「4月入社を狙うなら今!」「まだ間に合う!第二新卒」「30代転職のベストタイミングは?」……。

日照時間がだんだんと長くなり、出会いと別れの季節が近づく今日このごろ。「社会人◯年目かぁ」と己のキャリアを振り返りやすいタイミングでもあり、つい「転職」が頭をよぎって、あれこれネット記事を検索してしまう人も多いのではないでしょうか。

新卒採用では「自分らしい服装でお越しください」に対してうさ耳パーカーで面接に臨むという失敗をしていた私も、社会経験を積んで2度の転職をこなし、社会人8年目。

どちらの転職でも、春頃から「この会社でこのまま働き続けるのでいいのだろうか……」と考え出し、周囲に話を聞いたり、エージェントに通ったりしてみて、希望企業を絞って選考に取り組む、という流れでした。

と書きましたが、みなさんもぜひ春に転職を! という記事ではありません。今回提案したいのは、「モヤモヤしている時は、“ちょっぴりサバティカル”を取ってみよう」です。

仕事は充実。でも、立ち止まって考える時間が欲しい

そもそも、“サバティカル休暇”をご存知でしょうか?

サバティカル――キリスト教における「Sabbaticus(安息日)」を語源とするこの言葉は、ヨーロッパの大学で伝統的にとられている、大学教員などに長期の研究・執筆のために与えられる休暇制度を指すものでした。

現在は、企業にも広く導入され、一定の期間勤続してきた雇用者に対して、少なくとも1カ月以上の長期休暇を付与する福利厚生を意味するようになっています。ワークライフバランスの改善が叫ばれている日本でも、導入している企業は増えてきました。たとえばヤフーには、10年以上勤続すると、2〜3カ月の休暇が得られるサバティカル制度があると公式サイトにも明記されています。

うちの会社にはサバティカルはないし、そもそも私の勤続は2年半程度なのですが……、それでも「このままでいいのかな」の、モヤモヤ期は襲ってきました。

尊敬できる同僚もいて、ビジネスの理念も自分の興味関心と一致しており、副業のライター・サークル活動を許容してくれる懐の深さもあり、働けていることに満足している今の会社。しかし30歳という年齢の節目を迎えた時にわいてきたのは、「本業も副業もめちゃくちゃ充実しているけれど、一度立ち止まって考える時間がほしい!」という気持ちでした。

そう、転職を決意しているなら、次の会社を選ぶ過程で「自分の長期的なキャリア」について否が応でも考える時間ができます。でも、むしろ現状を続けていきたい時には、その現状や直近の目標に取り組むことに一生懸命になってしまい、キャリアを真剣に考える機会が意外となくなってしまうのです。

有給を使って1カ月間の休みをもらうことにした

「転職したいわけじゃないけど、ちょっと気分転換できる時間がほしいなあ……」「日本にいるとついつい空き時間に遊びと副業を詰めてしまうんだよなあ……」「思い切って1週間くらいヨーロッパにでも行こうか……」「いや、もっと勉強とかスキルアップになることがいいかな……」

と、考えたところで思いついたのが「有給をありったけ使って、自主的にサバティカルを取り、短期の語学留学に行ってみる」でした。

毎年4月に有給が付与される仕組みの弊社。その時、私に残っていた有給は17日間でした。そこまで休めないように思いますが、これに土日・祝日をうまく使い、季節で付与される特別休暇をプラスすれば何とか1カ月間休むことができる!

「有給を使い切ってしまった後、もしも病気になった場合などは休めないのか?」という不安はありましたが、労務担当者に相談すると「欠勤にはなるので給料はマイナスになるけれど、数日程度なら問題になるようなものではない」との回答をもらい、安心。

9月に入ると同時に上司に相談し、11月後半から丸1カ月休ませてもらうことになりました。

休暇までの段取りはこんな感じ。

【8月下旬】

  • 留学エージェントに連絡して、語学学校の選定、見積もりを行う。

【9月上旬】

  • 上司に休暇の件を相談する。
  • 留学エージェントに正式に返事をし、語学学校への申込みを開始する。
  • 自分でロンドンへの航空券、現地でのホームステイ先を確保する。

