今、大人気のロックバンド「ヤバイTシャツ屋さん」。カッコつけない、ありのままの面白さが、10代20代を中心に支持されています。

最近ではNHKとのタイアップをはじめ、大手企業とのコラボレーションも。楽曲制作を手がけているギターボーカルのこやまたくやさんに、仕事の幅を広げて目標達成するために必要なことを聞きました。

「面白いと」思ったら、すぐにTwitterでメモ

こやまたくや。1992年、京都府生まれ。2013年、大阪芸術大学在学中に「ヤバイTシャツ屋さん」を結成。

──ヤバTは、さまざまな「あるある」を楽曲に昇華していますね。ちょっと笑えるさじ加減が絶妙ですが、普段のネタ探しはどうしてるんですか?

こやまたくやさん(以下、こやま):とにかく、なんでもスマホ片手に記録しますね。Twitterのアカウントを4つ持ってるんですよ。何気ないことを何でもつぶやいて、メモがわりにしています。サブアカウントならバズとか広告とか考えなくていいし。

──メモ帳じゃなくて、Twitterなのはなぜでしょうか?

こやま:ただメモるのと、ツイートするのってちょっと違うじゃないですか。誰かが見てるっていう気持ちで発信するのが、けっこう大事だと思うんですよね。「おもしろいやん!」ってことがあったら、全部POSTします。

──こやまさんのサブアカウントにはどんなつぶやきが?

こやま:なんやっけ?(とスマホを取り出しながら)えーと、今日は「履き慣れてない靴、いつ履き慣れるん?」ってつぶやいてますね。最近、新しいマーチン買って、足痛いんすよ。でも「語感ええし、歌詞に使えるかな?」って書いたやつですね。口に出して気持ち良さそうなフレーズやな、って。

──履き慣れてない靴、いつ履き慣れるん?……ほんとだ! 早口言葉みたいな、「声に出したくなる日本語」ですね。

こやま:語感は大事にしていて、自分にとって気持ちいい文字列にしてからPOSTしてます。メモだと、本当に自分用だけになっちゃうけど、少しでも人の目を意識することで、アウトプットの質が高まると思うんです。

スマホを取り出してつぶやきの内容を教えてくれるこやまさん。

──人数は関係なく、「誰かに見られる」可能性を意識すると。

こやま:自分の頭の中で考えるだけじゃなくて、客観的になることを意識してますね。もともと映像制作をやってたんで、ずっと「どうしたら自分の作ったものを見てもらえるか」を考え抜いてきたんです。それをバンドにも反映させています。

──Twitterでは、発信だけでなくエゴサも常時しているんだとか。

こやま:僕は学生の時から「わかるやつにだけ届けばいい」っていう考え方が本当に嫌で。自己満足で終わりたくなかった。だから、とにかく作品に対する感想が欲しいんです。自己顕示欲が強いんでしょうね。自分からどんどんエゴサして、感想読んで、満たされにいく感覚です。

──エゴサで、傷ついたりすることはないですか?

こやま:昔は「こんなん売れるわけない!」って言われて、なんやねんって思ってたけど、もう何も思わないです。むしろ、今は優しい意見が多くて。「ありがとね!」の気持ちで、ひとつひとついいねをつけてます。

──歌詞の中にすごく印象に残るフレーズが多いのは狙ってるんでしょうか。

こやま:僕ら、可愛らしいことを歌ってるように見せかけて、実はえぐいフレーズ入れて歌ってる曲もあるんです。直接的なことは言わんけど「飲んで吐いた女持ち帰って」とかね。皮肉やブラックユーモアが好きなので、毒っけ要素をスパイスとして入れてます。過激にならない、ギリギリを攻めてる感じですね。「マニアックなものをポップに伝える」ってことを、学生の頃からずっと意識してます。

「とにかく作品に対する感想が欲しい」ので、毎日エゴサーチしていいねを押しているのだとか。

「カッコつけられない」ことが、ヤバTの強みにつながった

──『ハッピーウェディング前ソング』は、めずらしく恋愛をテーマにしてますよね。辻ちゃん夫妻も踊ってて、結婚式の新定番になりそうです。

こやま:カッコつけんの下手やし、本当はラブソングとか書けないんですよ。でもね、活動していく中で恋愛の曲作らなきゃいけないタイミングが来て。案の定「書けへんし〜!」って行き詰まった。

──そこからどうやって歌詞を書きあげたんですか?

