モーニング娘。’20の野中美希さんは、8歳までアメリカで育った帰国子女で、グループ内の英語担当です。2018年末には「もっと語学力を磨きたい」と宣言し、グループでの活動を休止して、2カ月の語学留学をしました。

ハロー!プロジェクト22年の歴史上、体調不良や学校の試験ではない理由で休みを取得したのは、野中さんが初。多忙なアイドルだけに、決断するまでには葛藤もあったそう。

グループから離れた2カ月間で、仕事への意識はどう変わったのでしょうか。

留学のきっかけになったつんく♂の一言

野中美希(のなか・みき)。1999年生まれ。2014年9月に12期メンバーとしてモーニング娘。に加入。2歳から8年間をアメリカで過ごした帰国子女であり、英語のレベル向上を目指しモーニング娘。の活動を休んで短期留学した経験を持つ。

──グループに在籍しながらの語学留学は、思い切った決断でしたね。

野中美希さん(以下、野中):モーニング娘。に加入してから、休もうなんて思ったこともないし、留学なんて、一切考えたことはありませんでした。でも、留学する半年前に、きっかけになる出来事があったんです。

──どんなことがあったんでしょうか。

野中:つんく♂さんとメールでやりとりしていたんですが、その中でつんく♂さんが「在籍中に留学するのも、新しくていいね」とおっしゃって。軽い冗談だったのかもしれないんですけど、その言葉に私は超衝撃を受けたんです。

──「休めるの!?」「留学行っていいの!?」って、驚きますよね。

野中:年4回も全国ツアーがあるし、休めるなんて想像もしていませんでした。ちょうど海外でのお仕事が決まって、英語でインタビューする機会が続いたんです。そこで、「自分では英語ができると思っていたけど、私の語彙じゃ全然ダメだ」と痛感させられました。その時に、つんく♂さんの言葉を思い出して「英語の仕事もつかんだことだし、短期留学できるか相談してみよう」と。

もともとは「休もうと思ったこともないし、留学も一切考えたことはなかった」と語る野中さん。

休むのが苦手。何でも限界まで頑張っていた

──事務所の方には、どのように相談したんですか?

野中:「海外の仕事のために勉強したい」と、明確な目標と向上心を持っていることを伝えました。不安だったけど、相談したスタッフさんが「いいんじゃないの?」と、背中を押してくれたんです。すぐに年間スケジュールを確認してくれて、影響が最小限になる期間で留学が決まりました。

──協力的だったんですね。実際に、休むことが決まった時の心境は?

野中:私、とにかく休むのが苦手で、常にアクセルを踏んじゃうタイプだったんです。何事も、限界まで頑張っちゃう。結果として、疲れがたまって骨折しちゃったり、過激なダイエットで倒れたりしたこともありました。もちろん、英語の勉強が目的だけど「留学を期に、一度立ち止まってもいいんじゃないかな」と思ったんですよ。

──常に仕事に一生懸命だったからこそ、一度離れようと。

野中:自分で言うのはおかしいかもしれませんが、留学ができたのも、普段から目の前のお仕事にしっかり向き合っていたことを認めてもらえた結果なのかなと思っています。在籍中に「モーニング娘。史上初」のことをやりたかったし、留学はぴったりでした。真面目にやってきて、本当に良かったです。

何事も頑張りすぎてしまっていた野中さん。留学を期に、一度立ち止まってみるのもいいと思ったそう。

──ファンからはどんな反応があったのでしょうか。

野中:コンサートを休むことになったけど、ファンの方からは「やりたいことや目標に向かって頑張って」というポジティブな声が多くて、安心しましたね。

──自分だけ休むことに罪悪感はありませんでしたか?

野中:もちろんありました。でも、グループのためになると思ったんです。ハロプロは、海外展開に力を入れています。英語がしっかり話せるメンバーがいたら、海外公演の時にも、お客さんと英語でコミュニケーションがとれるし、外国のメディアからのインタビューも、英語で受けられる。なら、英語を私の武器にしよう! と考えたんです。

──メンバーの反応は?

野中:メンバーはみんな優しく送り出してくれました。中でも飯窪春菜さんが「モーニング娘。にとっても前向きなことだから、頑張ってね!」と声をかけてくれたのがうれしかったですね。本当に、幸せな環境だと思います。私がいない間、立ち位置も歌割も、みんなしっかりカバーしてくれて。感謝しかないです。

ファンとメンバーに温かく送り出され、「本当に幸せな環境だと思います」と笑顔で振り返る。

離れたことで自分の仕事を客観視できた

──留学を認めてもらったからには、ちゃんと語学力を鍛えて帰国しなきゃいけないですよね。どんな風に勉強していましたか?

野中:なんとなく留学するだけじゃ、語学力は身につかないと思っていたので、日本にいる時から、TOEFLのスコア目標を設定して、事前に英会話レッスンに通って準備していました。現地でも、積極的に身の回りの人たちと会話しましたね。

──アメリカは日本とカルチャーもまったく違いますが、印象深かったエピソードは?