【9月下旬、10月】

  • チームでも休暇の件を伝え、不在時のサポートを相談、お願いする。
  • 語学学校のオンラインテストを受ける。
  • ビザに必要な書類をそろえる。

想像の3倍以上の密度で通り過ぎた1カ月間だった

そうして迎えた1カ月の休暇。まず3週間ロンドンの語学学校に通い、残りの1週間はロンドン、ベルリン、ブリュッセルをまわりました。

4週間まるまる語学学校に行くことも考えたのですが、ゆっくり考えて充電する時間も持ちたかったので、1週間は観光にあてることに。

1カ月を通じて、ただ語学学習に集中するだけでなく、現地在住の友だちが何人かできました。20以上の美術展を鑑賞したり、ベルリンでは、かねてから関心があった第二次世界大戦の史跡・産業遺産を訪れたりもしました。

語学学校代、宿代、航空券代の合計だけでも40万円はかかったし、ロンドンは食事代もバカ高かったので、洒落にならない出費ではありました。それでも、想像の3倍以上の情報量と密度で過ぎ去った1カ月で、本当に、このタイミングでこの場所に行くことに決めて、心から良かったなと思っています。

ちなみに私はロンドンを選んだので高額になりましたが、フィリピンやマルタなど別の国を選んだり、乗継のある航空券を買うなどすれば、はるかにリーズナブルに語学留学が可能です。

とはいえ、「自分でちょっぴりサバティカル」は、単に有給があれば成り立つというものではありません。退職間際に有給をまとめて消化するのと違い、自分が担当している業務が存在しているからです。

数カ月単位でプロジェクトに参加するタイプの業務なら、融通がききやすいかもしれませんが、そういう人はなかなか少ないでしょう。幸いにも、私の場合は「後輩に短期間だけ私の代わりにクライアント対応を行ってもらう」「後輩にはまわしきれない特殊な案件だけ、リモートで週数時間ほど対応する」という手段で、ギリギリ支障なく業務をまわすことができました。本当に、周囲の協力なくしては成り立たない休暇でした。

休暇を取ることで感じたメリット

「周囲に迷惑をかけてまで休むなんて……」「そんなふうに休みを取れるなんて、窓際社員だからでは?」という声もあるかもしれません。

実際、十分準備はしたつもりですが、サポートしてくれた後輩には負担をかけていますし、クライアントにも事情を伝えて対面の打ち合わせはご遠慮いただいたので、決して「つつがなく」とは言えない状態でした。私が会社にいない間に新しく動き出したチーム案件などもあり、業務に復帰してすぐは「浦島太郎」状態になってしまったのも事実です。

それでもこうした休暇を取ることには、デメリットを上回るいろいろなメリットがあったなと思っています。

異動や転職をせずとも、モチベーションを再起動できる

そもそも今回の休暇を取ろうと思った動機として「気分転換したい」があったわけですが、この目的はバッチリ達成しました。実は、行く直前には周囲から「1カ月も休んだら、絶対会社辞めたくなるよ」という言葉をもらっていましたが(笑)、少なくとも私の場合は、めいっぱい時間とお金を自分のために使ったことで、「働くぞ〜!」という気力を再点火することができました。

仕事上の新しい目標や、そのヒントが得られる

長いこと同じ環境で過ごしていると、自分のキャリアや目標を考えても、かなり限られた視点でしか思考が動かない、ということがあります。もちろん、期ごとの人事評価もあるし、自己目標も都度立てているし、それを100%やりきっているかというとまだまだなんだけど、「何か視野が狭くなっているな」と感じる人は結構いると思います。

私もまさにそういう焦燥感があったので、休暇・留学に踏み切ってみたのですが、言葉も常識も違う中でコミュニケーションに四苦八苦してみたことで、自分を違った視点から振り返り、仕事上の新しい目標を考える時間を取ることができました。