こやま:どうしても作れないから、気分転換のために大学時代の友達と久しぶりに会ったんですよ。その仲間の中に「付き合ってないけどええ感じの男女」が1組おったんです。

お似合いやし、こっちもいい気分になってつい「キッス!キッス! キッス! キッス! 入籍! 入籍! 入籍! 入籍!」って茶化したコールかけて(笑)。それが、すっごい楽しかったんですよね。「あ、これそのまま歌詞にしたらええやん」って気がついて、できた曲なんです。

──すごい、本当に生活の中で出たフレーズを使ってるんですね。

こやま:ほんまにカッコつけられへんから、身近なことを歌にしてるんですよね。そこがヤバTの強みなのも自覚はあります。無理しないで、ナチュラルに生活するのが一番。

──売れてから生活が変わって、自然な自分でいられなくなるとかは?

こやま:「変わるのが怖い」みたいな感覚は、ないですね。そりゃ、後輩に奢るようになったのはあるけど、大幅には生活変えないです。今も変わらずにすき家行くし、コンビニ飯ばっかりやし、派手な遊びもしません。

──一般的に想像する「バンドマン」のイメージとは全然違いますね。

こやま:質素です。お酒も弱いから、たまにアルコール度数3%くらいの缶チューハイ飲むくらいです。自分の作品が評価されたい気持ちはあるけど、「稼いでもっとええ暮らししたい」という欲もまったくない。Twitterでリスナーの感想読んだら、もう満足しちゃうんです。本当に嬉しくてね。

カッコつけることができないというこやまさん。売れてからもすき家に通っているという。

売れっ子バンドマンはみんな穏やかで優しかった

──ヤバTも売れてますが、気持ちが大きくなることはないんですか?

こやま:同世代で金遣いが荒い人、見ると怖くなるんですよね。もともと、成功してるのに調子に乗ってない人が好きで。YouTuberのヒカキンさんもね、あんなに稼いでるのに、お金の話する時に「申し訳ない」って顔するんですよ。本来の堅実さが全然隠せてないの(笑)。そこがめっちゃいい。

──(笑)。調子乗らないように心がけてるのは、何かきっかけがあったんですか?

こやま:大阪でくすぶってきた時にロックフェス出て、初めて売れっ子バンドマンたちと接して衝撃を受けたんです。「売れてる人って、みんなこんなに穏やかなんや!」って。

インディーズって、うまくいってない人も多いから「あのバンドダサいわ」とか「なんであいつらが売れるんや、意味わからん」みたいな悪口を耳にすることが、よくあったんです。けど、売れてる人らは後輩にも優しいし、偉ぶらない。先輩方の姿を見て「謙虚な人が売れるんや」って、思い知らされましたね。

──こやまさんも、本当に謙虚ですよね。かといって、縮こまることもないし。

こやま:謙虚であって損することってないですから。ヤバTも、最初はめちゃめちゃ舐められてたけど、フェスいっぱい出たら空気も変わったんです。結果を出せば、舐められないし誰も文句言ってこない。自分を大きく見せようとしなくてもいいんだなって、本当に実感してます。

「成功してるのに調子に乗ってない人好き」というこやまさんは、自身も調子に乗らないように心がけているという。

ネガティブなことばかり言ってる人ってもったいない

──ヤバTは、タイアップ曲も多数ありますよね。「営業」はどうしてるんですか?

