男性のイメチェン動画を次々とアップさせてTwitterで話題になっている、男性専門の美容師さんがいます。

ガラリと変わった髪型に、はにかみ笑顔の男性。このヘアスタイルを作り上げているのは、大月渉さん。お客さんはみんなうれしそうに鏡に映る自分を見つめています。

「がらっとイメチェンすると、人にいじられるんじゃないか」とか、気恥ずかしくなりがちですが、そういう気持ちを捨てて変化するにはどうしたらいい? 大月さんに相談してきました。

「変わりたい!」と思ったら、まず美容室に来てほしい

大月渉(おおつき・しょう)。1993年、千葉県生まれ。スタイリスト。月に手がける顧客の数は400人を超え、リピート希望者は8割を超える。メディア出演、アプリゲームとのコラボなど幅広く活躍中。

──Twitterのイメチェン動画、どのお客さんもびっくりする変化ですね。もともと「変身」に特化してSNSをやっていたんですか?

大月渉さん(以下、大月):そうですね。誰に見せてもイメージしやすいように、等身大のお客さんのスタイルを載せています。カットモデルは使わないですね。Twitterで一番バズった子は、もう6回通ってくれています。来るたび、だんだんと表情も会話も明るくなって、服装も変わりました。

──変身や美容には勇気が必要。気恥ずかしさや躊躇する気持ちを捨てて変化するにはどうしたらいいでしょうか。

大月:結局は、自分自身が納得できるかどうかなんですよね。僕のところに来てくれるお客さんは、ちゃんと「変わりたい!」という意思を持っている人。やっぱり、わざわざ渋谷に来るのってハードルが高いんですよ。長期休みに、「バイト代貯めました!」って、地方から来てくださる方も多いです。

ネットで「どうせみんな元がいいイケメンだろ」「俺くらいのブサイクも変えてみろよ」とかDMを送って来る人もいるけど、もうみんな僕のサロンに来てほしいですね。ちゃんと変えますから。

──髪型って人に与える印象が大きいですよね。

大月:髪型を変えるのは、すべての始まりだと思うんです。僕、篠田麻里子さんが大好きなんですけど、もし無精髭のまま、髪もセットしないでぐちゃぐちゃで歩いている時に、奇跡的に篠田さんに遭遇したら、一生後悔すると思うんですよ。きっと、声はかけられない。

篠田麻里子さんについて熱く語る大月さん。確かにボサボサの頭で推しと出会ったら一生後悔するはず……。

──たしかに。イケてない自分を見られたくないですよね。

大月:そうです。チャンスって、準備している人に巡って来ると思うんですよね。商談や打ち合わせも、成功するために最善を尽くすなら、髪をちゃんとするべき。仕事も恋愛も、何をするにも、自分を整えていくことが大事。それは周囲のためでなく、自分自身が堂々と振る舞えるためなんです。

似合う髪型を的確にオーダーするには?

──お客さんからはどんなふうにリクエストされることが多いんですか?

大月:「似合う髪型にしてください!」と言われるんですけど、僕から見て素敵な髪型と、本人が気に入る髪型は違うので、施術前のカウンセリングをなによりも大切にしています。もし違ったら僕もスタイルを作り直すし、なんなら次から違うサロンを試してもらってもいいと思ってます。

──その人にとっての「カッコよさ」を重視してるんですね。

大月:誰かの意見に左右されるから自分がわからなくなっちゃうんですよね。僕は食べログの数字も気にしないし、自分の舌を信じる派で。髪型も一緒で、「カッコ良さ」はそれぞれ違う。ジャニーズみたいな甘め爽やか王子様が好きな人がいれば、反町みたいな男らしいのが気にいる人もいる。流されなくてもいいと思いますよ。

「してみたい髪型を伝えるにはどうしたら?」と聞いてみると……。

──「こうしたい」っていうイメージを美容師さんにスムーズに伝えるにはどうオーダーすればいいんでしょうか。

大月:恥ずかしいかもしれないけれど、言葉で抽象的に言われるより、切り抜きやスクショ見せてもらうのが一番いいですね。なるべく良さを引き出して、寄せるのは美容師の仕事なんで。

ルールの範囲内で遊べる方法を探すのが楽しい

──では、そもそも「なりたい髪型の方向性がわからない」場合はどうしたらいいでしょう。

大月:「おまかせで」って言われることも多いです。その場合も、後からトラブルが起きないように、校則や会社規則を聞きますね。スタイルは僕がちゃんと似合うようにするけど、「NGはないですか?」と。そこは丁寧にコミュニケーションをとっています。

──変身もちゃんと「ルールの範囲で」なんですね。

大月:一個人としては「好きな髪型すればいいじゃん!」と思えるんですけど、自分がそのコミュニティを選んでしまった以上、そこでのルールを守らなきゃいけませんよね。でも、ルールだからってがんじがらめにされるんじゃなくて、規則の中で遊べる方法を探すのが楽しいんだと思います。

「規則の中で遊べる方法を探すのが楽しい」と言う大月さん。制限がある中で楽しむのがおしゃれなんですね。

──具体的にはどんなやり方がありますか?