人や会社に対する「付き合い」「感情」をリフレッシュできる

同じ場所に住み、同じ会社で働き、同じ友人関係のもとで暮らしていると、公私ともに「周囲との付き合い」にコミットしすぎて、疲れてしまうことがないでしょうか。

私は元々落ち着きがない性格なのもあって、留学に行く前は週5〜7回で飲み会に行ったり、すでに飲み会が入っている日にわざわざ会社の飲み会の二次会に合流したりするような生活をしていました。

休暇を取るだけでなく、留学という形で普段の人間関係から離れた結果、プライベートの飲み会の回数はだいぶ減り、「もっと勉強をしたり本を読んだりする時間を持つことに価値を置こう」と思えました。

同僚とも友人とも仲良くするに越したことはないのですが、長く同じ環境下で働いたり遊んだりする中では、「他人の悩みに必要以上に肩入れしすぎる」「会社や仕事に対しての一瞬のモヤモヤにこだわりすぎる」状態に陥ることもあります。人と会社から離れてみたことで、自分自身が今向き合うべきことについて整理できて、より心身が健全になった気がします。

「他の人が休む」時にも全力でサポートしようと思える

これまでも、同僚が産休育休や看護休暇などを取ることはありましたが、あまり「自分ごと」としてはとらえていませんでした。自分が休んだ際にたくさんの人に協力してもらったことで、「休む人のためにももっとサポートできることはないかな」という気持ちが強まりました。この考えを一人ひとりが持てることで、働き方の多様性も深まるんじゃないかなと思います。

「自分はいなくても会社が回る」からこそ、やるべきことを考える

転職するたびに痛感していた事実が、どんなに人数の少ない会社でも、業務が切羽詰まっていても、結局「自分がいなくても会社は回る」ということ。いざやめることに決めてしまえば、なんだかんだ引き継ぎはできるし、後任も入るし、万一引き継ぎや後任がないにしても、会社がつぶれるということはありません。

今回1カ月無事に休めたのは、ある種「自分がいなくても会社は回る」ことを明らかにしてしまったということでもあります。正直、休暇後に出社した際は、「私の席、ないのでは?」と若干不安でした(ちゃんとあったよ!!!)。

しかし、定型的な業務に関して言えば「自分がいなくても会社は回る」ところはたくさんありますが、実は「自分がやるからこそ会社がうまく回る」業務の領域というのもあるわけです。

引き継いでそのままバイバイするのではなく、一度お願いしてから業務に戻ってきたことで、「自分がやるからこそ会社がうまく回る」ものと、「他人に任せたら自分よりうまく回してくれたもの」とが見え、「自分にしかできないこと」「自分がもっと頑張るべきこと」のヒントを得ることができました。

自分の仕事を客観的に振り返る上でも、「一度現場を長く離れて戻る」というのは有効な選択肢かもしれません。

1日でもいい。図々しく休む勇気を出してみよう

……と、つらつらあげてみましたが、そもそも有給取得は、労働者の権利にして会社の義務でもあります。役に立つ役に立たない以前に、つい仕事が楽しいがゆえに精を出しすぎて休みをとらず、気づいたら限界がきて心身を崩してしまった、という人を、年代を問わずたくさん見てきました。

この記事を読んで「そんなに休めるなんて、気楽でいいよな」と思った方、まずはぜひ自分の有給残日数を確認してみてください。あるいは、有給がない勤務形態の方も、自分の月の労働時間を確認してみてください。

そして、休みなく働いているなあ……という自覚がある方、まずは1〜2日でもいいので「図々しく休む勇気」を出してみてほしいです。1週間休めればさらにベスト。

毎日きちんと睡眠をとることが仕事の効率を上げることが証明されているように、長く勤続する中で上手に休みを取ることも大切です。

消化すべき有給がたまりまくっている方は、ぜひ「ちょっぴりサバティカル」を試してもらえればうれしいです!

この記事を書いた人

ひらりさ

ひらりさ

平成生まれのアラサー腐女子。BLと酒を主食に、会社員のかたわらライター活動をしている。同人サークル「劇団雌猫」としての企画・編集・執筆も行っており、近著に『一生楽しく浪費するためのお金の話』がある。

Twitter:@sarirahira