こやま:営業とか全然考えてないですね。好きなことを全部口にしてるだけ。好きって言われて、嫌な人いないじゃないですか。損することないし、ニワカとか気にしないでどんどん発信しますね。

──タイアップは、それがたまたまつながった結果なんですね。

こやま:そうです。逆に、「これ嫌いやわ」とか、ネガティブなことばかり言ってる人を見ると、「もったいないな〜」って思う。いいことないし。そりゃね、飲み屋で陰口言って盛り上がることってありますけど、「発信」となるとやっぱり違う。インターネットには、いいことだけ書いたらええと思う。

──三重県にある志摩スペイン村のテーマソング『きっとパルケエスパーニャ』のカバーもありますね。これも「好き」の結果なんでしょうか。

こやま:ずっと行きたかったから、作品名を『スペインのひみつ』にして、スペインつながりで「ユニバーサル(※)の経費で志摩スペイン村に連れてってくれへんかな〜?」って考えてたんです。そしたら、ほんまに実現して。

『スペインのひみつ』というタイトルにはそんな理由が……。

──そこからタイアップに?

こやま:特典映像の収録に使わせてもらったんですけど、現場に志摩スペイン村の偉い方々が来て。食事会の場を設けていただいて、お酒飲んでる時に社長さんが「ヤバT、CMソングとか作ってくれんの?」って話しかけてくれたんですよ。「やるやる〜!」って、即答しましたね。

──そこから、まさかの東海〜関西エリアでバンバンCMソングが流れるという結果に。

こやま:好きって言うだけで、ほんまにどんどんつながるんですよ。 「妖怪ウォッチ好き」って言ったら、『おはスタ』も出られた。「かいけつゾロリ好きやねん」って発信したら、最新刊に「ケバいアロハ屋さん」って、ヤバTのオマージュキャラが出てきて、ほんまヤバイ! 好きな気持ちだけで、どんどん癒着できる。みんな絶対、好きって言ったほうがいい。

(※)ユニバーサル ミュージック合同会社

目標がないとバンドは簡単に終わってしまう

──そういえば、ヤバTって、CMやTV番組出演はしているのに、歌番組には出ないですよね。

こやま:歌番組からオファーをいただいても断ってる状態ですね。「初めてTVで歌うのは、紅白のステージ」って、決めてるんで。

紅白出場は夢ではなく目標と言い切るこやまさん。

──言い切りましたね。「やっぱり出ておけばよかった」みたいな後悔は、ないですか?

こやま:正直、「チャンス逃してしまったんかなあ」と思うこともある。だからこそ、絶対にヤバTは紅白に出なきゃいけないと思ってます。目標がないと、バンドって簡単に終わっちゃうんですよ。僕らは、ずっと紅白出場に向けて活動してます。だからNHKに出られなくなるようなことはしない。普段の生活から、ずっと紅白のことを考えてます。

──紅白歌合戦は夢ではなく、「目標」ですか。

こやま:はい。目標です。ぼんやり夢描いてるんじゃない。いつ声がかかってもええように、大晦日のスケジュールは空けてます。結成してから、「出れんの!? サマソニ!?」、「イオ・ミュージック・トライ優勝」、「大阪BIGCATワンマンライブ完売」って目標設定してきて、唯一まだ達成できていないのが紅白なんです。

──日本で最もハードルが高いステージのひとつですよね。紅白は。

こやま:最初は周囲も「紅白なんて、またヤバTしょうもない冗談言って(笑)」って、冷ややかな反応だったんですよ、でもNHKでレギュラー番組持って、『案外わるないNHK』って、タイアップ曲も作った。コツコツ頑張ってきて「あれあれ?! ヤバT、マジで紅白いけるんちゃうか?!」っていう空気になってきたんです。2020年は紅白歌合戦出場して、目標達成したいですね。

こやまたくや

1992年、京都府京都市生まれ。2013年、大阪芸術大学在学中に「ヤバイTシャツ屋さん」を結成。音楽活動のほか、「寿司くん」名義で映像作家として自主アニメ制作やMV監督などの制作活動もしている。岡崎体育は中学校の先輩。

Twitter:@yabat_koyacial

Instagram:@koyammer

HP:ヤバイTシャツ屋さん OFFICIAL WEB SITE

取材・文/小沢あや(@hibicoto
写真/佐野円香(@madoka_sa