大月:「ツーブロック禁止なんですけどやりたいです」というリクエストには、「じゃあ、なんでツーブロックにしたいの?」って聞きます。「髪のボリュームを落としたい」という話になれば、その希望が叶うスタイルを提案すればいいだけです。おしゃれとしてツーブロックをやってみたいんだったら、「これくらいなら大丈夫」っていうラインを一緒に考えることもあります。僕はプロだから、どんどん頼ってほしいですね。

「人に流される」のと「人の意見に耳を傾ける」のは違う

──冒険したいけど、結局いつも無難な髪型になってしまう人はどうしたらいいですか。

大月:「派手になりすぎないように」とか、結構人の目を気にする人は多いです。みなさん「とにかく浮かないようにしたい」という気持ちが強いんでしょうか? でも、「派手」の基準も人それぞれ違う。僕は、最初のカウンセリングだけじゃなくて、会話で緊張をほぐしてから、もう一度聞きます。「やっぱりもう少し切ります?」「もう少し明るくします?」って。大体、「そうしましょう!」って返事がきます。

自分らしいスタイルを見つけたいけれど、人からどう見られるかも気になりますよね。大月さんがくれたアドバイスは……。

──大胆になりすぎて、失敗するのが怖いという人もいるのでは? 自分らしいスタイルを見つけるのって難しいことのように思います。

大月:そこに関しては、美容師の意見を聞いたほうがいいですね。自分のスタイルを貫くのは素敵だけど、周りから見ると「アレ?」ってことになっちゃう場合もある。人に流される必要はないけれど、プロの意見を聞いて、流行を適度に取り入れてもいい。「人に流される」のと「人の意見に耳を傾ける」のは別物ですから。

──たしかに。その2つは似ているようで全然違いますね。

大月:自分スタイルのおしゃれを貫くためには、いろんな知識があったほうがいいし、周りの人がどう思うかも知っておいたほうがいい。その上で、最終的に「自分はこれがカッコいいと思う」っていうものを選ぶのが大事ですね。

──美容院に行ってから、髪型を維持するのが難しいです。スタイリングをちゃんとやるには?

大月:まず一発目の努力が大事ですよね。女性って、みんなメイク頑張ってるじゃないですか。毎日やっていくうちに慣れていくし、自分のスタイルがわかるようになる。男性だって、美容師にセットしてもらって終わりじゃない。

髪質の流れとか癖を把握するためには、とにかく毎日スタイリングして、トライアンドエラーしていくしかないです。ちゃんとワックスをつける習慣をつけて、わからなかったらサロンに聞きに来てほしいですね。

「とにかく毎日スタイリングする習慣をつけて」と大月さん。……面倒がらずにちゃんとワックスをつけるようにします。

全国の男性をカッコよくしたい

──大月さんは、小さい頃から美容師になりたかったんですか?

大月:いや、昔はまったく考えてなかったです。僕、ギャル男だったんですよね。でも、ヘアセットが上手くて、定評があったんで、1回500円で友達の髪の毛セットしてたんです。毎日6人くらいからお願いされて、3000円稼いでたんですよ。で、案の定、先生にバレて怒られて(笑)。その先生に「大月、美容師になれば?」って言われて、美容専門学校に進学したんです。

──ギャル男だったんですね! 明るくてポジティブな感じ、納得です。

ギャル男だったという大月さん。明るく、親しみやすい人柄も多くのお客さんに支持される理由のひとつなのかもしれません。

──毎月たくさんのお客さんを変えている大月さんですが、今までの美容師人生の中で、心に残ってるお客さんは?

大月:普通の黒髪の大学生の男の子が「短くしてシルバーにしたいです」ってやってきたんです。話を聞いてみると、なんと実家がお寺で、1週後に出家する予定だそうなんです。「人生で髪の毛で遊べるの、これが最後なんです」と、僕のところに来てくれて。一生忘れないですね。

──いい話ですね。今回独立して、「メンズ専門美容師」になった理由を教えてください。

大月:全国の男の子をかっこよくしたくて。その目標を実現するための最短の道のりを考えた結果、メンズ専門になりました。人それぞれ色んなコンプレックスはあると思うけど、「おしゃれをしたい」と思ったら、美容院に来たらいい。まずは扉を叩いてほしいですね。

大月さんの著書「人生は髪でズバッと変わる」(一迅社)が好評発売中。

大月渉(おおつき・しょう)

1993年、千葉県生まれ。スタイリスト。月に手がける顧客の数は400人を超え、その中でもリピート希望者は8割を超える。スタイリングの技術は美容業界でも高く評価されていて、セミナーや講演の依頼も絶えない。テレビやWebなどのメディア出演、アプリゲームとのコラボなど幅広く活躍中。

Twitter:@DIECE_SHOU

取材・文/小沢あや(@hibicoto
撮影/飯本貴子(@tako_i