──1年半努力すれば、辞めるにも勇気が必要です。

坪田:一度始めたことを最後までやり抜かなきゃと感じている人が多すぎだと思うんですよね。でも、自分に何が向いているかなんてやってみなきゃわからないので、一発目から正解を選べなくて当たり前なんですよ。ダメだったら次に行けばいいという気持ちで取り組んでみてください。

坪田信貴
「行きつけのコンビニがあったとしても、もっと便利な場所に新店ができたらそっちに行くでしょ?仕事もそれと同じで、自分に合ったものを選び直せばいいんです」と坪田さん。

何かいいなと思う人のマネをしてみる

──効率的に結果を出す方法はないんでしょうか?

坪田:職場で「この人かっこいいな」という人を見つけるのがおすすめです。強い憧れじゃなくて、「何かいいな」くらいの感覚でかまいません。そして可能であれば、その人と一緒に仕事をしてください。できる人の仕事の手順をマネすれば、成功の手段が身に付いて自然と結果が出るようになるはずです。

──マネが結果につながるんですね。  

坪田:やりたいことがないって悩んでいる人も多いですが、僕はやりたいことがある人よりも求められていることを素直にできる人のほうが結果を出しやすいと思っています。やりたいことがあっても市場のニーズに合っていなかったら結果は出ないじゃないですか。

──市場のニーズ?

坪田:たとえば、フレンチ料理を学びに本場のフランスで修行をし、三つ星レストランで働いた実績があるとします。その人が超高級レストランをオープンする場所として日本の超ど田舎を選んだら、うまくいかない可能性が高いですよね。「超高級レストランをつくる」というやりたいことが土地のニーズに合っていないから、売り上げは期待できない。

──たしかにそうですね。

坪田どれだけ自分の想いが強くてやりたいことでも、ニーズがないと成功しないんです。求められていることをやって結果を出して、成功体験を得るのが大切。結果が出始めると努力も楽しくなって、好循環になります。会社員って安定した生活の中でさまざまな経験ができるので、とてもいい環境だと思うんです。転職しなくても、まずは社内で頑張って結果が出たら、そこから道が開けると思いますよ。

──たくさんチャレンジして、向き不向きを探せばいいんですね。

坪田:あとは、環境も大切な要素です。あまりにもギスギスしている環境だと、どれほど得意なことであっても結果は出にくいんです。

──職場の人間関係が大事ということでしょうか?

坪田:そうです。この考えには賛否両論あると思いますが、ギスギスしていて自分に合っていない環境だと思ったら、すぐに辞めたほうがいいと僕は思っています。「何かいいな」と思える人がいる環境を探してみて、そこで再度頑張ったほうが結果は出やすくなります。

才能は、「見つけるもの」ではなく「育むもの」です。人間関係が心地いい環境でコツコツと努力することが、「才能」を身に付ける一番の近道です。

坪田信貴(つぼた・のぶたか)

『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』の著者。ビリギャル・さやかさんの実の講師でもある。現在は教育者の傍ら、人材育成・組織構築を、講演や執筆などを通して広めている。ビリギャルの他にも『才能の正体』『人間は9タイプ』などを出版。

Twitter:@NobutakaTsubota

オフィシャルブログ:意思あるところに道は開ける

取材・文/ヌイ(@nui_nounai

撮影/中澤真央(@_maonakazawa_