野中:ホストファミリーに「何が食べたい?」と聞かれた時に「何でもいいです」と返したら、「あなたが決めなきゃダメ」「自分の意思をはっきり伝えないと、疲れちゃうわよ」って、怒られたんですよ。日本に帰ってからも、周りに気を遣うだけじゃなくて、ちゃんと意見を言えるようになりました。

──英語以外にも、大きな収穫があったんですね。

野中:何よりも、休んだことで、「自分がいかにモーニング娘。が大好きなのか」がわかったんですよ。留学中は、私の担当パートを他のメンバーが歌ってくれてたんですが、その映像を観て「悔しい!」って思ったんです。もちろん、それ以上に感謝する気持ちがありますが、悔しいなんて超ワガママですよね。留学は自分で決めたことなのに。

留学中は「モーニング娘。ロス」状態。寂しいし、早く歌いたいし、勉強中以外は、常にグループの映像を観て、研究していました。

──せっかくお休みでも、頭は仕事モードだったんですね。

野中:仕事というよりは、私自身がモーニング娘。のファンになっていく感覚でした。「モーニング娘。って、めちゃめちゃかっこいい! この中に私もいるなんて、すごいことじゃん!」って、素直に思えるようになったのは大きかったですね。自分の仕事を客観視できた感じです。

留学して離れてみたことで、モーニング娘。への愛を再確認したという。

どんなに仕事が好きでも働き過ぎたら壊れてしまう

──「休みたい」気持ちと「サボりたい」気持ちはまったく別なのに、「休みたいなんて申し訳ないな」と感じる人もいます。そんな人が堂々と休むには、どうしたらいいと思いますか?

野中:社会には、なかなか休めない状況や立場の方もいると思います。私の経験を踏まえて言わせてもらうなら、まずは身の回りの人に相談してほしいです。何か対応を提案してもらえるかもしれない。どんなに仕事が好きな人でも、ずっと働いてたら、壊れちゃいますよ。

──モーニング娘。で「休み方やセルフケアが上手だな」と思うメンバーはいますか?

野中:サブリーダーの生田衣梨奈さんです。時間の使い方とストレス発散が上手だなって思います。料理したり、ゲームしたり、買い物行ったり、仕事もプライベートも、全力で楽しめるからこそ、自分らしく働けるんだと思います。

──しかも生田さんは、これまで一度も公演を休んだことがないんですよね。

野中:すごいですよね。学生時代も、仕事をしながら皆勤賞だったみたいです。今も、オフの日に一人でイチゴ狩りに行くくらい、超元気なんですよ。鉄人です!

「まずは身の回りの人に相談してほしい」と自身の経験を踏まえて、“休みづらい人”にメッセージをくれた野中さん。

感情を溜め込まずにうまく吐き出すことも大事

──誰でも、仕事に真面目に取り組むほど、心が休まらなくなってしまいます。野中さんは、どうやって息抜きしていますか?

野中:私は仕事大好き人間なので、スマホを手にするだけで「ブログを更新しなきゃ」とか「告知しなきゃいけないことがあったな」と、仕事のことが頭に浮かぶんです。そんな時は、思っていることを、全部家族や友達に話すようにしてます。話すことで気持ちがすっきりするし、思考も整理されますから。

それから、積極的に自分の弱みを吐き出すようにしています。人に弱みを見せたくない人もいると思いますが、思ったことを全部手帳に書いて、自分で読むだけでもいいんです。感情をうまく逃すことを意識するようになってから、自分の気持ちと上手に付き合えるようになりました。

──野中さんは、感情を出すことで、自分を棚卸ししているんですね。

野中:私、モーニング娘。の中で一番「人間」なんですよ。「裏側を見せないほうがいい」という人もいるし、実際そういうアイドルを尊敬しています。けど、私自身は疲れちゃうんです。アイドルも、人間らしく弱みを出したり、つらいとか、悔しいとか、もっと気持ちをさらけ出してもいいと思うんです。

──弱みを出さない美学もあるけど、おのおの自由でいい、と。

野中:でも、もし弱音を人に見せるなら、「冗談も交えながら語る」のが重要かな。ジョークを混ぜると、しゃべっているうちに、自然と自分の思考も、ポジティブな方向に寄っていくと思います。

野中美希(のなか・みき)

1999年生まれ。2014年9月に12期メンバーとしてモーニング娘。に加入。2歳から8年間をアメリカで過ごした帰国子女であり、18年12月下旬から19年2月中旬まで、英語のレベル向上を目指しモーニング娘。の活動を休んで短期留学した経験を持つ。

Instagram:@miki_nonaka.official

取材・文/小沢あや(@hibicoto
撮影/飯本貴子(@tako_i